現在2018年4月18日21時15分である。
「前回の続きね」
うん。
今日は、月一度の通院だったんだ。
「入院なんてことには、ならなかったのね」
もちろん。
先日書いたように、なぜ薬を飲み続ける必要があるかが、分かったから、きちんと薬を飲んでるからね。
「あんな投稿を、私以外の人は、面白いと思うのかしら?」
私のブログは、少ないときでも1日、50回くらい見られている。
「それは、50人ということ?」
いや、50個の記事を読んだということだから、もう少し少ない。
ただ、謎なんだけど、今年の3月23日に、1103回アクセスされているんだ。
なぜ、1000回も、アクセスされたのか、今でも謎だ。
「1000人ではないにしても、200人くらいは、見たかもね」
うん。
すごい数だ。
「前回の最後にいったように、ユークリッド幾何学というものの説明から始めて」
分かった。
ユークリッドというのは、紀元前300年頃のギリシアの数学者なんだ。
「そんなに昔から、数学があったの?」
四大文明というのは、どれも、今から4000年くらい前から始まっている。
文明があれば、数学は必要になる。
「商売のため?」
それもあるけど、商売だけなら、足し算引き算かけ算割り算だけあればいい。数学が必要になるのは、土地の面積を求めるために、測量をするからと、天体の動きを調べる占星術のためだよ。
「測量なんて、きちんとやってたの?」
四大文明が、エジプト(ナイル川)、メソポタミア(チグリス川、ユーフラテス川)、インド(インダス川)、中国(黄河)と、大河の流域で生まれているのは、毎年川が氾濫して、測量をやり直さなければならなかったからなんだ。
「氾濫のために、技術が進んだの?」
いつ頃氾濫するかを予測しようとして、星を観測した。
それが、占星術となった。
「昔の星占いって、命がけだったのね」
そうだよ。
それくらい真剣にやったから、後に天文学となった。
ただね、数学は、4000年前からあったけど、数学に証明という概念を持ち込んだのは、ギリシャ人のようなんだ。
「それは、いつ頃?」
紀元前550年頃の、ピタゴラスの頃からなんだ。
「ピタゴラスの定理は、証明知ってる」
そうだよね。
さて、紀元前300年頃、ユークリッドが何をやったかというと、数学、特に幾何学を、ストイケイアという13巻からなる本で、23個の定義、5個の公準、5個の公理だけから、三段論法だけを用いて、証明したんだ。
「全部、証明したの?」
そのときまでに、分かっていたことは、ほぼ全部証明した。
「それは、すごいわねぇ」
この本、ストイケイア(日本語では、『幾何学原論』または、簡単に『原論』と訳される)は、聖書についでよく読まれたといわれている。
「聖書って、最大のベストセラーなんでしょ。その次って、数学の本なのに、ずいぶん読まれたのね」
これは、ひとつには、さっきいった5個の公準というのが、
(1)2点を線分で結ぶことができる。
(2)線分は直線にいくらでも延長できる。
(3)任意の点を中心とした任意の半径の円を描くことができる。
(4)直角はすべて互いに相等しい。
(5)二つの直線 が他の直線 と交わってできる交角 が を満たすならば、 と とは交角 のある側に延長するとかならず交わる。
の5つなんだけど、この5番目の公準、これを平行線公準と呼ぶんだけど、これだけがすごく複雑なので、これが、それより前の4つの公準を使って証明できるのではないかと、思われたんだ。
それで、数学者という数学者が、これを証明しようとした。
「そういう場合って、大抵、証明できないのよね。そういえば、太郎さんが前に、『自然淘汰だなんて』という投稿で、『平行線は交わらない』という定理は、2000年間残ってきた定理だったけど、正しいとはいえなかった、といってたわね」
これは、まだ証明してあげられないけど、その通りなんだ。平行線が交わったりする幾何学や、平行線が何本も引ける幾何学が、存在するんだ。
そういうことじゃあないんだ。
ユークリッド幾何学が、矛盾を含まないことは、ダヴィッド・ヒルベルトという素晴らしい数学者が、1899年『幾何学基礎論』という本の中で、証明した。
現在では、1930年の第7版が、日本語に訳されている。
- 作者: D.ヒルベルト,David Hilbert,中村幸四郎
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/12/01
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「太郎さん。これ読んだの?」
そんなに、暇はないんだ。
「でも、内容を知ってる」
ものすごく有名なんだ。ヒルベルトが、ユークリッド幾何学の無矛盾性を、実数論の無矛盾性を仮定して証明して、次に、実数論の無矛盾性を証明したかったというのは。
「えっ、順番が逆じゃない? まず実数論の無矛盾性を証明してから、ユークリッド幾何学の無矛盾性を証明しなきゃ」
数学では、証明は難しそうだけど、大丈夫そうなことを、とりあえず仮定して、他のことを証明するっていうのは、よくあることなんだ。
「それで、実数論の無矛盾性というのは、証明できたの?」
ヒルベルトの証明するときの立場、『有限の立場』では、依然として実数論の無矛盾性は、証明されていない。
でも、数学者が十分証明と認める程度には、部分的にではあるが、証明されている。
「どういうものなの?」
実は、次の本に証明が書いてあることは知ってるけど、読んでないんだ。
Proof Theory: Second Edition (Dover Books on Mathematics)
- 作者: Gaisi Takeuti
- 出版社/メーカー: Dover Publications
- 発売日: 2013/02/20
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「あれっ、英語の本じゃない。日本語の本に、証明はないの?」
日本語で、実数論の無矛盾性、丁寧にいうと、二階の述語論理の無矛盾性定理(高階論理におけるカット消去定理)の証明をしてある本は、現在ないと思う。
「じゃあ、太郎さんが訳せば?」
これ竹内外史さんの本でしょ。日本人の本訳すのって、やりにくいよね。
「えっ、日本人? 2017年5月10日になくなった人か。そういう難しさも、あるのか」
読みたい日本人は、ある程度はいるだろうけどね。
「でも、なんで太郎さんは、そんな風に、読んでない本の内容を、知ってるの?」
数学の本の最後の文献のところを見ていると、これはあの本に証明がある、というような情報が、どんどん入ってくるんだ。
この有形無形の情報も、数学者の知識として重要なんだ。
「つまり、数学の定理が美しいと思う理由になってくるのね」
そう。
さて、ユークリッド幾何学の話をずいぶんしたけど、やっぱりその証明をひとつやっておこう。
「どんなことを、証明するの?」
今、『AKB48中学数学』を見たけど、証明問題は1問もないね。仕方ないから、『数学がみえてくる』から採用しよう。
- 作者: 田村二郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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「その本、姪御さんにあげたんじゃなかったの?」
大切な本だから、もう一冊買ったんだ。
「どうして、そんなに古い本を?」
これは、かなりすごい本なんだ。
著者の田村二郎さんは、ワイルの『リーマン面』という物凄い本を訳した人。
- 作者: H.ワイル,田村二郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2003/05/23
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それに、この『数学がみえてくる』は、最初は小学校レヴェルのように見えるけど、行列式という大学レヴェルのことまで書いてある本なんだ。
「姪御さん、読めたかしら」
一気に読まなくてもいいんだ。
私自身、170ページくらいまで読んで、一度止まった。
何ヶ月かして、確かこの辺まで読んであったな、と、再開したのを覚えている。
「そういうとき、最初に戻ったりしないの?」
あの頃の私は、知っていることを、復習したりしなかったんだよ。
「今でもそう?」
最近は、結構、最初から読んじゃったりする。
「不便ねえ。それで、証明するのは?」
『三角形の内角の大きさの和は である』
をやろう。
「それって、当たり前では?」
『証明する』という立場から、やってみよう。
「分かったわ」
『数学がみえてくる』より
一つの三角形 を考えましょう.これはどんな三角形でもよろしい.
頂点 を通って,辺 に平行な直線をひいてみます.そうすれば,頂点 のところに,内角 の錯角と,内角 の錯角が現れます.
図についていえば、角アと角イがそれです.このとき,
ア,
イ
となりますから,
です.この等式の右辺は平角の大きさですから, に等しい.
これで,定理を確かめることができました.
以上pp74~75より
「こういう証明をするのが、ユークリッド幾何学なのね。私も、中学で習ったわ」
「中学で、習った後、高校でも少しあったけど、大学の数学科ではもっとこういうのを習うの?」
実は、私は、それを期待していたんだけど、大学で習う幾何学というものは、ほとんど全く違うものなんだ。
「太郎さん、がっかりした?」
入学当時、非常にがっかりした。
でも、現代の幾何学というものが分かってきて、すごく面白くなった。
そこまで、連れて行くからね。
「それはそうと、ユークリッド幾何学は、ある程度分かったわ。次は、代数学の5次方程式のガロア物語の話を聞かせてもらう約束だったわ」
そうだったね。
でも、今日は、もう睡眠薬飲んじゃったし、続きは次回にしよう。
「太郎さん。ちゃんと薬飲んでるのね。じゃあ、いいわ」
おやすみ。
「おやすみ」
現在2018年4月21日22時32分である。おしまい。