現在2019年10月5日20時21分である。
結弦「お母さんとのデートは、どうだったんですか?」
若菜「そんなの、聞くだけ野暮よ」
私「模範的な恋愛をしている麻友さんと私は、何を聞かれても、大丈夫だけどね」
結弦「じゃあ、今回は、何回やったの?」
私「そうだねぇ。中学1年生の男の子って、そんなことで、頭一杯だよね」
若菜「女の子だって、誰に処女をあげようか、とか、そんなことばっかり考えています」
私「そうなんだよね。だから、中学生くらいの、ものすっごくやりたくてたまらないときに、初体験するのが、人間は、本当は、幸せだ」
麻友「太郎さんのお母様から、聞いたんだけど、太郎さんは、ナタリー・ポートマンとジャン・レノの映画『レオン』の中で、ポートマン演じるマチルダが、『私のお姉ちゃん達は、タバコを吸うように、初体験をして行った。でも、私は、お姉ちゃん達の持っていた雑誌で、女の子にとって初体験は重要で、その後の性生活に大きな影響を及ぼすのだと、読んだから、そんなタバコを吸うような、初体験はしたくないと思ってきた。私は、あなたと初体験したいわ』と、レオンに言う部分が、あの映画で一番良いところだと思ってるんですってね」
私「そうだよ。あれは、女の子にとって良い性教育の映画と言える。そして、もうひとつ言うなら、女の子だけでなく、男の子にとっても、同じことは当てはまると思う」
麻友「女の子は、大人になるまで処女でいた方が良いが、男の子は、早くやっちゃった方が良い、なんていう人もいるけど」
私「それは、何かを勘違いしているんだ」
結弦「お父さんに言わせると、中学くらいで、やりたくてたまらないときに、やっちゃった方がいい、ということなのに、タバコを吸うようにやるのは良くない、というのは、なんか反対のことを言ってるような気がするけど」
私「矛盾は、してないんだ。人それぞれ、その人に相応しい歳のときに、初体験をすれば良いと言ってるんだ。それが、例え中学生でも、不純異性交遊ではない、ということだよ」
若菜「分かってきた。お父さんは、中学生だから早過ぎるとか、25歳で処女は、恥ずかしいとか、そういうことではないと、言ってるんですね」
私「若菜、分かったな。実は、これには元になる文献があるんだ」
麻友「えっ、文献?」
私「これだ。以前見せた、『ビューティフル・ラブ』のセックスセラピストのアン・フーパーさんのもう一冊の本
アン・フーパー 桂ケイ訳『ビューティフル・タッチ』(河出書房新社)

- 作者: アンフーパー,Anne Hooper,桂ケイ
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1995/12
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の40ページに、こう書いてある。重要だから、引用するよ。これからの人間の文化は、こうあるべきだ、という提言だ」
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自分の体を知ろう
男性や女性の多くは、誰もがみんな同じ性反応を示すと考える傾向にあります。これは誰もがみんな同じ顔を持っていると考えるのと同じで、大変な間違いです。触られてどう反応するか、どう感じるか、どこに触れて欲しいかは、まったく各個人固有のものなのです。反応は似ているかもしれませんが、決して同じではありません。
いつも不思議に思うのですが、私たちは大人になった時に必要なことをたくさん教えられて育つにもかかわらず、基本的な生殖知識として以外、およそ現実の性生活に応用できるような知識は一切教えてもらっていないことが多いのです。原始社会に生きた人たちは、私たちよりも性について多くを学んで育ちました。特に部族の共有家屋に住んでいた場合は、他の人たちの性行為を実際に見ることができたでしょう。こうした社会の多くでは、現在私たちが年長の子供たちに禁じている性的な遊びは少しもタブーではありませんでした。時には年長の子供が年下の子供とペアを組んで、セックスの謎めいた世界に引き込むこともありました。
それなのに現在では、学校の生物の授業はまず自然の生態を教えることに重点をおき、それから繁殖、そしてあなたが特別に幸運なら、人間の生殖を教えもらえます。けれども、快楽の生理学については決して教えてくれません。例えば、性反応のサイクルや、クリトリスの役割などについての説明がなされることはほとんどありません。私たちの性的生理学を含む人間の生理学をまず最初に学び、次に鳥やハチの生態はおまけの知識として知ることができたら、どれだけ合理的かしれません。
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『ビューティフル・タッチ』p.40より
私「ちょっと、疲れたね。第3段落の『人間の生殖を教えもらえます』は、訳本の誤植だ。『人間の生殖を教えてもらえます』とするのが、正しい」
若菜「お父さん。こんなところででも、校閲してるんですね」
麻友「こういう堅い話って、太郎さんは、平気だけど、普通の人、頭が痛くなるわ」
私「きっと、性欲が高まっちゃって、発散できなくて、頭が痛くなるんだと思う」
結弦「女の人にも、性欲があるの?」
若菜「このアン・フーパーさんなら、上手に応えてくれるでしょうね」
麻友「まだ、続きがあるのね」
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例えば、ホルモンがさまざまな面で私たちに影響を与えること、ホルモンの全部が良性ではないこと、食生活は体の健康だけではなく、精神衛生にも関わること、病気がセックス面に影響を及ぼすこと、こうしたことすべてが私たちの性生活に直接関わっていることを学べたら、どれほど実用的でしょう。若い人たちにこうした現実的な性知識を与えるほうがずっと役に立つのに、私たちはもっとも重要な情報を正式な性教育から省いてしまっているのです。
私が学校の教師で、生徒たちの将来の性生活の準備を全部任せてもらえるなら、きっと次のようなことを教えると思います。生殖の話だけではなく、性的にどのように体が機能するか、性的に興奮している間、オーガズムに達している最中、放心状態中にどのような肉体的変化が生じるか、どのように私たちの体が成長していくか、健康な体だとどんなに楽しいか、健康かどうかをどのようにして知ればいいか、こうしたことこそが、知っておかなければならないことなのです。
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『ビューティフル・タッチ』pp.40,41より
結弦「それで、女の人の性欲は?」
私「この本や、『ビューティフル・ラブ』などにも、書いてあるし、色々なところで、知るきっかけはあるけど、女の人にも、性欲がある。ただ、脳の中のメカニズムが違うらしくて、男の人みたいに、性欲が溜まっていったのが、オーガズムで、一気に発散されるのとは、違うんだ。だから、男の人だと、年取って、精力が衰えてきたから、バイアグラ飲んで、精力アップなんていう人もいるらしいけど、女の人がバイアグラ飲んでも、頭がグルグル回って、性欲は高まるけど、全然発散できないらしい。これは、実際やってみた人が、何かに書いてた」
麻友「ちょっと、私、女なのよ。なぜ、私より、そんなこと知ってるの?」
若菜「お母さん。相手は、23歳年上ですよ」
結弦「そうなのか。女の人にも、性欲があるのか。じゃあ、男の人に求められるまで、待っていれば良いってものじゃないんだ」
若菜「昔だと、焦がれ死に、って、本当にあったんですよね」
私「昔話とか、古典とか、小説の中には、確かにあるけど、どこまで本当なんだろうなぁ」
結弦「焦がれ死にが書いてある、小説って?」
私「例えば、『椿姫』とか」
若菜「古典では?」
私「『伊勢物語』の第十四段とか」
若菜「えっ、どれですか?」
私「この歌が入っている段だよ」
栗原のあねはの松の人ならば都のつとにいざといはましを
若菜「えっ、お父さん。古文できるじゃないですか」
麻友「『古語辞典』妹さんにあげちゃった、とか言っていたのに」
私「いや、この部分だけなんだよ。伊勢物語で読めるの」
若菜「どうしてですか?」
私「大学受験で浪人してたとき、古文が、代々木ゼミナールの吉村先生という良い先生に当たって、授業が楽しかったんだ。英語が忙しいから、古文の予習はほとんどしてなかったけど、授業だけ楽しんでた。そのときに、どこかの大学が、この第十四段を入試問題で出したのを、授業のテキストが、載せてたんだ。それで、先生の解説を聞いて、『この女の人、おめでたいですね』って、先生が言ったのを、『本当におめでたいという意味で、この作者書いてるのかなあ?』と、疑問に思った。そのことも、クロイツェルソナタの女の人と、話そうと思って、大学に入学してから、1991年7月3日に、京都大学中央書籍で、原典を、買った。文庫本で118ページで、260円って、結構高いよね」

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麻友「凄い、全部覚えてる」
若菜「クロイツェルソナタの女の人は、どっちだと言ってきたのですか?」
私「クロイツェルソナタの女の人に、この一文のことを、書いた記憶が微かにあるけど、それについて、返事をもらった覚えはない。今だったら、麻友さんと一緒に、考えたい」
麻友「そう言って、私に、取り入りたいんでしょ」
若菜「お母さん、疑心暗鬼になっちゃって」
結弦「それで、性欲を、上手く発散できないと、焦がれ死にするようなことになるわけなんだ」
私「死なないまでも、気がふれるくらいは、あるかもな。私も、気が狂った原因のひとつは、失恋だからな」
麻友「太郎さん。私が振ったら、また気が狂うと、脅かすの?」
私「これは、美学の問題なんだ。振られて、どうしても辛くて、相手の体が恋しいなら、お金で買える他の女の人と、やればいいんだ。他の女の人だから、オーガズムを味わえないなんてことは、ないんだ。人間が、動物である以上、男の人は、どの女の人とでも、できるように作られているんだ。これは、女の人だって、同じ。ただ、お金で買える女の人とか、お金で買える男の人、というのが、今だと、インターネットで、ある程度調べられるが、いずれにしても、そういう下心につけ込んで、お金を巻き上げようとする人間がいて、見つけるのが、難しい。これは、インターネットで、調べるだけでなく、実際に、そういうところへ、直接足を運んだ方が良い」
若菜「赤線とか、遊郭というところですか?」
麻友「ちょっと、このAI、何年製よ?」
私「今、私も、このホログラフィー、本当に、2028年製なのかな? と、耳を疑った」
若菜「いや、中学3年生が、ソープランドなんて、言っていいのかなと、言葉に窮しまして」
麻友「ウフフ、AIかも知れないけど、本当に心、持ってるのね」
結弦「それで、お父さんの美学というのは?」
私「簡単なことだよ。お互い好きになった女の人とやりたいということ。失恋して、女の人の体が恋しくても、好きな女の人じゃない人とは、やりたくない。いや、やらない。それだけだよ」
麻友「ちょっと、言葉が乱暴ね。だけど、もし、私が、拒んだら?」
私「簡単に言うと、麻友さんは、今まで、4年半、見かけ上、拒みっぱなしなんだよね」
若菜「『見かけ上』というのは?」
私「私には、麻友さんが私を、気にかけてくれているように見えるんだ」
結弦「お姉ちゃん。僕たち、ここで、十分、性教育も受けたし、初体験をするとは、どういうことか、分かったね」
若菜「結局、初体験というものが、重要に思われていたのは、お父さんのくらいの世代までなんですね。その後、『ビューティフル・タッチ』が出たのは、1995年で、とっくにセラピストの意見も教育に生かされて、子供達は、中学生や高校生で、初体験を、きちんとした知識と共にして、もう楽しみたいときに楽しんだから、大人になってから、性のことで悩むことは、なくなった。お父さんが、良い本だと言ってたこの本だって、1993年初版だわ。お父さんは、余りにも数学で頭がいっぱいで、周りのひとが、どんな風にして、初体験して行ってるのか、知らなかったのでしょう」

新版 SEX & our BODY 10代の性とからだの常識
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私「知らなかったのでしょうと、言われれば、確かに知らなかった。周りが思っている以上に、知らなかった」
若菜「『周りが思っている以上に』とは、どういう意味ですか?」
私「鎌倉のねくすとに通っていたとき、メンバーのひとりに、かなり働けそうな、力を持っている女の人がいたんだ」
若菜「それで?」
私「メンバーみんなで、鶴岡八幡宮に行ったとき、みんなで、どんなマンガを読んだことがあるか、なんていう話になったとき、スタッフの女の人が、『私、『東京大学物語』は、途中まで読んだことあるのですが・・・』と言ったので、私が、『あれは、最後まで読まないほうがいいです。最後まで読んじゃうとしらけちゃう』と、応えたんだ。それを聞いていて、後で、そのかなり働けそうなメンバーの女の人が、『松田さんが、『東京大学物語』読んであるなんて、驚きだ』と、言ったんだよ」
若菜「『東京大学物語』って、どんなマンガなんですか?」
私「はっきり言うと、あらゆるタイプのエッチを、東京大学という名前にかこつけて、描いたマンガなんだ」
若菜「つまり、あんなエッチなマンガを、しかも最後まで丁寧に読むような心を持っていながら、女の人の体をまったく知らないままでいるなんて、普通有り得ないと、思ったのだろうというわけですね」
麻友「なぜ、最後まで読むと、しらけちゃうの?」
私「夢落ちなんだよ」
結弦「お父さん、いつ読んだんですか?」
私「1993年から2001年にかけて」
若菜「じゃあ、マンガが出版されるたびに、買って読んでたんですか?」
私「そう」
結弦「それで、8年間愛読して、夢落ちじゃ、しらけるよな」
麻友「太郎さんって、マンガって、どう読むの?」
私「ものすっごく丁寧に読む」
麻友「ものすっごくって?」
私「マンガのマスの中に、新聞が描かれてたら、その新聞の記事も、全部読む」
若菜「あんなの、波線かいてあるだけじゃないんですか?」
私「『東京大学物語』は、全部、読めば、日本語が書いてある」
若菜「お父さん。そんなのばっかり読んでて、エッチのやり方、読まなかったんでしょう」
私「アハハ、それは、一本取られた」
麻友「良かった。太郎さんは、私が振っても、これ以上気が狂ったり、人を殺したり、自殺したりしないわね」
私「それは、大丈夫だよ」
麻友「じゃあ、私、振るわよ」
私「どうぞ、ご自由に」
若菜「お父さん。初体験できなくなっちゃう。美学なんて、つまらないこと言って!」
結弦「お父さんって、体を使わせてくれる女の人が、ひとりもいなかったんだな。そのくせ、めんくいだからこんなことになっちゃう。どうするつもりだろう」
麻友「私、分かってるのよ」
若菜「えっ、何を?」
麻友「さっきの歌
栗原のあねはの松の人ならば都のつとにいざといはましを
の意味」
若菜「松だったら、都に行くとき、一緒に連れて行きたかったのに、っていう歌ですよね」
結弦「えっ、お父さんは、松田だから、連れて行ってもらえるよねってこと?」
麻友「あなたたちも、初体験は、そこそこで、しておきなさいよ。怒らないから。じゃあ、今日は、私が、幕を引きます。太郎さん、バイバイ」
現在2019年10月6日2時33分である。おしまい。