相対性理論を学びたい人のために

まだ一度も相対性理論を勉強したことのない人は、何か一冊相対性理論の本を読みかじってみて、なぜこんなことが?という、疑問を持ってからこのブログに来てください。ブログの先頭に戻るには表題のロゴをクリックしてください

ありがとう。物理学者諸君。(その4)

 現在2021年5月24日11時52分である。(この投稿は、ほぼ4912文字)

麻友「太郎さん。食事代を削ってまで」

若菜「何の話ですか?」

麻友「この連載の要の、真空の透磁率 {\mu_0} が、理科年表2020 の数値で、汚い定義になっていた。太郎さんは、理科年表2021 でも、数値は同じだったと、本屋で見てきたと、言っていた。でも、当然私達は、心配になる。だから、太郎さん、一昨日(5月22日)、鶴見の駅ビルの CIAL のくまざわ書店で、とうとう1650円で、買ってきた。その晩、食事、ご飯炊いて、ふりかけだけだったわね」

国立天文台編『理科年表2021』(丸善出版


私「確かに、1650円あれば、夕食に、850円のちよだ鮨のお寿司、翌朝コンビニで、550円の唐揚げ弁当と、飲み物を買うことができたはずだ。だけど、それを、犠牲にしてまで、理科年表2021を買ったのは、なぜだと思う?」

麻友「私のためだというの?」

私「科学は、常に進歩している。最新の文献を見なかったために、失敗をしたというのでは、泣くに泣けない」

真由「朝っぱらから、アツアツのカップルぶりを、見せつけられるなんて、私も、未婚ですのよ」

若菜「お母さんとお父さんは、いつもこうなんです。なんとかしてあげられないものですかね」


真由「私が、呼ばれたのは、真空の透磁率 {\mu_0} と、真空の誘電率 {\varepsilon_0} の説明のクッションになって欲しいということでしたが」

私「山口真由さんは、法学部ですが、1年生、2年生、では、数学を勉強してますよね」

真由「はい。物理学も、少しは、学びましたが。でも、真空の透磁率 {\mu_0} は、高校の物理学で、既に勉強しました」

私「そうですよね。そして、履修した全科目で、ほとんどが、100点だったのですから、理解もバッチリですね」

真由「はい」

私「今日の話は、真空の透磁率 {\mu_0} と、真空の誘電率 {\varepsilon_0} とが、どう光速度と、結びついているかという話なのです」

真由「それなら、{\displaystyle c^2=\frac{1}{\varepsilon_0~\mu_0}} で、おしまいじゃないですか?」

私「確かに、その通りです。この式を、高校3年生で見た私は、当時(1989年)は、メートルの定義が、光速度を定義値とすることで、与えられたばっかりだったので、私は知らず(定義されたのは1983年)、真空中の光速度 {c} は、実験値、真空の透磁率 {\mu_0} は、{4\pi \times 10^{-7}\mathrm{N~A^{-2}}} ですから、真空の誘電率 {\varepsilon_0} が、実験値なのは、当然だと思っていました」

真由「光速度が、定義値になったのは、私が生まれた年ですか。道理で私の頭の中で、光速度が、決まっているものと、思えていた理由が、分かりました」

麻友「あの、太郎さん。話しかけていい?」

私「麻友さんが、話しかけちゃいけないとき、なんていうものは、ないんだよ」

麻友「その、さっきから話題に上っている、{\displaystyle c^2=\frac{1}{\varepsilon_0~\mu_0}} というのは、どこから、出てきたの?」

私「そう。まさに、核心を突くから、麻友さんは、特待生なんだよ。今日は、その話をするんだ」

麻友「難しいの?」

私「難しいから、山口真由さんにまで、お出まし願った」

若菜「一体どういう話を、するんですか?」

私「麻友さん達は、微分は、ちょっと勉強したけど、微分方程式は、まだだよね。その微分方程式で書かれた、マクスウェル方程式というものを、ほんのちょっと、勉強する」

結弦「ほんのちょっとだけ?」

私「このマクスウェル方程式だけで、高級な物理学の本が、1冊書ける。例えば、

砂川重信『理論電磁気学』(紀伊國屋書店

など。だから、ちょっとと言っても、奥が深い。真由さん。真空中のマクスウェル方程式を、電場と電束密度、磁場と磁束密度を、分けて、書いて下さい」


真由「いきなり、100マイルの直球ですか。

{\displaystyle \mathrm{div} D=\rho}

{\displaystyle \mathrm{div} B=0}

{\displaystyle \mathrm{rot} E=-\frac{\partial B}{\partial t}}

{\displaystyle \mathrm{rot} H=i+\frac{\partial D}{\partial t}}

で、真空中なら、

{D=\varepsilon_0 E} かつ、{B=\mu_0 H} ですね」

麻友「じぇーんじぇん、分かりません。先生、なんとかして~」

私「麻友さん。難しい問題でも、分かるところから、切り崩して行くんだ。まず、最後の、

{D=\varepsilon_0 E} かつ、{B=\mu_0 H}

を、見て御覧。問題になっている、{\varepsilon_0} と、{\mu_0} が、現れている。ここから、攻め込もう」

麻友「これって、比例しているということ?」

結弦「お母さん、もう攻撃始めた」

私「そう、比例しているということなんだ。ところで、真由さん、この {\varepsilon_0} と、{\mu_0} が、{D=\varepsilon_0 E} なのか、{E=\varepsilon_0 D} なのか、また、{B=\mu_0 H} なのか、{H=\mu_0 B} なのか、不安になったことは、ありませんか?」

真由「それは、手に覚えさせました」

私「なるほど。それもひとつの方法ですね」

真由「松田さんは、どう覚えているんですか」

私「まず、{D}{E} を書きます。{D~~=~~E} みたいに。そして、{\varepsilon_0}{\varepsilon} は、ギリシャ文字の E だから、{E} の方に、{D~~=\varepsilon_0 E} と、付けてあげるのです」

真由「なるほど」

私「ここまでだったら、どうってことありません。この後があるのです。{D~~=\varepsilon_0 E}{D}{E} は、アルファベット順に並んでいますね」

真由「そうですね」

私「もう一方の、迷っている、{B} と、{H} も、アルファベット順、つまり、{B~~=~~H} と並べて、{D~~=\varepsilon_0 E}{\varepsilon_0} の付いている側に、{\mu_0} を付けて、{B~~=\mu_0 H} が、求めていたものであったとすると、間違いません」

真由「私に、そんな丁寧な教え方をしなくても、分かります」

私「そうでしたね」


真由「電束密度 {D} と、磁束密度 {B} は、渡辺さんが言われたように、電場 {E} と磁場 {H} で、表せますから、真空中のマクスウェル方程式は、もっと簡単になるのでしたね。しかも、真空中では、電荷がありませんから、電荷密度 {\rho =0} で、さらに電流もないので、{i=0} ですね。書いてみると、


{\displaystyle \mathrm{div} E=0}

{\displaystyle \mathrm{div} H=0}

{\displaystyle \mathrm{rot} E=-\frac{\partial \mu_0 H}{\partial t}}

{\displaystyle \mathrm{rot} H=\frac{\partial \varepsilon_0 E}{\partial t}}


となる」

私「麻友さん。私がひとりで、式をどんどん変形するときは、あんなこと、できるわけないと、思ってただろうけど、他にも同じようなことができる人がいるっていうのは、どんな感じだい?」

麻友「つまり、太郎さんは、歴史上最高の数学者で物理学者、ではないということよ」

私「アッハッハッ、その返しは、大したもんだよ。それくらいで、見ていてくれ」


真由「これで、松田さんがやりたそうな、波動方程式が、導けるところまで、来ましたが」

私「麻友さん。ちょっと、トリックみたいなんだけどね。この4つの式で、{E} とか、{H} というのは、ベクトルという、{\displaystyle E= \begin{pmatrix} E_x \\ E_y \\ E_z \end{pmatrix}} や、{\displaystyle H= \begin{pmatrix} H_x \\ H_y \\ H_z \end{pmatrix}} みたいな、3成分の量なんだ」

麻友「3成分のベクトルというのは、高校で、空間の位置ベクトルというので、少しやったかもね。ほとんど、覚えてないけど」

若菜「そうすると、左辺も右辺も、3成分ということですか?」

私「そうだよ。そして、{\displaystyle \frac{\partial \mu_0 H}{\partial t}} というのは、{t} という変数だけについて、微分するというマークなんだ」

結弦「そうすると、例えば、{\displaystyle H= \begin{pmatrix} x^2+y^3+5tx \\ t^3+4xt+\sin{t} \\ e^t \end{pmatrix}} なら、

{\displaystyle -\frac{\partial \mu_0 H}{\partial t}=\begin{pmatrix} -\mu_0 5x \\ -\mu_0( 3t^2+4x+\cos{t}) \\ -\mu_0 e^t \end{pmatrix}}

ということ?」

私「もう、中学3年生が、分かっちゃってる」


真由「{\mathrm{rot}} の説明を、しなくて良いのですか?」

私「やっとそこまで来たんですよ。麻友さんの物理学や数学の知識はとぼしいので」

麻友「太郎さんは、キルヒアイスよね。アスターテ会戦で、第1勝を、挙げた後、喜んで、2戦目、3戦目のことばかり考えている、ラインハルトに、

『兵が疲れております。休息を与えては如何でしょう』

と、進言する」

私「ああ、4784文字にもなっているな。ちょっと、ここまでで、投稿しておくか。余り長くなると、書く方も、読む方も、大変になる」

私「いいですね。真由さん」

真由「もちろんです」

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 現在2021年5月24日19時22分である。一旦中断。