現在2021年3月28日19時36分である。(この投稿は、ほぼ2404文字)
麻友「前回、ピアサポーターとか、言ってたじゃない。あれは、太郎さんも、障害者で、少し克服してきたから、太郎さんが、統合失調症の人のための、ピアサポーターに、なりませんか? というお誘いだったんじゃないかしら?」
私「それは、鈍い私でも、気付いた。だけど、やっぱり私、無理。私には、他の人の立場に立って、考える、なんてことできない。『数学の進歩のためには、どうすればいいか?』ということは、いっつも考えている。数学のために良かれと思って生きているけど、結局、他の人のためじゃない。数学のためだ」
若菜「お父さんに取って、物理学は、医学を進めるために、勉強しなければならないものだった。周りの人は、お父さんが、物理学のために、数学を勉強しているんだと思っていた。でも、お父さんは、数学を好きだから、勉強してたのですよね」
結弦「多様性の時代というから、数学と心中する人も、いて良いのかなあ」
私「トントンとポートの所長の雨宮さんに、『問題がすべて片付いたら、やっぱり他の人のために、働きたいですね』と、言ったことがあったが、直接目の前の人のために働くのは、苦手かもね。私、後から気付くことの多い人間だから」
麻友「確かに、太郎さん、本当に鈍いから、他の人に気遣いする仕事なんて、無理かもね。ただ、その突拍子もないアイディアは、貴重よね」
若菜「もう、第4回になっているのですから、銀紙に穴を開けたのが、どう奇抜なアイディアだったのか、『コーシーの積分定理』の話、始めて下さいよ」
私「そうだな。まず、定理のステートメントを、見せよう」
定理 7.1(コーシーの定理)
関数 が の領域 上で正則であるとき、 内でホモローグ の任意のサイクル に対し、次式が成立つ。
私「以上だ。『解析入門Ⅱ』(p.293)より」
- 作者:杉浦 光夫
- 発売日: 1985/04/25
- メディア: 単行本
結弦「これが、『コーシーの積分定理』?」
麻友「領域とか、ホモローグとか、サイクルとか、分からない言葉が、あるのね」
若菜「何々 ということは、方程式ですか?」
私「そういう風に、色々想像するのも、楽しいものだ。だがこれは、方程式ではない。少しテキストを、スキャンした。クリックすれば拡大できる」
絵にあるような、曲線にそって、正則関数を、積分すると、必ず になるという定理なんだ」
結弦「正則関数って?」
私「何度も出て来ている、解析性のある、解析関数の一種だ。だから、性質の良い関数だ」
若菜「積分するというのは?」
私「積分に関しては、まだまともに説明してなかったね。今は、そういうものが、あるのか、というくらいで、受け止めて欲しい。特に、今扱っているのは、ただの積分でなく、複素線積分というものなんだと、ちらっと頭の片隅に入れておいて欲しい」
麻友「それで、穴が開いているのとの関係は?」
私「これも、テキストを、スキャンした」
私「下の図で、斜線の入っている領域が、曲線の外の部分だ。ところが、良く見ると分かるように、内部に小さな斜線の部分がある。私の銀紙の霞で、穴が開いている部分は、これを意識して作ったんだ」
結弦「それで、穴が開いていると、どうなるの?」
私「絶対とは限らないが、 が、 ではなくなることが、起きてしまう」
麻友「それにしても、こんなすさまじい証明、6年近く付き合ってきたけど、初めてね。レポートに1カ月かかると言ってたけど、本当ね」
私「この証明を、今やっても、麻友さんには、無理だね。証明の最後まで、スキャンして、終わりにしよう。
若菜「何か収穫があったんですか?」
私「最後のスキャン原稿に、定義 1 というのがある。『単一連結』という言葉の定義だ。今回、これを読むまで、『単連結(たんれんけつ)』という言葉と、『単一連結(たんいつれんけつ』という言葉が、微妙に違うものだということを、知らなかった。麻友さんのお陰だ」
麻友「1カ月かかるレポートは、どうするの?」
私「どう考えても、麻友さんに、分かってもらえる定理じゃない。レポートは諦めるよ。でも、色々、普段考えないことがあって、面白かっただろう?」
麻友「数学って、上には上があるって、実感したわ。ありがとう」
私「じゃあ、今日はこれで、おしまいだな。おやすみ」
若菜・結弦「おやすみなさーい」
麻友「おやすみ」
現在2021年3月28日23時29分である。おしまい。