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細胞の分子生物学(その11)

 現在2019年3月20日16時50分である。

「あっ、生物学の話をもっとして欲しいと言ったから、始めてくれたのね」

 うん。

『細胞の分子生物学』の、第2ページ。


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地球上の細胞が共有する特徴

地球上には現在,1000万種以上(おそらく1億種)にのぼる生物がいるとされる。種はそれぞれに違い,いずれも自身を忠実に複製して子孫を残す。親は,子孫がもつべき性質を詳細に規定する情報を伝達する。この遺伝(heredity)とよばれる現象は,生命の定義の中核をなすものである。結晶の成長,ろうそくの燃焼,水面での波の形成なども秩序立った構造を作りはするが,親の特徴が子孫にもみられるという関係はない。ろうそくの炎と同様に,生物も自由エネルギーを消費して自らの組織を作り出し,維持する必要がある。しかし,生命は自由エネルギーを用いて,遺伝情報によって規定される複雑で巨大な化学システムを動かす。


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 取り敢えず、第1段落。

 ちょっと、雑学を話そうか。

「えっ、どんな?」

 ハイファイ(Hi-Fi)って、オーディオで使うと、音が良いことの、代名詞みたいなものだよね。

「最近は、ハイレゾ(Hi-Res)っていうのもあるけど」

 うん。それもそうだ。

 実は、どちらも、音が良いという意味ではないんだ。

「えっ、だって、ハイファイって、・・・」

「ファイって、何の略なの?」

 fidelity(忠実)なんだよ。だから、ハイファイは、

high fidelity(高忠実度)

であって、元の音を、忠実に再現できますという意味なんだ。

 だから、元の音楽が、うるさい音楽だったら、例えば、『紛らしている』だったりしたら、ハイファイだと、そのまんま、うるさくなり、音が良いと感じないことになる(笑)。

「もう、許さないわよ。あの歌は、気に入ってるんだから。じゃあ、ハイレゾのレゾは?」

 resolution(解像度)なんだよ。つまり、どこまで細かく分けられるか。

 というわけで、ハイレゾも、高いレヴェルまで、繊細な音になってるというだけで、麻友さんの声が、良く聴こえる、ということには、ならないんだ。


「それで、何が、言いたいの? 私の『紛らしている』を貶したんだから、ちょっとやそっとでは、許さないわよ」

 テキストに、

『いずれも自身を忠実に複製して子孫を残す』

とある。でも、完璧に忠実にしていたら、受精卵から色々な形の細胞に分かれていかないし、そもそも、進化という、生命の持つもの凄い武器は、生まれなかったはずだ。

「ああ、そういわれれば、そうね。忠実って、正確にってことだものね」

 こういう風に、とことんこだわりながら、読んでいくというのも、時には、必要。

 だけど、このすぐ後で、分かるけど、それが通用しないことも多々ある。

「どんなこと?」

『自由エネルギー』

という言葉が出て来るでしょう。

「ああ、書いてある」

「自由エネルギーって、自由なエネルギーってこと? エネルギーが、自由って、いつ使っても良いってこと?」

 多分、そんな誤解をするだろうな、と思っていた。

 実は、『自由エネルギー』というのは、物理学で、きちんと定義されるある量であって、いつ使っても良い自由なエネルギーとか、そういう意味ではないんだ。

「じゃあ、どういうものなの?」

 これ、このゼミでの、分からないことリスト第1号に、してもらえない?

「えっ、分からないことリスト? つまり、太郎さんにも分からないの?」

 はっきり、そうだと言っちゃった方が、良いかもな。

 自由エネルギーというのは、熱力学という物理学の分野での、言葉なんだけど、熱力学って、私が、もの凄く不得意な分野なの。

「でも、『きちんと定義されるある量』って、知ってた」

 ちょっと知ってるっていうのと、麻友さんに説明できるほど分かってる、というのでは、全然違うの。

 物理学では、『ヘルムホルツの自由エネルギー』というのと、『ギブスの自由エネルギー』というのと、2種類あって、ここでアルバーツ達が言ってるのが、どっちなのかも、分からない。

「うわっ、こんな第2ページで、もう学問の深淵が、口を開いてるのね」

 数学の本でなくても、最初の15ページは、鬼門だということが、分かったね。

 学問というのは、入門の部分が、一番厄介というわけだ。

「私、まだ数学にも、物理学にも、分子生物学にも、入門できてないの?」

 確かにそうだけど、学問という門には、私の手助けもあって、入門できてるんじゃないかと思う。

「どうして、そう思うの?」

 ゼミをするっていうのは、学問の段階に入っているということだから。

「ふーん。じゃあ、


 分からないことリスト第1号

本文2ページの自由エネルギーというものの意味は、今は分からない。



と、しましょうね」

「ところで、私には、『結晶の成長』というのも、分からないのよ」

 ああ、化学やってなければ、分からないよね。

 結晶(けっしょう)というのは、色々なものが、そうなんだけど、身近な例では、氷も、そうなんだ。

「氷?」

 氷って、水に浮くでしょ。ほら、ウィスキーの水割りで、氷、浮いてる。

「ああ、そうね」

 つまり、水より氷の方が、軽いんだ。正確に言うと氷の方が、密度が低い。

「それで?」

 なぜ、氷の方が軽くなるかというと、水の時は、{\mathrm{H_2O}} (エイチトゥーオー)という水の分子が、自由に動き回っている状態なんだ。だから、水は自由に形が変わる。

 ところが、氷になるときは、そのたくさんの水の分子が、氷の場合氷特有の、配置に、それぞれが並びながら、氷という固体になっていくんだ。

 このその物質特有の配置に並んだものを、結晶というんだ。

 そして、実は、水の氷という結晶は、少し内部に、余裕があるんだ。

 だから、水の時より、密度が低くなり、氷は水に浮くということになる。

「太郎さん、それは、『AKB48中学理科』の17ページにも書いてあるけど、『結晶』という言葉がなかったのね。結晶というと、雪の結晶とかばっかり想像してたけど、普通の氷も、結晶なのね」


 それどころか、金属って、ほとんどみんな結晶だよ。

「じゃあ、結晶じゃない金属というのは?」

 アモルファス(非結晶という意味)っていう言葉、聞いたことないかな?

 金属って、普通、電気通すでしょ。

「うん」

 その金属を、一旦高温にして溶かしてから、その金属が、結晶を作ろうとして頑張っているのよりもっと速く、冷やしてやるんだ。

 そうすると、結晶を作る暇がなかったので、めちゃめちゃになった物質ができる。

 これも、アモルファスだ。

「その講義は、いいけど、そんなめちゃめちゃなもの作って、なんになるの? 趣味?」

 いや、なんでも、やってみるってことは、すごいことで、初めは、遊びでやったのかもしれないけど、このアモルファスの方が、元の結晶になっている金属より、電気を良く通すことが分かったんだ。

「えー、それ、最初に気付いた人、嬉しかったでしょうね」

 多分ね。でも、最初は、実験ミスかなと、信じられなかったかも知れない。

「うん。今日は、このアモルファスの話で、満足。太郎さんとの勉強は、速く進むことに命をかける必要は、ないものね。私、以前太郎さんが、小学生向けに書かれているけど、京大から戻ってきてからでも難しかったと言ってた、『だれが原子をみたか』という本、はしがきを、ちょっと読んでみたのよ」

江沢洋『だれが原子をみたか』(岩波科学の本)

だれが原子をみたか (岩波現代文庫)

だれが原子をみたか (岩波現代文庫)

 これは、良い本だよ。

「はしがきに、


『いっぺんではわからないということには,科学というものの構造による部分があると私は思う.開きなおるようだが,こればかりは読者の努力にまつ以外どうしようもない』

『というのは,本はページを追って順々に読んでいくようにできているが,科学は網の目のような構造をもっているからだ.Aのことを読んでからBを読みCを読む,というだけでは科学を自分のものにしたことにならない.自分でCをAに結び合わせ,もっと前に読んだこととも結び合わせて網を編んでゆくという作業が必要なのだ.Cを読んでから,もういちどAを読みかえすと内容がはっきりするということもあるだろう』

『科学の歴史には失敗した推論の死骸が累々とつみかさなっている.その歴史を,この本ではたどるので,ある個所だけとると,後になってまちがいとわかることも書いてある.ひとつひとつの推論が正しいか誤か,それを自分で判断しながら読むのは,思考のよい訓練になる.まちがいが見抜けないことを心配する必要はない.どこかで正しくない編みかたをすると,いつか必ず科学の網は編み続けられなくなるものだ.そのときに,まちがいは自ずと明らかになる.それから直してもおそくはない』


と、あるのよね。この、『正しくない編みかたをすると,いつか必ず科学の網は編み続けられなくなるものだ』というの、すっごく共感できた。こういうことって、科学だけじゃなくて、お芝居でも、あるのよ。どうしても、上手く行かないと思ったら、入り口間違えてた、みたいなこと」

 そうか、そのことが、分かってたか。

 麻友さんは、お芝居に打ち込んで何年にもなるから、それに共感できた。でも、普通の小学生や中学生に、これは、猫に小判なんだよね。

 むしろ、私が、麻友さんに、一時引退しても良いから、大学へ行ったら? と言ったのは、こういう、分野を越えて成り立つことを、感得することが、大学に行くといやでも味わえることになるからだったんだ。

 今でも、大学へ4年間(かな? どんな大学かは言わないから、4年とは限らないけど)通ってみるというのは、麻友さんの女優としての演技に、絶対プラスだと思っているけど、そこはまあ、麻友さんの人生だから、邪魔はしない。

「つまり、村ちゃんのアドバイスね」

 自分のやりたいことをやっているとき、人間は、輝いている。

今日は、長くなったので、これで、終わりにしよう。

「面白かったわ。ありがとう」

 じゃあ、おやすみ。

「おやすみ」

 現在2019年3月22日21時31分である。おしまい。