現在2019年6月26日4時44分である。
昨晩は、眠くてたまらなくなっちゃって、途中で打ち切って、投稿した。
「太郎さんを、無理矢理にでも、眠らせられる薬があるというのは、良いことね」
そうだね。
私の場合、眠らないと、頭が異常を来すからね。
「それで、買ってきたCDプレーヤーで、『春の海』を、聴いたところまでだったわ」
それを、聴いた後、かねてからの念願のフルトヴェングラーの『英雄』をかけた。
PLAYボタンを押した途端、ドーン、ドーン、と鳴って、デジタル初体験の私には、出だしが欠けなかったかな? と、心配になったくらいだった。
さて、せっかくCDプレーヤーを、買ったので、次に、フルトヴェングラーのベートーヴェン第7第8シンフォニーを、買った。
今では、余りにもCDが、多くなりすぎたので、全部のCDのカタログなんていうものは、作れないが、当時は、レーベルを越えた、全CDの、聴き所と音質が書いてあるカタログが、あった。
私は、それを図書館から借りてきて、色々想像するのが、楽しみだった。
「音質って、どう表すの?」
これは、かなり主観が入るけど、1ビットの信号で、6デシベルのダイナミックレンジが得られるそうで、CDは、16ビットで、音を表現するので、6✕16=96デシベルのダイナミックレンジが得られると、読んだことがある。
「ダイナミックレンジとは?」
一番小さい音から、一番大きい音まで、どれだけ幅広く記録できるか、ということ。
例えば、麻友さんの歌は、同じくらいの大きさの音で、進行するから、ダイナミックレンジが狭いと言い、一方、クラシックのオーケストラの曲だと、小さくなる部分もあれば、大きくなる部分もあるので、ダイナミックレンジが広いと言われる。
「それで?」
だから、そのCDのカタログでは、96点満点で、各CDを、採点してたんだ。
父も、それを、ちょっと見てた。
さて、それから少しして、父と妹と私で、当時鶴見にあった、ディスカウントストアのトポスに、買い物に行った。
CD売り場があった。
父が、ラファエル・クーベリックの『ハフナー』『リンツ』のCDを、買おうとしている。
私は、カタログで、それが、96点だったのを知っていた。
父らしいな、と思いながら、それを、一緒に買ってきた。
「お父さまらしいというのは、どういうこと?」
クラシックの通というのは、普通、保守的なんだよ。
だから、もし、ラファエル・クーベリックという指揮者が、96点をもらっているのなら、自分の良く知っている、40番や41番のクーベリックの演奏を、買ってみて、及第点を付けてから、35番と36番のCDに手を出すものなんだ。ところが、恐らくこういう話を父にしたら、こんな答えが返ってくると思う。
『だって、40番や41番は、レコードやオープンテープでもうあるじゃないか』
「あー、太郎さんのお父さま。でも、魅力的よね。新しいことに挑戦する姿勢は」
新しいことに挑戦するという精神は、私も、受けついでいるな。
「そうね」
「それで、クーベリックの『ハフナー』『リンツ』は、どうだったの?」
私の家では、当時、父が半田ごての使い方や、電解コンデンサーの極性とか、ちょっと脱線するけど、
『黒い0服、茶を1杯、赤い2んじん、橙3者、黄4恵子、緑5、青二才の6でなし、紫7部、灰8-、ホワイト9リスマス』
『黒い礼服、茶を一杯、赤いニンジン、第三者、岸惠子、嬰児、青二才のろくでなし、紫式部、ハイヤー、ホワイトクリスマス』
って、知ってる?
「えっ、何か覚え歌?」
そう。今、基板に実際に抵抗を、半田付けする、なんて機会は、ほとんど無いけど、あの抵抗に、それが何オームの抵抗かを表示する時に、使う統一規格なんだ。ほらっ、
「これ、どっちから読むの?」
金や銀色の方は、読まなくて良いんだ。抵抗がどれくらい精度の良いものかを、表しているから。
まず、赤があるから、赤いニンジンで、2、次に、橙があるから、第三者で、3、次が、黒だよね。ここは、10のべき乗をいくつ掛けるか、黒は、黒い礼服で、0だから、10の0乗で、1倍するだけだから、この抵抗は、23Ωと、読めるんだ。
「わー、凄い。太郎さん、いつあの覚え歌みたいなの、覚えたの?」
最初は、小学校のとき、父が、まず電子工作の時計、それから、お風呂の水位のセンサーを、一緒に作って、それから、いよいよ、真空管のアンプに挑戦した。
その頃も、覚え歌みたいなの聞いたけど、私には必要なかったので、覚えなかった。
ところが、京都から帰ってきて、父と勤めることになったとき、これくらい覚えておけ、と言われて、覚えた。
「えっ、じゃあ、若いとき覚えたんじゃないんだ」
そうだよ。人間は、30歳過ぎても、訓練すれば、記憶力もかなり維持できる。
「太郎さん、今、苦労して、思い出してたけど、カンニングせずに、全部復元できたわね。太郎さんの脳、まだ、働いている」
まあね。
「真空管のアンプを作っているとき、苦労した点は?」
アンプの中には、いくつも、小さいボリュームが、あるんだ。
それを、どれもが、なるべく良い具合になっているように、調節する段階がある。
でも、
『これが、正解』
というものが、あるんじゃないんだ。
ある程度以上に、揃っていれば良い、ということなんだね。
私みたいに、数学的に白黒はっきりさせたがる人間には、ちょっと不満も残った。
「その太郎さんが、お父さまと作ったアンプというのは、なんていう種類のアンプなの? プリアンプとか、あるじゃない」
パワーアンプだよ。
スピーカーで、良い音を出すことだけを、引き受けているアンプだ。
そして、中学3年の頃、我が家のスピーカーを、鳴らしてたのは、父と私で、作った、KT-88という真空管の搭載された、アンプだったんだ。
脱線したけど、そのアンプで、クーベリックの『ハフナー』を、かけた途端、戦慄が走った。もの凄く音が良かったのだ。
それまで、カセットテープにしても、レコードにしても、微かに、『シャー』というノイズが聴こえたものだった。
しかし、クーベリックのCDに、それは、なかった。
これが、デジタル録音かと、開眼した。
私は、このクーベリックの『ハフナー』のCDは、かなり聴いた。
父のお陰で、良いものに巡り会えたと、思っている。
「じゃあ、次回のデートは、『リンツ』ね」
そのつもりで、いて。
「おやすみ」
おやすみ。
現在2019年6月26日21時51分である。おしまい。