相対性理論を学びたい人のために

まだ一度も相対性理論を勉強したことのない人は、何か一冊相対性理論の本を読みかじってみて、なぜこんなことが?という、疑問を持ってからこのブログに来てください。

宇宙の年齢を求める(その8)

 現在2016年1月11日2時14分である。

 この本に秘められている鍵を見つけながら、宇宙の年齢を求めようとしていたのだった。

相対論的宇宙論 ([新装復刊]パリティ物理学コース )

相対論的宇宙論 ([新装復刊]パリティ物理学コース )

 麻友さん。

 前回は、どんな話だったっけ。

「正直に言うと、どこまで、計算したのか、覚えていないのよね。太郎さんに動画をツイートしてって言ったことしか、記憶にないわ。」

 うん。そういう状態でもいい。

 大学なんかで、数学や物理学の『セミナー』とか、『ゼミ』とか、『ゼミナール』というものを開くときは、本当に予習してきた人は、内容が全部分かるけれど、その回だけ参加した人なんかは、自分のあらかじめ持っている知識だけで、理解することになる。

 当然分からないこともいっぱいあるんだけど、何か新しいアイディアが見つかったら、その人にとっては、それだけで、めっけものなんだよね。

 そういう、ゼミに、参加している気分で、麻友さんに取って、

『これは、使える。』

というアイディアを、見つけてね。


 さて、次の式の左辺を計算するところからなのだけど、見覚えあるかな?

{\displaystyle \int^1_0\frac{ada}{\sqrt{\Omega_R+\Omega_Ma+\Omega_Ka^2+\Omega_{\Lambda}a^4}}=H_0t_0}

「なんか、こんな式だったような気もするけど、思い出せないわね。」

 まあ、いいや。

 この式の左辺を計算して、宇宙の年齢を求めよう。

「エッ、この式だけで、求まるの?」

 うん。

 やってみれば、分かる。

 ところで、

{\Omega_R}
{\Omega_M}
{\Omega_K}
{\Omega_{\Lambda}}

の4つの文字は、まだ値が決まっていない。

 実は、これは、前にも言ったかも知れないけど、観測によって、数字を決めて、それを放り込むものなんだ。

「ちょっと待って。観測によって決まらないものっていうものもあるの?」

 そう。そういう風に、分からないことを、どんどん質問してくれると、助かる。

 物理学では、例えば、光の速さとか、量子力学でのプランク定数と呼ばれるもののように、他の色々な実験から、もう値が確定しているものが、いくつかあるんだ。

 これを、物理定数(ぶつりていすう)という。


 麻友さんも、光の速さは、知っているよね。

「分かる。1秒間に30万kmだったわね。『はやぶさ』のとき、確認したわよね。」

 どうやると、確認できるんだったっけ?

「まず、北極から南極までの距離が・・・」

 北極から、南極だっけ?

「違ったっけ。あっ、北極から赤道までかな?」

 この場合は、そうだったね。

 自分の間違いやすいところを、覚えておくというのも、数学の計算では、重要だよ。

「数学じゃなくても、重要ですーっ。」

 当たり前か。アハハ。

「ウフフッ」


 さて、北極から赤道までが、どうなの?

「千kmだとすると、『母をたずねて三千里』の子供は、地球を何周もしたことになるって、太郎さんはあの時、説明したけど、4分の3しか回ってないじゃない。」

 それは、1里が1kmだと思っているからだよ。

「あっ、そうか。1里って、何kmもあるんだ。何kmなの?」

 大体、3kmだけど、麻友さんのために調べよう。


 こういう、素朴な質問は、結構、大変なんだ。

 理科年表にも出てない。数学辞典にも出てない。

 こうなると、あれしかない。

「えっ、辞書にも載ってないの?そんなのインターネットで、調べたら。」

 そういう手段は、最後に残しておきたい。

「どうして?」

 2通りの方法で調べて、同じ結果が得られたら、それは、かなり信用できる。

 そういうときの、2つ目の方法として、インターネットは、残しておきたいんだ。

「なるほど。それで、『あれ』とは?」

 私の、高校時代の数学を支え続けた、『代数学辞典上・下』(聖文社)のこと。

 これは、本当に頼りになる。

「高校時代から、数学の辞書、読んでたの?」

 これは、高校生向けの辞書なんだよ。

 だから、大抵の高校の図書館にある。

「私は、通信制の高校だったから、『高校の図書館』という概念が、ないわね。」

 でも、放送業界に携わっているんだから、膨大な資料に、アクセスできるんじゃないの?

「もちろん。何十年分もの、貴重な資料があるんだけど、著作権の問題とか色々あるから、何でも見ていいわけではないのよ。」

 なるほどね。

 学問の世界では、結果を出すのが、最優先だから、著作権なんて、あってなきがごときなんだよね。

「それで、その、代数学辞典に、出てた?」

 うん。出てた。

1里=3.9273km

だって。

「あれっ?ほとんど4kmじゃない。あってるの?」

 そうなってから、インターネットで、確認するんじゃない。

「待って。ちょっと、調べてあげる。」

「あっ、1里は3927.272727・・・mって、Wikipediaに書いてある。」

 合わせ技、いっぽーん!

ってとこだね。


「そうね。だから、1里は、4kmなのね。」

 そういうことだ。

「だとすると、3千里は、1万2千km。」

 とすると、

「北極から赤道までが、千kmなら、地球一周が、4千kmになって、『母をたずねて三千里』の子供は、地球を、3周したことになる。」

「現代なら、あり得るけど・・・」

 そうだね。時代背景を考えるっていうのは、社会科の時間でなくとも、必要なんだね。

 麻友さんは、歴史、得意だった?

「小学校の時は、結構、勉強、好きで、どの科目も、できたし、中学の1年生の12月3日に、オーディションに受かるまでは、かなり勉強してたの。」

 じゃあ、歴史も得意だった?

「AKB48に入ってからも、中学までは、義務教育だから、かなり授業に出てた。それに、試験前は、何時間も勉強して、どの科目も、ほとんど満点だったわ。」

 めずらしく、麻友さんの口から、優等生ぶりが、聞けたなぁ。

「いつも、太郎さんの、『自分はできたーっ』っていう話を聞かされているから、逆襲よ。」

 そう、そうでなくっちゃー。

 麻友さんが、パートナーになって大丈夫だと、私が思う、理由の一つがそこなんだよね。

 芸能人とか学者とか、そういうことに関係なく、麻友さんって、賢い人だと思う。

「ありがとう。」

 うん。そこで、下手に打ち消さないところが、麻友さんらしい。

「このブログでは、私を操ってるのは、太郎さんだもの、仕方ないわ。」


 さて、千kmでは、短すぎた。

「だから、北極から赤道まで、1万kmだと、太郎さんは、いうのよね。」

 まあ、一つの覚え方だけどね。

「でも、私、どうしても、北極から南極までが、1万kmだったような、気がしてしまうの。」

 それは、実際に距離を測るところを、想像しないからだよ。

「どういうこと。」

 北極圏から赤道までは、陸続きだろう。

「あっ、そうか!南極大陸は、喜望峰から船旅だから、距離が測れないんだ。」

 そう、その優等生の冴え、期待してますよ。

「これで、もう忘れない。」


 さて、その知識の他に、後必要なのが?

「『光は、1秒間に、地球を7回り半する。』というフレーズね。」

 良く覚えていた。

 じゃあ、ちょっとやってみて。

「北極から赤道までが、1万kmだった。そうすると、地球一周は、4万kmだ。」

「光が、1秒間に地球を7回り半ということは、4かける7が、28で、半に相当するのが、4割る2で、2だから、合わせて、28たす2で、30。」

「よって、光は、1秒間に、30万km進む。」

「覚えていたのと、ぴったり一致したので、安心。」

「というわけね。」


 この、光の速さっていうのは、改めて観測しなくても、もう確定しているとしていい。

 また今度、話すけど、実は、光の速さっていうのは、

{\mathrm{c}=2.99792458\times10^8\mathrm{m/s}}

である。

と、定義されているんだ。

「どういうこと?」

 つまり、1秒という時間を、きちんと定めることによって、光の速さを使って、1mという長さを決定できるようになっている。

 つまり、『メートル原器』という、これが、1mだよ、っていっていた、基準の物差しを、お払い箱にしたんだ。

「なんか、恐ろしいことが、行われたような気がするけど、何が起こったのか良く分からないわ。」

 うん。もっと相対性理論の説明をした後、きちんと話す。

 こうやって、少しずつ、物理学の世界を探検し始めているんだよ。


 さて、既に覚えてあった、光の速さなどと違い、今回の観測で、決定するのが、次の4つなんだ。

{\Omega_R}
{\Omega_M}
{\Omega_K}
{\Omega_{\Lambda}}

「太郎さんは、こういうの見たとき、『あっ、観測で定まる量だ。』って分かるの?」

 分かるわけないじゃん。本文を見なければ、分からないよ。

「でも、英語の文献とかだったら?」

 ああ。数学や物理学の本の英語は易しいから、式の意味くらいは、すぐ分かるんだよ。

「前から知りたかったんだけど、よく、優秀な人に聞くと、『数学や科学の文献の英語は易しい。』っていうんだけど、どこまで本当なの?」

 まったく、そのまま信じていい。

 一つ例を上げると、私の愛読書ナンバー1の、ホーキングとエリスによる『時空の大規模構造』又は『時空の大域的構造』という本に、

{\mathrm{Finally,\  we\  give\  a\  brief\  discussion\  in\  \S\ 2.9\  of\  fibre\  bundles,}}
{\mathrm{with\  particular\  emphasis\  on\  the\  tangent\  bundle\  and}}
{\mathrm{the\  bundles\  of\  linear\  and\  orthonormal\  frames.}}

という一文がある。10ページなんだけど、今は、どこでもいい。

「分からないわ。」

 確かに、『バンドル』っていうのは、数学用語だからしょうがないんだけど、この文章、ものすごく簡単な分かり易い構造していると思わない?

「どこが?」

 まず、『最後に、・・・』でしょう。

 そして、『私達は、§2.9で、短いディスカッションを行う。』とあって、『ファイバーバンドルについての』と書いてある。

 ここまでだけでも、完全に文頭から意味が分かるでしょう。

「ファイバーバンドルは、ファイバーバンドルなのね。」

 ところで、麻友さん。AKB48のセンターって英語で書くとどうなる?

「『AKB48 Center』かしらね。」

 普通、そう書くよね。

 上のファイバーバンドルのファイバーどうなっている?

「fibre あ、分かった。これが、イギリス英語だと言いたいんでしょう。」

 よく勉強してありました。

 オーストラリアで、亜流の英語を勉強したら、一生、『AKB48 Centre』とは綴れないよ。

 ホーキングは、ケンブリッジ大学の先生をしているような人だから、クィーンズ・イングリッシュなんだろうね。

 一応、訳して見せておくと、

『特別な強調と共に、タンジェント(接)バンドルと線型正規直行枠バンドルに対しての強調。』

というように、専門用語が並んでいるだけで、前から読むだけで、そのまま意味が分かるんだ。

 もちろん、構文がどうとか、仮定法がとか、倒置がとか、文法は習うけど、イギリス人は、前から読んでるんだものね。

 今の一文、

{\mathrm{Finally,\  we\  give\  a\  brief\  discussion\  in\  \S\ 2.9\  of\  fibre\  bundles,}}
{\mathrm{with\  particular\  emphasis\  on\  the\  tangent\  bundle\  and}}
{\mathrm{the\  bundles\  of\  linear\  and\  orthonormal\  frames.}}

『最後に、私達は、接バンドルと線型および正規直行枠バンドルに特別な強調を置いて、§2.9で、ファイバーバンドルに関する短い討論を行う。』

で、意味が分かることになるんだ。

「今、辞書で、orthonormalしか、引かなかったわね。」

 うん。これだけちょっと、不安だったんだ。

「本当に、こうやって、目の前で、サラサラッと訳されちゃうと、本当なんだなあと分かるわね。」

 納得できるように、やって見せた。

「英語の先生でもないのにね。」

 一応、数学と物理学のプロだから。


「何の話をしてたんだったかしら?」

{\Omega_R}
{\Omega_M}
{\Omega_K}
{\Omega_{\Lambda}}

が、観測で分かる量だ、という話だった。

 麻友さんが、どうやって観測で分かる量だと分かるの?と聞いたから、本文を読めば分かるんだよと話した。

 結局、数学でも物理学でも、式自体は分かることが多いんだ。

 分からないのが、その式を書いた数学者や物理学者が、何を書きたくて、その式を書いたか。

 よくあるのが、明示されていない仮定。

 まあ、そういうところを、きちんと歩んでゆけば、以外とレヴェルの高いところまで行かれる。

 今から、諦めることはない。

 さて、上の4つだけど、最初に上げた

相対論的宇宙論 ([新装復刊]パリティ物理学コース )

相対論的宇宙論 ([新装復刊]パリティ物理学コース )

の本には、

{\Omega_R=?}
{\Omega_M=0.281}
{\Omega_K=0.0008}
{\Omega_{\Lambda}=?}

というように、2つの値が、はっきり書いてなかったんだ。

 それで、私は、苦労したんだけど、苦労話を書き始めると長いので、結論を言うと、

{\Omega_R=0}

と、この人は、言ってるんだ。

 よく読むと分かる。

 そして、この4つをたしたものが、1になるように、あらかじめ設定してあるので、

{\Omega_{\Lambda}=1-\Omega_R-\Omega_M-\Omega_K=0.7182}

と、求まる。

{\Omega_R=0}

を疑う人のために書いておくと、以下の本

ワインバーグの宇宙論(上): ビッグバン宇宙の進化

ワインバーグの宇宙論(上): ビッグバン宇宙の進化

に、

{\Omega_R=8.01\times10^{-5}=0.0000801}

とする記述がある(下巻63ページ)。この本は、私達の本より古い本だが、そこで、ほとんど0だと主張されているので、私達が0としても余り困らないとして計算してみる。

 とにかく、間違ってもいいから、計算してみるのが大切。

{\displaystyle \int^1_0\frac{ada}{\sqrt{\Omega_R+\Omega_Ma+\Omega_Ka^2+\Omega_{\Lambda}a^4}}=H_0t_0}

のそれぞれの文字に、値を放り込む。

{\displaystyle \int^1_0\frac{ada}{\sqrt{0+0.281a+0.0008a^2+0.7182a^4}}=H_0t_0}

 積分は、{0}から{1}までなんだけど、この区間を、{5}等分して、{0.2}ずつたしていこう。

「その言葉の意味が、分からないけど。」

 まあ、見てて。

 こういうことなんだ。

{\displaystyle \int^1_0\frac{ada}{\sqrt{0+0.281a+0.0008a^2+0.7182a^4}}}

{\displaystyle =\frac{0\times0.2}{0}}

{\displaystyle +\frac{0.2\times0.2}{\sqrt{0+0.281\times0.2+0.0008\times0.2^2+0.7182\times0.2^4}}}

{\displaystyle +\frac{0.4\times0.2}{\sqrt{0+0.281\times0.4+0.0008\times0.4^2+0.7182\times0.4^4}}}

{\displaystyle +\frac{0.6\times0.2}{\sqrt{0+0.281\times0.6+0.0008\times0.6^2+0.7182\times0.6^4}}}

{\displaystyle +\frac{0.8\times0.2}{\sqrt{0+0.281\times0.8+0.0008\times0.8^2+0.7182\times0.8^4}}}

{\displaystyle +\frac{1\times0.2}{\sqrt{0+0.281\times1+0.0008\times1+0.7182\times1}}}

 これを、計算する。


「足し算とかけ算ってこれのこと?」

 そう。これを、全部、計算すれば、宇宙の年齢が、求まる。

「ちょっと、わたくし、例えスマートフォン使っていいと言われても、この計算は、ごめんだわ。」

 うーん。計算をしないと、数学の力はつかないんだけど・・・。じゃあ、なるべく麻友さんが、計算したような気分にならせよう。

 世の中には、こんな武器もあって、ルートの計算など、同じ式を何度も使う計算には、お奨めなんだよね。

マイクロソフト マセマティクス

 ただ、本当のところを言うと、私は、こんなもの使ってない。まさに秋葉原で、2001年3月25日に17,500円で買った、ものすごく素晴らしい関数電卓を使用している。麻友さん6歳最後の日だね。小学校1年生の時だ。

「まだ、何も決まってなかった時ね。」

「でも、どうして、そんな高いものを買えたの?」

 当時は、CADの技術者のような仕事をしていたから、関数電卓は、必需品だったんだ。

 もちろん、社長だってそんな素晴らしい関数電卓、持ってなかったけど、数学者としては、どんな計算でもできる機械というものがなくてはならないんだよね。

「じゃあ、その関数電卓で、この積分っていうものも、計算出来るんじゃない、こんな回り道しなくても。」

 もちろん。できるよ。

 でも、それやっちゃったら、麻友さんの勉強っていうか研究にならない。

 実は、この投稿のもう少し先で、麻友さんに見える形で、積分を計算機使って厳密に計算する。

 便利なものは使うよ。

 だけど、全部、便利なもので、通すわけには、行かないんだ。

「言いたいことは、分かるけど、数学者、目指している太郎さんと、私では、違うのに。」

 私の方も、麻友さんの言いたいことは、分かる。

 まあ、式を見るとき、数字が書いてあったら、少しは、いくつくらいかな?と、感情移入してね。

 これは、私でも難しいことで、式を全部写さないと、私の脳は、働いてくれない。

 私にもできないことを、麻友さんに要求するというのは、どだい無茶なんだけど、私にできるのは、

『この部分、すごく面白かった。』

と印象に残って、後で、思い返したとき、

『あの式って、結局、こういうことだったんじゃない?』

と気付いて、私のブログを見たとき、昔のままに、あの式が書かれているといいな、と願うことだけである。


「じゃあ、お得意の関数電卓で、上の計算をやって。」

 順番に、やるからね。

{\displaystyle =\frac{0\times0.2}{0}=0}

 まず、これは、本当は、値が定まらないんだけど、この場合、積分する関数が、{0}になるのが、{a=0}の一点だけなので、計算したものも{0}としてよいという理屈を付けられる。

 こういうところでも、初心者は、トラップに引っ掛かるものだよね。

「私は、良かったのかどうか分からないけれど。」

 さて、次、

{\displaystyle \frac{0.2\times0.2}{\sqrt{0+0.281\times0.2+0.0008\times0.2^2+0.7182\times0.2^4}}}

{\displaystyle =\frac{0.04}{\sqrt{0.0562+0.000032+0.0011491}}}

かけ算を計算するとこうなる。

{\displaystyle \frac{0.4\times0.2}{\sqrt{0+0.281\times0.4+0.0008\times0.4^2+0.7182\times0.4^4}}}

{\displaystyle =\frac{0.08}{\sqrt{0.1124+0.000128+0.0183859}}}

「これ全部、計算してるの?」

 もちろん。

 次の行は、こうなる。

{\displaystyle +\frac{0.6\times0.2}{\sqrt{0+0.281\times0.6+0.0008\times0.6^2+0.7182\times0.6^4}}}

{\displaystyle =\frac{0.12}{\sqrt{0.1686+0.000288+0.0930787}}}

「うわーっ、どんどん。」

 まだあるよ。

{\displaystyle +\frac{0.8\times0.2}{\sqrt{0+0.281\times0.8+0.0008\times0.8^2+0.7182\times0.8^4}}}

{\displaystyle =\frac{0.16}{\sqrt{0.2248+0.000512+0.2941747}}}

 そして、最後は、ルートの中が、{1}に、なるので、分母が、{1}になる。

{\displaystyle +\frac{1\times0.2}{\sqrt{0+0.281\times1+0.0008\times1+0.7182\times1}}=\frac{0.2}{1}}

「でも、計算、終わってないわよね。」

 まだだよ。

 実は、足し算とかけ算だけだと言ったんだけど、ここでは見かけ上、ルートを取る(平方根を取る)という計算が現れる。

「ルートを、足し算とかけ算で求めるって、どうやるの?」

 本当に原始的に、例えば、170のルートだったら、

{12\times12=144}

{13\times13=169}

{14\times14=196}

と計算して、大体169に近いから、170のルートは、13くらいと求める、というやり方もある。

 それから、麻友さんは習ってないかも知れないけど、ルートを、足し算とかけ算を両方やりながら、割り算の筆算みたいにして、小数点以下まで計算していく方法がある。

 でも、これらの方法を、学校でわざわざ教えないのは、麻友さんたちのスマートフォンにせよ、電卓にせよ、計算機が平方根を計算する、もっと良い方法があるからだ。

「そう。昔から、計算機がどうやってこれを計算しているのか、不思議だったのよ。」

 私も、高校1年生の半ばまで、謎だった。

「どうやって、求めてるの?」

 微分というものを、説明するとき、デザートとして話すよ。

 キーワードを話しておくと、

テイラー展開

というものすごく強力な武器を手にしたとき、分かることなんだ。

「ふーん。今は、計算機で、普通に計算するしかないのね。」

 うん。やってみよう。


{\displaystyle \frac{0.04}{\sqrt{0.0562+0.000032+0.0011491}}=\frac{0.04}{\sqrt{0.0573811}}=\frac{0.04}{0.2395435}}

{\displaystyle \frac{0.08}{\sqrt{0.1124+0.000128+0.0183859}}=\frac{0.08}{\sqrt{0.1309139}}=\frac{0.08}{0.36182025}}

{\displaystyle \frac{0.12}{\sqrt{0.1686+0.000288+0.0930787}}=\frac{0.12}{\sqrt{0.2619667}}=\frac{0.12}{0.51182682}}

{\displaystyle \frac{0.16}{\sqrt{0.2248+0.000512+0.2941747}}=\frac{0.16}{\sqrt{0.5194867}}=\frac{0.16}{0.72075425}}

{\displaystyle \frac{0.2}{1}=0.2}

 さあ、ラストだよ。

{\displaystyle \frac{0.04}{0.2395435}+\frac{0.08}{0.36182025}+\frac{0.12}{0.51182682}+\frac{0.16}{0.72075425}+0.2}

{=0.16698428+0.22110426+0.23445430+0.22198967+0.2}

を、計算して、終わりだ。

 厳密に言うと、

{\displaystyle \int^1_0\frac{ada}{\sqrt{\Omega_R+\Omega_Ma+\Omega_Ka^2+\Omega_{\Lambda}a^4}}=H_0t_0}

の左辺が、これで、求めたいのは、宇宙の現在の年齢、

{t_0}

だ。

 だから、積分を計算したものに、ハッブル定数の逆数をかけたものになる。

{\displaystyle t_0=\frac{1}{H_0}\int^1_0\frac{ada}{\sqrt{\Omega_R+\Omega_Ma+\Omega_Ka^2+\Omega_{\Lambda}a^4}}}

 まず、積分を、計算してみよう。

{0.16698428+0.22110426+0.23445430+0.22198967+0.2=1.044532}

である。

 つまり、

{\displaystyle \int^1_0\frac{ada}{\sqrt{\Omega_R+\Omega_Ma+\Omega_Ka^2+\Omega_{\Lambda}a^4}}=1.044532}

である。従って、私達の、2回目の宇宙年齢の予想、

{\displaystyle \frac{1}{H_0}=1.452\times10^{10}年=145.2億年}

に、この数値をかけて、おしまい。


 これで上手く行くかな!?っと計算する瞬間が、数学や物理学の醍醐味。手が震えるほど、ドキッとする。

{1.452\times10^{10}年\times1.044532=1.5166\times10^{10}年}

だから、結果として、151億歳となった。

「あれーっ。太郎さんは頑張ったけど、これ、間違いだわ。」

 麻友さん分かるの?

「私ね、太郎さんがこの連載、始めたときから、ちゃんと予習したのよ。」

 どうやって?

「現在の最先端で、宇宙年齢が何歳と言われているか、調べてみたの。これを見てみて。」

宇宙の年齢www.nikkei.com


 偉い。麻友さん。

 そういう、積極的な姿勢がなければ、分かるものも分からない。

「褒めてもらえて、嬉しいわ。」

「じゃあ、これが、3番目の間違いね。」

 まあ、これを、3番目の間違いとして、


3回目の予想:151億歳


として、改めて、


正しい年齢:138億歳


としても、いいんだけど、私は、もう少し、違う結論を出そうと思っていた。


 まず、138億歳という数値は、私も、知っていたんだ。

 それから、私達の計算も、間違っていない。

「えっ、間違いじゃないの?」

 この、138億歳というのが、どの程度、信じられるか、麻友さんに分かってもらえるよう、違う数値になるのを承知で、計算を強行した。

「どの程度信じられるか?」

 これ、結構、いい加減なんだよ。

 今、138億歳となる計算法を、見せるね。

 まず、私達は、ハッブル定数として、

{H_0=67.3\mathrm{kms^{-1}Mpc^{-1}}}

という数値を利用した。

 そして、

{\displaystyle \int^1_0\frac{ada}{\sqrt{\Omega_R+\Omega_Ma+\Omega_Ka^2+\Omega_{\Lambda}a^4}}=H_0t_0}

で、

{\Omega_R=0}
{\Omega_M=0.281}
{\Omega_K=0.0008}
{\Omega_{\Lambda}=0.7182}

と置いたよね。

 そのとき、光の速さなどと違って、これは、観測によって求まる量だと、きちんと説明したよね。

 実は、138億歳というのは、

{\Omega_R=0}
{\Omega_M=0.27}
{\Omega_K=0}
{\Omega_{\Lambda}=0.73}

として、積分を計算し、ハッブル定数を、

{H_0=70\mathrm{kms^{-1}Mpc^{-1}}}

としたものなんだ。

 理科年表の138ページに、それが書いてある。

 138億歳のことが、138ページに書いてあるというのは、面白いね。

 積分を一気に計算するために、マセマティカを使おう。

 ここをタッチしてみて。きちんと計算されているから。{a}が、{x}になっているところだけ、気を付けて。

実際の計算www.wolframalpha.com

 積分が、

{\displaystyle \int_0^1\frac{xdx}{\sqrt{0.27x+0.73x^4}}=0.992687}

と、計算されているでしょう。

 これは、私が、数値をただ並べたのではなく、インターネット上のMathematicaというソフトに、ちゃんと計算させたんだ。

 そして、ハッブル定数の逆数に、{\mathrm{km}}{\mathrm{Mpc}}の違いをかけて、秒を年に直して、計算すると、

{\displaystyle t_0=\frac{1}{H_0}\int^1_0\frac{ada}{\sqrt{0+0.27a+0a^2+0.73a^4}}}

{\displaystyle =\frac{1}{70}9.777993\times10^{11}年\times0.992687=1.3866\times10^{10}年}

 ピターッと、138億歳という数値が出るでしょ。

「えっ、これ、太郎さんが計算したの?」

 どういうハッブル定数、使って、{\Omega_M}と、{\Omega_{\Lambda}}をいくつにしたものか、突き止めれば、ちゃんと同じ数値、出せるんだよ。

「わぁー、ホントに、138億歳だぁー。」


 ただ、知って欲しいのは、ほんのちょっと、ハッブル定数が違っただけでも、何億歳も違ってくるということ。

 137億歳と予想されていたのが、138億歳という予想に変わりました、といっても、何にも違ってないわけ。

「確かに、今の計算見てると、数字がちょっと変わるくらいは、有り得るわね。」

 そこが、この『宇宙の年齢を求める』の連載の一番、伝えたいこと。

 科学の研究の最前線では、分かっていないことが、ゴロゴロ転がっているということ。


 これは、健康食品などにも当てはまる。

 もしかしたら、今から100年くらい経ったら、

『野菜を食べるのは、健康に良くない。』

ということになっているかも知れない。

 本当に、自分にとって、嫌なことは、しない方が良いと思う。


 もう一つ、この連載の肝になるのは、

『宇宙の年齢は、本当に有限か?』

ということ。

 私達は、麻友さんは覚えているかどうか分からないけど、様々な仮定を置いて、問題を解いてきたのだった。

「確かに、いくつも仮定を置いていたわね。」

 それらの仮定に、暗黙のうちに、

『宇宙は、あるとき、始まったものだ。』

という仮定があったのだ。

 宇宙は、ビッグバンから始まった、というのは、小学生の時から聞かされていて、当たり前になっているかも知れないけど、本当にそうなのだろうか。

 実は、一点から始まったという宇宙の解より、宇宙が無限だという解の方が、数学的には、特異点がなくて、美しい。

「また、太郎さんの『美しい方が良い』が、始まったわね。」

 もし、無限だった場合、確かめようがないんだけど、私達が、宇宙の外に出られれば、分かるよね。

「そういう、無茶苦茶なことを言う。太郎さんって、やっぱりちょっとおかしいわよね。」

 少しおかしくなきゃ、麻友さんと本気で交際できると信じなかったと思うよ。

「でも、この『宇宙の年齢を求める』の連載は、去年の8月から、半年くらい楽しんだわ。」

 それは、嬉しいな。

 次は、どんな話にしようかねぇ。

「太郎さんは、どんな話が、できるの?」

 話せることは、いくつもあるけど、麻友さんが楽しめるためには、上手く順番を選ばなきゃね。

 こんなことを、話して欲しいというのがあったら、暗号でツイートしてよ。

「分かったわ。じゃあ、宇宙の年齢は、執行猶予付きで138億歳で、結審ね。」

 私は、宇宙の年齢は、無限大というのを、正解にしたかったんだけど、現段階では、時期尚早だね。それでいいよ。

「この宇宙は、できてから138億年、と。」

 長いこと、おつきあい下さり、ありがとうございました。

「So long!」

 So long!

 現在2016年2月5日5時30分である。おしまい。