相対性理論を学びたい人のために

まだ一度も相対性理論を勉強したことのない人は、何か一冊相対性理論の本を読みかじってみて、なぜこんなことが?という、疑問を持ってからこのブログに来てください。

宇宙の年齢を求める(その6)

 現在2015年12月22日23時35分である。

 この本に書かれていることを利用して、宇宙の年齢を推測しようとしていたのだった。

相対論的宇宙論 ([新装復刊]パリティ物理学コース )

相対論的宇宙論 ([新装復刊]パリティ物理学コース )

 宇宙の年齢を求める計算を続けよう。

 前回の最後は、アインシュタイン方程式を行列で書いて見せたのだった。

{\displaystyle R_{\mu\nu}-\frac{1}{2}Rg_{\mu\nu}+\Lambda g_{\mu\nu}=\frac{8 \pi G}{c^4}T_{\mu\nu}}

という一本の式が、次のような、4かける4イコール16個もの文字の並んだ、式だったのだ。

{\displaystyle \left(
\begin{array}{cc}
R_{00} & R_{01} & R_{02} & R_{03} \\
R_{10} & R_{11} & R_{12} & R_{13} \\
R_{20} & R_{21} & R_{22} & R_{23} \\
R_{30} & R_{31} & R_{32} & R_{33}
\end{array}
\right)
-
\frac{R}{2}
\left(
\begin{array}{cc}
g_{00} & g_{01} & g_{02} & g_{03} \\
g_{10} & g_{11} & g_{12} & g_{13} \\
g_{20} & g_{21} & g_{22} & g_{23} \\
g_{30} & g_{31} & g_{32} & g_{33}
\end{array}
\right)

}

{\displaystyle
+
\Lambda
\left(
\begin{array}{cc}
g_{00} & g_{01} & g_{02} & g_{03} \\
g_{10} & g_{11} & g_{12} & g_{13} \\
g_{20} & g_{21} & g_{22} & g_{23} \\
g_{30} & g_{31} & g_{32} & g_{33}
\end{array}
\right)


=\frac{8\pi G}{c^4}\left(
\begin{array}{cc}
T_{00} & T_{01} & T_{02} & T_{03} \\
T_{10} & T_{11} & T_{12} & T_{13} \\
T_{20} & T_{21} & T_{22} & T_{23} \\
T_{30} & T_{31} & T_{32} & T_{33}
\end{array}
\right)

}


「16個っていうけど、{00}とか{01}とか、いっぱい付いてるじゃない。」

 これは、添え字(そえじ)といって、例えば{01}というのは、『{0}行目の{1}列目ですよ。』というのを表す目印なんだ。

{0}行目!?」

 ああ、大学の数学では、数(自然数)は、普通、{0}から始まるとするんだ。

「そういえば、実数のことをやっていたとき、そんな話を聞いたような・・・。あの、実数が定義できている、という連載は?」

 宇宙の年齢を求める過程で、実数の性質を見直すことになり、この連載が終わった後、実数の一意性の証明に、なだれ込もうという計画だったんだけど、付いてこれる?

「あまり厳密にやることにこだわるより、分からせてくれることを、最優先にしてよ。分からなかったら、何にもならないんだから。」

 それは、真実だね。気を付けるよ。


 さて、上のアインシュタイン方程式で、求めたいのは、計量テンソルと呼ばれる、{g_{00}}{g_{01}}などの、一般に{g_{\mu\nu}}と表されるものなんだ。

 アインシュタイン方程式という方程式を解くと、この{g_{\mu\nu}}というものが求まるんだと思えば良い。


 ところで、一般相対性理論が難しい理由は、この方程式だけいじっていても、解けないことだ。

 一般相対性理論では、あらかじめ宇宙の形をこんな形じゃないのかな? と予想して、計量テンソルの形を想定して解くんだ。

「想定外のことは、起こらないの?」

 確かに起こる。これから求めようとしている、3回目の予想が、違ってくる理由はそこなんだけど、宇宙が、アインシュタイン方程式で表せない形になってしまったりしたら、もうどうしようもない。

「でも、そういうことって、どんな分野でも、起こることじゃない。改めて言わなくても。」

 それはそうなんだけど、自分達がどういうことを犠牲にして、この式を使っているか、ということを、知っていなければいけないということだよね。


 ここでは、私達の宇宙が、次のような条件を満たすとする。

 宇宙が、どの場所も大体同じようなもので出来ていて、どの方向を向いても似たように見えるという条件を、一様等方(いちようとうほう)と言うんだ。

「でも、この宇宙は、星もあるし、銀河もあるし、第一私達が住んでるじゃない。」

 そうなんだ。だから、現代の宇宙論では、そこまで扱えないんだ。

 ただ、宇宙の年齢が、何億歳か、というとき、ほんのちょっと私達が住んでいるために、1億歳も違わないでしょ。


『星や銀河も、宇宙全体の中の塵(ちり)のようなものとして、扱う。』


 これが、現代の、『一般相対論的宇宙論』の乗っかっている仮説なんだ。

「その仮定を置いて、話を進めるわけね。」


 そう。一様等方な宇宙は、ロバートソン-ウォーカー時空という、次のような計量テンソルで表される時間と空間の長さの単位を持つ。


{\displaystyle \mathrm{g}=-c^2 dt \otimes dt + a(t)^2d\sigma^2}

{\displaystyle d\sigma^2= \frac{1}{1-Kr^2} dr \otimes dr + r^2d\Omega^2}

{\displaystyle d\Omega^2=d\theta \otimes d\theta + \sin^2\theta d\phi \otimes d\phi}


「式が、三つあるけど、どれが、その『けいりょうてんそる』なの?」

 ああ、一番上の式が、メインの式で、下2つは、上の式に代入して使うんだ。

 だから、この三つの式で、一つのものを表している。

 『テンソル』というのは、相対性理論を学ぶとき良く出てくるけど、いずれ説明するよ。


 さてここで、アインシュタイン方程式が、微分方程式(びぶんほうていしき)というものであるということが分かってきます。

 物理学をやっていく上で、微分方程式は、避けて通れないものです。

 文系の人には、

「『微分』、大っ嫌い!」

という人が、多いのですが、丁寧にやっていけば、そんなに難しくて理解不能なものではありません。

 今回は、ほんのちょっとかすめましょう。こうやって、少しずつ慣れるのが、大切です。さすがに計算の詳細は書けません。

 なぜかというと、アインシュタイン方程式

{\displaystyle R_{\mu\nu}-\frac{1}{2}Rg_{\mu\nu}+\Lambda g_{\mu\nu}=\frac{8 \pi G}{c^4}T_{\mu\nu}}

の、{R_{\mu\nu}}{R}が、それぞれリッチテンソルとリッチスカラー曲率というもので、まともに計算するのは、ものすごく式を沢山書いてスペースと時間を取るものだからです。

「曲率って、なんて読むの?」

 曲率は、きょくりつと読みます。京都大学理学部に現役で入ってきたような人でも、『曲率ってなんだ?』と、最初は言ってましたから、麻友さんが、『何も分からない。』と思うのは、当然です。

 今は、こういう言葉に、慣らしているのです。赤ちゃんが、何も分からないまま、お母さんやお父さんの言葉を聞いているうちに、しゃべれるようになるのと同じです。

 さて、アインシュタイン方程式が、16個の数の式だったのですけど、『一様等方』という条件を付けると、次の2本の式を解くだけになります。

{\displaystyle \biggl(\frac{\dot{a}}{a}\biggr)^2=\frac{8\pi G}{3c^2}\rho-\frac{Kc^2}{a^2}+\frac{\Lambda c^2}{3}}

と、

{\displaystyle \dot{\rho}=-3\biggl(\frac{\dot{a}}{a}\biggr)(\rho+P)}

という二つの微分方程式です。

「普通の方程式と、微分方程式って、何が違うの?」

 普通に方程式と呼んでいるものの中に、微分方程式のものもあるんだけど、『微分』という計算が入っている方程式を、微分方程式といいます。

 『微分』というのは、よく見て下さい。{\dot{a}}や、{\dot{\rho}}のように、上に、点が付いているでしょう。

「そう言われれば、そうね。」

 ここで、{a}は、ロバートソン-ウォーカー時空の計量テンソル

{a=a(t)}

であり、{\rho}は、物質の固有エネルギー密度

{\displaystyle \rho=-T^0_0}

なんだけど、1秒間にこれらがどれだけ増えるかが、{\dot{a}}や、{\dot{\rho}}なんだ。時間で微分したよというしるしが、上のドットなのです。

『エードット』

『ロードット』

などと呼びます。

 このように、時間と共に増える量があるとき、それが1秒間にどれだけ増えるかを求めることを、『微分する』といいます。

 本当は、『時間と共に』だけでなく、『温度と共に』などでもいいんだけど、この『増える割合』『増加率』を『微分』というのだ、ということだけ、今は、知っておいて。

「それ以上は、説明してくれないわけね。」

 今は無理。ごめん。でも、ちょっとずつ冒険に誘うから。


 こういうとき、文系・理系、関係なく、全員の子供に、きちんとした、数学の教育をすることの大切さを感じるね。

「でも、誰でもが、宇宙の年齢を計算したいわけではないから。」

 それは分かっているんだけど、『言葉としての数学』、つまり、最近の言葉で言う、『数学的リテラシー』というものがないと、きちんと思っていることを伝えられないんだよね。

「そんなことを言うけど、数学で何でも表せるわけではないでしょう。例えば、今、私が、何を考えているかなんて、数学使ったって物理学使ったって、太郎さんには、分からないでしょう。」

 うーん。それは、どうかなあ。もしかしたら、分かるかも知れない。

「エーッ。じゃあ、私が今後、太郎さんを好きになるか、好きでなくなるかも、分かっているの?」

 それは、無理だと思う。未来のことは、こうなる確率が、何パーセントか、ということしか分からない。でも、この世界では、好きになってもらえなかったからやりなおしっていうようなことはできないから、確率なんて知っても、本当は、役に立たない。

 99パーセント、麻友さんに好かれるはずだったのに、1パーセントのために、つきあえない人生かも知れないし、好かれる確率は、1パーセントだったのに、ものすごくついてて、めでたくゴールインということもある。

 私の人生は、この1パーセントのお陰で上手く行ったケースの気がするな。

「あらっ、でも、私が、今から、太郎さんを好きでなくなってあげるわ。」

 そう言うと思った。なに考えてるか分かったよ。(笑)

「馬鹿なことを!」

 結局、人生で確実なことなんて、一つもないんだ、ということを言いたかったんだ。それを今、数学的に証明したようなものだよ。

「これで、証明になっているの?」

 それには、答えない方が良いな。

 証明になってるのかしらと、考えている間、麻友さんは、私のそばにいてくれる。

「ズルいのねー。」


 さて、ハッブル定数が時間の逆数の次元を持つので、微分方程式の時間{t}に、ハッブル定数をかけると、無次元、つまり単位が秒でなく1である変数{\tau}

{\tau=H_0t}

が作れて、1つ目の微分方程式は、

{\displaystyle \biggl(\frac{1}{a}\frac{da}{d\tau}\biggr)^2=\Omega_0 \frac{\rho}{\rho_0}+\frac{\Omega_K}{a^2}+\Omega_{\Lambda}}

となる。ここで、

{\Omega_0=\Omega_R +\Omega_M}

であり、{\Omega_R}は、放射のエネルギー密度と臨界密度の比であり、{\Omega_M}は、物質のエネルギー密度と臨界密度の比という定義はあるけど、これらは観測により決まるものだから、自分で数値を決められるとしたら、宇宙をつかさどる、完全な物理法則でも見つかった場合だね。

「そんな法則、本当にあるの?」

 高校生の頃の私は、あると思っていた。いやそればかりでなく、みなと赤十字病院に最初に入院していたとき、初めて、そんな法則は作れないなあ、と悟ったんだよね。

「どうして、そう思ったの?」

 あっちこっちで、アインシュタイン方程式というこの式を見せているでしょう。

{\displaystyle R_{\mu\nu}-\frac{1}{2}Rg_{\mu\nu}+\Lambda g_{\mu\nu}=\frac{8 \pi G}{c^4}T_{\mu\nu}}

 これは、宇宙の形を決める方程式なんだけど、{\Lambda}という定数が、入っている。

 これが、{0}なら、まだ良かったけど、そうでないらしいことが、観測から分かった。

 だとすると、この{\Lambda}を、決定しないと、宇宙の形すら決定できなくなる。

 でも、宇宙の形を決定するのだから、ものすごく厳密に、観測で決定しなければならない。

 人間には、有限回しか観測は出来ない。

 だとすると、人間は、宇宙の形すら、厳密に、決定できない。

 この有限回だと、決定できないというところに、放送大学で学んだ、カオス理論の初歩が、応用されていて、放送大学へ行って、良かったな、と思ったんだけどね。

 結局、人類は、完全な物理法則なんて、手にできないなと、悟ったんだよね。

「それで、どんな気がした。がっかりした。?」

 そりゃー、がっかりしたよ。物理学者としては、絶望だよ。

 絶望はしたけど、死にたいとまでは、思わなかったね。生きる目標の一つだったから、それがかなわないものだと分かったのは、辛かったけど、私って、温かい家庭に育ったし、恵まれた環境で育ったからね。

 死にたいと思ったのは、人を傷つけたと思ったときと、誰からも、期待されなくなった、と思ったときだったね。

「物理学の問題が解けないからって、絶望するって、普通の人では、有り得ないわよね。」

 麻友さんは、物理学や数学に関しては、それくらいでいいよ。

 それより、お芝居の方には、心底打ち込んで、

『この役柄がつかめないから、生きている理由を見失いそう。』

というくらいになってよ。

「太郎さん以外の男の人と、ファーストキスしちゃってもいい?」

 その代わり、ちゃんと私の元に戻ってきてよ。

「乙女心と秋の空って言葉知らないの?」

 地球を温暖化させて、日本の秋の空模様を変えてしまおうか・・・


「説明は?」

 さて、アインシュタイン方程式から得られた2本目の式は、

{\displaystyle \dot{\rho}=-3\biggl(\frac{\dot{a}}{a}\biggr)(\rho+P)}

だったけど、これの独立変数を、{t}から{a}に替えると、

{\displaystyle \frac{d\rho}{da}=-\frac{3}{a}(\rho+P)}

となる。

「独立変数って?」

 さっき、『時間と共に』とか『温度と共に』とか、言いかけたけど、『時間と共にスピードが変わる。』とき、時間の方を独立変数、スピードの方を従属変数という言い方をするんだ。

 温度と共に甘さが変わるのなら、温度が独立変数、甘さが従属変数になるわけ。

「じゃあ、AKB48のシングルが、何枚目が、何百万枚売れたかも、何枚目かと共に変わると言えるから、何枚目かが独立変数で、売れた枚数が従属変数というわけ?」

 もちろん、その通り。

「ということは、36thだから、独立変数を36にすると、『ラブラドール・レトリバー』になって、178万7000枚以上売れてるから、従属変数は178万7000くらいってことになるということ?」

 そうだよ。

「なんだ、簡単じゃない。ばっかみたい。変数なんていわないでよ。」

 そうなんだよ。数学を理解するって、難しい概念を、どれだけ自分の言葉に直せるかなんだ。

 前に、

『真理は、1枚のハガキに書ける。』

というシュレディンガーの話をしたけど、自分の良く知っていることに結びついたら、もうハガキに書かなくても、分かっちゃうことが、すごく沢山あるんだ。

「ハガキって、何だっけ?」

 タンジェントの整級数で、数列の和を求めたとき、麻友さんが、『求まったー』っていったとき、『ハガキ、ハガキ。』、『へっ、あっ、シュレディンガー。』っていうようなやり取りがあったでしょう。

 数学や物理学は、あっちこっちでつながっているんだよ。だから、分かり出すと加速がつくんだ。そこまで、連れて行くよ。

 さっきの式変形は、今はまだ、完全には説明できない。


 とにかく、微分方程式というものが出てきたら、それを積分しなければならない。

積分って、なんて読むの?」

  これは、せきぶんと読んで、今の場合だと、宇宙の最初から、現在までの、あるものの値を、全部足すという操作のこと。

「そんなことをしたら、無限大にならない?」

 だから、刻み目を細かくして、沢山足すときは、ひとつひとつに、その細かい細かさをかけるんだ。

「あるものっていうのは?」

 これから実際にやってみせるけど、{x}について{b}から{c}まで{f(x)}積分するというのを、

{\displaystyle \int^c_b f(x)dx}

と書くんだ。

「全然、何言ってるか分からないけど。」

 そりゃ、最初は誰だってそうだよ。

 分からないものを、どんどん吸収しようというのだから、最初は大変だよ。

 まあ、なるべく、大変でないようにするけどね。

 上の、

{\displaystyle \int^c_b f(x)dx}

というのは、{b=2}で、{c=5}の場合、

{\displaystyle \int^5_2 f(x)dx}

となるけど、これを細かさ{0.3}ずつ足し合わせるというのは、

{\displaystyle \int^5_2 f(x)dx=f(2)\times0.3+f(2.3)\times0.3+f(2.6)\times0.3}

{\displaystyle +f(2.9)\times0.3+f(3.2)\times0.3+f(3.5)\times0.3}

{\displaystyle +f(3.8)\times0.3+f(4.1)\times0.3+f(4.4)\times0.3+f(4.7)\times0.3+f(5)\times0.3}

というようなことをするんだ。

 本当は、細かさは、無限小でなくてはいけないから、{0.3}の場合、等号で結んではいけないんだけど、意味はこういうことなんだ。

「ちょっと待って、{f(5)}とかって、なによ。」

 あっそうか。関数を一般に表すのに慣れていないか。

{y=x^2}

っていう関数は知っているでしょう。

「ああ、そのくらいなら。」

 これの右辺を、

{f(x)=x^2}

などと表して、この{x}に、{5}を代入して、

{5^2=25}

となったのを、

{f(5)=5^2=25}

のように、書くんだ。

 こういう風に、関数を表すことにも慣れないと、数学も物理学も厳しい。

「覚えることが、沢山ね。」

 そんなに、覚えなくていいんだ。

 確かに積分記号の定義なんかは、覚えなければならないけど、数学者が覚えていることなんて、多分、一流企業のサラリーマンとか弁護士とか裁判官とか国会議員とか官僚の人と比べたら、遙かに少ないと思う。

 数学らしさというのが分かってくると、

『これが成り立って、あれが成り立たない。』

というのは、ほとんど勘で分かるんだ。だから、例外の場合だけ、覚えるようになるんだ。

 麻友さんを、そこまで連れて行くよ。

 ところで、独立変数の話をした、

{\displaystyle \frac{d\rho}{da}=-\frac{3}{a}(\rho+P)}

の式を、放射の場合、{P=\rho/3}、物質の場合、{P=0}として、積分すると、放射の場合、{\rho \propto 1/a^3}、物質の場合、{\rho \propto 1/a^4}というように、{\rho}が、振る舞い、

{\displaystyle \Omega_0 \frac{\rho}{\rho_0}=\frac{\Omega_R}{a^4}+\frac{\Omega_M}{a^3}}

という近似式が得られる。

「ちょっと、私を置いていかないでよ。」

 ごめん。このレヴェルのハイレヴェルな宇宙論の話では、インターネット上にきちんとした記述が、ほとんどないんだ。本を見ればいくらでも書いてあるけどね。

 だから、ひとつひとつの式が、どうやって出てきたか、というのを、書いておいてあげるのは、多くの人の役に立つんだ。


 それにしても、麻友さんはすごいよ。

 私、今調べるまで、『{\propto}』という記号の出し方知らなかった。{\TeX}で、『[tex:{¥propto}]』と打つと表示できるんだ。ただ、このブログが、{\TeX}に対応してるからだけどね。

 『{\propto}』は、左辺が右辺に比例するという記号で、proptoは、英語の『proportion to ~ (~に比例する)』から来ている。

『麻友さんは、プロポーションが良い。』

というのは、

『体の比率が、絶妙になっている。』

という、意味だものね。

 いずれにせよ、大抵の数学者は、嫌々{\TeX}の勉強をする。一部の優れた数学者は、自分の論文を発表するために、必要に迫られて、{\TeX}の勉強をする。

 それなのに、私は、ラヴレターを書くために、{\TeX}を勉強しているんだもの、そりゃー上達するでしょう。

 本当に、麻友さん、ありがとう。

「えっ、ところで、TEXってなに?」

 ああ、TeXね。

 これは、TEXと書いちゃいけないんだ。

 クヌースという数学者が、生み出した、組版ソフト(くみはんそふと)で、文章や数式を美しく表示したり印刷したりするためのソフト。

 通常は、{\TeX}と書き、Eを下にさげられないときは、TeXと書く約束になっている。そして、『テフ』と読むのが普通。

 なぜ、テフなのかというと、そもそもこの名前が、ギリシャ語の『技術』や『芸術』を意味する『{\tau\epsilon\chi\nu\eta}]』の、先頭3文字である『{\tau\epsilon\chi}』から取られているからなのだ。

 ギリシャ語で、『X』は、『ハッハッハ』という笑い声のような音なんだって。

 あっ、また、知識が増えた。

「ちょっと、タイム。太郎さんは、分かってること話しているから、いくらでもしゃべれるけど、私は、理解しながらなんだから、限度を考えてよ。」

 そうだったね。ごめん。ごめん。

 じゃあ、私が、テフで、いつも数式を打っていることが分かったところで、今日は、お開きにしよう。


 今日導いた式の中で、最後に使うのは、

{\tau=H_0t}

{\displaystyle \biggl(\frac{1}{a}\frac{da}{d\tau}\biggr)^2=\Omega_0 \frac{\rho}{\rho_0}+\frac{\Omega_K}{a^2}+\Omega_{\Lambda}}

{\displaystyle \Omega_0 \frac{\rho}{\rho_0}=\frac{\Omega_R}{a^4}+\frac{\Omega_M}{a^3}}

の3つと、積分という概念です。


「えー、今日たくさんやったのに、まとめると、これだけ?」

 数学のエッセンスというものは、そういうものです。

「覚えられるかしら、こんな式。」

 まあ、忘れても大丈夫。学校じゃないんだから、怒られたりしない。

「それだけは、気楽ね。でも、まったく分からなくなったら、ラヴレターじゃなくなっちゃう。」

 その心配はない。よく、数学は積み上げ式だからって言うけど、途中から入り込んでも大丈夫なものが、結構あるんだ。

「それならいいけど。」

 じゃあ、また今度ね。バイバイ。

 現在2015年12月28日22時54分である。おしまい。