現在2017年9月16日17時16分である。
4日ほど前に、恐ろしいツイートをしたでしょう。
「妹さんのこと?」
うん。
「こんなところに、堂々と書いちゃって良いの?」
麻友さんと、私の関係は、信頼だけで、成り立っている。
だから、隠し事があった、ということになったら、それだけで、大きく揺らいでしまい得る。
「太郎さん。私、太郎さんのこと、もっと信じてるわよ」
その言葉が言えるのは、今まで私が、細心の注意を払って、麻友さんにウソをつかないようにしてきたからだ。
「でも、太郎さんの家庭って、温かい家庭だったんでしょ」
それは、確かにそうなんだ。
3年前、私が、いずみ野で、病気の発作で倒れたときも、母と弟が、様子を見に来てくれて、弟が、私を発見し、救急車を呼んでくれた。
また、同じく3年前、私が、いずみ野で、ガタガタ震えだしてしまい、母に電話をかけても出なかったので、妹に電話したら、妹が、
『すぐに行ってあげる』
と言って、足柄から2時間以上かけて、駆けつけてくれたのだった。
「そういう瞬発的なものだけなの?」
いや、そうじゃないんだ。
私を、いずみ野においておけないということになって、私以外の4人で協力して、今の家に引っ越ししてくれたりもしている。
だから、姪や甥に、暴力を振るっていたと聞いて、私は、最初、信じられなかった。
「どれくらいの暴力を?」
叩いたりなんだりは、日常的にあったようで、一緒にお風呂に入っていた母は、あっちこっちにあざがあったと言っていた。
「お父さまの方の暴力の可能性は、ないの?」
私には、直接、姪や甥に質問する機会は滅多にないから、姪や甥から聞いた父母の話を信じるしかないんだけど、思い返せば妹が暴力を振るうようになる萌芽はあったんだ。
「えっ、どんなことがあったの?」
私が、大学に受かった後、京都から広島に帰省するわけだけど、兄弟3人でしゃべっていたときなどに、ほんの冗談のようなことで、妹が弟の顔を『ぺしっ』っと、叩くんだよね。
そのたびに私が、
『顔を叩くなっ!』
と、怒ったんだけど、今思い出せるだけで、3回くらい記憶にある。
「太郎さんが、妹さんや弟さんに手を上げたことはないの?」
これは、はっきり、『ある』、なんだよね。
女の子だけの姉妹の麻友さんには想像もできないだろうけど、小学生や中学生の男の子が、じっとおとなしくしているなんて、ファーブル昆虫記のファーブルくらいのものだよ。
小学校から中学校にかけて、私も妹や弟を、かなり殴る蹴るしていた。
「太郎さんが!」
このことに関しては、高校に入った頃から、自分でも悪かったな、と思うようになって、暴力には訴えないようになった。
「じゃあ、私が、ドメスティックバイオレンスに遭う可能性もあるのね」
絶対ないとは言えないよね。でも、私は、高校の頃からかなり変わったから、麻友さんは、多分大丈夫。
「なぜ、高校から変わったの?」
私自身が、いじめに遭わなくなったからなんだ。
「太郎さんは、自分がいじめられているのを、兄弟に向けて発散していたの?」
そういう部分は、かなりあった。
だから、妹が暴力を振るうのも、何か劣等感のようなものがはけ口を求めて現れているように思える。
「なぜ、太郎さんに、その暴力のことが、分かったの?」
姪が、今年の春、中学受験で、目指していた中学に受かった話はしたでしょ。
「そうだったわね。寮に入ると1年で200万円とか言ってた」
そう。その中学のことで、妹と姪がものすごくもめてて、それがきっかけで、私も助けを求められて、分かったんだ。
「目指していた中学だったんでしょ」
確かに、姪が目指していた中学ではあったんだ。
「他に、誰が目指すの?」
妹は、通っていた、SAPIXという、ハイレヴェルな塾の判定で80%が出ていた、慶応湘南藤沢と、フェリス女学院に、受かるものだと思っていたようなんだ。
「受かるものだと思っていたようだ、なんてことが、どうして分かるの?」
慶応に受からなかったから、合格祝いを家族でしてあげなかったみたいなんだ。
「どうして、慶応にこだわるの?」
これは、大学受験をしていない麻友さんや、反対に京都大学に受かった私などには、完全には理解してあげられない感情なんだろうけど、麻友さんだったら、例えば、ヴァイオリニストの千住真理子さんのように、慶応出ている人を思い浮かべると、なんとなく分かるかも知れない。ある種のプライドを持っているんだよね。私立大学のトップを出たという。
「姪御さんは、慶応へ行けなくても良かったと思ってるようなの?」
本当のこと言っちゃうと、小学校6年生に、どこの中学がどうつながってて、なんて、分かるわけないよ。
私なんて、大学受験でも、大学入った後、先がどうつながってるかなんて、全然分かってなかったもの。
ただ、姪が、あの中学の文化祭に一人で行って、すごく嬉しそうだった、というのを聞いて、これが、本命だろうとずっと思ってきた。
「小学校6年生っていったら、私が、AKB48目指していた頃だものね。何にも、分かってなかったわね」
麻友さん、大冒険したよね。半分、勘違いだったんでしょ?
「余り、大きな声では言えないけど、AKB48が、アイドルだっていう認識が薄かったのよね」
その勘違いで入ってから、11年。本当に良く頑張ったよね。
「私の人生、報われたかしら?」
自分では、どう思う?
「もう1回、選抜総選挙で、1位になりたかったな」
麻友さん。その気持ち、大事だよ。
「どうして?」
その気持ち、私の、
『京大卒業したかったな』
という気持ちに通じるものが、あると思うんだ。
「太郎さんに取って、その気持ちは、どう働いているの?」
京大に対する愛着のようなもので、良いものだよ。
下手に、単位だけ取って、無理矢理卒業しちゃった人は、後悔だけが残っていると思う。
「AKB48への愛着か」
「それはそうと、慶応には行かれなくとも、ちゃんと受かったんでしょ?」
私は、これでなんとか大丈夫だろうと思っていた。
ところが、ここから問題が火の手を上げる。
「どういうことになったの?」
学校の方針で、前期の間は、全員寮に入ることになっていた。
初めて親元を離れて生活するのだが、この学校、一部に、公文(くもん)の教材を用いた数学や英語の特定の教科だけで高校1年生並の力のある子供を入学させているために、SAPIXで優秀だった姪も、劣等生になってしまった。
また、朝起きるのが辛い。
バスに酔うとか、冷え性だとか、問題が、続出しているのに、妹は、
『お父さんに、なんとかしてもらいなさい』
とか言っているんだ。
と、聞いていた。
だが、いよいよ、
『姪を病院に連れて行かなきゃ』
となって、本を探しているので、図書館で借りてきて欲しい、と言われ、

- 作者: 田中英高
- 出版社/メーカー: 中央法規出版
- 発売日: 2017/03/15
- メディア: 単行本
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という2冊の本を、借りてあげた。
これが、私と母の間の情報のやり取りを生み出した。
私は、姪が2歳の頃から、妹が暴力を振るっていたことを知ったし、母の方は母の方で、中学3年から女子中学、女子高校で、短大でも国文科だった妹が、なぜあんな汚い言葉を知ったのか、ずっと分からなかったのが、謎が解けたのであった。
「どういう、理由だったの?」
この前、話したように、B級の映画をいくつも見ていたからと言うのが、理由なんだ。
「そうだったわね。汚い言葉が、字幕で出てくるから、悪い言葉を覚えるには格好の方法なのだったわね」
うん。
「それで、太郎さん。この話を、してくれたのは、何が目的だったの?」
ひとつは、私の家族の現状を伝えることが、目的。
「それは、十分果たしたわね」
もう一つは、麻友さんとの子供に関してのもの。
「それはまた、随分先の話じゃない?」
私、今まで、麻友さんとの子供は、当然産むもの、という前提に立っていたように思うんだ。
一方、麻友さんは、仕事と家庭は両立できない、とか言って、子供は産めない、という信号を発してきた。
「それは、本当よ」
私は、最先端の科学であるゲノム編集や、コンピューターシミュレーションを用いて、なんとか、麻友さんに、快適に子供を産んでもらおうとしてきたけど、結局麻友さんが産みたくないのに子供を産んだら、姪のようなことになるな、と気付いたんだよ。
「妹さんは、子供欲しくなかったの?」
そんなことは、なかったんだろうけど、子供を育てられるほどの能力が、十分になかったんだろうね。
「この記事を書いてきて、太郎さんは、どう思っているの?」
地球上の生き物を見てみると、とにかく子孫を残すことを目的に、生きているように、見える。
そういうことを大切にするような生き物だから、30億年も、生き続けてこられたのだとも言える。
だが、良く考えてみると、後、50億年くらいたつと、太陽は燃料を使い切り超新星爆発というものを起こす。
どんなに頑張っても、生命が、この先100億年以上生き続けるのは、無理なんだ。
自分が、子孫を残せない、ということに気付いたとき、大抵の人は、ある種の寂しさを、感じるだろう。
その寂しさに耐えられず、子供を作ると、その子供が、将来、寂しさを感じることになる。
だったら、将来産まれるはずだったかも知れない子供の寂しさを肩代わりして、麻友さんと私が、寂しさに耐えようじゃないか、と思う。
「太郎さんらしい、科学的で、論理的な、解答ね。私も、自分のこととして、良く考えてみるわ」
今日は、ここまで。バイバイ。
「バイバイ」
現在2017年9月17日18時56分である。おしまい。