相対性理論を学びたい人のために

まだ一度も相対性理論を勉強したことのない人は、何か一冊相対性理論の本を読みかじってみて、なぜこんなことが?という、疑問を持ってからこのブログに来てください。ブログの先頭に戻るには表題のロゴをクリックしてください

相対論への招待(その2)

 現在2017年2月10日23時17分である。

「おっ、『相対論への招待』の2回目だ」

 前回は、中学2年の夏休みに、レポートを書いたという話をしたね。

「はなまるもらった?」

 実は、そのレポートは、返してもらってないんだ。

「えっ、どうして?」

 高校で、生物部で一緒だった、同じ中学の女の子から、

『先生、『松田がこんなもの書いてくるけど、おれ相対性理論なんて、分からないよ』って、困ってたわよ』

と、2年後に、聞いた。

「どうして、その女の子、知ってるのかしら?」

 その女の子、中学2年生のとき、生徒会長になったくらいの女傑で、科学にも関心があって、生徒会長の権限で、アマチュア無線同好会なんか作って理科室に入り浸ってたからなんだ。

横浜翠嵐高校へ行くってことは、半端じゃないわよね」

 私は、高校2年になるとき転校したけど、2年後、京都大学の受験会場で会うこととなる。

「えーっ、その人、京大へ行ったの?」

 いや、私の1年目の受験で、前期で私が落ち、その後の後期で、会場の教室に行ったら、私の6人くらい前に、彼女がいたんだ。

「嬉しかった?」

 うん。

「好きだったの?」

 そういうことは、あまりストレートに、聞くもんじゃないよ。

 まあ、いつもの『頭のいい女の人好きになる』ので、気にはしてた。

「じゃあ、2人とも落ちたの?」

 その通り。

 浪人中、模擬試験で、彼女も、A判定なんかもらっているのを見ていた。

「それで?」

 結局、彼女、東北大学へ行ったんだ。

「太郎さん、振られちゃったんじゃない」

 でも、私は、クロイツェル・ソナタの女の人に、夢中だったから。

「二股かけてたわけね」

 この頃既に、分子生物学の女の人と知り合ってるから、三つ股だな。

「もーっ」


 彼女の話から、想像するに、私のレポートが、良いものでなかったのが、評価できなかった原因だと思う。

「どういうこと?」

 私が、誰でも分かるように、上手に、特殊相対論を、説明できていれば、先生も、分かったはずなんだ。

「前回、『誠意がこもっていない文章になってしまった』と書いてたけど、本当はどういうことなの?」

 レポート書きながら、

『このレポート読む人、分かるのかな?』

なんて、不安になりながら書いていた。

 つまり、私自身、完璧に分かってないことを、書いてたんだ。

「そんなに、完璧に分かるなんてこと、人間に出来るのかしら?」

 じゃあ、麻友さん相手に、説明してみよう。

「悪いけど、私、{\sqrt{2}}なんていうときの、このルート2っていうの、計算機で、計算することはできるけど、自分で、計算することは、できないの。だから、2次方程式とか持ち出されると、分からない」

 そういう人、多いんだね。

 特待生の麻友さんですら、そうだから、こういうことになるんだ。

「こういうことって?」

 電子辞書の貯金を取り崩して、ついにこれ買ったんだよ。

AKB48小学算数

「えーっ、(ドキドキ)」

 今日届いたんだけど、開封して10分後に、もう間違い見つけた。

「それも、校閲してくれちゃったの?」

 チームBの章の最初の問題。これ。

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 私の写真の撮り方が下手なので、縦の2本の道が、上に行くほどすぼまっているように見えるけど、問題集では、2本の道は、平行に書いてある(ようにみえる)。

「分かった。太郎さん。これ、三平方の定理で、斜めの道の長さが求められるのね」

「えっと、直角三角形の底辺が{456\mathrm{m}}で、高さが、{253\mathrm{m}-91\mathrm{m}=162\mathrm{m}}だから・・・」

 その調子。斜辺は?

「確か、2乗するのよね。{456^2=456 \times 456}って、こんな大きいのどうやって計算・・・。あっGoogleで、『456かける456』ポンッ!」

「おーっ、{207936}だ。」

「同じように・・・」

 今度は、『162^2』って、計算してごらん。

「えっ?『^』って、何乗っていう記号なの?」

 そうだよ。パソコンオタクなら知ってるかと思った。

「ちょっと、確認したかったの」

「『162^2』ポンッ!」

{162^2=162 \times 162=26244}だ」

 計算機がなくとも、スマートフォンがあれば、計算できることに気付いたのは、さすがだ。

 さて、斜辺は、どうなるんだっけ。

「確か、底辺が{a}で、高さが{b}の直角三角形の斜辺を{c}とすると、{a^2+b^2=c^2}なのよ。だから、三つの数の平方したものの間の定理だから、『三平方』の定理っていうのよ」

 よく覚えてた。中学3年生で習う定理だし、麻友さんは中学1年でAKB48に入っているから、勉強は大変だっただろう。

「太郎さんに会わなかったら、こんなこととは、無縁な人生送っていただろうけど」

 私いつも思うんだけど、文系の人って、数学ほとんど分かってないじゃない。だからといって、誰もが、文系科目得意なわけじゃない。

 それに対して、理系の特に数学や物理学の人って、数学ちゃんと分かってて当然だし、それ以上に、論文書かなければならないから、国語や英語も勉強する。

 どう考えても、理系の方が、いっぱい勉強してるんだよね。

「何が、言いたいの?」

 理系と文系、分けない方が良いんじゃないかなって。

「ゲッ、そんなことしたら、大変よ」

 もう少し、私の説明を、聞いてて。

「斜辺は、{c^2=a^2+b^2}で、いいのかしら?」

 そこ、センス感じるなぁ!

「えっ、なんのこと?」

 さっきの文脈では、{a^2+b^2=c^2}という順番で良かったの。だけど、今の場合は、{c^2=a^2+b^2}とした方が、数学の文脈として、センスがある書き方なんだ。

「だって、等号で結ばれてたら、どっちをどっちに持ってきても、いいんでしょ?」

 そう。同じなんだけどね。そこにある余剰に、意味を見いだすのが、本当に数学のセンスがあるってことなんだよ。

「つまり、さっきは、{a}{b}{c}の順番に定義したから、{a^2+b^2=c^2}の順番で良くて、今は、斜辺が話題の中心だから、{c^2=a^2+b^2}とするわけ?」

 そう。

 以前、麻友さんと、数学の証明を『下品にやる』なんて話を、ドラえもんのブログでしたけど、数学の証明が、エレガントか下品かって、こういうところにも、表れてくるんだよ。

「じゃあ、太郎さん。この、三平方の定理を、この場で、証明できる?」

 もちろん。

 まず、以下のような、直角三角形を4個用意する。

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「これは、関数電卓を、見せてくれようとしたの?」

 こんなふうに、計算できるんだよってね。

「ピントがボケてるし、ディスプレイが汚れてて、読めないわよ。太郎さんって、こういうホコリ、気にならないの?」

 麻友さんは、

『食事前に手を洗わない人とは、付き合えない。私は、いつも除菌ジェルを持ってる』

って言ってたけど、もちろん私も、食事前に手を洗うことくらいはする。

 でも、実は、私の眼鏡は、いつももの凄く汚れていることで、有名だった。

「そんなの有名になっても、良いことじゃないわよ。どれくらい、汚れてたの?」

 レンズは、1日1回くらいは、ティッシュペーパーで、拭くけど、眼鏡のブリッジの部分に青さびがたまるのは、半月に1回くらいしか、掃除してなかった。

「信じられない。レンズだってみんな1日に何度も、クリーナーで掃除するのよ」

 麻友さんに会ったからじゃないけど、3回目に入院する前から(つまり2014年11月頃から)掃除する鬱陶しさをなくし、同時に衛生的になろうと思って、眼鏡をかけるのをやめたんだ。

「コンタクトにしたの?」

 そんな恐ろしいものは、目に入れられない。

「あらっ、これ、結構よく見えるのよ」

 私、笑っちゃう話だけど、『コンタクト』っていう映画見るまで、ずっと小さい頃から、コンタクトレンズって、小さいレンズっていう意味だと思ってたんだ。

「それじゃ、コンパクトレンズじゃない」

 これで、よく京都大学、受かったなって、自分でも思う。

京都大学は、入試で、理学部も英語あるの?」

 前期は、国語、数学、英語、理科2科目。

 だけど、後期は、数学と理科2科目だけだったんだ。

「じゃあ、太郎さんの国語力や英語力が大したことないの、うなずけるわね」

 まあ、そうだね。

 一応、センター試験は、ちゃんとクリアしてるけど。

「その、センター試験クリアっていうのは、どのくらいなの?」

 私、以前、『欽ちゃんみたいな人に会いにいったら?』という投稿で、28歳のときと29歳のときに、2回、東京大学理一を受けてると書いたんだけど、最近、出納帳をチェックしてたら、次のことが分かった。

 29歳のとき(2001年1月)センター試験を受けたが、点数が低く、東京大学理一は、足切りになる。そして、その年諦めて、10月から、放送大学に入学した。

 そして、放送大学卒業を前に、2008年9月4日と9月5日、東京大学大学院理学研究科を受験した。

 これは、不合格になった話は、前にしたね。

「そうだったわね。じゃあ、2回受けたと思ったのは、なぜかしら」

 実はね。東京大学大学院を受けた感じで、放送大学は、ものすごくレヴェルが低いということに、改めて気付かされたんだよね。

 それで、大学院へ行く前に、改めて、東大理一に行っておこうと思ったの。

「えーっ、まだ、4年やるの?」

 それで、2009年1月に、東大理一のために、センター試験を受けてる。

「まだ、放送大学卒業前じゃない」

 もう、放送大学は、見かぎってたんだ。

「でも、落ちたのよね」

 足切りになって、受けることもできなかった。

「それで、2010年3月、8年半かけて放送大学卒業」

 私は、まだ頑張る。

「えっ、まだ?」

 卒業後、2011年1月、東京大学理科一類を受けるために、センター試験を、受験。

 このときの点数の記録が残っていて、国語、数学、社会、英語、理科(物理、化学)で、900点満点中436点。

「半分以下ね。それで、足切りラインは?」

 700点から730点くらいと予想されていた。

「つまり、太郎さんでも、年取っちゃうと、500点以下しか取れない試験で、730点取らないと、センター試験クリアとならないのね。良く分かったわ」

 このコンタクトレンズと関係して、コンパクトという言葉が、出てきた。

 かなり先になるけど、実は、数学で、コンパクトというと、特別な意味を持つんだ。

「どんな意味?」

 具体例をあげちゃうと、たとえば、

『円周という図形は、コンパクトだ』

とか、

『直角三角形という図形は、コンパクトだ』

とか、

『数直線という図形は、コンパクトでない』

などという使い方をする。

「あっ、三平方の定理の証明は?」

 そうだったね。関数電卓のディスプレイが汚れてたところから、脱線したね。

「太郎さんって、不潔なの?」

 たばこも吸わないし、お酒も飲まないから、そういう意味では清潔だよ。だけど、男の人がひとり暮らししてれば、綺麗にしろって言う方が、無理というものだよ。

「洗濯はしてる?」

 これはね、私、良い時代に生まれたと思うの。洗濯機があるでしょ。しかも、全自動の。だから、3日に1回は、ちゃんと洗濯してる。

「それ以上、追求しないことにするわ」

 じゃあ、始めよう。


 定理 (三平方の定理

底辺{a}、高さ{b}、の直角三角形の斜辺を{c}とするとき、

{a^2+b^2=c^2}

が、成り立つ。

 証明

 問題の三角形を4つ用意して、以下のように、組み合わせて並べる。

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 この正方形の面積を、二通りの方法で、求めてみる。

 まず、普通に考えれば、大きい正方形の一辺が、{a+b}であるから、

大きい正方形の面積{=(a+b)^2} (♯)

となる。

 ところで、この図をバラバラに見ると、中央に小さい一辺が{c}の正方形がある。

小さい正方形の面積{=c^2}

 また、問題の直角三角形の面積は、1つ1つが、

直角三角形の面積{\displaystyle =\frac{1}{2}ab}

だから、4つ合わさると、その4倍である。したがって、

大きい正方形の面積{\displaystyle =c^2+4 \times \frac{1}{2}ab=c^2+2ab} (♭)

である。

 (♯)=(♭)とおいて、

{(a+b)^2=c^2+2ab}

である。

 左辺の{(a+b)^2}を展開し、

{(a+b)^2=a^2+2ab+b^2}

だから、左辺に代入して、

{a^2+2ab+b^2=c^2+2ab}

となる。

 最後に両辺から、{2ab}を引いて、

{a^2+b^2=c^2}

が、得られる。

 これが、求めていた式であった。

 証明終わり


「ああ、この証明、1回、見たことある」

 そうでしょう。私的には、1番、覚えやすい証明だと思ってる。

「太郎さんは、この証明、暗記してるの?」

 無理に覚えようと思わなくても、自然に頭の中に入った。

「太郎さんの頭の中では、高校までに習ったことが、全部、そういうふうに整理されてるの?」

 京都大学東京大学受ける人は、予備校行ってれば、そうなるように訓練される。

「それは、役に立つの?」

 当然だよ。理学部や工学部行けば、高校までの何十倍も難しい数学が出てくるんだもん。

「そういう難しいことをやってるから、さっきのAKB48小学算数の問題見て、『あっ』と、気付けるわけね」

 麻友さん、まだ、自分の問題、計算してない。

「そういえば、さっきの関数電卓の写真、{456^2+162^2}が、{234188}だと言ってるの?」

 よく注意して。{456}の1の位は{6}でしょ。だから、{456^2}の1の位は、{6 \times 6 =36}で、{6}だ。

「あっ、そうか。{162}の1の位は{2}だから、{162^2}の1の位は、{2 \times 2 =4}で、{4}ね。」

「そうすると、{6+4 =10}だから、たしたものの1の位は、{0}ね」

「じゃあ、{456^2+162^2}は、{234180}なのね」

 その通り。

 斜辺の長さは?

「えっと、2乗が{234180}なんだから、これのルートよね。やってみよ。Googleで、『ルート234180』ポンッ!」

「483.9214・・・うっ、太郎さんが、間違い見つけたっての、本当だ」

「問題では、471mと、なってるんですものね」

「これ、どうすれば、救えるのかしら?」

 麻友さん、{(3,4,5)}って、知ってる?

「あっ、思い出した。全部が整数になる場合があるのよね。次に小さいのが、確か、12と13あたりに、・・・。思い出せない」

 すごいよ。それで、いいんだよ。2乗してみな。

「えっ、12の2乗は、144。13の2乗は、169」

 素晴らしい。さすが、特待生!

「あっ、そうか。169引く144は、25なんだ。だから、{5^2+12^2=13^2}で、{(5,12,13)}なんだ」

 それを、どう使う?

「使うって?」

 あの写真、もう一度持ってこようか。

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 この456mっての、素因数分解してみて。

「456は、偶数だから2で割れる。2で割って、228。もう一度2で割って、114。もう一度2で割って57。57は素数っぽいけど、5たす7が12で3の倍数だから、57は3で割れる。57割る3は、19。19は素数だから、

{456=2^3 \times 3 \times 19}

だわ」

「これをどう使うの?」

 {2^3 \times 3}って、いくつよ?

「24。あれ? 12の倍数。しかも、{(5,12,13)}の12でもある」

 そうだね。

 だったら、この456mを温存して、91mも残して、253mをどうにかして、上手い具合に、斜辺を整数になるように、できない?

{(5,12,13)}の三角形を、何倍かすればいいのか。{456=24 \times 19}だから、{456=12 \times 38}つまり、{(5,12,13)}を全部38倍すればいいのか。」

{(190,456,494)}だ」

 できたね。

「456mと、91mを、使って、こうなるわ」

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 三平方の定理、ちゃんと、使えてるじゃない。

「この問題、なぜあの数字だったのかしら?」

 そう。問題を解いたら、出題の背景を探るのも、重要だ。出題者が間違えている場合、なぜ間違ったかを追跡するのも、面白い。

「そもそも、太郎さん。『相対論への招待』で、なぜこの問題を?」

 それは、偶然、今日、届いたから、なんだけど、この後につながっていく。

「ここから、相対論?」

 前回も、見せたけど、この写真、

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ほとんど、同じことを、やってるんだ。

「一応、図の説明を、してよ」

 リゲルまでの距離は、1,000光年と言ってるように、単位は、光年だ。

「それは、分かるわ」

 ここで、光年という距離を、{\mathrm{km}}で、表そうと思ったら、どうすればいい?

「光の速さ、秒速30万キロメートルに、1年が、何秒かをかけたら?」

 そうだね。

1光年{\displaystyle =300,000 \mathrm{\frac{km}{s}} \times 365.25 \times 24 \times 60 \times 60 \mathrm{s}}

 計算すると、大体、

1光年{\approx 9.46 \times 10^{12} \mathrm{km}}

となる。

「二本、ニョロッってのは?」

 そうだよ、聞きたいときに、聞いていいんだよ。

 『{\approx}』というのは、『{\fallingdotseq}』と、ほぼ同じ意味に使われて、『だいたい等しい』という意味を表すことが多い。

 ただし、これは、数学で、厳密に、使い方が、定義されているわけではないようで、本や論文の著者が、その場で意味が分かるように、上手く使い分けているようだ。

 私は、むかしむかし、麻友さんと、コサインのテイラー展開というものを扱ったとき、無限に近いというのを表すのに、『{\fallingdotseq}』を使うことに、決めたので、『だいたい等しい』には、『{\approx}』を使うことにする。

「『宇宙の年齢を求める』の頃よね。そういえば、まだ、無限小を数として扱っていいという証明は、してもらってないわ」

 うん。私も、麻友さんが、まだ全然分からないところにいる、というのが、分かって、しばらく、様子を見てるんだ。

「分からないっていうのでは、太郎さんは、さっきも、{9.46 \times 10^{12} \mathrm{km}}っていうのを、書いたじゃない。私、この{\times 10^{12}}ってのが、まだよく分かってないんだけど」

 あっ、そうか。知ってるものだと思ってた。

{10^2}

ってのは、分かるでしょ、さっきもやったから。

「それは、{10}の2乗のことよね」

 同様に、{10^3}は、{10}の3乗で、・・・

{10^4}は、{10}の4乗」

 そう。そして、そのとき、

{10^1=10}

{10^2=100}

{10^3=1000}

{10^4=10000}

というように、2乗なら0が2個。3乗なら0が3個。4乗なら0が4個。となる。

 だから、計算しなくても、12乗なら、0が12個のはずだと予想できる。

 証明するには、1個1個証明する方法と、数学的帰納法という強力な証明法を使う方法が、ある。麻友さんは、まだ後者を知らないかもね。

 今は、さっきのように1つずつ増やしていって、

{10^{12}=1000,000,000,000}

が、得られたとしよう。0が、12個、並んでいる。

「そこまでは、分かるのよ。それを、9.46にかけると、どうなるの?」

 10倍を、12回するから、小数点が右に12桁、動くんだよ。

「9.46が、94.6になって、それが、946.0になって、それが、9460.0になって、それが、94,600.0になって・・・」

「コンマは、3桁ずつだけど、小数点は、ひとつしかないのよね」

 そうだよ。分かってるじゃん。

「つまり、10の何乗というのが、ひとつ増えると、10倍されて、小数点が右へ一桁動くのね」

 その通り。

「いつもの拡張、やっていいのかしら?」

 拡張って?

「10の何乗というのが、ひとつ減ったら、10かけるんじゃなくて、10で割るの」

 そうすると、小数点は、どうなる?

「小数点は、・・・。左へ一桁動くことにする!」

 おお、もう数学、自分で、作れてるじゃん。

「いいのかしら?」

 良くなかったら、私が、揚げ足取りしてる。

「そうだとすると、太郎さんが、ときどき書く、{\times 10^{-2}}というのの謎も解けるかしら?」

 じゃあ、たとえば、{3.14 \times 10^{-2}}は、いくつ?

「あっ、そうなるのか。小数点が、左へ2桁動くのだから、0.314。それから、0.0314。なんだ」

 そう。ただそれだけのことなんだ。

「そうか、{3.14 \times 10^{-2}=0.0314}っていうだけのことなんだ。今まで、これ分からないって思ってきたけど、謎が解けたわ」

 じゃあ、大きい謎も解こう。

「えっ、相対性理論?」

 さっき、麻友さんは、三平方の定理を使ってたね。

 あのときは、{a}や、{b}を、使ってたけど、これらを、{x}軸方向の長さ、{y}軸方向の長さ、という意味を込めて、{dx}や、{dy}と書き記すこととする。

「そんなこと、していいの?」

 だめになったら、そのとき、修正する。取り敢えず、計算してみるという姿勢が大切。

 そうすると、斜辺の長さ、つまり、直角三角形の1番遠い2点の間の距離を{ds}と表すと、この{ds}は、3平方の定理で、どう書ける?

「取り敢えず、やってみるなら、{ds=\sqrt{dx^2+dy^2}}かしら?」

 ああ、2乗のままで、良かったのに。

「えっ、だって、{ds}を、表せって」

 うん。言い方が悪かった。三平方の定理を使ったままにして。

「こういうことね。{ds^2=dx^2+dy^2}

 ありがとう。

「この式なら、分かるのよ。でも、太郎さんは、リゲルへのロケットの絵で、

{-\tau^2=-(t+T)^2+T^2}

{-\tau^2=-t^2-2tT-T^2+T^2}

{-\tau^2=-t^2-2tT}

と、してるのよね。{\tau}が、さっきの{ds}なら、

{\tau^2=(t+T)^2+T^2}

と、すべきじゃないかしら」

 そこまで、読んでたの?

「いや、あの頃は、まだ、太郎さんと、ここまでになるとは思ってなかったから、あの写真を見せて、物理に詳しい人に、説明してもらったのよ」

 なんだ。じゃあ、結論知ってるんだ。

「その人は、分かってるみたいだったけど、私は、まだ、納得してないの」

 じゃあ、その部分を、納得するのは、もう少し先にして、取り敢えず、私の式が、正しいとして、片道31年ちょっとで、リゲルへ行けるという計算をしよう。

{\tau}というのは、何?」

 この記号は、ギリシャ文字のタウという記号だけど、ここでは、これが、ロケットの固有時というものになってて、ロケットに乗っている人にとっての時間なんだ。

 それが、なぜ遅れるかは、『相対論への招待(その3)』を書くとき、説明しよう。

「そんなもの、説明できるの?」

 私が、中学のときは、説明できなかった。

 だから、中学のときのレポートは、分かりにくかった。

「じゃあ、高校時代に分かったの?」

 いや、全然。

 大学へ入って、3年間勉強して、4回生になって、一般相対論的宇宙論を研究する天体核物理学(てんたいかくぶつりがく)のゼミで、優秀な人達と切磋琢磨していて、その頃、新聞配達のアルバイトもしていて、5月のゴールデンウィークの頃、早朝、朝日新聞を配りながら、一所懸命考えていたとき、分かった。

「えーっ、じゃあ、発病寸前じゃない」

 そう、1994年7月7日まで、ノートが残っているが、その数日後、統合失調症(当時は、精神分裂病と呼ばれていた)の陽性症状が現れ、発狂する。

  後で、2021年12月に付けた注

   この投稿をした後、7月7日で終わっているノート(数学基礎論入門)の他に、7月31日まで、書き留め、8月1日に、書き始めたところで終わっているノート(解析入門Ⅰ)が見つかり、7月ではないことが、判明した。訂正する。

「発狂って、自分で、そのときのこと、覚えてるの?」

 発狂する瞬間までのことは、かなり鮮明に覚えている。

 たとえば、母を呼ぶ前の前の晩、布団が汗びっしょりになり、うなされたことや、母を呼ぶ前の日、新聞を配りながら、ニュートン力学では、万有引力という落ちることばかり考えるが、アインシュタインの力学では、浮かび上がることができる。などと考えているが、これは、現在の正常に戻った私からすると、間違った理論だ。

「自分が、妄想を持っていたと、認識できるの?」

 そりゃー、科学者だもの。おかしいものは、おかしいと、分かる。

 ただ、妄想の中にいたときは、おかしいと疑わなかったんだ。

「じゃあ、どうやって、妄想から抜け出したの?」

 これは、お医者さんの功績なんだよね。

 薬で、アイスクリームも食べられないくらい、ベロベロで、フラフラになるくらいのショックを与えられたんだ。

「それは、いつ頃?」

 7月半ばに、戻ってきて、7月末頃から聖マリアンナ医科大学病院に通い始める。でも、決定的な一撃が与えられたのは、9月24日のようだ。

  注 『8月初めに、帰ってきて、8月半ば頃から聖マリアンナ医科大学病院に・・・』が、正しい。訂正する。


「そこまで、分かるの?」

 1994年9月24日に、母が、


・ほとんど目がさめない

・1日中1度も食事をとれないこともある。

・起きてももうろうとして歩けない

 食物をかめない

・便ぴ 1week


という状態になり、病院に電話し、そのときいた諸川先生(女性)に、どうしたら良いか尋ね、この薬を減らした。

と、メモを、私の薬の袋に入れていてくれたので、私が、ノートに書き取ってあるんだ。

「私が、0歳のときに、そんな恐いことが、進行してたのね」

 そう。私の病気と麻友さんは、切っても切れない関係にある。

「発狂する直前までも、少しおかしかったけど」

 少しどころじゃない。かなり、おかしい。

 母を呼ぶ日の前の晩には、

『世界の向こうの果てでは、父と母が、戦争状態にあり、私の側と向こう側では、あらゆることが、反対だ。だから、こっちの世界を良くすれば良くするほど、向こう側は、悪くなる。だから、こちらの世界を、あまり良くしちゃいけないんだ』

なんてことも、本気で考えた。

「そういう考えは、どんどん浮かぶの?」

 うん。私の場合、どんどん浮かんでくる。

「映画監督にでも、なれば良かったのに。面白い映画や、恐い映画を、いっぱい作れたのに」

 確かに、空想やSFなら、アイディアは、結構浮かんだかも知れない。

 でも、私は、『社会の矛盾に立ち向かう人』だったから。

「面白い映画を作って、社会の人の関心を、戦争から遠ざけたら?」

 チャップリンが、世界を、平和にできたかい?

「でも、アインシュタインの原爆は、多くの人を苦しめたわ。科学的ということが良いこととは、限らないわ」

 そう。原子爆弾は、いまやっている相対性理論によって、予言された。

「あれっ、今、20分くらい、パソコン離れてた。何やってたの?」

 『細胞の分子生物学』という本が、もったいない本舗というところから届いたので、開梱してたんだ。

「古本?」

 そう。

「必ず、最新版を買う太郎さんが、珍しい」

 これは、理由があるんだ。

「どんな?」

 この本は、アメリカでは、6th editionになってるんだ。

「それで?」

 日本語訳が、まだ第5版のままなんだよ。

「その第5版の日本語訳を持ってるの?」

 いや、持ってない。

「あっ、そうか。もうすぐ第6版が出るのに、第5版を買うのは、もったいない」

「だから、取り敢えず、第1版の日本語訳を手に入れた。というわけね」

 まあ、そんなところ。

「第1版ってことは、ものすごく古いんでしょ」

 日本語版が、1987年2月25日初版だから、私が、中学3年のとき。

「太郎さんが、中学じゃ、前世紀の遺物よ」

 そんなこというけど、もうとっくにDNAの仕組みは分かってたし、この本によって、分子生物学という学問の礎が築かれたんだ。

「頑張ってね。でも、それの開梱だけで、20分もかかるの?」

 開梱した後、ノートを片付けながら、麻友さんになんて答えようかな?って考えてたんだ。

「太郎さんでも、黙り込むことが、あるんだ」

 私、You-tubeの動画みたいに、ずっとしゃべっていられるわけじゃないから。

「分かってるわよ。ちょっと意地悪しただけよ」

「ところで、ちょっと聞きたいんだけど、太郎さんに取って、科学って、どういうものなの?」

 なんか、この間の、須藤凜々花さんに、質問されたみたい。

「哲学なんて、太郎さん好みじゃない?彼女、紹介するわよ」

 リサーチ不足だね。『ファインマン物理学』読み始めてみれば、『第17章 相対論的エネルギーと運動量』の最初の2ページで、ファインマンが、哲学者を、ボロクソに言ってるのに、出会う。

 ファインマンは、哲学者大っ嫌いなんだ。

「それは、知らなかったわ。でも、ニュートン万有引力のことを書いた『プリンキピア』は、『自然哲学の数学的諸原理』と訳すんじゃなかったっけ」

 それに関しても、ファインマンは、徹底している。

 『第3章 物理学と他の学問との関係』の出だしに、


 3-1 はじめに

 すべての学問のうちで,物理学はいちばん基礎的かつ包括的であって,あらゆる学問の発展に大きな影響を与えてきた.昔,自然哲学と称せられるものがあった! 我々の近代科学はそれから生まれてきたものなのだが,物理学は今日ちょうどそれにあたる位置を占めている.


とあるんだ。

「これを、読んで、成長した太郎さんは、当然、哲学を、重んじないわね。私じゃなくて、彼女に代わってもらおうかと思ったけど、見込み違いだったわ」

 分かってない。哲学がダメだから、須藤さんじゃダメなんじゃなくて、麻友さんじゃないから、ダメなの。

「私、幸せなのかしら、幸せでないのかしら?」

 そう考えてる時点で、十分哲学してる。

「強い薬を飲んで、おかしな考えは、止まったの?」

 一時、ほとんど何も考えられなかった。

「どういう状態になったの?」

 何も、考えられないところから、改めて、全部疑って、全部、築き直したんだよ。

「全部って、全部?」

 そう。全部。その過程で、父や母がクロイツェル・ソナタの女の人のお父さまやお母さまと通じ合っていたという思い込みも、疑われ、次第に、時間と共に、どうでも良いことになって行った。

「なんか、悲しいわね」

 どうして、悲しいの?

「だって、私と別れた後、太郎さんに取って、私は、どうでも良いことになって行くのだもの」

 そんなことを、言うべきではないよ。自分を振った女の人を、どうでも良いと思えなかったら、次の恋に進めない。

「えーん。太郎さん、何も、分かってない(泣)」

 えっ、どういうこと?私、分からない。私、間違ったこと言った?

「わーん(涙)」

 どうしよ。とりあえず、終了。

 現在2017年2月12日13時23分である。おしまい。