相対性理論を学びたい人のために

まだ一度も相対性理論を勉強したことのない人は、何か一冊相対性理論の本を読みかじってみて、なぜこんなことが?という、疑問を持ってからこのブログに来てください。ブログの先頭に戻るには表題のロゴをクリックしてください

相対論への招待(その3)

 現在2017年2月16日21時36分である。

 どうだった?

「濡れた」

 なんか、麻友さんが言うと、生々しいなぁ。

「あっ、そうか。あれは、ダスティン・ホフマンが、男の人だから、笑えるのね」

 そうだよ。ヴァレリア・ゴリノみたいに、『美味しいお菓子を食べたみたいだったわ』って、言って欲しかったな。

「そういう太郎さんこそ、『レインマン』みたいに、カジノで、儲けてよ。数学のスペシャリストなんでしょ?」

 以前も書いたけど、私が父と一緒に働いていた会社の社長が、『カオス理論、勉強して、ラスベガスで、儲けさせてくれよ』と言ってたので、辞表に、どうやればラスベガスで儲けられるか書いたんだけど、まだ実行してないらしい。

「えっ、太郎さん。もう、分かってるの?必勝法?」

 ファインマンが、とっくに書いてるんだよ。この本の中で。

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉 (岩波現代文庫)

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉 (岩波現代文庫)

「太郎さんが、ファインマンから学んだことは、数知れないわね」

 そう。

 そのファインマンが、唯一、説明を上手くできなかったのが、相対性理論

「下手だったという、証拠があるの?」

 私は、大学1回生のとき、『ファインマン物理学Ⅰ巻』のゼミに加わっていた。

 後に公認会計士になったグライダーの親友、『ハイゼンベルグはオレの言えないことを言ったから尊敬している』と言った友人、私と後に上野健爾さんのゼミに参加することになる友人、後に私に量子力学のノートを貸してくれることになる友人、ゼミのために下宿を提供してくれた友人、そしてクラスに4人しかいなかった女の子の1人の友人、最後に私を加えて、7人でゼミをやっていた。

「クラスに女の子4人なの?」

 京都大学理学部は、本当に女の子少ないの。

「じゃあ、大事にされるわね」

 さて、4月終わりから、ゼミを始めて、最初は、毎週2章のペース。どんどん進んで、7月頃、『第15章 特殊相対性理論』。

 その女の子が、レポーターだった。

 一所懸命読んだんだろうと思うよ。私が、参加した、広中さんの『数理の翼夏期セミナー』の英語版の『JAMS(ジャムス)(Japan Association for Mathematical Sciences)(数理科学振興会)セミナー』に浪人中に参加したって言ってたし。優秀だったからね。

「それで?」

 ゼミのとき、ひと言、

『1週間、一所懸命、読んだけど、何言ってるのか、意味が、パープー』

と言って、本を置いたんだ。

「そういうとき、太郎さんって、優しい言葉かけてあげるの?」

 私は、ただ、おかしそうに、

『アハハッ』

って、苦笑しただけだった。

「太郎さんて、残酷な人ね」

 あの頃は、今以上に、人間できてなかったからね。

「その女の人が、分からなかったというのが、ファインマン相対性理論の説明が下手だという証拠なの?」

 もう一つ、あるんだ。

「今度は?」

 父なんだ。

「お父さまが?」

 私の家に、『ファインマン物理学』が、あったことから分かるように、父は、大学を卒業して企業に入社後、1967年6月12日初版のまさに初版本を買って、勉強しているんだ。

「すごい、お父さま!」

 ところが、父は、相対性理論、理解してない。

「えっ、本当に?」

 うん。本当。

「聞いてみたの?」

 分かってるの?と、聞いたことはないけど、父の電磁気学の勉強の仕方見てれば分かる。

「物理学って、恐い世界ね」


 さて、それでは、もう知りたくてうずうずしているだろう、時間が遅れる理由を、説明しよう。

「どこから、始まるの?」

 私が、中学2年生の頃、次のような、なぞなぞを、された。


 なぞなぞ

 直径60キロメートルの湖を、時速60キロメートルのモーターボートで、往復するのと、そばを流れている川を、上流から下流へ、距離60キロメートルを往復するのは、どちらが、時間がかかるでしょう。


「えっ、私、これ、分かるわよ」

 そうだろうね。中学のときの私の女の子の友達も、すぐ分かったもの。

「誰でも、分かるのね」

 麻友さんは、どう考えた?

「川の流れの流速が、時速60キロメートルだったら、と考えたのよ」

 そうすると、どうなる?

「上流から下流へ向かうときは、時速120キロメートルで、速いけど、下流から上流へ向かうときは、完全に速度0キロメートルになっちゃって、戻れないのよ。だから、かかる時間は、無限大になっちゃう」

 それで、正解だね。


「これが分かると、どうなるの?」

 相対性理論って、それなんだよ。

「えっ、これって?」

 あらゆるものは、原子というもので、できてるという話は、してきた。原子って、どれくらいの大きさだっけ?

「覚えてるわよ。『躍るアトム』のテーマよね。{1\overset{\circ}{\mathrm{A}}}(1オングストローム)くらいの大きさなのよね』

 さっすが、特待生。

「それで、これが分かると、どうなるの?」

 それぞれの原子から原子へ、たとえば、引力が伝わるっていうのを、イメージできるかな?

「原子と原子の間に、引力が伝わるの?」

 そう。たとえば、万有引力というものは、あらゆるものの間に、引力が働くということだから、原子と原子の間にも、引力が働く。

「一つの原子が、太陽で、別な一つが、地球みたいに思えっていうの?」

 そうなんだ。

 そういうふうに、引っ張り合っているものが、ものすごくたくさん集まったものが、麻友さんや、私や、このパソコンなんだ。

「うー、難しいわね。私の体は、のっぺりべったりつながったものかと思ってたから」

 今は、なんとなく、分かっているのでいい。

 私だって、実際に原子が見えてるわけじゃないから。

「太郎さんでも、そうなの?」

 そう。まだまだ、修行が足りなくてね(笑)

「ウフフ」


 ところで、原子と原子の間に、引力が働くって言ったじゃない。

「ええ」

 その力は、どのくらいの速さで、伝わると思う?

「力が、伝わるって?」

 つまり、ここに、半径1オングストロームの原子があったとして、そこから3オングストロームのところに別な半径1オングストロームの原子があったとしよう。

「それで?」

 ここの原子が、たとえば、最初止まってたのに、ある瞬間、時速30キロメートルで、動き出したとしよう。

「うん」

 ここの原子が動いたことによって、そこから3オングストロームのところにある原子の方が、引っ張られる向きが変わるのは、ここの原子が動き出したまさにその瞬間かな?

「えーっ、力が伝わるって、そういうこと?」

 無限の速さで、伝わるかな?

「あれっ、でも、光より速く伝わるものは、ないんじゃなかったっけ?」

 さすが、特待生。良いところに気付いた。

「えっ、じゃあ、力も、光の速さで伝わるの?」

 万有引力は、光の速さで伝わる。

「はっ、これ、万有引力が、さっきのモーターボートじゃない」

 ほー、特待生は、千里眼だな。

「じゃあ、動いていると、時間が遅れるって、そういうことなの?」

 そうだよ。

「つまり、止まっている人と違って、動いている人の体の中の原子どうしは、色んなもののやり取りに、ちょっと時間が余計にかかる。だから、時間が遅れる。この理解で良いのよね」

 麻友さん。相対性理論の理解、また進んだね。

「太郎さん、なぜこんな簡単なこと、1年10ヶ月も、出し惜しみしてたの?」

 出し惜しみじゃないんだ。これまでに、1年10ヶ月の間、私が麻友さんをちょっとずつ訓練したから、『こんな簡単なこと』と、思えるんだ。


「でも、こんな簡単なことなのに、どうして、ファインマンが、説明できないの?」

 難しいことを、アマチュアに、教えるのは、大変なんだ。

「どう、大変なの?」

 わざと曲げて、説明しなければ、ならないこともある。

「でも、太郎さんは、曲げなかったわ」

 それは、私が、上手く曲げたからだ。

「じゃあ、さっきの理解は、間違いなの?」

 いや、理解した内容は、あれで正しい。

 ただ、あの理解では、実際にどれだけ遅れるか、きちんとは計算できない。

「モーターボートみたいにして、方程式で解けないの?」

 そんなに、簡単だったら、『相対性理論は、難しい』とは、言われない。

「どこが、まずいの?」

 麻友さんは、湖と川のときのように、どっちも60キロメートルみたいに、考えているだろう。

「そうよ」

 ところが、実際の人間の体などは、加速して速度が速くなるにつれて、時間が遅れてくるにつれ、それに抵抗しようとするかのように、自分の体を縮めて、ほんのちょっと時間を進めようとするんだ。これは、同時刻の点が同じ加速をしていることの結果なんだけどね。

「結局、遅れるの?進むの?」

 遅れるんだけどね、モーターボートのときほどたくさんは、遅れないんだ。

「確かに、太郎さんの、『山を一つ越えると、次に山脈が、見える』っていうの、本当ね。でも、今日は、時間が遅れる理由が、ついに分かったわ」

 そう言ってもらえて、嬉しい。

 やっと、相対性理論の真髄に触れたね。

「ありがとう。おやすみ」

 おやすみ。

 現在2017年2月17日21時04分である。おしまい。