現在2018年12月20日18時28分である。
「わぁ、久し振りに、デート連れて行ってくれるのね」
若菜と結弦は、途中から、消えるんだったな。
若菜「はい。コンサートと夕食の後、邪魔者は、消えます」
結弦「やっぱり、ああいう行為は、横で見ている人間には、照れくさいよな」
「それが、分かっただけでも、あなたたち、大人になったのよ」
結弦「でも、1回は、見ておくというのは、良い勉強になった。あんなに、色んな体位で、なめあうなんて、想像もしてなかった」
若菜「少女マンガで、それは、描けないですからね」
アッハッハ。
「それはそうと、モーツァルトに移ったのはいいけど、また交響曲第1番から?」
どうも、独自調査によると、麻友さんの言っている、『モーツァルト』というのは、これらしい。
ミュージカル モーツァルト! WOLFGANG 井上芳雄 Ver DVD
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「あっ、気付いてたわね」
このDVDは、ちょっと高くて、手が出なかった。
ただ、解説を読んでみると、モーツァルトの曲も、使われているのかも知れないが、必ずしも全部がモーツァルト作曲では、ないようだ。
「DVDを、買わなかったのは、結婚後に2枚になると、邪魔だと思ったのもあるのね」
そう、言ってもらえると、ありがたい。
投資を惜しんだと思われるのではないかと、内心ビクビクしてたんだ。
ところで、麻友さんは、ミュージカルが好きだ。
だったら、オペラを取り上げるべきだと、観客も思っているだろう。
若菜「ミュージカル女優のお母さんとしては、『フィガロの結婚』とか、取り上げて欲しかったでしょうね」
そう。取り上げたいのは、山々なんだ。
ただ、私が、オペラを、ほとんど観たことないんだ。
結弦「どんなオペラを観たことあるの?」
まず、大学生の頃、テレヴィで、ベートーヴェンの歌劇『フィデリオ』。
それから、京都から戻ってきた後、フルトヴェングラー指揮で、DVDで、モーツァルトの歌劇『ドン・ジョヴァンニ』。
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グライダー部にいた親友と、レヴァイン指揮で、DVDで、歌劇『魔笛』。
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それから、ひとりで、ベーム指揮で、DVDで、歌劇『フィガロの結婚』。
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しばらくたって、
ひとりで、カラヤン指揮で、DVDで、歌劇『ドン・ジョヴァンニ』。
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さらに、ひとりで、アーノンクール指揮で、DVDで、歌劇『フィガロの結婚』。
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結弦「うっ、すげー、モーツァルトの3大オペラなんだろ。2周り観てるじゃないか」
「こんなに、太郎さん、オペラ観てるの?」
観たうちに、入らないよ。それぞれ、1回ずつしか、観てないもん。
若菜「わー、もったいない。お母さん早く結婚して、観せてもらったら?」
「これ、全部、DVD手許にあるの?」
最初の3つは、お金に困ったとき、売っちゃったけど、下の三つは、今でも持ってる。
「そこにあるのは、本だけじゃないのね」
若菜「こんなに、オペラ観てるのに、モーツァルトのデートが、交響曲ですか?」
聴いている回数が、圧倒的に、交響曲の方が、多いんだよ。
特に、最後の、モーツァルト交響曲第41番ハ長調K.551『ジュピター』は、私の好きな曲ナンバー2だ。
私の人生で、中学2年以降この曲のかからなかった月は、多分ないだろう。
それに、道を歩いているとき、ゴキゲンで、手を振り回しているとき、頭に流れているのは、この曲の第4楽章であることが、非常に多い。
結弦「14歳から47歳まで、33年間。1年は12カ月あるから、396回以上。そりゃー、オペラとは、比較にならないな」
「でも、それは、41番でしょう。1番、なんて、私、聴いたことないわ」
じゃあ、これを、バックにかけといて、以下を読んでよ。
「あらっ、You-Tubeで、あるのね」
私が、大学にいたとき、あるときから、CDをどんどん買うようになったという話は、前にしたね。
「そんなことも、言ってた。それで?」
その一環で、
ヴィヴァルディのアゴスティーニの『和声と創意への試み』
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ハイドンセット
- アーティスト: ウィーン・アルティス四重奏団,モーツァルト
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前橋さんのバッハ
- アーティスト: 前橋汀子,バッハ
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックレコーズ
- 発売日: 1989/05/21
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- 出版社/メーカー: ポリドール
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を、買った。
あの頃は、レコーダーに取り込むなんて技もないから、全部、CD入れ替えながら、聴いてたんだよ。
「確かに、このCDケースや、解説書の傷みから言って、良く聴いていたのは、うなずけるわね」
若菜「お父さん。本当に、音楽好きなんですね」
それは、そのとおり。私には、数学と物理学と音楽という信仰があるんだ。
結弦「それで、『第1番』のデートって言って、音楽かけといて、解説してくれないの?」
これから、2番、3番、って、やっていくわけじゃないんだ。
この第1番というのが、特別なんだよ。
結弦「どうして?」
中学2年生の頃、偶然かけた、ブルーノ・ワルター指揮の第41番の出だしの迫力ゆえに、この41番の虜になった。
「そういえば、『ベートーヴェン交響曲第1番』のデートで、その話してたわね」
うん。ブログ上のデートが、ここまで続くとは、私も思ってなかったけど、本当に、モーツァルトまで来たね。
「続くって事ではね、どうして、太郎さん。クリスマスプレゼントの抽選に、応募しなかったの?」
だって、私は、将来、麻友さんと一緒になれるから、いくらでも、幸せになる。他のファンの人に、少しでも、プレゼントが回ったらいいな、と思ったんだ。
「もう。私が、プレゼントを渡したいのは、他でもない、太郎さんなのよ」
応募期間を延長したから、私も、一応応募しておいたよ。
「太郎さん、私のこと、何にも分かってないんだから」
若菜「まあまあ、お母さん。もてたことのない男の人の心理も、考えてあげなきゃ」
「娘にそんなこと、言われるなんて」
結弦「童貞のお父さんにとって、先生に、性感染症になってないでしょうか?って聞くのも、恥ずかしいし、勇気のいることだったとおもうなぁ」
「入院したとき、検査してあったって、どこまで、調べてあったのかしら?」
血液は何度も採られたし、CTとかの検査も受けたし、なぜ私が気が狂ってるのか突き止めようと、あらゆる手を尽くしたんだと思う。
結果は、こう出てます。と、画面を見せられ、異常な数値なら、色がつくんだけど、全部許容範囲内。
ひとつだけ、未検査、というのがあった。
『これは?』
と聞いたら、
『これは、本人の同意が得られなければ、検査できないんです』
と言われ、
『何の検査ですか?』
と聞いたら、
と、言われた。
「それで、そのエイズの検査に同意して、検査受けた?」
そこまで、しなくても、大丈夫だろうと、思ったんだ。
「どうして?」
今の時代に、検査できる血液があったら、例え同意が得られていなくても、エイズの検査をするものだと、思うからだよ。
人道的とか、倫理的に、許せなくとも、科学を使って、感染が防げるなら、検査する。それが、自然科学や医学の立場だと思う。
だから、京野先生たちも、もうエイズかどうか、チェックしてあるんだよ。
それで、安全と分かっているから、落ち着いて、
『大丈夫ですよ』
なんて、言っていられるんだ。
「あー、それも、一理あるわねぇ。じゃあ、私が、エイズになったら、太郎さんのせいよ」
その汚名、喜んで着よう。
さて、麻友さんと、私は、あまり、やらないかも知れないが、乱交パーティーのようなものを、モーツァルトは、好きだったらしい。
「この曲が、作曲された頃は?」
1764年から1765年頃。モーツァルトが1756年生まれであることを勘案すると、8歳頃かなあ。まだ、そんなことは、してないか。
でも、いつも、思うんだよね。モーツァルトの作品とは言っても、8歳の子供が作った曲を、大の大人が、真剣になって演奏しているのは、滑稽以外の何物でもないなと。
若菜「でも、私、14歳ですよ。もう8歳通り越しましたけど、モーツァルトのような、曲はかけません」
結弦「僕ももう12歳だもんなぁ」
それは、分かってるんだよ。
例えば、さっきから言ってる、41番の終楽章を聴くたび、
『こんな曲が、1曲でもかけたら、それで、人生終わっていいと。モーツァルトは、どうしようもなく、天才だと』
思うんだ。
その第41番の終楽章が、ド・レ・ファ・ミ、という、非常に簡単に見える動機を使って、巨大な建築物になっていることを、知っているだろうか?
若菜「知ってます。有名な旋律なんですよね」
「うん。私も、知ってる。さっきから、第1番かかってて、同じ旋律だな、と思ってた」
結弦「どの旋律?」
さっきのYou-Tubeの『第1番』で、時刻表示が、5:00 のところから、バックにゆっくりと、ド~ レ~ ファ~ ミ~ と、かかるんだ。
結弦「ふーん。それで、これが?」
若菜「実は、モーツァルトのお気に入りの旋律で、弦楽四重奏曲のハイドンセットの第1曲第4楽章や、交響曲第33番第1楽章、そして交響曲第41番第4楽章で、使ってるんですよね」
「よく知ってるわね。私が、いないときに、太郎さんから教わった?」
若菜「2042年のお父さんから、教わってあったんです」
上手い受け答えだ。
結弦「このやりとりは、普通の人、解読できないよな」
そういうわけで、あとで、第41番のデートをするとき、楽しめるように、このデートをしたんだ。
「不思議な曲が、聴けたわ。これは、ケッヘル何番?」
K.16だよ。
若菜「食事をして、私達は、スマホに戻ります」
結弦「お母さんとお父さん、お楽しみですね」
性感染症を持っていないかどうか、確かめる前に、行為に及んだのは、模範的でなかったな。反省してる。
じゃあ、解散。
「太郎さん。人間って、一度関係を持つと、歯止めがきかなくなるものね」
源氏物語なんかで、光源氏に開発された女の人達が、苦しむのも、分からないではないね。
「でも、太郎さんは、女の人に、もっと強くなって欲しいんでしょ」
麻友さん自身が、もっと、
『こうしたい』
という気持ちを、表明して良いと思う。
麻友さんをお手本にしている人が、多い現状を考えるとね。
「太郎さん、クリスマスプレゼント楽しみにしていてね」
分かった。
じゃあ、おやすみ。
「おやすみ」
現在2018年12月20日21時30分である。おしまい。