相対性理論を学びたい人のために

まだ一度も相対性理論を勉強したことのない人は、何か一冊相対性理論の本を読みかじってみて、なぜこんなことが?という、疑問を持ってからこのブログに来てください。ブログの先頭に戻るには表題のロゴをクリックしてください

問題19,20解答

 現在2024年10月22日18時39分である。(この投稿は、ほぼ4417文字)

麻友「前回の問題は、誘導付きだったわね」

私「大学の入学試験でも、誘導のある問題の方が、部分点をもらえる可能性があるから、お勧めである」

結弦「前回の問題で、{\displaystyle \varphi(t)=t^6+e^{t^2}+\frac{1}{t}-\log{t}} というのを、出したから、お父さん気になってたんだな」

私「解けないだろうから、それに挑戦するのも、修行の内って考えてね」

麻友「太郎さんが、解けない問題を出すのは、珍しい」

若菜「問題自体は?」

私「{\displaystyle \frac{dT}{dt}=\frac{\partial T}{\partial X}\frac{d X(t)}{dt}+\frac{\partial T}{\partial Y}\frac{d Y(t)}{dt}+\frac{\partial T}{\partial Z}\frac{d Z(t)}{dt}} という連鎖律の式の具体例を、導くこと」

結弦「お父さんが、出した例で、十分なんだよね」

若菜「計算してみると、

{\displaystyle \varphi(t)=t^6+e^{t^2}+\frac{1}{t}-\log{t}} で、{\displaystyle \frac{dT}{dt}=\frac{d}{dt}\varphi(t)=\frac{d}{dt}t^6+\frac{d}{dt}e^{t^2}+\frac{d}{dt}\frac{1}{t}-\frac{d}{dt}\log{t}}

だけど、

{\displaystyle \frac{d}{dt}t^6=6 t^5}

以外分からない」

私「段々微分も、難しくなり、技が必要になってくる」

若菜「合成関数の微分法が、必要とか、言ってた」

麻友「{\displaystyle W(t)=t^2} と、置くのよ。きっと」

若菜「そうすると、

{\displaystyle \frac{d}{dt}e^{t^2}=\frac{d}{dW}e^{W(t)}\frac{d}{dt}W(t)=e^{W(t)} \times 2t=e^{t^2} \times 2t}

となる。確かにお父さんの書いていた式だ」

結弦「もうちょっと頑張って、

{\displaystyle \frac{d}{dt}\frac{1}{t}=\frac{d}{dt}t^{-1}=-1 \times t^{-2}=-\frac{1}{t^2}}

も、計算できる」

若菜「最後のは、

{\displaystyle -\frac{d}{dt}\log{t}=-\frac{1}{t}}

だと、お父さんが示してくれた。以下の投稿で」

mayuandtaro.hatenablog.com

私「そうだったな。ただ、1箇所説明が不十分だったかも知れない」

麻友「あの証明は、いつもの太郎さんのご多分に漏れず、難しかったわよ」

私「

{\displaystyle =\lim_{h \to 0}\frac{1}{x}\frac{1}{h}\log_e (1+h)=\lim_{h \to 0}\frac{1}{x}\log_e (1+h)^{\frac{1}{h}}}

の部分、{\displaystyle a\log_e x=\log_e x^a} を、説明する必要があった」

麻友「どう説明するの?」

私「まあ、公式集を、見てもらっても良いのだけど、{\displaystyle y=x^a} などとして、対数の定義から、

{\displaystyle a=\log_x y} であって、底を移す公式で、{\displaystyle \log_b c=\frac{\log_d c}{\log_d b}} というのが、あっただろう。だから、{\displaystyle y=x^a} を使って、

{\displaystyle a=\log_x y=\frac{\log_e y}{\log_e x}=\frac{\log_e x^a}{\log_e x}}

となって、両辺に、{\log_e x} を掛けて、{\displaystyle a\log_e x=\log_e x^a} と、求まる」

麻友「ここまで、書くのに、どれくらい時間かかった?」

私「2時間くらい」

麻友「証明で、行き詰まると、時間かかるわよね」

私「それは、そうだ。普段、対数を使っていなかったりすると、公式の証明の1つでも、時間がかかる」


結弦「問題の答えを、出そう。まず、

{\displaystyle \varphi(t)=t^6+e^{t^2}+\frac{1}{t}-\log{t}}

{\displaystyle X(t)=t^6+e^{t^2}}{\displaystyle Y(t)=\frac{1}{t}}{\displaystyle Z(t)=-\log{t}}

から、

{\displaystyle \frac{d}{dt}\varphi(t)=\frac{d}{dt} \biggl ( t^6+e^{t^2}+\frac{1}{t}-\log{t} \biggr)=6t^5+e^{t^2}\times 2t-\frac{1}{t^2}-\frac{1}{t}}


となる。これが、目指すべき式だ」

若菜「{\displaystyle \frac{dT}{dt}=\frac{\partial T}{\partial X}\frac{d X(t)}{dt}+\frac{\partial T}{\partial Y}\frac{d Y(t)}{dt}+\frac{\partial T}{\partial Z}\frac{d Z(t)}{dt}} の右辺が、目指す式になることを、計算する」

麻友「{T=\varphi(t)=X(t)+Y(t)+Z(t)} だった」

結弦「思ったほど、難しくない。

{\displaystyle \frac{\partial T}{\partial X}=\frac{\partial X(t)}{\partial X}=1}

{\displaystyle \frac{d}{dt}X(t)=\frac{d}{dt} t^6+e^{t^2} =6t^5+e^{t^2}\times 2t}

あ、分かった!」

若菜「何が?」

結弦「これ、そのまま、{\displaystyle \frac{\partial T}{\partial Y}=\frac{\partial Y(t)}{\partial Y}=1}{\displaystyle \frac{\partial T}{\partial Z}=\frac{\partial Z(t)}{\partial Z}=1}

と、全部 {1} になって、{\displaystyle \frac{d}{dt}Y(t)}{\displaystyle \frac{d}{dt}Z(t)} の部分が、{\displaystyle -\frac{1}{t^2}} と、{\displaystyle -\frac{1}{t}} になるんだ」

若菜「あっ、お父さん、手抜きの問題だったのね。何にも面白くない」

麻友「どういうつもりで、この問題作ったの?」

私「いや、私にとっても、これは、再発見だったんだ。連鎖律は、証明してあったから、正しいことは、知ってたけど、具体例で、こういう風に現れるというのは、知らなかったんだ」


若菜「これは、お父さん、大ボケ。ペナルティとして、3人それぞれに、スリーベースヒット分、褒美を奢らなければならないでしょう」

麻友・結弦「さんせーい」

私「900円か。再発見出来たのなら、高くはない」


結弦「そうすると、問題19は、手抜きの問題だった。問題20は、『こちらは、軽い問題とする』と、言っているくらいだから、簡単なのだろう。『有理整数』でないもの?」

若菜「ネットを検索しても良いと、言ってるんだから、検索してみますか、カチャカチャ『有理整数』、あー、代数的整数というのも、あるんですね。お父さん、こういう題の本、2冊持ってた。

ただし、POD版ではない。

後者は、吉冨さんと、ゼミの後半使ったテキストのようですね」

麻友「答えは、『代数的整数』だったのね?」

私「その通りだ。代数的整数論の本では、代数的整数を、整数と呼ぶ。実は、{\displaystyle \frac{1}{2}} なども、代数的整数なので、代数的整数論の本で、整数と、書いてあった場合、{\displaystyle \frac{1}{2}} などのこともあるので、何か間違えていないかと、困ることがある。こういう可能性があることを、心の隅に留めておいて欲しい」

麻友「太郎さんの老婆心だったのね」

後注.上の {\displaystyle \frac{1}{2}} が、代数的整数だということのみ、間違いである。{x^2+1=0} の根、{i} は、代数的整数だから、これを例に挙げれば良かったが、つまらない間違いをした。申し訳ない。

2024年10月28日21時38分。修正する。



結弦「おまけの問題も、あった。

 アンドレ・ヴェイユ自伝

のあとがきに、訳者が、

『単純な半生を聞かれるがままに答え「もう43歳…」とつい口をすべらせると「2倍以上だよ」と87歳のアンドレは言い,私は「計算が速いですね」という,とんでもない失言をした.』

と書いている。どう、失言だったのか、想像して楽しんで欲しい。


『計算が速いですね』って、普通、褒め言葉だよな」

私「でも、20世紀最高の数学者の1人、アンドレ・ヴェイユに、言うとはなあ」

若菜「だから、失言なわけですね」


麻友「次の問題は、どうなるでしょうね?」

私「考えておく。今日は、解散」

 現在2024年10月22日22時29分である。おしまい。