相対性理論を学びたい人のために

まだ一度も相対性理論を勉強したことのない人は、何か一冊相対性理論の本を読みかじってみて、なぜこんなことが?という、疑問を持ってからこのブログに来てください。ブログの先頭に戻るには表題のロゴをクリックしてください

ベートーヴェンピアノ三重奏曲第7番『大公』

 現在2018年7月24日20時22分である。

「おっ、とうとう『大公』トリオのデートだ」

 麻友さん。私、このデートを、この曲と同じくらい、美しいものにできた。

「どういう意味?」

 この投稿を、書き始めた、昨日、つまり7月24日に、図書館へ行ったとき、非常にきちんとした本に、出会ったんだ。

「きちんとした本と、美しいデート?」

 ちょっと予告しておくと、その本と、出会ったお陰で、このデートでは、後半、若菜や結弦も連れて、ラブホテルへ、行くという展開が、書けたんだ。

「あらっ、模範的な恋愛をする、私と太郎さんは、結婚前にそんなこと、しないはずじゃなかった?」

 そう、そのことを、頭において、

『どうして私と太郎さんが、ラブホテルに?』

と思いながら、読んでいってね。



 今日(2018年7月25日11時55分)は、麻友さんと私に、若菜と結弦が、加わった、初めての4人でのデート。

「太郎さんに取っての『大公』って、どんな曲なの?」

 最初に聴いたのは、多分高校生の頃だと思う。

 やっぱり、家にあった、オープンテープのコレクションの中にあったのを、聴いた。

若菜「デート、付いてきちゃいましたけど、この曲は、どうしても聴きたかったんです」

結弦「室内楽って、どんな風に、演奏するんですか?」

 それじゃ、コンサート会場に入ろう。

「太郎さん。いつものように、聴きながら、ブログを読み進められるようにした?」

 大丈夫だよ。

 これを、タッチして。

大公トリオ
youtu.be

ヨーゼフ・カリクシュタイン(ピアノ)、シャロン・ロビンソン(チェロ)、ハイメ・ラレード(ヴァイオリン)


♪~

「ピアノから、始まるのね」

結弦「なんか、ヴァイオリンとチェロが、間違って弾き始めちゃったみたいに、入ってくるんだなあ」

若菜「面白いわよね」

 実は、この曲は、ドラえもんのブログで書いたように、1811年に完成されたんだけど、初演されたのは、1814年4月11日なんだ。

若菜「200年以上前なのに、日付まで分かっているんですか」

結弦「初演の日が、分かっているということは、この曲が完成された日も、分かっているんじゃないですか?」

 分かっている。実は、これは、サプライズのために、ずっと言わなかったんだ。

「えっ、サプライズ?」

 この曲、古今東西のあらゆる室内楽作品の中で、最も優れた作品のひとつである『大公』は、麻友さんと誕生日が同じなんだ。

「じゃあ、1811年3月26日完成?」

 そうなんだ。

若菜「わー、お父さん、良く気付いたね」

「なんか嬉しいな」

結弦「でも、1811年に完成してるのに、なぜ3年間も、演奏しなかったの?」

 変だろ。だから、1814年より前にも演奏されたかも知れないんだ。

 だけど、1814年4月11日の日には、ベートーヴェン自身が、ピアノを受け持って、演奏してるんだ。

 だから、この日が、重要になるんだ。

「えっ、でも、ベートーヴェン、1770年生まれでしょ。1814年には、44歳になってる。もう耳、聴こえないはずじゃない」

 うん。だから、この演奏会は、あまり成功ではなかったようだ。これが、ベートーヴェンが公開で、ピアニストとして演奏した最後のものとなった。

若菜「わー、かわいそう」


結弦「そもそも、なんで、『大公』って、言うの?」

若菜「ルドルフ大公という人に、献呈されたからなのよね。ベートーヴェン自身が付けた題名じゃない」

結弦「そうなのか」


 いくつか、気付きにくいことを、補っておこうか。

 まず、この曲の名前は、


ピアノ三重奏曲第7番変ロ長調作品97『大公』


 ピアノ、ヴァイオリン、チェロで、演奏する。

 4楽章からなるが、第3楽章と第4楽章は、つながっている。


 また、

ベートーヴェンピアノ三重奏曲第8番変ロ長調WoO.39

ベートーヴェンピアノ三重奏曲第9番変ホ長調WoO.38

ベートーヴェンピアノ三重奏曲第10番変ホ長調作品44「自作による14の変奏曲」

ベートーヴェンピアノ三重奏曲第11番ト長調作品121a「カカドゥ変奏曲」

ベートーヴェンピアノ三重奏曲第14番変ホ長調

などという『大公』より後の番号が振ってあるピアノ三重奏曲があるが、これらは、ベートーヴェンの死後、楽譜が見つかったりして、やむなく8番以降の番号を振っただけで、ベートーヴェンが、最後に到達したピアノ三重奏曲は、やはり、『大公』なんだ。


 それから、豆知識になるが、ベートーヴェンの記念すべき作品番号の1番となった曲。それも、ピアノ三重奏曲なのである。

 具体的には、

ベートーヴェンピアノ三重奏曲第1番変ホ長調作品1-1

ベートーヴェンピアノ三重奏曲第2番ト長調作品1-2

ベートーヴェンピアノ三重奏曲第3番ハ短調作品1-3

の3曲。


「えっ、作品1が、3曲もあるの?」

 そうなんだ。


結弦「豆知識は、それくらいにして、曲の説明をしてよ」

「それが、できないのよね」

若菜「どういうことですか?」

「太郎さんは、『あそこのルバートが』とか『分散和音が』とか『この旋律はホ短調で2回,ついでイ短調で楽器を変えて2回,全体で4回うたわれハ長調に転じて第7群にはいる。』というような、音楽的な説明は、できないのよ。音楽学校出てるわけでもないし、オーケストラの合奏をしたこともないから」

結弦「それで、よくお母さんを、クラシックのデートに誘ったなあ」

「そうなんだけどね、聞いててごらん。すっごく面白いから」


 私が、高校の時、オープンテープで、『大公』を聴いたと話したけど、その演奏は、

ダニエル・バレンボイム(ピアノ)、ジャクリーヌ・デュ・プレ(チェロ)、ピンチャース・ズッカーマン(ヴァイオリン)

によるものだった。

 非常な名演なのだが、当時私は、交響曲を聴くことが多く、高校3年生になってからは、ベートーヴェンピアノソナタ、ヴァイオリンソナタに、目が向いた。

「だから、クロイツェルソナタの女の人となったのね」

結弦「なんだい、そのクロイツェルソナタの女の人って?」

「高校3年生のとき、お父さんが、好きになった人なんだって。その恋情を、ベートーヴェンのクロイツェルソナタが、良く表しているように思えて、振られたとき、クロイツェルソナタをカセットテープにコピーして、渡したんだって」

 そこまで、話してあったっけ?

「独自調査よ。でも、確かに、クロイツェルソナタの女の人の面影を求めて、私を好きになったのではない、ということは、立証されたわ」

若菜「普通、こういう場面って、修羅場って言われる場面ですよね。お母さんとお父さんって、けんかにならないんですね」

 修羅場か。難しい言葉、知ってるんだね。

若菜「『ガラスの仮面』にだって、出てきます」

 なるほど。

「そういえば、この間、ジャクリーヌ・デュ・プレのことを、ツイートしてきたけど」


 ツイッターを見ていない人のために、説明しておくと、麻友さんが言っているのは、2018年7月16日15時56分の私から麻友さんへの以下のツイートのことである。


渡辺麻友様。今日何か悪いことが起こるかも知れません。特に注意していて下さい。駅前のツタヤで『ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ』という映画を探していたときいきなり腕時計のベルトが切れて落ちてしまったのです。麻友さんの身に何か起こりはしないかと慌てて帰ってきました。


 ドラえもんのブログでの腕時計の話は、ここに端を発している。

 ところで、実は、私と母と『大公』トリオを語る上で、ジャクリーヌ・デュ・プレというチェリストは、外せないんだ。

「どういう風に?」

 私は、1年浪人して、京都へ行った。京都へは、『英雄』なども含めて2,3本のオープンテープは持って行ったが、後はCDを持って行った。

 大学での3年半、『大公』トリオは、聴かなかった。

 そして、1994年、障害を負って、帰ってきた。

 初めのうちは、頭もリセットされちゃってて、音楽を聴かなかった。

 1年以上経ってから、クラシックをまた聴くようになった。

 1998年、イギリスの映画で、『ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ』という映画が、公開された。

 母が、観るのを楽しみにしていた。

「どうして、お母様が、ジャクリーヌ・デュ・プレなの?」

 それは、私が生まれる前に、さかのぼる。

 1969年に結婚した父母は、初め何もなかった家で、最初は、ラジオだったんだね。

 そのラジオで、『大公』トリオという曲を、初めて聴いた母は、

『なんて素敵な曲なんだろう』

と思ったらしい。

 そして、しばらくして、秋葉原石丸電気で、『大公』トリオのオープンテープを、買ってきた。

 天体望遠鏡ならファーストライトって、言うんだけど、音楽の場合ファーストリスニングかな? 一番最初にかけたとき、あのピアノが流れてきて、ヴァイオリンとチェロが入ってくる部分が、本当に活き活きとして感動的だったらしい。

 母は、なぜあの演奏が、そんなに感動的だったのか、知らなかった。

結弦「なんか、理由があるの?」

 実は、30年後に、息子である私が、ジャクリーヌ・デュ・プレと、ピアノのダニエル・バレンボイムは、夫婦だったことを、突き止めた。

若菜「だから、息もぴったりで、室内楽としては、望ましいものに、なったのですね」

 そうだね。

 それで、私は、CDを、買ってこようと、思った。

 でも、その当時、デュ・プレらの演奏の『大公』トリオのCDは、売られてなかったんだ。

 その一方、パブロ・カザルスがチェロを弾いた、これならあったんだ。

ルフレッド・コルトー(ピアノ)、パブロ・カザルス(チェロ)、ジャック・ティボー(ヴァイオリン)

 それで、これを買ってきた。

 これは、カザルス、コルトー、ティボーと、信じられない黄金のトリオなのだが、いかんせんSPレコード時代の録音のため、音質が悪い。

「あー、太郎さん。お母様が、こっそり『大公』トリオのCD買ってたって、言ってたじゃない。これが、音質が悪いから、もっと良いの聴きたくて買ったんじゃない?」

 その可能性はある。

 そこのところは、追求してない。

「お母様が、楽しみにしてた、『ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ』は、どうだったの?」

 母は、妹と、見に行ったんだけど、がっかりして帰ってきた。

結弦「がっかりって?」

 それがね、確かに、映画の中で、3人で、『大公』トリオを弾き始めるところがあるんだけど、途中から、バレンボイムが、変に弾き始めて、しまいには、

『これが、本当のベートーヴェンだー!』

って、無茶苦茶な終わり方をしたんだって。

 それで、母は、がっかり、がっかり、して帰ってきたんだ。

若菜「それは、がっかりね」

「太郎さん。その映画を、本当に観たの?」

 いや、母ががっかりしたんなら、たいしたことないんだろう、と思って、観に行かなかった。

「あっ、そうか。私にその話するために、実物を観ておかなければ、と思って、TSUTAYAで、借りようとしてたのね」

結弦「でも、『慌てて帰ってきました』って、書いてあったけど」

若菜「次の日借りに行ったんですか?」

 結局、TSUTAYAには、なくて、観られなかったんだ。

結弦「なーんだ」

 ただ、内容は、インターネット上の情報で、ある程度分かってる。

 デュ・プレとバレンボイムは、幸せな結婚生活は、あまり送れなかったんだ。

若菜「どうしてでしょう」

 天才と天才の結婚なんて、上手く行く可能性、ものすごく低いんだよ。

 特に芸術の、天才と天才の結婚なんて、上手く行く方が奇跡だ。

結弦「芸術でなければ、なんとかなるんですか?」

 科学の天才でも難しい。実は、アインシュタインの最初の奥さんって、アインシュタインより数学優秀だったのね。それで、アインシュタインが好きになっちゃって、結婚したけど、結局離婚することになったでしょ。

 キュリー夫人のご主人が、奥さんの心の動きに慌てちゃってて、馬車にひかれて死んじゃった、という話は、前にしたことがあるんだ。

若菜「ちょっと待って、お母さんは、アイドルで1位になるような天才で、お父さんも、数学と物理学の天才だから、私達のうち危ないんじゃない?」

結弦「どうして、24年も、もったんだろうなあ」

「それは、私達の方から社会に働きかけて、結婚というものの意味を、変えてもらったからなのよ」

若菜「どうやって、社会に働きかけたんですか?」

「私が、アイドルだったでしょ。そして、太郎さんが、こうやって、私にブログを書いてくるでしょ。そうするとね、私のファンの一部が、太郎さんのブログを読むのよ。太郎さんのブログを読むファンは数人だけど、インターネットでは、面白いことだと拡散されるのよ。そうやって、ふたりだけの考えだったものが、社会に拡散されて、この社会での常識を、ついに動かしたのよ」

若菜「お母さんの影響力って、すごかったのね」


 さて、カザルスのCDを買ってから7年くらい経って、ついに私は、次の18枚組のCDを買う。

ジャクリーヌ・デュ・プレの芸術』

ジャクリーヌ・デュ・プレの芸術

ジャクリーヌ・デュ・プレの芸術

「これ、ジャクリーヌ・デュ・プレの全録音が入ってるの?」

 いや、そんなことしたら、60枚とか70枚とかになっちゃう。特に良いものだけだよ。

結弦「さっきから、気になってるんだけど、デュ・プレとバレンボイムは、幸せな結婚生活を送れなかったってことは、離婚したんですか?」

 離婚はしてない。

 というか、離婚とか言う以前に、デュ・プレが、死んじゃったんだ。

若菜「自殺したんですか」

 自殺もしてない。

 簡単に言うとね、ホーキング博士みたいな病気になっちゃって、最後はまばたきもできないほどになって、若くして死んだんだ。

 私が生まれた1971年に26歳で、多発性硬化症を発症。1973年に28歳で若すぎる引退。1987年に42歳で死んでいる。

 12歳の結弦や、14歳の若菜や、もしかしたら24歳の麻友さんでも、42歳なんて十分年取ってると思えるかも知れないけど、今46歳の私には、42歳で死んじゃうなんて、あまりにも若すぎると思えるね。

「そういわれれば、そうね。太郎さんは、これから、私と、結婚するんですものね。デュ・プレ、かわいそう」

結弦「まあ、そうだなあ」

若菜「チェリストとして、何年くらい活躍したんですか?」

 4歳でチェロを弾き始め、16歳でデビューし、28歳で引退。

 表舞台で活躍したのは、12年。

 麻友さんには、今、自分がここで引退させられたら、と、身につまされるんじゃないかな?

「恐ろしい、想像をするわね。それで、デュ・プレの『大公』トリオは、You-tubeになかったの?」

 残念ながらなかった。

 全曲が入ってるのは、上にリンクを張ったものしかなかったんだ。

「それで、買ってきたデュ・プレの『大公』トリオを、お母様に聴かせてあげた?」

 もちろん、聴かせたよ。

 そうしたら、出だしのバレンボイムのピアノを聴いただけで、

『あれだ!』

って。

「やっぱり、すごいのねぇ、お母様の耳」

 麻友さん。歌手として、母に認められようとしなくていい。この間の『MUSIC FAIR』でも、島田歌穂さんと向かい合って歌ってて、どうしようもないの、分かってるでしょ。

 でも、女優としてなら、認められ得る。

 私も、色々手助けするから、母を、味方に付けよう。

「太郎さん。正直なのは、確かに、助かるわ。傷つくこともあるけど、悪気がないのは、明確だものね」

若菜「それで、そのデュ・プレがチェロを弾く、『大公』トリオは、どうだったんですか?」

 確かに、素晴らしかったよ。カザルスの演奏では、私は、『大公』トリオ開眼、とはならなかったけど、デュ・プレたちの演奏で、開眼した。

 ただ、私が、本当にこの曲を、良い曲だと思い、愛聴するようになったのは、前に『ベートーヴェン交響曲第7番』のデートで、麻友さんに話した、精神科に入院していたときの、病院のDVDプレーヤーで、一日に何度も聴いていたとき以来なんだ。

結弦「じゃあ、たいしたファンでもないんだ」

 そんなこと、言っていいのか? 私が、『大公』トリオの大ファンになってからより、お前さんのお母さんの大ファンになってからの方が、短いんだぞ。


若菜「お母さん。お父さんがファンになったのって、何年前なの?」

「2015年の4月4日に見初めたと言ってるから、3年前なのよ」

若菜「3年。じゃあ、もう何度もデートしてるの?」

「9回デートしてるの。今回は、10回目なのよ」

結弦「じゃあ、今日のデートも、これで、終わりじゃないんだ」

「終わりじゃないって? もちろんお食事はするわよ」

若菜「結弦が言ってるのは、食事の後、一夜を過ごすのでしょう、という意味だと思います」

「太郎さん。子供達に、こういうことを、どう話せばいいのかしら」

 麻友さんの頃は、大分進んでただろうけど、私の頃は、性教育という言葉さえなかった。

 『ハグされちゃった』の投稿で、書いたように、私は自分の時代の性教育のあり方に、非常な不満を持っていたので、図書館で、『小学生のための性』とか『中学生のための性』というビデオを視聴させてもらったりして、常に性教育を厳しくチェックしてきた。

 そんな私が、今年(2018年)の7月18日のNHKの『あさイチ』を観ていて、

『これが、100点の解答!』

と、ついに花丸を付けたくなる素晴らしい解答に、出会ったんだ。

「えっ、どんなもの?」

 その日、『あさイチ』では、『どうする子どもへの“性教育”』という題で、あーでもない、こーでもない、とやっていた。

 そこで、小島慶子さんというゲストの人が、次のように話したのだ。



 うち、15歳と12歳の子供達が、ちっちゃかったとき、あの日本って、親子一緒にお風呂に入るじゃないですか、そうすると、質問するんですよ。あの、ママ、セミはどうやってでてくるのと同じレヴェルで、ママのそれは何?と。

 そういうときに、私、一問一答で、答えてたんです。これは、君が出てきたところだよ、とかって言うと、えっ、じゃあ、えっ、どこから出てきたの? ああ、いい質問だね。この奥には、赤ちゃんの部屋があってね。とかって、で、それで、一問一答で、こう、答えていたら、小学校3年くらいまでに、あの、全部の過程が終わってしまったんですよ。

 だから、子供の質問に、親が付いていくだけでも、意外となんか、そんな、気構えなくても。できてね。絵本とかあったらさらに、こう、ほら、こういうことって、言いやすいのかな?って。



 これに対し、山口もえさんというゲストの人が、



 でも、その素敵な話も聞ける反面、親としたら、なんか、ここまで、話してしまうと、逆に興味を持ちすぎてしまって、なんか、ちょっと違う方向に行っちゃうんじゃないかっていう心配も。



と、話した。

 それに対し、小島慶子さんは、



 私は、聞いてきた。息子に。ハハハ。息子にそういう意見もあるんだけど、どう思う? って言ったら、ふたりとも、全然そうは思わなかったって。ちっちゃい頃から、その、生き物の仕組みと同じようにして、聞いてたから、周りの子が、『わー、エロ!』とかって言ってるのを見て、『えー、なにこの子たちは、エロッとか、騒いでるのだろう』と思ったって言ってたので、サンプル2ですけど、うちの息子たちに関しては、それを聞いて、急に、エロい気持ちになったことはなかったみたいです。



と、答えたんだ。


 これすごいと思わない? まさに、科学の勝利だよ。

 麻友さんとは、こういう家族を作りたい。

「太郎さんは、全部答えていけば、小学校3年までで、全部悩みはなくなり、いざ中学で、思春期になったとき、心の問題だけで悩めば良くて、体の悩みまで、抱え込まなくて済む、というわけなのね」

 そう。

 人を好きになるということは、科学では、どうすることもできないかも知れないけど、性の問題のうち、科学で解明できることは、全部オープンにして、いいと思うんだ。

「私達は、ここで、この方法を知った。だとすると、この若菜と結弦は、小学校3年生までで、全部知ってるのか」

結弦「そうなのか。うちで、お母さんやお父さんが、何でも答えてくれたのは、そのゲストの人のお陰なのか」

若菜「でも、それを、聞き流さずに、全部覚えていた、お父さんのチェックの厳しさも、半端ないわね」

「ただ、それだけの知識があると、実際やってみたくならない?」

 確かに、現代の大人から見ると、性行為のことや快楽のことを知ると、子供達がやってみるだろうと思えるだろう。

 だけどさあ、人間って、やってみたくなったとき、やってみるのでいいんだよ。

「妊娠したら?」

 だって、この子たち、どうやったら妊娠するのかも、避妊するにはどうすればいいのかも、全部知ってる。

「でも、勉学の邪魔に、ならないかしら?」

 中学1年から、AKB48と学校をかけ持ってた、麻友さんが、よく言うよ。

「でも、『桃色遊戯』なんていう言葉もあるくらい、夢中になっちゃう子供もいるから」

 性欲って、ため込むから、取り返しの付かないことになるんだよ。

 もっと自然に生きていれば、おかしな事にならない。

 だいたい、この世界で、痴漢だとか、ストーカーになっているのは、ごく普通の人だった人で、決して、小さいときからそういうことに夢中だった人だなんて、限らないんだよ。

「とにかく、太郎さんも私も、経験不足なんだから、子供達に、答えるには、勉強しなきゃね」


若菜「今夜は、どうするのですか?」

「そんな。子供に見せるものじゃ、ないわよ」

 つまり、麻友さんは、プライベートなことを、守りたい人なんだね。

「太郎さん、どう思ってるの?」

 まず、麻友さんが、私とのことを、プライベートにしたい、と思うのは、誰にも、見られていないところで、私と体を重ねたい、という気持ちがあるからだろう。

 誰かから見られていたら、伸び伸びプレーできない、と思っているのだろう。

「そんな、プレーなんて・・・」

 麻友さんの気持ちは、分かるよ。

 でも、悪いことをした人達なんかに、

『お天道様は、見てますからね』

なんていう言葉を、言うよね。

 あるいは、

『神様は、きっと見ている』

なんて言い方をする。

 麻友さんは、お天道様が、見てたら、恥ずかしくて、私の前で、裸になれない?

「だから、夜に・・・」

 夜にやっても、神様は、見てるよ。

「それは、しょうが無いわ」

 つまり、神様が、見てても、プライバシーが、守られていると、麻友さんは、思うんだね。

「それは、まあ」

 ところで、外でない限り、部屋の中で、温かくして、そういうことをする場合、部屋の中に色々な電気製品があるよね。

「当然でしょ」

 麻友さんは、パソコンオタクだ。

 『MACアドレス(まっくアドレス)』(Media Access Control address)というものの存在を知っているだろう。例えば、私の持っているプリンターのMACアドレスは、

B0:E8:92:3C:??:??

だ。

「えっ、??のところは?」

 これ、全部書いちゃうと、この番号を持っている機械は、世界中でこれ1台だけだから、私のプリンターを、誰でもが操作できるように、なっちゃう。

「ちょっと、待って、私の家のパソコンだけでなくて、テレビとかも、MACアドレス書いてあったみたいよ」

 そう。だから、この世界では、ある程度以上の機能を持った、電化製品があるだけで、NSA(アメリカ国家安全保障局)などが、必要なら盗聴できてしまうんだ。

「韓国か何かのサムスンというメーカーのテレヴィが、視聴者の声を盗聴してたって言って、逮捕されたじゃない」

 あれは、ばれるようにやったから、逮捕されちゃったんだよ。

 本当は、アメリカなんかは、前からやってる。

「そんなことしてるのに、9.11のニューヨーク同時多発テロを、防げなかったの?」

 あれは、テロというより、アメリカが、戦争を仕掛けたくて、見過ごしたんだ。

「ウソでしょ?」

 ちょっと、デートが、ほったらかしになるから、ウソだと思うなら、後で、このブログの、『私が数学を信奉する理由』という記事を読んでね。


 さて、この世界は、屋内にいるときは、電化製品によって、屋外にいるときは、人工衛星によって、常に、見守られているんだ。

「そういうの、見守られている、というより、覗かれているって言うんじゃない?」

 うん。

 まあ、そう思う人もいるけど、ある意味、神様のような人から、常に、見守られているんだ。だから、普通、テロなどは、未然に防げる。

 ただ、麻友さんが、知らなかっただけ。

「えー、そんなあ」

 だとしたらね。私と二人っきりになって、体を重ねた。と思っても、二人っきりじゃないんだよ。

「うーん。もう、私、できない」


 確かに、ショックだろう。でも、プライベートなことが、体を重ねることじゃなきゃいけない、という規則は、ないんだよ。

「プライベートって、まだあるの?」

 麻友さんが、心の中で、

『こんなこと、言うなんて、太郎さんは、ヒドい』

と、思っているとしたら、その思っている心は、麻友さんだけにしか、分からないんだ。

「♪先着1名様限り ♪ハートを自由に使って って言っても、私の心は、誰も、好きには、できないのね」

 そう。

「でも、女の人に取って、体をあげるって、心もあげることなのよ」

 うん。そうなんだよね。

『処女をあげたとき、女の人は、世界をあげた気持ちになる。でも、もらった男の人は、子供がおもちゃをもらった程度にしか、喜ばない』

と、言われてるんだ。

「それ、本当なの?」

 私も、童貞なんだよ。経験ないから、本当にそうなるかどうか、ちょっと分からないけど、でも、私自身、麻友さんが24年間守り続けてきた、大切なものをくれたんだなと、頭では理解するだろうけど、それが、大喜びとして表れるかどうか、自信がない。

「あげないどこうかな?」

 まあ、今日に関して、その問題は、とりあえず、おいておこう。

 今、問題なのは、子供に、私達の交わりを、見せるかどうか。

「見せちゃいけないものなんじゃない?」

 それは、子供が小さいとき、親の交わりを見ると、それが、トラウマになる。というようなことを、心理学者のフロイトなどが、言い出したからでもあり、絶対、見せちゃいけない、という定説があるわけじゃないんだ。

「じゃあ、なんで、X指定とかあるの?」

 あれも、本当は、根拠がなくて、見たくない人を守るものなんだ。

 だから、子供の方が、見たいと言って、親も、見せていいと思ったら、見せたっていいんだ。

「要するに、まだ、性交というものを、見たいと思っていない子供に、間違って見せてしまうことを防ぐために、18歳未満禁止、などの設定があるということなのね。『見たくない人を守る』という発想は、初めて知ったわ」

 これを、語れる大人の男の人は、珍しいと思う。私自身が、中学2年生のとき、周囲の性教育がなっていないのに、腹を立てていて、そんなとき、クラスメイトの何人かが、無理矢理エッチなマンガを、見せつけたんだ。私は、目をつぶって、見なかった。そのとき、ああ禁止されてるから、何度もは、見せられなかったんだなあ、と思ったんだ。

「太郎さんの潔癖症も、すごいわね」

 実は、きちんとした文献で読んだんだけど、縄文時代とかの竪穴式住居に住んでた頃、ホテルなんてもちろんないから、大人が性行為しているのを、子供達は、そばで見ていたらしいんだ。

『外行ってろ』

って、言ったって、雪の日だってあるでしょ。

「でも、500万年昔と、現代じゃ、道徳も、違うし」

 新しい道徳を作るんだよ。

 うちの子たちは、両親が初体験するの見てたんですってね。

「そういえば、これは、考えようによっては、ものすごくフェアね。子供達が、自分たちはどうやって、初体験しようか、と思っているときに、両親が、自分たちで、手探りで、失敗したり悩みながら初体験するのを、見せてあげるんですものね」

 やっと、今日のラブホテルへ行くという発想が生まれたところまで、来たね。

「分かったわ。じゃあ、私のからだ許すわ」



 そういうことで、あの子たちも、ホテル連れて行くんだけど、ラブホテルなんて、入る予定なかったから、そんなに用意してこなかったけど。

「とにかく、1回やってみないと、子供達にも、説明できないわね」


 じゃあ、今、6,500円しかないから、この中から1,000円で、コンドーム買おう。

 一度使ってみたかった、『オカモトゼロワン』というのの3個入りを買って、500円は、電車賃。それで、ホテル代に、5,000円渡す。


「待って、ラブホテルでも、ひとりずつ、宿泊費かかるのかしら? 4人ということ?」

 子供は、半額とか、無理かな。

「ところで、ラブホテル、ラブホテルって、よく言うけど、どこにあるの?」

 以前だったら、すごく問題になったところだね。

 普通だったら、デートの計画立てるとき、どこにホテルがあるか、確かめたのだろう。

「どうすればいいの? あっ、スマホか」

 ポンッ、ポンッ。

「うわー、クチコミまで書いてあるわ」

 高けりゃいいってものじゃないから、そこそこの清潔そうなところを、ひとつ決めてよ。

「そこそこなんて、私の処女体験なのよ。きちんとしたところでなきゃ」

 分かった。

「じゃあ、ここ」

 行こっ。

「えっ、歩いて行くの?」

 当然でしょ。

「ちょっと、遠いわよ。タクシー使いましょ」

 私の5,000円、それだけで消えるな。


「これが、ラブホテル?」

 スマホの情報合ってる?

結弦「本当に、お父さん。お母さんのこと口説き落として、ホテルへ来ちゃった」

若菜「ラブホテル、入るの初めてです」

「実は、4人全員、初めてなのよ」

 若菜、結弦。最初に言っておくけど、女の人と、男の人が、体を重ねる行為は、そのふたりに取ってだけ、意味があるんだ。だから、そばで見ているお前たちは、ものすっごく退屈だと思う。

結弦「退屈って、そんなに、待ちくたびれるほど、長いんですか?」

 長い。2時間くらいは、待ってもらう。

若菜「2時間も、何してるんですか?」

 ある意味、お互いの、愛撫の仕合いっこ、なめあいっこ、なんだ。

結弦「じゃあ、どうなれば、終わりなんですか?」

 お互いが、

『もういいわね』

となったら、おしまい。

若菜「じゃあ、疲れ切るまで、ということですか?」

 そこまでは、しないけど、お互いが、

『十分、満たされたな。もういいわ』

と思って初めて、その日は終わり。

結弦「なんか、囲碁の終わり方みたいだな。『お互い、もう打つ手がなくなって、おしまいですね』となったら、おしまいなんて」

「えっ、太郎さん。そういうものなの? 私、良く分かってなかった」

 ほらね、お互い、良く分かっていない同士で、やるんだよ。お前たちも、良くそういうところを、学んでくれよ。

「でも、2時間って、そんなに、長いの?」

 今、17時46分だろ。終わったとき、時計見てごらん。

若菜「ビデオじゃないですから、退屈だからって、早回しするわけにも、いかないでしょうしねえ」

 正直言って、早回ししたくなるくらい、見てる方は、つまんない。だから、お前たち、外で遊んでてもいいよ。終わるのがこのままだと、19時50分位だから、この時期なら、小学生や中学生が、危なくなる時間ではない。

結弦「本当に、そんなにつまんないものなんですか? なんか、僕、当てが外れちゃったなあ」

 簡単に言うとね、見てる方は、恋人たちにあてられちゃうんだよ。

 だから、退屈で、恥ずかしくて、居づらくなっちゃうんだ。

若菜「そういう、退屈さですか。それなら、分かる気がします」



 さて、じゃあ、用意始めるか。タイムスタートだよ。

 じゃあ、この子たちのスマートフォン、ここに置いて。

「キスから、始めるの?」

 まあ、ホテルに入ったんだし、1回くらいキスしてもいいな。

 『お金を克服』のとき、軽くキスしたけど、ディープキスって、一度もしてないね。

「結構、身長差あるけど、大丈夫かしら?」

 この言葉、ずっと待ってたんだよ。

「えっ、どういうこと?」

 有名な『誰が為に鐘は鳴る』っていう映画の中で、ゲーリー・クーパーが、イングリット・バーグマンにキスするとき、ファースト・キス(と役柄からなっていた)だったので、バーグマンが、『鼻がぶつからないかしら』と言う。あらかじめ、鼻の高いバーグマンが演ずることを想像しながら、書かれたセリフだったそうなんだ。

「太郎さんは、それを、身長差に置き換えたのね。ウフフ、あ、・・・」


「うっ、ちょちょっと、何秒間、キスしてるのよ」

 うん。これなら、十分、12秒を、超えたな。

「12秒って、『大人ジェリービーンズ』を、超えようと思ったの?」

 でも、秋元さん、


♪ジェリービーンズ 口の中 入れた時 

♪不意に顔が近づいて 唇盗まれた

♪12秒くらいは そのまま動けなくて

♪これがキスか これが恋か

♪薄目開けて見ていた 大人誕生


って、唇盗まれたっていうくらいで、12秒も、キスしてられないでしょう。

「それを、証明したかったの?」

 それだけじゃないよ。

 さて、じゃあ、冷たいものでも、飲んでて。

「えっ、どうするの?」

 まず、お風呂を張らないことには、体も流せない。

「太郎さんが、お風呂入れてくれるの?」

 ここは、ホテルなんだから、お風呂を洗う必要はないんだ。

 お湯を入れるだけでいい。

 熱めが良い? ぬるめが良い?

「40度くらい。・・・ニヤッ」

 そこまで、独自調査してるのか。

(これは、まだ記事にしていない、私が小学校1年生で、京都まで新幹線で行って、向こうの家で、『お湯加減どうしますか』と言われたのに、『40度くらい』と答えて、向こうのおばさんを、たいそう困らせたという逸話を、麻友さんが、知っていたという話なのである)

「どうして、太郎さん、お風呂まで入れてくれるの? シャワーで済ます人も、いるんじゃない?」

 時間は、たっぷりあるんだから、楽しもうよ。

 入れ始めたよ。

 ああ、ジュース飲んでるね。私も。

「待ってる間は、どうするの?」

 このラブホテルのレヴェルをチェックしよう。

「どういうこと?」

 ラブホテルって、アダルトビデオとか、置いてあるんだ。チェックしよう。

「ここかしら?」

 ああ、あるね。おやっ? これがあるって、たいしたもんだな。このホテル。

「それ、どんな、アダルトビデオなの?」

 これだよ。アダルトビデオじゃないんだ。

「どうして、太郎さん、これのこと、知ってるの?」

 私、これ、持ってるんだ。

「ビデオを、観たの?」

 ビデオも観たし、解説も全部読んだ。

「ちょっと、その冊子見せて」

 はい。

「・・・・・・・・・、あっ、太郎さんが、お風呂入れてくれた理由が分かった。このアダム徳永さんが、女の人のために性行為をするために、実際にお風呂を張ってくれたと、体験者が書いてるのね。その体験者とアダム徳永さんが、このビデオで、映ってるの?」

 いや、そこは、一見詐欺みたいに見えるんだけど、ビデオでからむ女優さんと男優さんは、体験者とアダム徳永さんじゃないんだ。でも、詐欺にならないように、名前がちゃんと書いてある。

「あー、太郎さん、ここまで、勉強してあるんだ」

 でも、このビデオ、ひとつだけ、間違いがあるんだ。

「間違い? 童貞の太郎さんが分かるの?」

 うん。間違いっていうのはね、このビデオの中で女優さんと男優さんが絡むとき、避妊をするところをまったく写してないんだ。

「そういえば、太郎さん。さっき、コンビニで、コンドーム買ったわね。太郎さんは、ちゃんと避妊しようと思ってるのね」

 そうだよ。

「教科書の間違いを見つけるのは、太郎さんお手の物だものね。それで、『ゼロワン』って、何」

 要するに、コンドームのビニールの厚さが、0.01ミリということ。

「そんなに、薄くて大丈夫なの?」

 私が、大学時代は、最薄のもので、0.02ミリだった。技術が上がったんだね。

「大丈夫なのか」

 あっ、そろそろ、入ったね。

「分からないんだけど、どうして、アダム徳永さんは、『私が先に入って、3分したら入ってきてください。私が先にお風呂から出ますので、あとは好きなように洗ってください』と言ってるのかしら?」

 私の想像だけど、女の人がお風呂に入っているところに、男の人が入っていくというのは、暴行というか強姦というか、そういうことが、女の人の頭をよぎるじゃない。それを、避けるためだと思う。

 男の人が、先に出るのは、女の人へのきめ細やかな配慮だと思う。

「もうちょっと、この冊子、読んでもいいかしら?」

 女の人が待ってといったとき、男の人が待てるようじゃなきゃいけない、と前にも言ったよね。待ってあげるよ。

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「なんか、私、今までの恋愛観が、粉々になったみたい」

 この後、実際にやってみれば、世界がひっくり返る。つまり、コペルニクス的転回を経験することになるよ。

 じゃあ、お風呂、先に入るよ。

 バシャバシャ。



「もう入っていいかしら?」

 まあ、いいよ。

「やっぱり、恥ずかしいわね」

 当然だよ。



結弦「なんだよ、お母さんとお父さん、あれから30分も経つのに、やっとお風呂に入っただけじゃないか」

若菜「お父さんが、退屈するだろうと言ってたのも、本当ね」

結弦「あっ、お父さん、やっと出てきた」

若菜「黙ってましょ」



「太郎さん。やっぱり、タオルくらい巻いて、出て行くべきよね」

 花も恥じらう乙女が、裸をバーンと見せるのは、あまり感心しないなあ。

「あっ、さっきの『オカモトゼロワン』ね」

 知ってるかどうか、分からないけど、コンドームというものは、体を接触させる最初から、付けないと、いけないんだよ。

「えっ、挿入する時じゃなくて?」

 ふたりが、向かい合って、からだが熱くなってくると、男性器は勃起する。

 ここで、もうコンドームを付けるんだ。

 麻友さん、処女で、どういう風に、コンドームというものを付けるか、分かってないだろから、全部見せてあげるよ。

 こうやって、かぶせていくんだ。

「それで、1回精子が出たら、次はどうするの?」

 そのコンドームは、外して、捨てて、新しいコンドームを付けるんだ。

「私のカレが、こんなに説明してくれる人で、本当に良かった」

 この後、体を重ねるわけだけど、頼みたいことや質問があったら、いつでも言ってね。

「うん。私、処女航海なのよね。どんなだろう」

 私だって、童貞なんだから、ドッキドキお楽しみ会だよ。


 女の人の至福を味わわせてあげる。お姫様抱っこしてあげるよ。

「太郎さんの体力で、大丈夫?」

 馬鹿にするない。

 ほら!

「わっ」

 ベッドに降ろすよ。

「タオル脱がせて」

 綺麗な胸だね。

「ペチャパイだって、ずっと悩んできたのよ」

 男の人も、好みは、人それぞれ。私は、胸の大きさより、顔で好きになる方だった。 

「こうやって、触り合ってても、太郎さんも耽るというほどにならないし、私も、『あぁーっ、行くー』なんて、ならないのね」

 男の人は、生物学的に、性交中に他の動物に襲われる可能性を警戒していなければならないから、完全に浸り切っちゃうことは、できない仕組みになっているし、女の人の性反応は、じわじわとのぼりつめて行くものなので、最初から、『あっ、あっ』とは、ならない。



若菜「やっと、ふたり、始めた」

結弦「随分、静かだな」

若菜「ほんと、なめ合ってるって感じね」

結弦「だから、冷たいものでも、飲んでて、なんて言ってたのか」




結弦「お母さんは、大分気持ちよさそうになったけど、やってることは、あまり違わないなあ。お風呂出てきてから、もう30分以上、同じようなことやってる」

若菜「あっ、でも、私、気付いた。やってることは、同じようなことだけど、お父さんが、色んな事話してるし、お母さんも、時々答えているけど、その内容が、どんどん変わって行ってる」

結弦「そうか、体を触り合って、気持ちよくなりながら、睦言を交わすのが、性交なのか」

若菜「どうりで、恋人たちにあてられる、という意味で、他の人の性交を見ない方が、いいというわけね」




結弦「どうやって、最後って、なるんだろう。もう1時間も、絡み合ってるよ」

若菜「あっ、お母さん、大分疲れてきてる。もう終わりのサインを出しそう」


「太郎さん。私の処女航海、良いものだったわ。フィニッシュに、しましょ」

 麻友さん、幸せをかみしめられたようだね。良かった。

 ゆっくり、ピロートークを交わそう。

「えっ、太郎さん。どうして、あのとき、コンドーム買ったの?」

 避妊のためだよ。

「だって、そもそも、太郎さんのものを、まだ私の膣に、入れてないじゃない」

 膣の中に入れるのは、男の人に取ってだけ、気持ちが良くて、女の人に取っては、気持ち良くないから入れなかったんだよ。

「でも、だったら、初めから、膣には入れないって決めて、入れないのだったら、コンドーム買う必要なかったじゃない」

 分かってないなあ。人間っていう生物が、これまで、30億年の進化をくぐり抜けて、生き延びてきている。つまり、自然淘汰の結果生きている、ということは、生殖の際に、本能的に子供を、作ってしまうように、人間という生物が、できていて、子供を作ってしまってきたからなんだよ。

 つまり、本能に負けると、男の人は、女の人の中に、自分のものをつっこんで、膣の中に、精子をぶちまけちゃうんだ。

「でも、理性的な太郎さんが・・・」

 私だって、初めてだったから、今回、自分の本能に勝ち続けられるか、分からなかったから、万が一麻友さんの膣の中に、精子をぶちまけないように、最初からコンドーム付けたんだ。

「でも、いざ挿入するということになってからでも、良くはなかったの?」

 いや、それは、よく言われることだけど、失敗の原因。

 いざ、二人の気持ちが合ってくると、どうしても、1回くらい、大丈夫なんじゃないかな? という誘惑が、お互いを襲うんだ。

 というか、そういう衝動があるから、人類は、生き延びてこられたんだよ。

「そんな、こと」

 間違いでもいいから、子供を作っちゃう生命でなかったら、自然淘汰の結果、滅んでいたはずなんだ。

「女の人でも、入れてもらった方が、オーガズムがさらに高くなるんじゃないかしら? そもそも、これじゃあ、Bのペッティングまでしか行ってない。Cのセックスをしてないってことは、初体験じゃないのかしら?」

 そこのところで、私は、かなり以前から、挿入するのは男の人にだけの快楽で、女の人は、膣に入れられるより愛撫される方が、心地よいのではないか? と、感じてきていた。でも、証拠がなかった。

「どうして、そんな仮説を立てたの?」

 これは、以前も話した、『ビューティフル・ラブ』という本で、男女の交わりの写真が、100枚くらいある中で、1番女の人が、無防備に男の人に体をゆだねていて、しかも幸せそうな顔をしているのが、クンニリングスしてもらってる写真で、私には、挿入する必要はないんじゃないかな? と感じられたことなんだ。

アン・フーパー『ビューティフル・ラブ』(河出書房新社



「でも、私、恋愛相談で、こんなの読んだことあるわよ。

『私は、妻子持ちの男性と不倫をしていました。深い仲になって抜けられなくなり、別れるために、他の男性と結婚しました。いい人なのですが、私の体を満足させてはくれませんでした。たまり溜まっていたある日、昔のあの不倫相手に会ってしまいました。向こうも、私を欲していて、引きずられるように、ホテルへ行きました。部屋に入ったとたん、ドアに押しつけられ、そのまま引き下げられ、挿入されました。そのまま、一気に上り詰めました。行ったかどうかなんてどうでも良いことでした。ただ、彼の熱いほとばしりを、私の中に受け止められたのが、一番の喜びでした。その後、ベッドで優しくしてもらって、私は、彼とは、離れられないと、感じました。どうしたら良いでしょう?』

というの。そもそも、太郎さんは、処女膜を破ることも、してないわ。初体験したといえるのかしら?」

 うん。以前だったら、私も、膣内に射精しなければ、フィニッシュじゃないのだろうな、と説き伏せられただろう。

「あっ、『証拠がなかった』とか言ったわね。証拠を見つけたの?」

 そう。最初に書いた、図書館で見つけた、きちんとした本に、書いてあったんだ。

 この本。

河野美代子『新版 SEX & our BODY』(NHK出版)

新版 SEX & our BODY 10代の性とからだの常識

新版 SEX & our BODY 10代の性とからだの常識

  • 作者:河野 美代子
  • 発売日: 2005/11/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

「この河野美代子(こうの みよこ)さんって、職業は?」

 産婦人科医。

「この本、何年の本?」

 1993年初版で、2005年に新版が出てる。

「社会から、認められてるのかしら?」

 2015年2月5日に、第4刷が、出てる。

「それで、なんて書いてあるの?」

 23ページに、『アダルトビデオは見せるための演技』とあって、こう書いてある。



 アダルトビデオ(AV)とはどんなものでしょうか。なかには、見たことがある人もいると思います。裸の女の人と男の人が出てきて、いろいろなセックスをしているシーンをおさめたものです。

 悲しいことに、これには大きな間違いが描かれています。

 AVは、見せるために演技をしているものなので、腟にペニスが挿入されるやいなや、女の人が「うぅ~感じるぅ~」などとあえいだりしています。

 だから、セックスの情報をAVや雑誌でしか得ていないという男の子たちは、女性が「腟でオーガズムを得るものだ」とか、「挿入したらすぐに感じるはずだ」「絶対に声が出るものなのだ」と思ってしまうかもしれません。

 女の子のほうも、「腟で感じないけど、私ってへんかしら」と思ってしまったり、わざわざ感じたふりをして声を出してしまう人もいるみたいです。

 大の大人でも、「クリトリスでしか快感が得られないのは、未熟な証拠だ」と信じている人がいるのが現状です。

 ここではっきりと知っておいてもらいたいことは、一生を通じて、女性の腟の中はほとんど無感覚ということ。

 快感の引き金となるのは、腟から離れたところにあるクリトリスです(言葉の意味がわからない人は93ページを読もう)。

 この点が理解されると、男の子が自分の性器が小さいといって悩むことがいかに無駄なことかもわかりますね。

 また、このごろAVのまねをしたために、腟で出血をおこす女性が増えています。相手が腟に指を入れて、爪でひっかき回して傷をつけているのです。

 AVで、指を入れて感じているように見えるのも演技です。とても危険なことですから、やめましょう!


(以上 23ページから)




「えー、あっ、でも、文献ひとつで、信じて良いの?」

 そういうと思った。

 この本も、見てある。

河野美香女の一生の「性」の教科書』(講談社ブルーバックス

「同じ人じゃない」

 よく見て、名字は同じだけど、名前が違う。女の人でも、結婚して名字が変わる人はいるけど、名前は変わらない。

ペンネームなんじゃない?」

 経歴が違う。

 河野美代子(こうの みよこ)

1947年広島生まれ。広島大学医学部卒業後、同医学部産科婦人科学教室、総合病院産婦人科部長を経て、1990年広島市内で河野産婦人科クリニック開設、現在にいたる。


 河野美香(こうの みか)

高知県生まれ。月経が乱れやすい自分の体への関心から産婦人科医を志す。1974年、徳島大学医学部を卒業。同大学附属病院、徳島県小松島赤十字病院、徳島逓信病院などでの勤務を経て、現在は徳島市内で河野美香レディースクリニック院長。


 ウソが書いてあったらね、学歴詐称だからね。

「それで、ブルーバックスには、なんて書いてあるの? アダム徳永さんの冊子には、GスポットとかTスポットとか、書いてあったけど」

 そのことについてね、確かに、Gスポットなどの膣内の感じやすい部分はあるけど、一方で、不感症とか冷感症と思ってしまっている女の人がいるのは、膣の中に男の人のものを入れられても、私感じないんだけど、という女の人が多いからだと分かってきた。

 少なくとも、麻友さん。麻友さん自身は、十分、体を満たされただろ。

「『お願い、入れてー』なんて言ってるのは、演技だと、はっきり分かったわね。でも、太郎さん、発散しなくて、良かったの?」

 大好きな、麻友さんが、喜んでるの見てて、満足。


「じゃあ、男の人が、みんな太郎さんみたいだったら、子供は、できないわね」

 キスだけでは、子供は、できないからね。

「一応、聞いておきたいわ。そのやっと見付けた本で、セックスという言葉は、どう定義されているの?」

 {\mathrm{sex}} には、『①性別』『②性欲、性器』『③性交』と、意味があり、このうち、性交とは、生物学的にいうと、男性のペニスを女性の腟に挿入して、精子の含まれた液体、精液を出すことです。

とある。18ページだ。

「そこまでしないと、初体験じゃないの?」

 それ、絶対不自然。

 私の美意識から言って、麻友さんと真っ裸で愛し合ったさっきの行為は、どう見ても、初体験したと思っていいはず。

「私も、もう男の人を知った、という感じで、処女の感じ方とは、違ってるわね」

 だから、麻友さんも、もう処女ではありません、と言って良いし、私も、童貞ではなくなったと、思うことにするよ。

「太郎さんの、美意識は、絶対ですものね。美しい定義じゃなきゃ駄目なのよね」

 膣に精子を射精するという、子どもができる可能性があることをすることを、初体験としてしまうと、中学生などが、初体験してるのに、子供ができていないという事実を、説明できない。望まぬ妊娠をしたようなカップルの数が、少なすぎる。

 こういう自然でない定義は、受け入れられない。

「じゃあ、裸で、ペッティングし合ったら、それで、初体験だし、セックスと見なすのね」

 当然だよ。

「私も、太郎さんの美意識って、分かってきたわ」

 ありがとう。


「『大公』トリオという美しい曲のデートの後に、良心の呵責のない初体験ができて、幸せだったわ」

 麻友さん。私のこと、何か、カラクリが、あるんだろ。

 麻友さんを、登場させて、何度もデートしたりしている、私のブログが、一度も炎上していないのは、麻友さんのファンや、ネット民に、私を攻撃しないでね、という通知が行ってるとか。

「そのうち、分かるわ」

 でも、私達、処女と童貞のままで、初体験の性描写、かけたね。

「太郎さん、本当は、夏に、野辺山の満天の星空の下で、初体験したかったのよね」

 高校時代からの夢だけど、お風呂に入りたいという現実が立ちはだかっちゃった。

「太郎さん。知ってるかしら? 部屋の中をプラネタリウムにできる機械を売ってるの? これ」

HOMESTAR Classic (ホームスター クラシック) メタリックネイビー

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  • 発売日: 2013/03/29
  • メディア: おもちゃ&ホビー

 あ、確かに、名案かも。

 明るい部屋で、イチャイチャ楽しんだ後、電気消して、星を眺めながら、星座の話や、星が光る仕組みをしゃべりながら眠るって、最高だね。

「本当に、美しいエンディングになったわね」


 普通のふたりなら、この後、もう一度、お風呂入って、腕枕しながら、寝るのかなあ。

「ああ、若菜と結弦のこと、忘れてたわね」

 ちょっと、スマホ、取ってくる。

若菜「本当にお父さんが言ったように、待ちくたびれるほどでした」

結弦「お母さん。僕たちのこと忘れてたでしょ」

「全部、見てたのね」

若菜「でも、良い体験でした」

結弦「じゃあ、ダブルベッドで、4人で寝るか」

 麻友さん、明日の朝、何時に起きる必要があるの?

「一応、開けてあるけど、9時には、起きるわ」

 レイト・チェックアウトにしてあったのか。さすが。

「今は、前髪セットに、2時間は、かからないけどね」

 じゃあ、先に、お風呂入っていいよ。

「ありがとう」

若菜「今、20時になったところです。本当に、2時間以上でしたね」

 ただね、世の中の夫婦がみんな、こんな幸せな交わりを、できてるわけじゃないんだ。

 お前たちが、幸せな体験をできるように、祈ってるよ。


「太郎さん。あがったわよ」

 じゃあ、今日は、相当、疲れてるだろうから、先に眠りに落ちててもいいよ。

「私は、睡眠時間1時間で頑張った人間よ。これしきのこと」

 わあった。わあった。じゃ、入ってくるよ。

結弦「本当に、お父さん、初めてだったのかなあ?」

「それは、本当よ。あの人、女の人にハグされたことは、1回あるけど、女の人をハグしたことは、1回もないみたいで、私とが、ファーストキスだったし、本当に、初めてだったのよ」

若菜「それにしては、女の人のことも、よく調べてましたね」

「その必要性は、独自調査によると、デール・カーネギーの『人を動かす』にあるのよね。あの本の最後は、『第六部 家庭を幸福にする法七』で、その最後、第七章は、『正しい性の知識を持つ』で、結論は、『性的不調和は家庭不和のおもな原因にはならないと一部の精神医学者が唱えているが、これは、暴論である。性生活さえ順調であれば、たいていの場合、他の少々の摩擦は問題にならない』と書いてあるの。カーネギーホールのあのカーネギーが、そう言うと、重く感じられるわね」


 忙しい麻友さんが、20時台に寝るなんて、なかなかないかも知れないけど、寝ようか。

「太郎さんは、マッカラン以外のお酒は、飲まないの?」

 ビールでも、飲みたいか。

「ちょっと、飲みたいわ」

 じゃ、つき合うよ。

「じゃ、ふたりの初体験に」

 カンパーイ。

 こうして、夜は更けていきました。

 現在2018年7月27日16時16分である。おしまい。