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数学者はなぜ、数学が美しいというのか(その4)

 現在2018年4月27日21時02分である。(この投稿は、ほぼ9410文字)

「太郎さんのおばあさま、もう長くないの?」

 今、山梨のホームに入ってるんだけど、ちょっと具合が良いから今のうちに母に会わせてあげると、母の妹の私の叔母さんが、母を呼んだんだ。

 それで、母と妹が、今日会いに行ってきたんだ。

「太郎さんは、行かなくて良かったの?」

 私は、今までに何度も会いに行ってるから、今回は、多分最後だろうけど、行かなかったんだ。

「寂しくないの?」

 やっぱりね、女の人と、男の人って、全然違っていて、そういう女の人の感じる寂しさって、男の人は、そんなに感じないんだ。

 それに、私は、以前、おばあちゃんのところへ行ったとき、ヴォイスレコーダーで録音した、おばあちゃんの声も、持っているしね。

「男の人って、本当に、涙流したりなんか、滅多にしないのよね」

 これは、教育の影響だけじゃないと思う。女の人は、子供を育てるために、優しさを何倍も受け持っているんだと思うな。

 どんなに、フェミニズムとかなんとか言っても、女の人と男の人は違う。

 それを踏まえて、平等を考えないと、限界にぶつかると思う。

「おばあさまに、太郎さんの結婚式を見せたかった?」

 それは、麻友さんを好きになったときから、諦めていたんだ。

 あの有名な麻友さんを好きになった以上、結婚できても何年も先だ。

 今年の7月30日で、96歳になるんだもん。そのおばあちゃんには、間に合わない。

「初孫だったの?」

 私は、両方の家で、初孫だった。

 かわいがられたと同時に、期待もされた。

 でも、私は、それが、苦にならなかった。

 麻友さんは、『心をなくす決断をしちゃった』そうだけど、私は、自由に生きていった。

 心を取り戻そうとしている麻友さんに言えることがあるとしたら、

『どんなときも、自分がやりたくなかったら、それは、やらない』

ということかな。

 高校で転入するとき、どうしても男子校に行きたくなかったから、行かなかった。

 麻友さんだって、そういう我が儘を言っていいんだよ。

「大人の世界って、色々あるみたいね」

 お金という概念がなくなる、ということは、冗談でなく起こりうることだから、お金がすべてという生き方だけはしないようにね。


「太郎さん、『オイラーの公式』の説明するはずが、大分脱線したわね」

 オイラーの公式に関わる、『微分』という概念に、私が最初に肉薄したのは、数学の勉強をばく進中だった中学3年生の時。

「肉薄と言うことは、『微分』ではないの?」

 微分そのものを知るのは、高校1年生になってからだ。

 私は、家庭教師をしていたとき、一度、微分を教えたことがあった。

 その時、私が、理解したように、教えたんだけど、勘違いをさせてしまったみたい。

「かわいそう。太郎さんなんて、めちゃくちゃな理解するんだから」

 大学の歯学部に合格したんだけど、高校で物理を取っていなかったので、大学でついて行かれるよう、家庭教師をして欲しいと言われたのだった。

 微分を知らないというので、次回までの宿題として、次のような問題を出した。


 宿題

 関数 {y=x^2} のグラフの点 {(1,1)} での接線の傾きを求めて下さい。



「えーっ、本当にこんな宿題出したの? 信じられない。解けるわけないじゃない」

 解けなくても良かったんだよ。ちょっと、接線というものを、考えてみてくれれば。

「それで、次週どうなったの?」

 私が、

『求まりましたか?』

と、聞いたら、次のような絵を見せて、

『接線は、何通りも引けるような気がします』

と答えてきたんだ。

「それで、太郎さん、なんて答えたの?」

『そうですか。それも、ひとつの答えです。では、それが、正しいか、確かめましょう』

と言って、授業を始めた。


 まず、点 {(1,1)} を通る傾き {a} の直線の方程式は、

{y-1=a(x-1)}

ですね。

「えっ、どうして?」

 この式の {x} と {y} にそれぞれ {1} を代入したら、両辺等しくて、成立するでしょう。

 だから、この式の表すグラフは、点 {(1,1)} を通る。

 さらに、この式は、 {x} と {y} の1次式だけからなっている。だから、直線のはずだ。

 最後に、 {y=ax-a+1} と、変形できるから、 {x} の係数が、{a} より、傾きが、{a} の直線だと分かる。

「ああ、分かった。それで?」

 この直線が、{y=x^2} と接するときの傾きを求める。

{\left\{ \begin{array}{l} \displaystyle
y=x^2\\
y-1=a(x-1)
\end{array} \right.}

と、連立方程式にして、交点を求める。

 上の式の {y} を下の式に代入するのが、易しそうだ。

{x^2-1=a(x-1)}

 展開して、

{x^2-1=ax-a}

 左辺にそろえて、

{x^2-ax+a-1=0}

となる。

 ここで、飛躍をしなければならない。

「えっ、どんな?」

 直線が、放物線に接するというのだから、2点も交点があってはいけないんだ。

「ということは、交点は、1点だけ?」

 そのことを、どう式で表す?

「ちょっと分からないわ」

『交点が1点ということは、2次方程式の解が一つ』

「つまり、重解を持つ?」

 重解を持つのは?

「判別式 {D=b^2-4ac=0} のとき」

 計算してみて。

{D=a^2-4(a-1)=a^2-4a+4=(a-2)^2=0} だから、{a=2} のとき」

 よくできた。

「あっ、つまり、接線は、ただひとつに定まるのね」

 そうだよ。

「この場合、傾き2というのが、正解だったのね」


 これが、私が、中学3年生のとき、2次関数の接線の傾きを求めた方法だった。

 私は、このように、接線の傾きを求める方法が、『微分』というものだと、中学3年の頃から知っていた。

 早く微分を勉強したいと思っていたが、なかなか良い本に巡り会わなかった。

 家には、母や父が大学で使った微積分の本もあったが、私には難しすぎた。

 そして、私は、受験を経て、横浜翠嵐高校へ。

 高校に入学したのだから、もう微分を勉強できるはずだと思った私は、学校の帰りに横浜の本屋を見て回るようになる。

 そして購入したのが、この本。

 山口恭(やまぐち やすし)『微分積分入門』(コロナ社

『1987年6月10日 SOGOにて購入』

と、奥付に書いてある。

 この本のどこが良かったかって、それは、私が、自分にぴったりレヴェルのあった本を買ったことだった。

 高校2年生くらいが、微積分に入門するときに、疑問に思うようなことを、丁寧に橋渡ししていた。

「それで、今日は、微分の話を、どこまでするの?」

 いっぺんには、全部分からなくていいから、ある程度深いところまで話す。

「さっきの、2次関数の話は、どうつながってくるの?」

 私が、家庭教師をしていた人は、あの私の話を聞いて、微分というものが、判別式をゼロとするものだ、と思ってしまったようだった。

 微分とは、判別式を考えられないような関数のグラフでも、接線の傾きを求められる技なのだ。

「というと?」

 さっきの2次関数の接線の傾きを求める問題を、微分を使って解いてみよう。

「どうやるの?」

 まず、微分というものは、求めたい場所、さっきなら、点 {(1,1)} と、そこからわずか {\Delta x} だけ離れた点 {(1+\Delta x,(1+ \Delta x)^2 )} を、考える。

「なぜ、{(1+ \Delta x)^2} なの?」

 関数 {y=x^2} 上の点だから、{x} 座標が、{1+ \Delta x} なら、{y} 座標は、{(1+ \Delta x)^2} だ。

「『{\Delta}』というのは?」

 これは、ギリシャ文字の大文字のデルタで、{\Delta x} というのは、『デルタエックス』と読む。

 中学の社会で、扇状地とか、三角州ってやったでしょう。三角州はデルタ地帯ともいうんだったね。広島市太田川河口が有名だと、『AKB48中学社会』p.24に書いてある。

「あっ、やっと使った」

 さて、デルタを使うのは、小さい量ですよ、という目印なんだけど、どれくらい小さいか、という決まりは、あまりない。

 面倒なことが起こらない程度に、小さければ良いということになっている。

 こういうあいまいなものが出てくるから、微分が分からなくなる人もいる。

 麻友さん、ぬかるみに足を取られないように。

「それで、傾きをどう求めるの?」

 少し、おおざっぱにやるんだよ。

 図で見ても、直線の傾きは、2次関数の点 {(1,1)} での傾きにだいたい近いでしょ。だから、

接線の傾き{= \displaystyle \frac{(1+\Delta x)^2-1}{(1+\Delta x)-1}}

として、計算する。

接線の傾き{= \displaystyle \frac{1+2 \Delta x +\Delta x^2 -1}{\Delta x}=\frac{2 \Delta x +\Delta x^2}{\Delta x}}

接線の傾き{= 2+\Delta x}

 これを見て!

「なに、何?」

 {\Delta x} というのは、小さい量だったのでしょう。

「そう言ってたわね」

 グラフで見ても、どんどん小さくしてもいい。もう一度、グラフ持ってこよう。

 ほら、小さくしてもいい数だ。

「それで?」

 だから、ゼロにしちゃったっていいんだよ。

「ぎょっ、それは、無茶では?」

 少なくとも、傾きを求めるという目的のためには、これがゼロに限りなく近づいたところを想像していい。

「ああ、そうすると、

接線の傾き{= 2+\Delta x}

だから、{\Delta x=0} として、

接線の傾き{= 2}

と、求まるというのね。あっ、そういえば、判別式使って求めたときも、傾き2だった。あってるのね」

 そう。微分を使って求めたものが、本当に正しいということを、私達は、確かめられる。

「でも、どこが画期的だったの?」

 それは、2次関数だけやっていたのでは、分からない。

「3次関数とか?」

 やって見せよう。

 3次関数 {y=x^3} の、一般に点 {(x,x^3)} での接線の傾きを、求める。

 さっきと同じようにできるんだ。{x} を、{\Delta x} だけ増やして、その2点を通る直線の傾きを考える。

2点を通る直線の傾き{=\displaystyle \frac{(x+ \Delta x)^3-x^3}{x+\Delta x -x}=\frac{(x^3+3x^2 \Delta x +3x \Delta x^2+\Delta x^3)-x^3}{\Delta x}}

2点を通る直線の傾き{=\displaystyle \frac{3x^2 \Delta x+3x \Delta x^2+\Delta x^3}{\Delta x}=3x^2+3x \Delta x+\Delta x^2}

「分かった、ここで、{\Delta x} を、0にしちゃうんでしょう」

 そうすると、どうなる?

「接線の傾き{=3x^2} となるわね」

「でも、これどういうことかしら、{x} が、残ってる」

 それはね、任意の {x} 座標の点の傾きが、求まったということなんだ。

「全部、いっぺんに?」

 そう。例えば、{x} 座標が、{5} の点での傾きは、{3 \times 5^2=3 \times 25=75} となるんだ。

「ものすごく、簡単ね」

 もう、判別式、使う気なくなっただろ。

「うん。これ、もっと次数が高い場合、どうなるの?」

 ものすっごく簡単。

{y=x^n}

のとき、この関数を微分すると、

{y^{\prime}=nx^{n-1}}

となるんだ。

{y^{\prime}}ダッシュというのは?」

 『1回微分しました』という記号なんだ。


「でも、これ、そんなに、そんなに、簡単には、問屋がおろさないわよね。例えば、

{y=x^7+x^3}

なんてのが、

{y^{\prime}=7x^6+3x^2}

となったりする?」

 実は、そうなるんだ。バカみたいに簡単な規則なんだけど、そうなっちゃうんだ。

「えーっ、じゃあ、微分を知ってるって、ものすごいアドヴァンテージじゃない」

 だから、理系の男の人って、頭いいように、見えるでしょ。微分を知ってるからなんだよ。

「信じらんない。ただこれだけのことを」

 いや、本当は、これだけでは、済まされないんだけど、まずは、微分とは、こういうものだ。


「それで、オイラーの公式よね」

 うん。

 この話は、今回全部のことを証明することは、できないけど、いずれ証明をお目にかける。

 まず、今回は、以前宇宙の年齢を求めていた頃、いずれきちんと証明するからと言いながら、まだ証明していないことを、さらに、増やすことになる。

 でも、微分を知ったので、本当の証明を見られるのは、そんなに先ではない。

 麻友さんが、中学、高校の課程で、習った、三角関数や、指数関数というものの別な定義を、お見せする。

 指数関数は、次のように、無限に続く級数(きゅうすう)というもので、表される。

{\displaystyle e^x=1+\frac{x}{1!}+\frac{x^2}{2!}+\frac{x^3}{3!}+\cdots+\frac{x^n}{n!}+\cdots}

 麻友さんの知っている、

{e^3=e \times e \times e}

という指数関数が、こういう級数で表せるということを知るには、もう少し微分の勉強をしなければならない。

 同じように、三角関数は、

{\displaystyle \cos \theta =1-\frac{\theta^2}{2!}+\frac{\theta^4}{4!}-\cdots+(-1)^n\frac{\theta^{2n}}{2n!}+\cdots}

{\displaystyle \sin \theta =\theta-\frac{\theta^3}{3!}+\frac{\theta^5}{5!}-\cdots+(-1)^n\frac{\theta^{2n+1}}{(2n+1)!}+\cdots}

と、表せるんだ。

 このように表せるということは、サインを微分するとコサインになり、コサインを微分するとマイナスのサインになるということまで知ると、分かるようになる。

 そのこと自体は、証明しにくいが、とりあえずそれを認めて、上のように表せるということを、証明しよう。

 まず、関数を、

{y=f(x)}

などと表すのは、良いだろうか?

{f(x)=x^2}

などと書いた場合、

{f(3)=3^2=9}

などというように、{x} に数を放り込むと、それが、右辺のように計算されるというわけである。

 さて、今、

{f(x)=\cos x}

と置こう。

 そして、これが、

{f(x)=\cos x =a_0+a_1 x+ a_2 x^2 +a_3 x^3 +a_4 x^4 + \cdots}

と、級数に表されたと仮定しよう。

 これは、あくまで仮定であって、級数に表されない場合もある。

 さて、ここで、{x=0} としてみよう。

 左辺は、{\cos 0 =1} である。

 一方右辺は、初項以外全部消えて、{a_0} である。

 従って、{a_0=1} である。

 次に、両辺を、微分する。

 コサインを微分すると、マイナスのサインだと言った。

 一方、右辺は、ひとつずつ微分して、

{-\sin x = a_1 + 2a_2 x +3a_3 x^2 +4a_4 x^3+\cdots }

となる。

 そしてまた、{x=0} とする。

 左辺は、{-\sin 0=0} である。

 一方右辺は、初項以外全部消えて、{a_1} である。

「ちょっと待って、定数を微分すると、ゼロなの?」

 ああ、良く気付いたね。

 微分の公式で、{n=0} としてもいいけど、本来定数は、一定なのだから、傾きはゼロだよね。

「あっ、そうか」

 気になったことを、突っ込むのは、良いことだ。

 さて、{a_1=0} が、分かった。

 次に、また両辺を微分する。サインの微分は、コサインだと言った。

{\displaystyle -\cos x=2a_2 +3! a_3 x +\frac{4!}{2!}a_4 x^2+\cdots }

となる。

 また、{x=0} として、左辺は {-\cos 0=-1} であり、右辺は {2 a_2} である。

 よって、{\displaystyle a_2=-\frac{1}{2!}} である。

 これで、コサインの級数展開の2項目が出てきた。

 後は、この繰り返しで、両辺を微分して、{x} をゼロとすれば良い。

 前回は、変数が、{\theta} だったが、今回は、{x} になっているだけのことだ。

「難しそうに見えることも、丁寧に説明を聞いてみると、ものすごく単純なこともあるのね」

 そうでしょう。

 ただ、最初にこの計算をやったオイラーは、期待に胸躍らせながらペンを動かしていただろうよ。

「ああ、そうねぇ。それで、オイラーは、何に気付いたの?」

 さっきの指数関数の級数展開で、{x} に、{i \theta} を、代入したんだよ。

虚数乗ということ?」

 オイラーでなければやらないような、ものすごい計算だよね。

「どうなるの?」

 私は、高校1年の時、横浜のダイヤモンド地下街の有隣堂で、初めてこの計算を見たとき、手が震えるほどだった。

 こうなるんだ。

{\displaystyle e^{i \theta}=1+\frac{i \theta}{1!}+\frac{(i \theta)^2}{2!}+\frac{(i \theta)^3}{3!}+\frac{(i \theta)^4}{4!}+\frac{(i \theta)^5}{5!}+\cdots+\frac{(i \theta)^n}{n!}+\cdots}

{\displaystyle e^{i \theta}=1+\frac{i \theta}{1!}-\frac{\theta^2}{2!}-\frac{i \theta^3}{3!}+\frac{\theta^4}{4!}+\frac{i \theta^5}{5!}+\cdots+\frac{(i \theta)^n}{n!}+\cdots}

{\displaystyle e^{i \theta}=(1-\frac{\theta^2}{2!}+\frac{\theta^4}{4!}-\cdots )+i(\theta-\frac{\theta^3}{3!}+\frac{\theta^5}{5!}-\cdots)}

{\displaystyle e^{i \theta}=\cos \theta +i \sin \theta}

「えっ、指数関数が、三角関数に、なるの?」

 そうなんだ。

 おそらく、数学を、今後、どこまで勉強していっても、これほどの感動に出会うことは、まずないだろうと思う。

「そんなに、褒めちゃうなんて」

 すべての女の人を知っているわけではないのに、麻友さんの笑顔が、一番綺麗だと断言しても、まず間違いないのと同じように、このオイラーの公式よりも美しい公式は、多分ないと言える。

「あっ、でも、私、今日、微分の勉強ちゃんとやってきたから、この公式の成り立ちが、少し分かる。だから、太郎さんが、この公式が美しいというのが、ちょっぴり分かるわ」

 その言葉のために、この4回の連載、やってきたんじゃない。

「私って、すごくくだらないことにも、喜ぶのね。でも、これは、すごいわ」

 『ダウンタウンなう』見たから知ってる。

 でも、こういう形ででも、麻友さんを喜ばせられて良かった。

「次回は、何をやるか、考えてるの?」

 相対論のブログ5回連続だったから、ドラえもんのブログの記事書こうと思う。

「楽しみにしてるわ。バイバイ」

 バイバイ。