現在2006年1月17日1時00分である。
解析入門Ⅰの第Ⅰ章の§1の問1の(ⅳ)~(ⅹⅰ)を解こう。
(ⅳ)0a=0
解
0a=(0+0)a=0a+0a。
よって、
0=0a+(-0a)
=(0a+0a)+(-0a)
=0a+{0a+(-0a)}
=0a+0=0a。
以上より
0a=0。
解終わり
(ⅴ)(-1)a=-a。
解
a+(-1)a=1a+(-1)a
={1+(-1)}a
=0a=0
(ⅱ)より、aとたして0になるのは-aだけだったから、
(-1)a=-a。
解終わり
(ⅵ)(-1)(-1)=1
解
(ⅴ)により
(-1)(-1)=-(-1)=1
解終わり
(ⅵ)は重要な命題だ。マイナスの数とマイナスの数をかけると、プラスになるというのだ。これも中学で習うことだが、今その証明をしたのだ。
中学では、時間と共に動く列車の位置を数直線上に表し、負の速さ例えばマイナス2、つまり、左の方向に速さ2で進む列車を考え、その列車の位置が、-2×tと表されることを認めさせ、そこで、時刻が-3の時、つまり、今から3時間前にどこにいたか、と考えさせる。
そうすると、列車は6の位置にいたので、
(-2)×(-3)=6
となると教える。私達は、体の性質として、それを導いたのである。もっとも、マイナスの数かけるマイナスの数はプラスになるというのは、(ⅷ)で本当に示されるのだが・・・
(ⅶ)a(-b)=-(ab)
=(-a)b。
解
ab+a(-b)=a{b+(-b)}
=a0=0
∴a(-b)=-(ab)。
たして0になるのは、加法の逆元だからである。同様に、
ab+(-a)b={a+(-a)}b
=0b=0
∴(-a)b=-(ab)。
ただし、∴という記号は、「よって」と読む。海外の文献では余り見かけないが、日本では、よく使われている。これを逆さまにした、∵は「なぜならば」と読む。
以上より、
a(-b)=-(ab)=(-a)b。
解終わり
(ⅷ)(-a)(-b)=ab。
解
(ⅶ)より
(-a)(-b)=-{a(-b)}
=-{-(ab)}=ab。
解終わり。
これで、中学でのマイナスかけるマイナスはプラスというのが、完全に証明された。しかも私達は一般の体の性質としてこれを導いたので、今後、実数でなくても、体だと分かったものには、この性質を使って良いのである。これが一般論の強みである。しかし一般論に走りすぎると、具体的に何を扱ってるのか分からなくなり、足もとが危なくなる。気をつけよう。
(ⅸ)ab=0ならばa=0またはb=0。
解
a=0
ならば問題ない。
a≠0
とする。この時、乗法の逆元の存在から、
a-1
が存在する。そこで、ab=0ならば
0=a-10=a-1(ab)
=(a-1a)b=1b=b
∴b=0。
以上より、ab=0ならばa=0またはb=0であることが分かった。
解終わり
この性質は重要である。かけて0ならどちらかが0となるのは当たり前そうだが、数学を学んでいくと、当たり前ではなくなってくるからだ。もう少しすると行列というものが出てくるが、行列は、環を作っている。そこでも、0に相当するものが出てきて、零行列というのだが、かけて零行列だったら、一方が零行列になるかと思ったら大間違い、そうならない場合があるのである。高校生ならもう知っているよね。
これは体の大切な性質なのである。
(ⅹ) (-a)-1=-(a-1)。
解
(ⅷ)により、
(-a){-(a-1)}=aa-1=1
∴(-a)-1=-(a-1)。
なぜならば、-aとかけて1になるのは唯一つに定まるからである。これは、足し算についての群についてだけ(ⅱ)で確かめたが、群としての性質しか用いなかったので、全部の群に成り立つことだからである。逆元が唯一つに定まるというのは、群の持つ普遍的な性質なのである。
解終わり
(ⅹⅰ) (ab)-1=b-1a-1。
解
(ab)(b-1a-1)
={(ab)b-1}a-1
={a(bb-1)}a-1
=(a1)a-1=aa-1=1。
∴(ab)-1=b-1a-1。
∵abの逆元も唯一つだからである。
解終わり
これで問1は全部解いた。こういうことが初めての人には難しいように思えるかも知れないが、もっと進んでいけば、こんなの朝飯前になる。丁寧に解答をつけたが、今後も、すべての問題に、丁寧な解答をつけるよう努力する。もし私に解けない問題が出てきたら、正直に白状しよう。そして、もっと数学の出来る人に解いてもらおう。
今日はここまでにする。次回は [2]順序 から、始めることにする。
現在2006年1月17日2時33分。おしまい。