現在2017年4月14日21時19分である。
「太郎さん。今の私に新しいアイディアを説明してくれても、私には、分からないわ」
確かに、30年以上、物理学をやってきた人間が、やっと思い付いたアイディアを、物理学を学んだこともない麻友さんが、分かるはずないのは当然だ。
「太郎さんが、喜んでいるのは、分かるけどね」
4回目の入院に関しては、記事にしなければ、と思いながら、ズルズル引きずっちゃってることが、他にもあるんだ。
「どんなこと?」
ひとつは、麻友さんに会う前の、『地震が起こっても火事になっても使えるエレヴェーター?』という投稿で書いたエレヴェーターのこと。
麻友さんに会う前の3回目の入院の時には、確かに、
『非常用エレベーター』
というプレートがはってあったのだが、私があんな投稿をしたためか、4回目に入院したときには、プレートがなくなっていた。
「太郎さん。過去に書いたことが正しいかどうか、随分丁寧にチェックしてるのね」
そりゃー、科学者は、信用が生命だもの。
「次は?」
2番目は、お風呂に入るときのことなんだ。
「4回目に入院したときは、お風呂に看護婦さんを呼んで、背中流してもらった?」
そういうことじゃないよ。
『この世界の本当の姿は?3』という投稿で、自分の予約した30分の下の欄に、『介助』と書いて、60分間の予約を取って、ゆっくりお湯につかるという方法を、看護婦さんから教わった、と書いた。
「そういえば、随分、優雅にやってるなあ、と思ったわ」
あの方法なんだけどね、4回目に入院したときも、2回だけ、やったんだ。
そうしたら、退院寸前の時に、
『松田さん、『介助』って、看護師が書くぶんにはいいですけど、松田さんが書いちゃダメです」
と、看護婦さんから、怒られちゃったんだ。
「本当は、いけなかったのね」
それを、私は、こう取った。私は、もうこの病院に入院することは、ないのだと。
「太郎さんは、もう入院しないから、そういう入り方をする必要はない。一方、そういう入り方をすることを、他の人に吹聴しないでくれ、と言ったと取ったのね」
そういうこと。
「そんなこと、信じられないけど、やっちゃいけないことを、堂々と書いちゃいけないわね」
だから、修正の投稿をしなければならないと、思ってたんだよ。
「太郎さん。4回目の入院の時は、面白い収穫はなかったの?」
麻友さんが面白いと思う収穫かどうかは、分からないけど、『SONY許せぬと書きたかったが』の一連の投稿で書いたことが、少し確かめられたというのはある。
「それこそ、面白い話じゃない、なぜ、今まで黙ってたの?」
私に取って、麻友さんとの日常は、幸せなことが、いっぱいなんだよ。過去を、振り返ってはいられないんだ。
「あの一連の投稿の、何を確かめたの?」
入院していた時、私より13歳くらい若い男の人と、仕事の話をしたんだ。
「太郎さんの仕事というと、物理学の話?」
いや、コンピューターの話をしたんだ。
「ああ、その仕事」
その人が、私に、
『パソコンで、プログラミングができますか?』
と、聞いたんだ。
それで、
『C言語(しーげんご)で、インラインアセンブラなんていう機能があるなんて、去年まで知らなかった』
と、私は、答えた。
するとその人は、
『この話は、もうやめましょう』
と言ったのだ。
「えっ、言っちゃいけないことだったの?」
そうじゃないんだ。
あの人は、私が、パソコンのことをどれくらい知ってるか、試したんだ。
それに対し、私は、自分の知っている一番難しいことを話したので、あの人は、これで十分と思ったんだよ。
「インラインアセンブラというのは、どの程度の物なの?」
本当に使いこなせば、コンピューターウィルスを作って、北朝鮮の軍事基地にハッキングできるくらいの恐ろしいものなんだ。
「えぇっ、太郎さん、そんなことできるくらい、パソコンに詳しいの? じゃあ、私のパソコンも、ハッキングされてるの?」
アハハ、安心して大丈夫。
私は、インラインアセンブラという概念を知っているだけで、それでプログラムを組む訓練は、してないから。
この間、麻友さんが、3次方程式の解法を見せてって言って、私が、カルダノの解法、見せたでしょう。
そうしたら、麻友さんたら、『使えないじゃない』って言ったよね。
あれと、同じ。
北朝鮮にハッキングできるのは、あの時、3次方程式の解法を使えるところまで理解していた、私のようなひと。
それに対して、3次方程式が解けるということは、私から聞いて知ったけど、その解法を見ても、実際使えないのが、麻友さんみたいなひと。
そして、インラインアセンブラに関して、今の私は、3次方程式の前の麻友さんと同じ状態。
ものすごい武器があるのは、分かって、どういうものを調べたら良いかは、分かったけど、それを実際、やり遂げるのは、ものすっごく手間がかかるというわけなんだ。
「でも、北朝鮮を、ハッキングして、北朝鮮の軍事施設に壊滅的な打撃を与えられたら、ものすごく良いことじゃないかしら?」
うーん。人間って、こういうとき、コストと対価を考えるんだよね。
私に取って、C言語を勉強するのは、すごい苦痛なわけ、それに対して、苦労して勉強しても、得られるのは、北朝鮮という小国を、失脚させるという程度のこと。
これじゃ、釣り合わないよ。
「じゃあ、太郎さんにとって、どんな解決が、良い解決なの?」
物理学をもっと進歩させて、生命を、制御できるようにして、北朝鮮の指導者に、自分から開国させるような、解決の方が良い。
「また、いつもの夢のようなことを」
なぜ、このことにこだわるかというとね、インラインアセンブラは、技術者なら、誰でも扱えるんだよ。でも、物理学を生命に応用するのは、まだ誰にも、完全には、できてないんだ。
夢のようなことかも知れないけど、本気で挑戦する人がいなかったら、科学は進歩しない。
「はいはい。それで、インラインアセンブラの話をしたら、もうその話はやめましょうといわれたことから、何が分かったの?」
『情報処理2種』という資格があったの知ってる?
「あっ、名前は知ってる。確か、『第二種情報処理技術者試験』と言ってたのよね。今では『基本情報技術者試験』っていう名前になってる。でも、『二種』っていう言葉は、知ってる」
さすが、パソコンオタクだな。
ところで、その資格も、父が取った方が良いと言ったので、試験受けたんだ。
「ハーッ、東大学部3回、東大大学院1回、CAD利用技術者試験2回、そして、基本情報技術者試験も、受けてるの?ここに並べたの、全部落ちたものよね」
そうだよ。英検3級は、受かってるから、ここには、含まれない。
「どうして、基本情報技術者試験に落ちたの?」
その理由が、分かったんじゃない。
「どういうこと? 勉強不足ということでなくて?」
まあ、煎じ詰めれば、勉強不足なんだけど、『情報技術者試験』が、受験者のどこを見てるかが、分かったわけなんだよ。
「インラインアセンブラ?」
そう。つまり、その受験者が、アセンブラという概念を持っているかどうかを見てたんだ。
「えっ、それ、機密情報じゃないの?」
大丈夫だよ。私は、カルダノみたいに、すっぱ抜いてるんじゃなくて、自分で、見つけたんだもの。
「そうなのねぇ、それが、太郎さんの強みね」
まあ、これが分かったから、もう一回、基本情報技術者試験、受けようという気にはならないけどね。
「看護婦さんに、背中を流してもらう方法を知ったら、満足する、太郎さんですものね」
そういうことだよ。
「あっ、でも、私と、キスするのも、1回やったら、もういい、なんて言い出さない?」
キスって、その程度のものなのかい?
「うーん。沢尻エリカさんとのキスから思うに、太郎さんだったら、2回目以降は、みんな同じ、と、言い出すかも」
なに、バカなこと、言ってんだよ。
『キスにも色んなキスがある』
は、2015年9月18日21時56分7秒の真理じゃないか。
「太郎さん、私に、飽きない?」
麻友さんが、その程度の薄っぺらい女の人なら、とっくに飽きてるよ。
「入院中のことは、心置きなく書けた?」
私が、危険にさらされたときのことや、無茶苦茶なことを言っている人に『元の世界に戻りたくはないですかね』と言ったことや、女の人を好きになれない男の人の話など、まだ話してないことはあるけど、今日は、ここまでにしよう。
「太郎さんの話を聞いてると、精神科病棟って、新しい情報の入ってくるところだわね」
間違った情報も多い。
インターネットの『2ちゃんねる』みたいなものだよ。
「あっ、それ、今日のヒットだわ」
ありがとう。おやすみ。
「おやすみ」
現在2017年4月15日2時50分である。おしまい。