相対性理論を学びたい人のために

まだ一度も相対性理論を勉強したことのない人は、何か一冊相対性理論の本を読みかじってみて、なぜこんなことが?という、疑問を持ってからこのブログに来てください。ブログの先頭に戻るには表題のロゴをクリックしてください

宇宙の年齢を求める

 現在2015年8月15日21時23分である。

 正直言って、私の物理学の能力が、こんなに劇的にアップするとは、思っていなかった。

 宇宙の年齢の計算法を、渡辺麻友さんに説明しようと思って、必死になって調べたお陰で、ものすごく一般相対性理論の理解が深まった。

 まゆゆ、ありがとう。


 きっかけは、7月30日に上野の国立科学博物館へ行ったことだった。

 はやぶさの持ち帰った、イトカワの微粒子を見に行ったのだが、帰りに、何か記念品でも買おうかと、お土産物コーナーに入った。

 はやぶさの下敷きが、324円だったが、まゆゆの1,980円の下敷きを持っている私にとって、そんなもの必要ない。

 イトカワの微粒子を売っているのなら、買いたかったが、1500個しかないのでは、売られているはずはない。

「なーんにも、ないなあ。」

と思って、ぼんやり歩いて、本のコーナーに着いた。

 子供向けの易しい本ばっかりで、全然、買う気がしない。

「1冊くらい、歯ごたえのある本はないかなあ。」

と思って見ていたら、

小玉英雄著『相対論的宇宙論

という本があった。

「この著者で、この題名の本は、持っているけど、こんな小さな本じゃなかったな。子供向けに、書き直したのかな。」

と思って手に取った。

 開いた瞬間、戦慄が走った。

「あの本だ。」

 すぐ、奥付を見る。

平成27年5月30日 発行

「改訂されたんだ。しかも今年の5月に。」

 最後の

補遺 1990年以降での宇宙論の進展

を開き、

『Planck衛星』

という文字を探す。

「あった。」

 これこそ、私が、去年から、公表されるのを待っていたデータだった。

 この本にそのデータが、出ていたのである。

小玉英雄著『相対論的宇宙論』(新装復刊)(丸善出版
 

相対論的宇宙論 ([新装復刊]パリティ物理学コース )

相対論的宇宙論 ([新装復刊]パリティ物理学コース )


 なぜ、そのデータを欲しかったかというと、1回目の入院から退院した15日後の2014年7月29日に、泉区の立場の文教堂書店で、

Newton別冊『宇宙について知りたい68項目』

という本を見たとき、COBE衛星の次のWMAP衛星の写真を遙かに上回るものすごい細かさで、宇宙背景放射を写したPlanck衛星という衛星の画像が載っていたのだ。

「この画像を分析したデータを見たい。」

と、そのとき思った。

 それが、まさに上の本に書かれていたのだ。

 このデータは、2013年3月のものなので、私が持っている、どの宇宙論の本にも載っていようはずがなかった。


 値段を調べた。2,700円だった。

 無理をすれば、買えない額ではなかった。

 最近、ほとんど本を買っていないが、この本は、必要だと思った。

 他のお土産なんて目もくれず、レジに向かった。


 帰りの車中、新しいデータのところを読んでいた。

 そのとき、ハッブル定数が、

{H_0=67.3\mathrm{km}/\mathrm{s}/\mathrm{Mpc}}

くらいだ、というのが、最新の観測結果であることが分かった。

 論文はこれ。

Planck 2015:arXiv:1502.01589

 アブストラクトには、違う数値が書いてあるが、PDFをダウンロードしてみると、(27)式に、この数値がある。


 さて、まゆゆ。この結果から、宇宙の年齢が分かるんだよ。

 私は、この値から、きちんとした計算結果を出せるまでに、3回、間違えた。

 この間違いをたどることが、まゆゆの勉強になると思うので、全部、見せることにしよう。


 まず、ハッブル定数というものが、観測された、と言った。

{H_0=67.3\mathrm{km}/\mathrm{s}/\mathrm{Mpc}}

と書いてある。

 この単位を見て、まゆゆ、何か感じない?

「割るが2回ある。」

 そう。普通、速さだったら、この間の光の速さ、秒速30万キロだったら、

{300,000\mathrm{km}/\mathrm{s}}

のように、斜めの線は1つだ。

 実は、ハッブル定数というものは、

ハッブルの法則

 つまり、

『ここから2光年離れた銀河は、1光年離れた銀河の2倍の速さで、ここから遠ざかっている。同様に、{n}光年離れた銀河は、1光年離れた銀河の{n}倍の速さでここから遠ざかっている。』

という法則で、

「じゃあそもそも基準になる1光年の銀河は、何{\mathrm{km}/\mathrm{s}}で、遠ざかっているの?」

という速さなんだ。

「だとすると、{\mathrm{Mpc}}というのが、『光年』という意味?」

と、まゆゆは聞くだろうが、実は、惜しいんだけど、ちょっと違う。

 これは、メガパーセクという長さなのだ。

「私の携帯に入っている写真は、全部で64メガバイトだ。」

なんて言葉をよく使うから、まゆゆも、メガパーセクというのは、パーセクという長さの10の6乗倍、つまり、1000,000倍だろう、と想像が付くだろう。

 とりあえず、{\mathrm{Mpc}}は、長さの単位だ。

 そして、その長さで、{\mathrm{km}/\mathrm{s}}を、割っているんだ。

 つまり、

{n}光年離れた銀河は、・・・」

という代わりに、

{n\mathrm{Mpc}}離れた銀河は、{1\mathrm{Mpc}}離れた銀河の{n}倍の速さで、ここから遠ざかっている。」

と言い換えるんだ。

 なぜ言い換えるのかというと、このくらい遠い銀河を基準にしないと、スピードが十分速くなってくれないんだ。

「これくらい遠くって、どれくらい遠いの?」

と、まゆゆは聞くだろうから、答えよう。

 1パーセクは、大体3光年なんだ。

 だから、{1\mathrm{Mpc}}は、大体300万光年という長い距離なんだ。


「なぜ、『パーセク』と『光年』という、ちょっとしか違わない単位を両方使うの?」

と、まゆゆは、聞くだろうけど、これは、我々が、どうやって星までの距離を測るか、ということに関係しているんだ。


『光の速さで行って、1年の距離。」

を、

『1光年』

とした気持ちは、分かるでしょ。

 これは、昔からあった単位だ。


 それに対し、星までの距離を実際に測ることを考える。

 まゆゆ、星までの距離って、どうやって測る?

 いくつもの方法があるのだけど、絶対に正しいことが分かっている方法があるんだ。

 それは、地球が太陽の周りを周っているとき、地球からその星に引いた線が、円錐のようなものを描くんだけど、その円錐の頂点のところが、何度に開いているか、というのを測る。

 これは、展開図を開いて測る、という意味ではなく、もっとも端と端に来たとき、その二等辺三角形の上の角度を測るということ。

 実際にどうやって測るかというと、地球から天体望遠鏡を向けて、例えば4月と10月が真反対なら、そのときの角度の違いを測って、88度と92度だったら、4度開きがある、と分かる。

 実際は、4度も違いの生じる星なんてない。角度の1度を60等分したものを1分(3割4分「さんわりよんぶ」のときの『ぶ』と違い、いっぷんと読む)と呼び、角度の1分(いっぷん)を60等分したものを1秒(いちびょう)と呼ぶ。そして、一番近い星でも、角度で2秒しか違いが出ない。


 ところで、角度の違いが、2秒だったとしよう。

 これはどういうことか。

 太陽と地球の距離を1天文単位(てんもんたんい)というんだけど、例えにしている、地球が4月と10月の時の2つの地球の距離は、直径になっているから、2天文単位だ。

 まゆゆの、数学の学歴を調べたのは、実はここで使うため。

 太陽と地球の距離は、分かっている。

天文単位=約1.5億{\mathrm{km}}

 取りあえずこれは認めよう。

 その場合、違いが、2秒だとして、星までの距離が求められるか?

 まゆゆの数学力が、試されている。

 まゆゆが、得意の絵を描けば、すぐに分かる。

星までの距離×{\tan{\theta}}=1天文単位

という式で、

{\displaystyle \theta=\frac{2\pi}{360 \times 60 \times 60}}

と、置けば良い。

「えっ、分からない。タンジェントは、知ってるけど、その中に、なぜ{\pi}があるの?」

という段階だと、さらに説明しなければならないけど、ラジアンという角度の測り方を、まゆゆは、知っているだろうか。

 忘れてるといけないから、一応、説明しておくか。

 半径1の円の円周の長さは、直径かける3.14で、

{2\pi}

となるのは、いいだろう。

 例えば、60度という角度を説明するとき、半径1の円の中心から60度の角度を持った二つの線を出す。それが、切り取る円弧の長さは、60度が360度の6分の1だから、

{\displaystyle \frac{2\pi}{6}}

という長さになる。

 この長さで、角度を伝えることにするんだ。

 これが、ラジアンという測り方で、弧度法(こどほう)ともいう。弧の長さだからね。


 ところで、

「そもそも、なんで、一回転を360度に決めたの?」

と、まゆゆは、素朴な質問をしてくるかも知れない。

 実は、私が、これに答えられるのは、ブルバキというペンネームで、フランスの数学者集団が書いた、

ブルバキ数学原論』位相3

数学原論 (〔14〕)

数学原論 (〔14〕)


という本を持っているからなのだ。

 角度をどう測るかは、昔から人間を、悩ませた。

 太陽の周りを周る地球を考え、1日に動く角度を、1度としようとした。

 でもこれだと、一周が365度になる。

 四季というものがあり、4つに分けたいのに、365は、4で割れない。

「じゃあ、365にこだわらず、直角を100度として、一周を400度としてしまおう。」

 実は、フランスでは、本当にこうやって角度を測っていた。

 上のブルバキの本の99ページを見ると、そう書いてある。

 直角が100度だから、すごく計算しやすい。

 だけど、他の国の多くは、別な道を選んだ。

「なんとか、4で割れるように、365からほんのちょっと、つまり5だけ引いてしまおう。」

 そういうわけで、一周は、360度となった。

 こういうわけなんだよ、まゆゆ


 いずれにせよ、タンジェントで方が付くんだ。

 そして、直径が、2秒に相当するのだから、半径は、1秒に相当し、1天文単位を1秒にする距離が、一番近くにある星になる。

 そして、この星の距離を、1パーセクと定めたのだ。

 だから計算法を書くと、

パーセク×{\displaystyle \tan{\frac{2\pi}{360 \times 60 \times 60}}}=1天文単位=1.5億{\mathrm{km}}

となる。なぜ、1秒が、

{\displaystyle\frac{2\pi}{360 \times 60 \times 60}}

なのかは、良いよね。

 360度一周が、円の円周だから{2\pi}で、1度がその360分の1、1分がその60分の1、1秒はさらにその60分の1だからだね。しっかりして、まゆゆ


 タンジェント{\theta}が、{0}に極めて近い場合、{\tan{\theta}\fallingdotseq\theta}となる。


「でも待って、『極めて近い』ってどれくらい近いときなの?『{\fallingdotseq}』ってどういう記号?」

と中学時代に感じた疑問を、まゆゆは私にぶつけてくるかも知れない。

 この疑問にも、私は、完璧に答えられる。


 今回、私は、まゆゆに、最新の研究成果を話すのだから、使う数学も最新の研究成果を使うことにする。

 数学の最新の研究成果というのは、超準解析というものだ。

 まゆゆは、多分、中学やトライ式高等学院で、

「無限大とか無限小というものを、普通の数のように、足したりかけたりしてはいけません。」

と習ったのでは、ないだろうか。

 例えば、


{\displaystyle\frac{dy}{dx}}

というものは、{dy}や、{dx}が、無限小の量なので、

「でぃーえっくす、ぶんの、でぃーわい」

とは、読んではいけなくて、

「でぃーわい、でぃーえっくす」

と読みなさい。


というように教わったのではないだろうか。

 違うかな。


 意外と最近の高校では、新しい数学が導入されて、

「でぃーえっくす、ぶんの、でぃーわい」

と呼ばせているかも知れないけど、まゆゆもそうだった?

 もしそうなら、次の質問に答えられるだろうか。

「その無限小の数を、小数で表すには、どうしたらいい?」

 これは、意地悪な質問で、例えば、

{0.0000000001}

と小数で表せたのなら、もうある大きさを持っているから、無限小の数じゃない。

 だから、無限小の数というのは、小数で表せないんだ。

 この前から、実数というものが、小数で表される数というのは、何度もやっているから分かるように、小数で表せない無限小の数というものは、実数じゃないんだ。


 だとすると、無限小の数を扱うためには、新しい数の表し方を発明しなきゃならない。

「えっ、数学では、発見は、あっても、発明は、ないんじゃない。」

と、まゆゆは、いぶかしむかも知れない。

 実は、数学というのは、自分で作っちゃうこともできるんだ。


 1960年頃、エイブラハム・ロビンソンという人が、無限小を扱う数学を発明した。

 英語では、non-standard analysis(非標準解析)というんだけど、それを日本に輸入した、齋藤正彦さんが、『超準解析(ちょうじゅんかいせき)』と、意訳した。

 これについても、1回分の投稿の量だけ、話すことがあるんだけど、今日は、とりあえず、どんな自然数{n}を持ってきても、

{\displaystyle 0 < \alpha < \frac{1}{n}}

となる{\alpha}が、少なくとも一つ存在し、実数全体と、足し算かけ算が自由にでき、{\alpha}自体も、

{\alpha + \alpha = 2 \alpha}

{\alpha - \alpha = 0}

{\alpha \times \alpha = \alpha^2}

{\alpha \div \alpha = 1}

などのように、自由に計算できるものと仮定しよう。


 このことが、本当にきちんと定義できていること。

 つまり、こんな無茶苦茶なことをやっても、矛盾が生じないことは、いずれ必ず証明する。

 そのときまで、楽しみに待っててね。


 さて、とりあえず、無限小の数{\alpha}があるんだけど、それでどうするかというと、二つの数{\beta}{\gamma}があったとき、

{\beta-\gamma=\alpha}

のように、差が無限小{\alpha}となるなら、{\beta}{\gamma}は無限に近いといい、

{\beta\fallingdotseq\gamma}

と、書くことにする。

 これが、『{\fallingdotseq}』という記号の意味だ。

 つまり、

{\tan{\theta}\fallingdotseq\theta}

というのは、{\tan{\theta}}と、{\theta}が、無限に近いという意味だったんだ。

 でも、条件があったね。

タンジェント{\theta}が、{0}に極めて近い場合。」

 この条件が、分からないのだった。

 もう分かるよ。

{\theta}が、{0}に無限に近い場合。」

だと表現できる。

 つまり、

{\theta\fallingdotseq0}

の場合だ。

 これは、{\theta-0}が、無限小の数の場合のことだった。

 ここで、{\theta-0}は、{\theta-0=\theta}であることより、{\theta}自身が、無限小の数の場合なんだ。



 結論をまとめると、


 定理 ({\tan{\theta}}の近似)

 {\theta}が、{0}に無限に近い数。すなわち、{\theta}自身が、無限小数の場合、

{\tan{\theta}\fallingdotseq\theta}

となる。


と、言える。


 定理のステートメントをきちんと書くと、証明は易しいものである。


 とは言ったものの、この証明を書いていたら、夜が明けてしまい、翌日の12時30分になってしまった。

 こんな長い投稿は、まゆゆが読んでいて、疲れすぎる。

 だから、1度ここで、投稿を打ち切る。

 まだ、宇宙の年齢を計算出来ていないけど、後のお楽しみとしよう。


 保留になっているのは、

・なぜ、『光年』と『パーセク』という2つの単位があるの?

・上の定理は証明は正しいの?

・無限小や無限大を扱っても、矛盾は生じないの?

・宇宙の年齢は?

という4つのことである。

 覚えておいてね。

 現在2015年8月16日23時37分である。おしまい。