相対性理論を学びたい人のために

まだ一度も相対性理論を勉強したことのない人は、何か一冊相対性理論の本を読みかじってみて、なぜこんなことが?という、疑問を持ってからこのブログに来てください。ブログの先頭に戻るには表題のロゴをクリックしてください

ありがとう。物理学者諸君。(その12)

 現在2021年5月29日15時28分である。(この投稿は、ほぼ7071文字)

真由「それでは、準備が整ったので、マクスウェル方程式を、真空中という条件で、解きます」

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麻友「いよいよ」

私「あっ、ちょっと言っておくけどね、結婚と同じで、期待しすぎていると、がっかりするよ」

若菜「お父さん、結婚したことあるんですか?」

私「あ、いや、ちょっとね」

真由「まず、真空中のマクスウェル方程式は、

{\displaystyle \mathrm{div} E=0}

{\displaystyle \mathrm{div} H=0}

{\displaystyle \mathrm{rot} E=-\frac{\partial \mu_0 H}{\partial t}}

{\displaystyle \mathrm{rot} H=\frac{\partial \varepsilon_0 E}{\partial t}}

の4つでした。ここで、{\mu_0} と、{\varepsilon_0} は、マクスウェルが、この方程式を、導く前から、実験で、求められていたものです」

結弦「{\mathrm{rot}} っていうのは、聞いたけど、{\mathrm{div}} っていうのは、まだ知らない」

真由「ああ、

{\mathrm{div} E=\nabla \cdot E}

です。ダイバージェンスとか、発散と、言います」

若菜「そうすると、残りのひとつの、

{\nabla \phi}

というのは?」

真由「それは、

{\mathrm{grad} \phi = \nabla \phi}

と、書いて、グラーディエントとか、勾配と、言います」

私「なぜ、勾配というのか、あるいは、発散というのか、またなぜ、回転というのか、知りたいだろうけど、今日は、それぞれ、別な微分作用素なんだと、認識する段階で、留めておいて欲しい。いずれ、必要になったとき、説明するから」

若菜「おお、お父さんが、そういうということは、それぞれ説明が、かなり面倒なんですね」

私「うん。今は、マクスウェル方程式を、解くのに専念して」


真由「じゃあ、マクスウェル方程式の、第3式の両辺に、{\mathrm{rot}} を、作用させます」

{\displaystyle \mathrm{rot}~ \mathrm{rot} E=-\mathrm{rot} \frac{\partial \mu_0 H}{\partial t}}

真由「時間微分と、座標での微分は、偏微分が交換できるので、入れ換えられます」

{\displaystyle \mathrm{rot}~ \mathrm{rot} E=- \frac{\partial (\mu_0 \mathrm{rot} H)}{\partial t} }

真由「{\mu_0} を、微分の前に出します。ああ、こんな丁寧な説明したの、初めて」

{\displaystyle \mathrm{rot}~ \mathrm{rot} E=- \mu_0 \frac{\partial }{\partial t} \mathrm{rot} H}

真由「{\mathrm{rot} H} は、マクスウェル方程式の第4式で、

{\displaystyle \mathrm{rot} H=\frac{\partial \varepsilon_0 E}{\partial t}}

でしたから、代入して、

{\displaystyle \mathrm{rot}~ \mathrm{rot} E=- \mu_0 \frac{\partial }{\partial t} \frac{\partial \varepsilon_0 E}{\partial t}}

です。{\varepsilon_0} を、前に出して、微分をまとめて、

{\displaystyle \mathrm{rot}~ \mathrm{rot} E=-\varepsilon_0 \mu_0 \frac{\partial^2 }{\partial t^2} E}

と、なります」

結弦「そうすると、左辺が、さっき苦労して求めた形だから、

{\displaystyle \mathrm{rot}~ \mathrm{rot} E=\nabla (\nabla \cdot E)-\varDelta E}

と、なるよね。そこで、マクスウェル方程式の第1式で、

{\displaystyle \nabla \cdot E=\mathrm{div} E=0}

なんだよ。ここで、使うために、お父さんノート4ページも、計算したんだな。気違いだよ」

私「うん。正真正銘の気違いだよ」

結弦「あ、うん。それで、・・・」

若菜「書いてあげる。

{\displaystyle \mathrm{rot}~ \mathrm{rot} E=\nabla (\nabla \cdot E)-\varDelta E=-\varDelta E}

となるから、

{\displaystyle -\varDelta E =-\varepsilon_0 \mu_0 \frac{\partial^2 }{\partial t^2} E}

となる。えーと、ここから、どうなるのかな?」

真由「ここまで、来ちゃうと、最後は、成分計算なんです。ラプラシアンを、定義通り書いて、両辺に、{-1} をかけて、

{\displaystyle \biggl( \frac{\partial^2 }{\partial x^2}+\frac{\partial^2 }{\partial y^2}+\frac{\partial^2 }{\partial z^2} \biggr) E =\varepsilon_0 \mu_0 \frac{\partial^2 }{\partial t^2} E}

と、なります。この形の式は、波の解を、持つので、波動方程式と、呼ばれます。実は、有名な、シュレーディンガー方程式というのは、これの右辺が、2階微分でなく、1階微分なので、複素数の波になるという不思議な方程式です。松田さんが、以前、親友のご令嬢に差し上げた、『虚数の情緒』という本の題名は、この世界を解き明かすには、実数だけではだめで、虚数(すなわち複素数)を使わなければならないのだ。ということに、情緒を見出した著者が、名付けたものでした。虚数の世界、それこそ、シュレーディンガー方程式を使う、量子力学の世界だったのです」

吉田武『虚数の情緒』(東海大学出版会)

麻友「太郎さんが、以前、『数学を専攻するとはどういうことか(その2)』という投稿で、シュレーディンガー方程式を、『見た感じもちょっと変だし』と言ってて、どう変なのよ? って、聞きたかった。あのときの、持ってくると、

{\displaystyle i\hbar \frac{\partial}{\partial t}\psi(\mathbf{r},t) =\biggl(-\frac{\hbar^2}{2m} \varDelta +V(\mathbf{r}) \biggr)\psi(\mathbf{r},t)}

となってて、時間微分が1階なのよね。右辺は、ラプラシアンだから、座標微分は2階なのに。ちょっと、変だって、2年11カ月かけて、分かった。太郎さんに、似てきちゃった」

私「麻友さんなら、覚えていると思った」


真由「6年以上、目を見交わしたこともないのに、息がピッタリ。性格が悪いから、私は結婚できないんだと、噂されているけど、速く、効率よく、ミスが無く、仕事や試験をクリアすることを、目指してきた私のどこが悪いの?」

私「性格なんて、すぐには変えられません。でも、努力を続けていれば、5年後には、光が見えてきます。10年後には、目指していた性格になれます」

真由「最後、やってあげます。

{\displaystyle E= \begin{pmatrix} E_x \\ E_y \\ E_z \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \sin(ct-x) \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}}

と置くと、これが、マクスウェル方程式から得られた、波動方程式の解になるんです」

麻友「波動方程式は、

{\displaystyle \biggl( \frac{\partial^2 }{\partial x^2}+\frac{\partial^2 }{\partial y^2}+\frac{\partial^2 }{\partial z^2} \biggr) E =\varepsilon_0 \mu_0 \frac{\partial^2 }{\partial t^2} E}

だった。左辺は、

左辺{=\displaystyle \biggl( \frac{\partial^2 }{\partial x^2}+\frac{\partial^2 }{\partial y^2}+\frac{\partial^2 }{\partial z^2} \biggr) E}

だから、{E} の成分毎に、式があるけど、{E_y=0}と、{E_z=0} だから、{E_x=\sin(ct-x)} だけ見ていればいいわね」

若菜「そうすると、

左辺の第1成分{=\displaystyle \frac{\partial^2 E_x}{\partial x^2}=\frac{\partial^2 }{\partial x^2}\sin(ct-x)}

って、どうやって、計算するんでしょうね」

私「合成関数の微分法って、まだ無理か。まず、{\sin(ct-x)} の、{ct-x} を、ひとかたまりと見て、それで、微分するんだ」

若菜「そうすると、

{\displaystyle \frac{\partial \sin(ct-x)}{\partial (ct-x)}}

みたいなことですか?」

私「そういう書き方は、普通しないが、それで、微分して御覧」

若菜「はい。

{\displaystyle \frac{\partial \sin(ct-x)}{\partial (ct-x)}=\cos(ct-x)}

ですかね」

私「次に、{ct-x} を、{x} で、微分する」

若菜「{x} で、

{\displaystyle \frac{\partial}{\partial x}(ct-x)=-1}

となって、{-1} です」

私「それを、さっきの {\cos(ct-x)} に、かけるんだよ。だから、{(-1)\cos(ct-x)} が、1階の微分係数だ」

麻友「つまり、

左辺の第1成分{=\displaystyle \frac{\partial^2 E_x}{\partial x^2}=\frac{\partial }{\partial x}\frac{\partial }{\partial x}\sin(ct-x)=\frac{\partial }{\partial x}(-1)\cos(ct-x)}

だから、もう1回やって、

左辺の第1成分{=\displaystyle \frac{\partial }{\partial x}(-1)\cos(ct-x)=(-1)(-1)(-\sin(ct-x))=-\sin(ct-x)}

が、左辺の式ということね」

私「そうだ。右辺は、もう計算できるだろ」

麻友「えーと、

右辺{=\displaystyle \varepsilon_0 \mu_0 \frac{\partial^2 }{\partial t^2} E}

だから、どうせ、{E_y=0} と、{E_z=0} なので、第1成分だけ考えて、

右辺の第1成分{=\displaystyle  \varepsilon_0 \mu_0 \frac{\partial^2 }{\partial t^2} E_x=\varepsilon_0 \mu_0 \frac{\partial }{\partial t}\frac{\partial }{\partial t} \sin(ct-x)}

を、計算する。さっき太郎さんに教わったので、

右辺の第1成分{=\displaystyle \varepsilon_0 \mu_0 \frac{\partial }{\partial t}~c \cos(ct-x)=-\varepsilon_0 \mu_0~c^2 \sin(ct-x)}

となる。左辺{=}右辺とすると、

{\displaystyle -\sin(ct-x)=-\varepsilon_0 \mu_0~c^2 \sin(ct-x)}

となるわね」

若菜「あれっ、{c} は、初めから、真空中の光速ということに、なってましたっけ?」

結弦「マクスウェル方程式で、まだ光速なんて、決めてないはずだけど」

真由「そうなのです。

{\displaystyle E= \begin{pmatrix} E_x \\ E_y \\ E_z \end{pmatrix}=\begin{pmatrix} \sin(ct-x) \\ 0 \\ 0 \end{pmatrix}}

と、定義しただけで、{c} が、真空中の光速だなんて、誰も言ってません」

麻友「でも、このサインの波は、速さ {c} で、{x} 軸方向に、進むわよ。だって、最初、原点にいて、(0,0,0,0) だったとして、{t} が、{t} 秒たったとき、同じ、{0} の点は、{x=ct} の点に、進んでいるもの。実際に、{1} 秒とか、{2} 秒とか、試してみると分かる」

真由「そうなんです。この波動方程式の波は、この場合、{c} で、進むんです。そして、

{\displaystyle -\sin(ct-x)=-\varepsilon_0 \mu_0~c^2 \sin(ct-x)}

で分かるように、

{\varepsilon_0 \mu_0~c^2=1}

だから、

{\displaystyle c=\frac{1}{\sqrt{\varepsilon_0 \mu_0}}}

なのです」


真由「歴史的には、マクスウェルは、自分の導いた方程式から、波動解があることに気付き、それが、当時求まっていた {\varepsilon_0,\mu_0} の実験値により、恐らく光(電磁波)の速さだろうと、推測しました」

真由「ところが、一体どの座標系に対して、{c} なのだろう? {\displaystyle c=\frac{1}{\sqrt{\varepsilon_0 \mu_0}}} なのだから、ある1つの速さなのだ。だが、その系に対し、動いている座標系から見たら、{c} でなくなるはずだ」

真由「この点は、1864年頃から、マクスウェルのみならず、他の人によっても不備があるのではないかと追求されましたが、完全な結論は、20世紀になった後の1905年に、アインシュタインにより、特殊相対性理論によって、与えられたのです」


麻友「ああ、数学だけでなく、物理学も1つなのですね。あまりめまぐるしく進んだので、今日のところは、良く復習します」

若菜「もう、22時43分です。投稿した方が、良いでしょう」

結弦「今日は、ダブルヘッダーだったな。大変だった」

私「じゃあ、おやすみ」

麻友「おやすみ」

若菜・結弦「おやすみなさーい」

真由「おやすみなさい」

 現在2021年5月29日22時47分である。おしまい。