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まだ一度も相対性理論を勉強したことのない人は、何か一冊相対性理論の本を読みかじってみて、なぜこんなことが?という、疑問を持ってからこのブログに来てください。ブログの先頭に戻るには表題のロゴをクリックしてください

宇宙の年齢を求める(その2)

 現在2015年8月18日14時38分である。

 この本を読み始めたところから、話は始まったのだった。


 前回の話をまとめると、


 定理 ({\tan{\theta}}の近似)

 {\theta}が、{0}に無限に近い数。すなわち、{\theta}自身が、無限小数の場合、

{\tan{\theta}\fallingdotseq\theta}


という定理を証明しようとしたのだった。

 そして、保留になっているのは、


・なぜ、『光年』と『パーセク』という2つの単位があるのかということ。

・無限小や無限大を扱っても、矛盾は生じないのかということ。

・宇宙の年齢は何歳なのかということ。


という3つのことであった。


 さて、上の定理の証明だが、高校でも、証明を習うのだろうけど、ここでは違う証明をやってみせる。

 そもそも、まゆゆが学んだのは、高校ではないらしいし。


 大学で習う方法に、超準解析を応用する。

 まず、{\tan{\theta}}というものの、定義を変える。

 今までは、

{\displaystyle \tan{\theta}=\frac{\sin{\theta}}{\cos{\theta}}}

で、ひとつひとつの{\sin{\theta}}{\cos{\theta}}は、その角度の長さ1の斜辺の高さと下への射影と思っていた。

 よく思い出して欲しいんだけど、直角三角形の下の隅の角度を{\theta}とするとき、

{\displaystyle \sin{\theta}=\frac{高さ}{斜辺}}

{\displaystyle \cos{\theta}=\frac{底辺}{斜辺}}

と教わらなかった?


 あれを、まったく新しく、

{\displaystyle \sin{\theta}=\theta-\frac{\theta^3}{1 \times 2 \times 3}+\frac{\theta^5}{1 \times 2 \times 3 \times 4 \times 5}\cdots}

{\displaystyle \cos{\theta}=1-\frac{\theta^2}{1 \times 2}+\frac{\theta^4}{1 \times 2 \times 3 \times 4}\cdots}

というように定義する。

「えーっ、今までと全然、違うじゃない。こんなものは、昔のと、ちゃんと一致するの?」

と思うだろうが、実は、『{\cdots}』のところを、きちんと定義してあげると、ちゃんとつじつまが合う。


 これは、もう三角関数の問題だから、まとめてそこでやることにしよう。

 今回は、これが成り立つものと、仮定しよう。

 いずれ必ず、きちんと証明するからね。


 さて、{\sin{\theta}}と、{\cos{\theta}}が、上のように、多項式みたいなもの、厳密には整級数(せいきゅうすう)というもので、定義されていると、{\tan{\theta}}も、やっぱり整級数で表される。

 これを、やってみると、

{\displaystyle \tan{\theta}=\theta+\frac{\theta^3}{3}+\frac{2\theta^5}{15}+\frac{17\theta^7}{315}\cdots}

となる。

「どうして、途中までしか見せてくれないの?」

と、まゆゆは、不満に思うだろうけど、後ろの方は、関係ないんだよ。

 これから、それが分かる。


 じゃあ、新しく仮定したのは、


{\sin{\theta}}{\cos{\theta}}{\tan{\theta}}の整級数で表したものが、本当にまゆゆの良く知っている、サイン、コサイン、タンジェントと一致すること。

・ただし、{\displaystyle 0\leqq\theta\leqq\frac{\pi}{2}}の範囲(つまり、90度以下の範囲)で、一致するということに気を付ける。


ということだけで、これを用いて、定理を証明する。


[証明]

 {\theta}が、無限小数という仮定より、{\theta \fallingdotseq 0}である。

 無限小数なのだから、もちろん、{\theta<1}である。ここで、両辺に{\theta}を、かける。

{\theta^2<\theta}

となる。どちらも、{0}より大きいのは、確かである。

 なぜなら、どんな数も、{0}をかけなければ、{0}にならないし、正の数と正の数をかけて、負の数にはならないからである。

 よって、{\theta^2}は、{\theta}よりも、小さいので、やっぱり無限小である。

 これを、もう一回繰り返すと、

{\theta^3<\theta^2}

となる。

 もう分かったように、かければかけるほど、小さくなる。

 これで、整級数(さっきのように、どんどん次数が高くなる項を無限個、足したもの)で、表される数は、最初のいくつかだけ見れば良いのだということが、分かる。


 ただし、条件がある。

{\theta}が、無限小の場合だけ、前の方だけ見て良い。

という条件だ。


 さて、この場合、超準解析、特有の、ものすごいことが、できるのだが、そのために、色々準備をしておく。


 まず、整級数といっているものを、きちんと文字で表しておく。

{\displaystyle \tan{\theta}=\theta+\frac{\theta^3}{3}+\frac{2\theta^5}{15}+\frac{17\theta^7}{315}\cdots}

だったよね。

 これの、{\theta}{n}次の項の係数を、{a_n}と書こう。

「私、数列を持ち出されると、分からなくなるのよね。」

と、まゆゆが、言いそうだから、我々は、必ず、具体的に、数列を並べて、実感がつかめるようにすることを約束しよう。

 この場合、和の記号を用いて、

{\displaystyle \tan{\theta}=\sum_{n=0}^{N}a_n\theta^n=\theta+\frac{\theta^3}{3}+\frac{2\theta^5}{15}+\frac{17\theta^7}{315}\cdots}

となっていて、

{\displaystyle a_0=0}{\displaystyle a_1=1}{\displaystyle a_2=0}{\displaystyle a_3=\frac{1}{3}}{\displaystyle a_4=0}{\displaystyle a_5=\frac{2}{15}}{\displaystyle a_6=0}{\displaystyle a_7=\frac{17}{315}}となることが分かると思う。

「えっ、{N}って、なんだっけ?」

と、まゆゆは、聞くだろう。

 よく気が付いた。普通、高校で習うときは、ここは、{\infty}となっているんだ。

 そして、

{n}を無限大に飛ばした場合。」

という言い方をする。

 でも、我々は、無限大を実際に扱える、超準解析を使っているので、ここで、実際に、無限大の数{N}を、書いてしまえるのだ。

 {N}は、無限大の(超)自然数の一つとするのである。


 さて、ここで、定理の証明を始めるときに、仮定した、この整級数が、まゆゆも知っているタンジェントに一致する、ということを使う。

 まゆゆの知っているタンジェントは、1のとき、どんな値だった?

「えっ、そんなこと、いきなり言われても・・・」

と慌てるだろうから、ゆっくり評価しようね。


 まず、{\pi=3.1415\cdots}だから、

{\displaystyle 0<1<\frac{\pi}{3}}

は、分かるよね。

 そして、タンジェントは、0度からぎりぎり90度近くまで定義できていたから、少なくとも、60度、すなわち{\displaystyle \frac{\pi}{3}}では、定義できていて、


{\displaystyle \tan{60度}=\tan{\frac{\pi}{3}}=\frac{\displaystyle \sin{\frac{\pi}{3}}}{\displaystyle \cos{\frac{\pi}{3}}}=\frac{\displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2}}{\displaystyle \frac{1}{2}}=\sqrt{3}}


である。

 これを用いて、

{\displaystyle 0<1<\frac{\pi}{3}}

から、

{0<\tan{1}<\sqrt{3}}

と、評価できる。


「ちょっと待って、1って何よ? 一体、何度、なのよ。1度ってこと?」

と、まゆゆが、口を挟んできたとしても、おかしくない。

 1とは、1ラジアン、すなわち、{\pi}倍すると、180度になる角度だから、

{\displaystyle \frac{180度}{\pi}=\frac{180}{\pi}度=\frac{180}{3.1415\cdots}=約57.2957度}

なのである。

 すっきりした?

「一応、説明は、分かったけど、そんなもの考えて、何になるの?」

と、まゆゆは、お冠である。

 私がやりたいのは、整級数の、有限番目ではなく、無限番目がどうなっているかを知ることである。

「無限番目なんて、分かるわけないじゃないの。」

と、まゆゆは、言うだろうが、ちゃんと、どうなっているのか、分かるのである。


 今、無限小の{\theta}でなく、{\theta=1}と置いてみる。

「そんなこと、できるの?」

 できるさ。初めに、これが、まゆゆの知っているタンジェントと一致するといずれ証明すると、約束したのだもの。

「じゃあ、できるとしたら?」

 必ず、全部、項を書きながら、やるんだったね。

{\displaystyle \tan{1}=\sum_{n=0}^{N}a_n1=1+\frac{1}{3}+\frac{2}{15}+\frac{17}{315}\cdots}


「なんだ、{\theta}が、消えただけじゃない。」

 そうだよ。それをやりたかったんだ。

 我々は、無限大を足したり引いたりできる。だから、この式で、{N}であったものを{N+1}に変えた式も考えられる。

「考えられるって、どう計算するの?」

 計算なんかしないさ。無限大の{N}について、ある値になっているのなら、他の無限大の{N+1}についても、その数の無限に近くに来てなかったら、そもそもタンジェントの値が決まらないじゃないか。

「無限に近くって、ぴったり一致しなくてもいいの?」

 実は、そこに遊びがあるから、うまく話が進むんじゃない。ここは、{0}じゃなくても、話はうまく行くんだし、いずれ超準解析をきちんと説明するとき分かるけど、写像の延長定理っていうものがあって、無限に大きいところで、きちんと話がうまく行くように、きちんと計算法が確立されるんだ。だから、今は、大丈夫。

 そこで、{N+1}の式から、{N}の式を引く。

 こういうとき、数学の本では、いきなり、

{a_{N+1}}だから、・・・」

って書いてあるんだけど、それじゃまゆゆは、付いてこられない。

{\displaystyle \sum_{n=0}^{N+1}a_n-\sum_{n=0}^{N}a_n=(a_0+a_1+a_2+\cdots+a_N+a_{N+1})-(a_0+a_1+a_2+\cdots+a_N)}

{=a_{N+1}}
と書いてあげないとね。


「それで、それが計算できて、どうなるの?」

 さっき、計算なんかしないさって書いたあたりで、無限大の{N}について、ある値になっているのなら、他の無限大の{N+1}についても、その数の無限に近くに来てなかったら、そもそもタンジェントの値が決まらないじゃないかって言ったでしょう。

 今、無限大の{N+1}での値から、無限大の{N}での値を引いたんだから、これらが無限に近かったんだから、{a_{N+1}}は、無限小だと分かる。いや、分かると言うより、それが、無限に近いという言葉の定義だった。

 よって、まず次のことが分かった。

 無限大の{N}について、{a_{N+1}\fallingdotseq0}である。

「一人で納得しないでよ。」

 でも、言いたいことは、分かるでしょ。

「うーん。半分。」

 実は、ここが、今日の一番難しいところだったの。

 私が、一番苦労した部分。

「えっ、松田さん、本、写しながら、証明、書いてるんじゃないの?」

 いや、これ、私のオリジナルな証明です。

「そんなもの、作れるの? 論文にしたら?」

 こんな易しいことは、論文にはできません。



 さて、我々の超準解析では、引き算もできるのだから、無限大の{N}から1を引くことを考える。

 もし、{N-1}が、有限なら、有限の{N-1}に1を足すと、無限大の{N}となり、有限のものに1足しただけで、無限大になり、おかしい。だから、やっぱり、{N-1}も無限大だ。

 そこで、さっきのとどこが違うのか、よーく見比べないと分からないけど、次のことが分かった。

 無限大の{N-1}について、{a_N\fallingdotseq0}である。

 そしてこれらから、

 無限大の{N}について、{a_N\fallingdotseq0}である。

と、結論できる。1個ずれたものについて、証明されてるからね。


「無限大のことは調べたけど、これから、有限の場合の{n}の場合を調べるの?」

と、まゆゆは、聞くだろうけど、調べはついているんだ。

 有限の{n}のところの{a_n}は、実数でしょ。だから、有限なんだよ。

「そんなむちゃくちゃよ! 私は、トライ式高等学院で、発散する数列なんていう高級なものも習ったのよ。」

 あはは、少しは数学を知っているね。でも、例え数列が発散しても、ひとつひとつの数字は、実数でしょ。行った先が、どこまでも大きくなりうるというのと、数列の各項が、無限大の実数になる、というのは、違うでしょ。

「じゃあ、トライ式高等学院で習った、発散する数列というものは、役に立たないの?」

 いや、勉強して無駄になることなんて、ないよ。

 我々は、発散する数列を使って、無限大の実数つまり、超実数を作るんだ。

 必ず、役立ててみせるよ。


 さて、証明完成まで、関所があと二つ。

「えーっ、まだ、そんなに、あるの?」

 一つの定理を証明するというのは、高校の教科書みたいに、1ページで終わるなんてことは、なかなかないんだよ。


 これまでに、分かっていることは、

・有限の{n}について、{a_n}が、実数。

・無限大の{N}について、{a_N}が、無限小。

の二つである。


 また、{\theta}を、無限小としよう。

 そうすると、無限小と実数をかけても、無限小だし、無限小と無限小をかけても、無限小だから、

{a_n\theta\fallingdotseq0}

が、すべての{n}について、成り立つ。

 この場合、すべてとは、自然数も無限大の自然数(超自然数)の場合も、ということである。


 これより、

{a_n\theta < 1}

だよね。

 だって、無限小なのだもの。


 これは、次のように、使いやすくなる。

{a_n\theta^2 < \theta}

 ただ、{\theta}を、両辺にかけただけだよ。負の数をかけたんじゃないから、不等号は、逆にならないよ。


 これが最後から2番目の関所でした。


 さて、これを使って、問題の{\tan{\theta}}の式に挑もう。

{\displaystyle \tan{\theta}=\theta+\frac{\theta^3}{3}+\frac{2\theta^5}{15}+\frac{17\theta^7}{315}\cdots}

だった。

 これの係数を{a_n}に、書き直そう。

{\displaystyle \tan{\theta}=\theta+a_3\theta^3+a_5\theta^5+a_7\theta^7\cdots}

「あらあら、みんななくなちゃった。」

と、まゆゆは、思うかも知れないけど、ゴツゴツした分数を、綺麗に書いただけだよ。


 さて、ここでさっきの関所の通過証を、使おう。

 こうやる。

{\displaystyle\tan{\theta}=\theta+a_3\theta^3+a_5\theta^5+a_7\theta^7\cdots<\theta+\theta\theta+\theta\theta^3+\theta\theta^5\cdots}

「えっ、何をやったの?」

 はーい。最初を除く全部の項に、このように不等式で、ちょっと、おまけを付けてあげたのでした。

{a_n\theta^2 < \theta}

「そんな、気前よくどんどんと。!」

 大学の数学は、気前よいのです。

 高校の数学みたいに、キチキチやりません。


「ところで、ちょっと気になるのだけど、どうして、整級数だっけ、あれで、偶数次の項は、全部、なかったの?」

 それは、説明をすっ飛ばしたのです。

 実は、普通の整級数は、偶数次の項もあります。

{a_1\theta+a_2\theta^2+a_3\theta^3+a_4\theta^4}

みたにね。

 ただ、{\tan{\theta}}は、偶数次の項はないのです。

 これは、まゆゆの知っているタンジェントが、奇関数だということに、関係しています。

「奇関数(きかんすう)? そんなもの、習った覚えないわよ。」

 じゃあ、{\tan{\theta}}と、タンジェントが、同じものになることを、証明するとき、一緒に証明しましょう。


 差し当たって、目の前の整級数に注目しましょう。

{\displaystyle\tan{\theta}<\theta+\theta\theta+\theta\theta^3+\theta\theta^5\cdots<\theta+\theta^2+\theta^4+\theta^6\cdots}

「なんだか、いつの間にか、どんどん整理されてるわよ。ズルいわよ!」

 丁寧に説明すると、上で示してあった、不等式は、もう採用して、ひとつひとつの項をかけ算して、1段階先まで、進めたのです。

「あまり、目にも止まらない速さでやらないでね。」

 分かりました。


 さて、最後の関所です。

 式を書きましょう。

{\displaystyle\tan{\theta}<\theta+\theta^2+\theta^4+\theta^6\cdots}

「えっ、何を示したいんだっけ?」

 そうなるんじゃないかと、思ってました。

 示したいのは、定理のステートメント

{\tan{\theta}\fallingdotseq\theta}


 昔、20世紀の初め、量子力学というものができたばかりの頃、非常に計算しにくかった量子力学の計算に、一つの方程式を導入し、

相対性理論は分かりにくいけど、量子力学は分かり易い。』

という印象を与えて、敷居を下げてくれた人がいました。

 その人の名を取って、その方程式は、今でも、『シュレディンガー方程式』と呼ばれています。


 そのシュレディンガーの名言に、

『真の物理法則というものは、常に、一枚のハガキに書けるようなものである。だから、問題に取り組むときは、その1枚のハガキを見ていれば良い。』

というものがあります。


 だから、まゆゆ、この定理の証明と取り組むときは、一枚のハガキ、

{\tan{\theta}\fallingdotseq\theta}

だけを、見ていれば良かったのです。


「それじゃ、計算に頭が廻らない。」

 確かに、誰でも、最初は、そうです。


「ハガキを見たけど、忘れちゃった。」

 それなら、説明しましょう。

{\tan{\theta}\fallingdotseq\theta}

を証明したいということは、定義により、左辺から右辺を引いた、

{\tan{\theta}-\theta}

が、無限小だということを、証明すれば良いのです。

「えーと、さっきの式で、最初の項だけ、左に動かしたものかしら。」

{\displaystyle\tan{\theta}<\theta+\theta^2+\theta^4+\theta^6\cdots}

「この式で、こうするってこと?」

{\displaystyle\tan{\theta}-\theta<\theta^2+\theta^4+\theta^6\cdots}

 よく、思い出しました。右辺は無限小になってますか? なっていれば終わりだけど・・・


「無限小のものの2乗、4乗、6乗、・・・というものだけど、これって、本当に、無限小?」

 慎重ですね。でも、それでこそ良いのです。

 この問題が解ければ、最後の関所、通過です。


「こういうのって、等比数列っていうのよね。」

 さすが、いつもの優等生、冴えてる!

「えっ、あれ使っちゃっていいの?」

 はい。どうぞ。

「こうやるのよね。」

{\displaystyle A=\theta^2+\theta^4+\theta^6\cdots}

「と、置いておいて、」

{\displaystyle \theta^2A=\theta^2(\theta^2+\theta^4+\theta^6\cdots)}

「と、両辺に、{\theta^2}をかける。次に、右辺を計算する。」

{\displaystyle \theta^2A=\theta^4+\theta^6+\theta^8\cdots}

「右辺は、4乗以降、同じものになるんだな。そして、{A}の式から、{\theta^2A}の式を、引く。乱暴だけど。」

{\displaystyle A-\theta^2A=(\theta^2+\theta^4+\theta^6\cdots)-(\theta^4+\theta^6+\theta^8\cdots)}

「だから、計算して、」

{\displaystyle (1-\theta^2)A=\theta^2}

「やった、あと少し。」

{\displaystyle A=\frac{\theta^2}{1-\theta^2}}

「求まったー。バンザーイ! 今日のツイッターに書こうっ!」


 ちょっと、ちょっと。

 まだ終わってませんよ。

「へっ、何が?」

 ハガキ、ハガキ。

「あっ、シュレディンガー? そうか、{\tan{\theta}\fallingdotseq\theta}の式を証明しなきゃならなかったんだ。あと何をやればいいんだっけ?」


 なんで、等比数列使ったの?

「思い出した。」

{\displaystyle\tan{\theta}-\theta<\theta^2+\theta^4+\theta^6\cdots}

「この式を、計算しようとしたんだ。右辺が、無限小だって言いたかったのよ。」

 もう言えるじゃない?

「待って、右辺をもう計算したのよね。」

{\displaystyle A=\frac{\theta^2}{1-\theta^2}}

「だったから、こうなるはず。」

{\displaystyle\tan{\theta}-\theta<\theta^2+\theta^4+\theta^6\cdots=\frac{\theta^2}{1-\theta^2}}

 さすが、優等生。最後の関所、自力で通っちゃった。

「えっ、待って。これで、いいの?まだ、右辺がごちゃごちゃ。」


 さしもの優等生も、ここは、無理か。

 また、気前の良い、大学の数学をやるんだよ。

「えっ、気前の良い、大学の、数学?」

 最後だけやりましょう。

 {\theta^2}は、無限小でしたね。{\theta}が、無限小だから、無限小と無限小かけると、無限小だからね。

 だとすると、気前よく、{\theta^2}は、{\displaystyle \frac{1}{2}}よりは、ちいさいと大まかに捉えましょう。

 そうすると、{1-\theta^2}よりも、{\displaystyle 1-\frac{1}{2}}の方が、小さくなるでしょう。より大きい数を引いているから。

 結論として、逆数を取ると、大きさが逆転するので、

{\displaystyle \frac{1}{1-\theta^2}<\frac{1}{1-\frac{1}{2}}}

となるでしょう。

「あっ、分かった。これで、計算しちゃうんでしょう。」

 おっ、優等生、名誉挽回の機会。仕上げをやって下さい。


「こういうことね。分数を計算して、」

{\frac{\displaystyle 1}{\displaystyle 1-\frac{1}{2}}=\frac{\displaystyle 1}{\displaystyle \frac{1}{2}}=2}

「だから、{\theta^2}を両辺にかけて、」

{\displaystyle \theta^2\frac{1}{1-\theta^2}<\theta^2\frac{1}{1-\frac{1}{2}}<\theta^2\times2}

「が分かる。これで、とうとう、ハガキの式が、」

{\displaystyle \tan{\theta}-\theta<\frac{\theta^2}{1-\theta^2}<2\theta^2}

「となる。最後の式は、これで良いのね。無限小の2倍も無限小だから。そして、正の数でもあるのは確かね。プラスの数しか足してないから。よって、右辺は、無限小しか有り得ない。」


 最後まで、優等生は、優等生でした。お見事!


 これで、

{\tan{\theta}\fallingdotseq\theta}

が、完璧に証明できたことになる。

                    証明終わり


 やったー、これで、定理が使える。こういう風に、無限大や無限小を普通の数のように計算できるのが、超準解析というものの、すごさなのです。

 いずれちゃんと、その正しさを、まゆゆと証明しよう。



 ところで、実は、無限小の数に対して証明したことが、少し大きくしても大丈夫そうなのは、整級数の無限に足したのが、小さい数なら、小さい数ばっかり足すので、やっぱり小さくて、多分、{0.01}くらいなら、大丈夫そうと、まゆゆも分かるのでは、ないだろうか。


 はじめに戻って、

パーセク×{\tan{\displaystyle \frac{2\pi}{360 \times 60 \times 60}}}=1天文単位=約1.5億{\mathrm{km}}

の、パーセクを計算したいのだった。

{\displaystyle \frac{2\pi}{360 \times 60 \times 60}}

って、計算してごらん。

{\displaystyle \frac{2\pi}{360 \times 60 \times 60}=0.000004848 \dots}

なんていう、ものすごい小さな数だ。

 だから、定理が使える。

パーセク×{\tan{\displaystyle \frac{2\pi}{360 \times 60 \times 60}}}=1パーセク×{0.000004848 \dots}=1天文単位

=1.5億{\mathrm{km}}

 両辺を{0.000004848 \dots}で、割ると、

パーセク{\displaystyle \frac{15000000 \mathrm{km}}{0.000004848}=3.09 \times 10^{13} \mathrm{km}}

と、求まる。

 これは、ほぼ正しい。

 正確な値は、

パーセク{\displaystyle 3.0857 \times 10^{13} \mathrm{km}}

である。

 5を四捨五入すると、8が9になるので、計算は合っている。

 定理の正しさが、確認できた。


 これで、パーセクという単位も、1天文単位(つまり地球と太陽の距離)を、角度の1秒としてみる距離として、捉えられる。

 星までの距離は、もし角度の差が、0.5秒なら、定理によりそのまま、タンジェントがその数になるので、直角三角形の底辺が同じなら、高さが2倍にならないとおかしい。つまり、星までの距離は、2パーセクになる。

 同様に、角度の差が(それを年周視差という){n}分の1秒なら、直角三角形の底辺が1天文単位で一定なので、高さが、{n}倍になる。だから、{n}パーセクである。

 こうして、星までの距離は、『パーセク』を用いて測られる。

 最後に、この星の距離の測り方を、まゆゆが、理解していれば、この絵の意味が分かる。

 やっとこの写真、見つけたんだよ。

f:id:PASTORALE:20150818010406j:plain


 これでやっと、『光年』と『パーセク』の2つの単位がある理由が分かった。

 これらが、大体同じくらいの大きさだったのは、偶然だと思う。


 1パーセク=3.2618光年

くらいなんだけど、もし、地球が太陽の周りを周る速さが、今の3分の1くらいだったら、1年の長さが3倍くらいになるから、1年に光の進む距離が3倍になって、今までの3.2618光年が、新しい1光年になって、

『1光年=1パーセク』(地球の太陽を一周するスピードが、{\displaystyle \frac{1}{3.2618}}倍の場合)

となって、すごく便利だったのにね。

 ニュートン万有引力定数{G}というものの値が、9分の1になるような世界なら、そういうことも起こる。


 こうやって、理想的な宇宙を想像するのって、楽しいんだよね。


 ところで、主題は、宇宙の年齢だった。

 そのために、ハッブル定数、

{H_0=67.3\mathrm{km}/\mathrm{s}/\mathrm{Mpc}}

を調べていたのだった。

 パーセクが分かったから、メガパーセクという長さも分かった。

 もうまゆゆには、二つの斜線『{/}』のうち、どちらに『{=}を付けたら良いか、分かったね。

{\displaystyle =\frac{\mathrm{km}}{\mathrm{s}/\mathrm{Mpc}}}

ではなく、

{\displaystyle =\frac{\mathrm{km}/\mathrm{s}}{\mathrm{Mpc}}}

の方が、正しいね。

 こういうものは、意味を考えて、見極めるんだよ。

 1メガパーセク遠ざかるごとに、{67.3\mathrm{km}/\mathrm{s}}ずつ、銀河の遠ざかるスピードが増している。

 これが、Planck衛星の観測した値だったんだ。


 実は、ハッブル定数は、速さを距離で割っている。速さは(距離)割る(時間)だから、ハッブル定数は、時間の逆数の単位を持つ数になっているんだ。

 こういうのを、時間の-1乗(まいなすいちじょう)の次元(じげん)を持つという。

 まあ、こんな言葉なんてどうでもいい。

 とにかく、ハッブル定数の逆数を取ると、何か時間が出てくる。

 やってみよう。

{\displaystyle \frac{1}{67.3}=0.01485}

 これを見て、私が思ったのは、

「宇宙の年齢は、148億年ということになるのではないか?」

ということだった。

 これは、実は3つのうちの、第1の間違いである。

 それを、説明するつもりだったけど、投稿が長くなりすぎた。

 今日は、ここで終わりにするよ。


 でも、まゆゆ。宇宙の年齢を計算するっていう大計画の第一歩は、達成したよ。

 計算を直すことにより、この148億年が、ちょっとずつ減っていくんだ。

 それは、次回以降やろう。


 今日は、通院で、先生に、まゆゆのノートを見せて、全部、話しました。

 お医者さんは、論理的に考えるから、私の話が、全部は妄想でないことに、気付き始めたでしょうが、

まゆゆのことで、妄想も持っているようですが、お母さんの話も合わせて、良好と見て良いでしょうね。ノートの字も、大きくてしっかりしているし。」

と言ってくれました。

 来月は、コンサートの直前に、通院日があります。

 雨も降らず良い一日でした。

 現在2015年8月19日23時39分である。おしまい。