現在2015年7月10日12時16分である。
今年の6月13日に、前橋汀子さんというヴァイオリニストの、バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ全曲のCDは、最高のCDなのだ、というようなことを、書いた。
そして、明日(7月11日)に、神奈川県立音楽堂へ、そのコンサートを、聴きに行くのだとも書いた。
あの、
「これが、我が祖国、日本です。」
という話である。
あの投稿をした後、今でも前橋さんのCDは、手に入るのだろうか、と思って、アマゾンをチェックした。

- アーティスト: 前橋汀子,バッハ
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックレコーズ
- 発売日: 1993/06/21
- メディア: CD
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そうしたら、私の、
「これは人類の至宝だ!」
というレビューに対して、今年の3月20日に、誰かがとんでもないレビューを書いてきていたのだ。
その人曰く、現在発売されている、前橋さんのCDは、1993年に再発売されたものであり、昔1989年に発売されたものとは違う。自分は、1989年のものを、中古で買い求めて聴いてみたのだが、旧製品の方は、音質も素晴らしく、星5つだが、新製品は、星4つだ、というのである。
私は、慌ててしまった。
私が、このCDを買ったのは、前橋さんが、京都に弾きに来てくれた、1991年であり、ずっと聴いていたのは、旧製品だったのだ。
一方、そのCDは、実家を離れるとき、母や弟も聴きたいということで、実家に残してきた。
私自身は、新製品を買い直し、その後は、新製品を聴いていたのだ。
新しいものに変えたとき、音質が悪くなった、という印象は、受けなかった。
だが、私は、CDというものの、製造工程を知っていた。
CDというものは、ピット(pits)という信号を担うでっぱりを作るために、ハンコウのようにして、アルミのディスクに、信号を打ち付けるのだ。
その打ち付けるものを、スタンパーというのだが、これが、長く使っていると、劣化してくるのだ。通常、2~3年で、もう使えなくなると、言われている。
「デジタルなのに!?」
と思われるだろうが、これは、本当の話なのだ。
だから、AKB48の『僕たちは戦わない』というシングルCDが、初日に147万2千枚売れたといっているが、全部が同じ音質ではないのである。
スタンパーが、何百枚もあったはずはないから、一つで1万枚もスタンプしたら、当然、後の方は、音質が落ちる。CDとは、そういうものだ。
だから、前橋さんのCDが、新製品の方が音質が悪い、というのを聞いたとき、ソニーが、スタンパーを新しくしなかったのではないかと疑った。
それで、アマゾンのレビューに、
「旧製品の方が、音質が良いと言って、古いものを高く売りつけるような人間も現れるかも知れないので、私が、実際、聴き較べるまで、待って下さい。」
と書き、実家から、私が、昔から聴いていた、1991年に買ったCDを持ってきた。
そして、聴いてみると、確かに音が違う。
私が、この演奏で一番すごいと思っているところである、最後の2曲をかけただけで、明らかに違う。
でも、私は、新製品の方が、音が劣化しているとは、思わなかった。
新製品の方が、ノイズが少なくて、音がクリアーなのだ。
だから、逆に、古い録音(1988年)であるがゆえの、録音技術の低さが分かってしまう。
録音技術は、日進月歩で進歩している。ブラームスのヴァイオリン協奏曲など、2000年のチョン・キョンファのものと、2001年のヒラリー・ハーンのものでは、明確に違いの分かる場所がある。
音が鮮明になったために、あのレビュアーは、音質が悪くなったように思ってしまったのだろう。或いは、あのレビュアーの持っているCDが、たまたまそのスタンパーの最後の方にスタンプしたものであり、音が悪かったのだろう。
私は、もう少しで、前橋さんの名誉がかかっていると、ソニーを非難し始めるところだった。
ただでさえ、前橋さんに、良い環境を提供できなくて、前橋さんが、avexに移ったくらいなのだから。
そんなわけで、音質の悪いCDを発売されて、前橋汀子さんの名誉が汚されるなんてことには、ならなかった。
ソニーも、さすがに、前橋さんほどの人ともなると、自分のところを去ったからといって、ぞんざいに扱うことなどできなかったと見える。
良かった。
この2時間24分13秒の演奏を聴き終わった後、私は、
「この後に、もうどんな音楽もいらない。」
と感じる。
今でも、私にとって、最高のCDである。
明日、雨女として知られる、あの人も許してくれて、天候は晴れのようなので、
「これが、日本だ。」
を、聴いてきます。
愛する人よ。こんなことで、嫉妬するような、小さい人にならないよね。
現在2015年7月10日14時09分である。おしまい。