現在2015年5月8日23時04分である。
まゆゆ、昨日の話は、どれくらい分かったかな。
まったく理解不能な部分もあっただろうけど、実数とはなんだっけ、という問いかけに、今なら答える余裕ができてきたんじゃない。
そこまでで、良いよ。
背理法のことだの、矛盾のことだの、難しいことまで分からなくて、大丈夫。
では、実数って、どんな数だ?
と、中学生や高校生なら、答えるよね。
でも、無理数って、どんな数だった?
「有理数でない数」
だよね。
これだと、初めから、数っていうものが、決まってないと、鶏が先か卵か先かってことに、なっちゃうよね。
だから、
「そもそも、数って何よ。」
という問いかけをしないと、いけない。
もう思いだしてきたかも知れないけど、分数で表せない数でも、小数を使えば表せたよね。
小数というのは、言葉だけ聞いていると、
0.5
とか、
0.21
などのように、小数点の左側が、0の場合だけのように思えるけど、
42.195
などのような、小数点の左側が、0でないものも、小数って言うんだ。
そして、中学生が扱う『数』っていうのは、この、『小数で表せる数』のことなんだ。
なんでかというと、小数よりも強力な、数を表す方法を習わないから。
だから、結論を言うと、
「実数とは、小数で表せる数のことである。」
となる。
まゆゆ、納得した?
ところがね、まゆゆ、は、今は、納得してるかも知れないけど、段々怪しくなってくるんだぞ。
私が衝撃を持って受け止めたことがあったから、そんなことを言うんだ。
2月くらい前、私が通っているトントン工房という作業所で、数学をやっていたとき、
「数学って、完全じゃないわよね。だって、1リットルのジュースをコップに分けて3等分するでしょう。それを、もう一回、合わせれば、元の1リットルに戻るじゃない。なのに、1割る3をやると、0.333333・・・・ってなるから、それに3をかけても、0.999999・・・・で、1に戻らないじゃない、おかしいわよね。」
と、質問を受けたのだ。
私は、あまりのショックで、5秒ほど、答えられなかった。
なぜかというと、その人は、優秀な大学の理系の学部を卒業していて、トントン工房のメンバーではなく、作業を手伝いに来ている、精神に障害のない、立派な人だったからだ。
この人のような素晴らしい人でも、こんな易しいことが、分かっていないなんて、世の中のほとんどの人は、計算機で、1÷3とやって、
0.33333333
となって、それに、3をかけて、
0.99999999
となるのを、
「数学はきちんとしてない、1にならないじゃないか。」
ととらえているということだ。これは、ゆゆしき事態だ。なんとかせねば、と思ったのである。
まゆゆ、この謎、解ける?
解けなくても、恥ずかしくないよ。あんな立派な人でも分かってないんだもの。
私が、こんな易しいこと、という理由を書くと、実は私は、中学2年の時から、この謎の解き方を知っていたからなんだ。
神奈川県では、中学2年生で、アチーブメント・テストというものがあって、それで、良い点数を取っておかないと、目指す高校に行かれないんだ。それで、私の母が、中学2年生の時、私を、代々木ゼミナールに通わせたんだ。そして、大船校のハイレベルなクラスの講習を受けていたとき、数学の先生が、
「君たち、有理数というのは、分数で表せる数だよな。ところで、1割る3は、
1
_
3
だけど、0.33333333・・・・とも、書けるよな。この2つが、同じ数だって、証明できるか?」
と、聞いたんだ。私は、答えられなかった。
「どうやったらいいんだろう。」
と、分からなかった。
そうしたら、先生が、こうやったのだ。
「まず、0.33333333・・・・が、なんだか分からないのだから、これを、エックスとおく。」
x=0.33333333・・・・
「次に、両辺に、10をかける。」
10x=3.33333333・・・・
ここで、まゆゆ、は、ついて来られないかも知れない。
「0.33333333・・・・に10をかけたら、3.33333333・・・・となる。」
というのを、丁寧に説明すると、ひとつひとつのケタを、バラバラに考えるのだ。
まず、0.3に10をかけると、3でしょう。
次に、0.03に10をかけると、0.3でしょう。
その次に、0.003に10をかけると、0.03でしょう。
ここまでを書くと、0.333に10をかける場合、
0.333×10=(0.3+0.03+0.003)×10
となって、分配して、
=0.3×10+0.03×10+0.003×10
ここで、今計算したことを使って、
=3+0.3+0.03
これを足し算して、
=3.33
これを見て分かるように、3がいくつ並んでいても、小数点が一つずれるだけなのは、分かるよね。だから、
「0.33333333・・・・に10をかけたら、3.33333333・・・・となる。」
さて、
10x=3.33333333・・・・
というのと、
x=0.33333333・・・・
というのから、こういう荒っぽいことをする。
上から下を引くんだ。
左辺は、10x-xで9xになる。
右辺はどうなる?
3はどこまでも並んでいる。10倍しても並んでいることには変わりはない。だから、
3.33333333・・・・
-0.33333333・・・・
_______________
3
と、なる。
先生は、こう書いて、
「9x=3だ。だから、両辺を9で割って、
1
x=_
3
と、求まる。だから、0.33333333・・・・と、
1
_
3
は、同じ数だと証明できた。」
と言った。
中学時代の私は、学校で習わないことを教わって、
「これは、良いことを教わった。」
と、嬉しかった。
だが本当は、これは、高校で習うことなのだった。
もう、まゆゆ、は、さっきの謎が解けるよね。
0.33333333・・・・に3をかけると、0.99999999・・・・だけど、この、
0.99999999・・・・
というのは、途中までで止めて、
0.99999999
としたら、1じゃないけど、どこまでも続けたら、ちゃんと1になると、証明できるよね。
こういう時、大学の教科書だと、証明するのは読者の演習問題とする、と書くんだけど、まゆゆ、に、そんなことはしないよ。
まず、
y=0.99999999・・・・
とおく。両辺に、10をかける。
10y=9.99999999・・・・
下から上を引く。
10y = 9.99999999・・・・
- y = 0.99999999・・・・
______________________
9y = 9
9y=9だから、両辺を9で割って、y=1。
つまり、
1=0.99999999・・・・
であることが、証明された。
だから、計算機で計算が合わないのは、有限のケタで計算しているからなんだね。
これで、最初のジュースの問題に答えられた。
数学は、きちんと3等分したジュースが、元の1リットルに戻ることを、計算出来るのである。
ところで、まゆゆ、は、ここで、重要なことに気付いたかな。
1という数には、
1
という小数での表し方の他に、
0.99999999・・・・
という小数の表し方もあるということ。
小数での表し方が、2通りある数が、他にもあるんだよ。
例えば、さっきの
0.21
は、
0.2099999999・・・・
と、できるし、
42.195
も、
42.19499999999・・・・
とできる。
要するに、
1=0.99999999・・・・
なのだから、最後のケタを1つ減らして、後ろに9を並べても、同じ数になるんだ。
例えば
42.195
で証明すると、まず、
x=42.19499999999・・・・
とおく。
小数点以下に9を並べるために、1000倍する。
1000x=42194.99999999・・・・
これをさらに、10倍する。
10000x=421949.99999999・・・・
下から上を引く。
10000x = 421949.99999999・・・・
- 1000x = 42194.99999999・・・・
_____________________________
9000x = 421949-42194
これを、このまま計算すると大変なので、分解する。
9000x =(42194×10+9)-42194
順番を入れ換える。
9000x = 42194×10-42194+9
10個あるものから、1個引くので、9個になる。
9000x = 42194×9+9
後ろの9に細工をする。
9000x = 42194×9+1×9
因数分解と同じように、分配してあったものを、まとめる。
9000x =(42194+1)×9
両辺を9で割る。
1000x = 42195
両辺を1000で割る。
x = 42.195
ちゃんと、
42.195=42.1949999999・・・・
であることが、証明できた。
ちょっと、長い証明で、まゆゆ、は、疲れたでしょう。
普通の人にとって、数学の証明を読むというのは、ものすごく、辛いことなんだよね。
実は、数学者にとっても、証明をきちんと読むっていうのは、ものすごく大変な作業なんだよ。でも、それで食べているんだから、嫌とは言わないんだよ。それに、最後まで一点のギャップも許さず証明を読み切って、理解したときは、そりゃースカッとするものね。
今日は、数学の話は、ここまでにするよ。
さて、そうやって、代々木ゼミナールに通って受けたアチーブメント・テストだったのだけど、数学は、50点満点で49点だった。
なぜ1問、間違えたんだと思う?
私が、体操が苦手だったからなんだよ。
こういうまるばつ問題があったんだよ。
「A君は、1学期100m走が12秒6でした。2学期は、12秒3でした。3学期は、12秒1でした。」
問.A君の運動能力は、上がってきている。まるかばつか。
まゆゆ、は、迷わず、まる、とするだろうけど、私は、
「あっ、段々遅くなっている。運動能力下がってるんだ、ばつ。」
とやってしまったんだ。
どういうことか分かる?
私は、スポーツ選手が必死になってタイムを縮めようとしているんだ、ということを、中学2年になるまで意識したことなかったんだよ。
だって、私、ものすごく運動神経、鈍くって、50m走で、10秒かかるような人間なんだもの、タイムなんて縮めようなんて、一度も思ったことなかったんだ。
信じられないことだけど、本当の話なんだ。
そのテストで、私は、理科と英語が50点満点だった。数学も満点なら、三冠王になれたのに。
悔しくって、悔しくって、30年前のことなのに、今でも覚えている。
まゆゆ、も、うんと嬉しかったことと、うんと悔しかったことと、うんと悲しかったことと、うんと辛かったことと、うんと恥ずかしかったことは、何十年経っても、覚えていると思うよ。
嬉しかったことが、いっぱい思い出の中にある人になってね。
今日はここまで。
現在2015年5月9日1時30分である。おしまい。