相対性理論を学びたい人のために

まだ一度も相対性理論を勉強したことのない人は、何か一冊相対性理論の本を読みかじってみて、なぜこんなことが?という、疑問を持ってからこのブログに来てください。ブログの先頭に戻るには表題のロゴをクリックしてください

相対論への招待(その6)

 現在2017年3月12日21時24分である。

 前回は、恐ろしい話になったね。

「太郎さん。私の子供が欲しい人には、卵子あげちゃえばいい、なんて言い出すんだもの」

 私ね、人類は、生き方変えるべきところに、来てると思うんだ。

「また、オーバーなことを」

 幸い、現在は、世界中のほとんどの地域が、平和だ。

「それは、ウソではないわね」

 そして、先進国では、少子高齢化が進み、先進国の人口は、減ってきている。

「それも、確かだわね」

 世界全体の人口は、現在(2017年)ほぼ73億人だそうだ。

 私が、小学校6年生の頃(1983年)には、ほぼ46億人だった。

 麻友さんが生まれた1994年には、56億人だった。

 麻友さんが、AKB48のオーディションに受かった2006年には、65億人だった。

 子供が、減ってきてるのに、どうしてこんなに人口が増えるんだろう。

「それは、発展途上国で、子供がどんどん、生まれてるからでしょう」

 そうなんだよね。

 産んだ子の3割とかが死んじゃう国で、見境もなく、子供を産んでるからなんだよね。

「『見境もなく』だなんて」

 いや、そうなんだよ。ああいう国の男の人は、避妊具なんて、見たことないし、そもそも、

『育てられない子供は産まない』

という当たり前なことが、頭の中にないんだ。

「それを、教育のないせいだと言いたいの?」

 ある意味、教育だけど、道徳と言っても良いかも知れない。

「太郎さんは、ああいう発展途上国の人に、道徳を授けようというの?」

 私は、現在の先進国の人の道徳からして、間違っていると思う。

「例えば、どういうふうに?」

 まず、簡単な例をあげると、今、アフリカとかインドとかで、子供を産むということについての道徳が欠如しているために、10年でほぼ10億人ずつ人口が増えるなんてことになってる。麻友さんが生まれた1994年からでも、17億人増えている。これは、重大な問題だ、と言っていながら、解決できるのに解決してないというのは、道徳的に見て、間違ってないか?

「解決できないから、解決してないんじゃない?」

 解決できるよ。

「根拠もなく」

 根拠あるよ。

 麻友さんと以前計算したように、私を育てるのに父母は、45年間で、5千万円かけた。

 つまり、大体1年に100万円だ。

「そうだったわね」

 私の姪が、中学受験した話はした。

 その学費を見ていると、寮に入ると年間200万円くらいかかるようだ。

「太郎さんと計算した、5千万円って、過剰な見積もりじゃないのね」

 うん。私も、調べてみて、びっくりした。

 予備校には通ったけど、小学校から大学まで、ずっと公立だからね。私は。

 お医者さんの息子とか、社長さんの娘でもなきゃ、のんきに私立で、ずっとなんて、無理なのかもね。

「それで、人口爆発を止められるという、根拠は?」

 1人の人間を義務教育1年受けさせるのに、100万円かかるというわけだ。

「分かった。1年間に増える1億人、全員に、少なくとも9年間の、義務教育を受けさせるには、いくらかかるかを、計算しようというのね」

 さっすが、特待生。

「100万円かける1億人。こんなのどうやって、計算するの?手書き?」


 前、ちょっと話した、ログというものを、教えてあげよう。

「あっ、{\log}ね。トライ式高等学院で、ちょっとだけ習った」

 素晴らしいね。ログって、どういうものだった?

「えっとね。すっごく親切な先生が、分かり易く教えてくれたから、覚えてるんだけど、{\log_{10}10^n=n}というのだけ、覚えていれば良いのよ」

 そうだね。

 じゃあ、例えば、

{\log_{10}10^6=}

は?

「こんなの簡単よ。

{\log_{10}10^6=6}

だから、6よ」

 じゃあ、それを応用して、100万円かける1億人、計算してよ。

「えっ、そういうことに使うの?」

 ログ、つまり対数というものは、かけ算や割り算を楽に行うために、発明されたようなものなんだよ。

「いつごろ?」

 いつもの『代数学辞典 上』を、見てみると、3次方程式のカルダノの解法と、同じ頃、発表されてる。

「本当は、『カルダノの解法』じゃなくて、『フォンタナの解法』なんでしょ?」

 私も、そう思ってた。

 ところが、次の本の『6.4節 代数方程式を解く』を読んでたら、

『S. del Ferro は,3次方程式の解法を1515年に発見したといわれている.』

と、書いてあった。

「えっ、じゃあ、『フェローの解法』か、『フォンタナの解法』か、『カルダノの解法』か、はっきりしないじゃない」

 この部分の歴史は、すごく面白いから、『代数学辞典 上』の該当箇所を、全部、写してあげるよ。

(1052ページから)

 3次方程式の代数的解法を初めて研究した人はイタリーのフェロー({\mathrm{Ferro,\ 1465 \ \sim \ 1526}})である.彼はボロニア大学の教授で

{x^3+bx=c}

の形の方程式を解いたといわれている。その解法は公表されていないのでわからないが,これを門人フロリドには教えたらしい.しかし当時秘伝の風が盛んでくわしいことは何も知られていない.

 これからこのフロリドとタルタリアとの間に3次方程式解法についての有名な論争が起こるのであるが,それについて語るには,まずタルタリアの生い立ちから述べなくてはならない.

 タルタリア({\mathrm{Tartaglia,\ 1506?\ \sim \ 1557}})は本名をニコロ・フォンタナといい,イタリーのブレッシアに生まれた.1512年彼がまだ幼なかった時,ブレッシアの町はフランス兵のために占領されて,父は殺され彼は口に負傷を受けた.幸いに母の看護によって傷口は直ったが,その後十分に発音することができなくなった.それでいつしか彼はタルタリア(イタリー語で吃り(どもり))とあだ名でよばれるようのなった.その後彼は貧困の中から辛うじて学校に通い,刻苦勉励の結果ベニスの学校の数学教授になった.

 1530年頃にブレッシアにコウという名の数学者がいてタルタリアに2つの3次方程式

{x^3+3x^2=5 \ \ ,\ x^3+6x^2+8x=1000}

を解くように命じた.はじめ彼はこれを解くことができなかったが,1535年には

{x^3+ax=b}

なる形の方程式は解けるようになった.タルタリアはそのことを秘密にしていたのであるが,これを知ったフロリドは彼に試合を申し込んだ.そして試合は1535年2月22日ときめられた.

 初めタルタリアは楽観していたが,間もなく相手が確かにフェロー教授から聞いてその解法を知っているとの情報を得たので,万一負けるようでは不覚であると,一大勇猛心を起こして3次方程式の完全解に没頭した.その結果,試合期日の10日前にようやく一般解法を発見したので,勇躍して試合に臨んだ.

 試合の当日は双方から30題ずつの問題が提出され,それを50日以内に1番多く解いたものが勝ちと定められた.タルタリアは提出された問題{\mbox{――}}その中には{x^2+ax=b}の形の問題があった{\mbox{――}}をわずか2時間で解いてしまったが、相手は1題も解けなかった.

 彼が勝ったとの報が伝わると,方ぼうからその解法を教えてくれと懇請してきた.しかし彼は,これからかこうとする代数学の本の中でこれを公にするとの理由の下にすべてを断わった.

 ところがミラノに住んでいたカルダノ({\mathrm{Cardano, \ 1501 \ \sim \ 1576}})は1539年に秘密を厳守することを誓い,初めは隠語で,後には説明つきでその解法を教わった.その解法というのは

{x^3+ax=b}

において

{\displaystyle u-v=b \ ,\ uv=\biggl(\frac{a}{3}\biggr)^3 \ \ \cdots}

とおけば

{a=3\sqrt[3]{uv}}

であるから,与えられた式は

{(\sqrt[3]{u}-\sqrt[3]{v})^3+a(\sqrt[3]{u}-\sqrt[3]{v})=u-v}

と変形できる.よって

{x=\sqrt[3]{u}-\sqrt[3]{v}}

これに①より得られる{u,v}を代入すれば1根が求まる.

 その後1545年カルダノはこの誓いを破って

{\mathrm{Artis\ magnae\ sive\ de\ regulis\ algeraicis}}

{\mathrm{liber\ unus}} 略称 アルス・マグナ

という本をかき,その中でタルタリアの解法を公刊した.もっともその書の中で彼はタルタリアから説明なしに伝えられたと言っている.

 これを知ったタルタリアは憤慨してカルダノに試合を申し込んだが,彼は出馬せず,要領が得られなかったので1546年に3次方程式解法の発見に関する歴史をかいて世の誤解を解こうと決心したが,ついに発刊を見ずに死んでしまった.


 以上、笹部貞市郎編 『代数学辞典 上 第二版』(聖文社)1052~1054ページより


「これ、実話なのよね」

 少なくとも、数学者の間では、この話をして、『それは、ウソだ』という人は、いない。

「試合を申し込むって、決闘よね」

 そうだよ。

「こんな、平和な決闘って、ないわね。あっ、でも、どっちかが問題の答えを出したとき、第三者が、それ、合ってるかどうか、判定できないじゃない」

 麻友さんでも、そんなこと言うの?

 『これが、エックスだ』

って、求めた場合、そのエックスを、方程式に代入すれば、いいんだよ。

 3次方程式なんだから、3乗より何度も、かけなければならないことは、ないでしょ。

「でも、式の展開が、こんがらがったら?」

 だから、代数的な解法という条件が、生きてくるんじゃない。

 代数的な解法では、

足し算、引き算、かけ算、割り算と、2乗根(つまりルート)や3乗根(3回かけてその数になるちいさい数)や、もっと次数の高い累乗根(4乗根、5乗根、6乗根、・・・)

だけしか、使っちゃいけないことになってる。

というか、当時は、これだけしか計算できなかった。

 だから、問題を出す側も、解く側も、これ以外考えなかった。

 それで、第三者でも、式の両辺のエックスに、答えらしきものを代入して、両辺が、一致すれば、

『答えだった』

と、分かる。

 ものすごく、フェアな、決闘だよね。

「数学そのものは、フェアなのに、人間ドラマが、ドロドロなのね」

 うん。

 これは、ほんの一例で、世紀の大天才が、先取権を奪い合って、見苦しい争いをしたことは、枚挙にいとまがないほどなんだ。

「アーベルも、例外ではない?」

 例外ではない。

 国からお金をもらって、『ガウスに会いに行ってこい』と言われたのに、ヨーロッパ中周りながら、とうとうゲッチンゲンへ行かなかった。

ガウスは、ゲッチンゲンにいたの?」

 そう。ゲッチンゲンの天文台長だったんだ。

「アーベルも、天才なら、天才のガウスに、会ってみたいと思わなかったのかしら?」


 麻友さんも、音楽やってる人なら、ボンからウィーンに出てきたベートーヴェンの話は、知ってるだろう。

モーツァルトに、会いに行ったのよね」

 そう。それで、モーツァルトが、

『一曲、弾いてみろ』

と言った。

「弾いたら、上手かったのよね」

 そう。それで、モーツァルトが、この曲だけ、練習してきたのかも、と思って、

『じゃあ、この動機で、変奏曲を即興でやれ』

とその場で、作った動機を弾いた。

「すると、ベートーヴェンが、夢中になって、どんどん変奏していったのよね」

 あまりにすごいので、モーツァルトが、隣の部屋の友人に、

『今年、すごい新人が現れるよ』

と、伝えた、という話があるくらいだよね。

「もっと、ふたりで、競い合えば良かったのにね」

 天才同士って、あまり近付きすぎない方が、いいんだよ。

「そういうものかしら」

 例えば、モーツァルトハイドンとか、ベートーヴェンハイドンなら、いいんだ。

 交響曲の父ハイドンが、天才でないとは、言わないけど、モーツァルトベートーヴェンとは、比較にならない。

 モーツァルトベートーヴェンのような、歴史上最高の天才同士は、ちょっと離れて、お互いのことをそれとなく気にしているくらいの方が良い。

 アーベルは、長生きしていれば、間違いなく、ガウスの業績をも上回る、多くの業績を、残しただろう。

 早死にさえしていなければ、ガウスと同じくらいの業績を、もっと分かり易い言葉で、論文にしてくれる数学者が、19世紀に現れていたのにね。

「アーベルは、19世紀。3次方程式解法は、何世紀だっけ?」

 これね、覚えやすい物差しがあるんだ。

 まず、麻友さんが生まれたのは、20世紀だろ。

「うん」

 現代数学と言われているものは、大体20世紀に入ってからの数学なんだ。

「ふーん。それで?」

 アーベルは、その1つ前の世紀の人なんだ。

「つまり19世紀ね」

 それから、ペストの大流行の話を、前にしたでしょ。

「ああ、ニュートンが、学校閉鎖になって、田舎に帰っていたとき、大発見したって」

 あれ、何年だった?

「せんろっぴゃくとか・・・」

 そう。1665年。

 実は、この年は、絵画の歴史でも、名高い年なんだ。

 レンブラントの『ユダヤの花嫁』という絵。最近は、『イサクとリベカ』と呼ぶのが大勢になっているようだが、この絵が描かれたのが、1665年らしい。

「どうして太郎さん、そんなに詳しいの?」

 麻友さんに会う前の年、2014年11月11日から2015年1月15日まで、私は、みなと赤十字病院に入院してたんだけど、12月6日に、土曜22時からの『美の巨人たち』が、この絵を取り上げた。

「22時だったら、消灯時間じゃないの?」

 そう、22時消灯なんだけど、あの日は、若きゴッホも、この絵を見たとき、あまりの感動に、魂を奪われ何時間も立ちつくし、そのあげく『もうあと1週間この絵を見続けることができるなら10年命が縮んでもいい。』と言ったほどだと宣伝してたのと、ものすごく油絵の具を厚く塗り重ねて、6mm以上になってるという触れ込みだったので、看護婦さんが、『もう駄目ですよ』と言いにくるまで、食堂のテレヴィで見てようと思ったんだ。

「入院患者なのに、大胆よねぇ。それで、どれくらい見れたの?」

 22時18分くらいまで、見られた。

「じゃあ、内容は、かなり分かったのね」

 うん。

 そして、1665年という年に、ピーンときたんだ。

「『美の巨人たち』見てて、『万有引力の法則』思い浮かべるなんて、物理学者だけね」

 ただ、今日発見があったんだ。

「えっ、発見って?」

 この絵、

ユダヤの花嫁({\mathrm{The\ Jewish\ Bride}})』

『イサクとリベカ({\mathrm{Isaac\ and\ Rebecca}})』

の後者が、最近は正しいと言われてるの。この英語表記、何か感じない?

「確か・・・アイザック・ニュートン。このスペルは?」

 待ってました。

{\mathrm{Isaac\ Newton}}

だよ。

「絵を実際に、見てみたいわ」

 これだよ。

f:id:PASTORALE:20170313092021j:plain

「これが、万有引力と関係のある絵なの」


 ほぼ同じ頃、もっと有名な、フェルメールの『真珠の耳飾りの少女』も、描かれている。

f:id:PASTORALE:20170313092421j:plain

「その英語表記は?」

真珠の耳飾りの少女{\mathrm{Girl\ with\ a\ Pearl\ Earring}})』

だけど、それよりも、こっちの方が、面白い。

ヨハネス・フェルメール{\mathrm{Johannes\ Vermeer}})』

「なんで?」

 ニュートンに、先んずること55年余り(1609年)、惑星の三法則の第一、第二を発見したのは、ヨハネス・ケプラー{\mathrm{Johannes\ Kepler}})なんだ。

ニュートンが、3番目を見つけたの?」

 この言い方だと、みんなそう思っちゃうね。

 そうじゃないんだ。惑星の第三法則を発見したのも、ケプラーなんだ。

「時期が、後なの?」

 そう。第一法則、第二法則から、10年経って、1619年に、発表している。

「10年後っていうの、多いわね」

 人間が、

『10年で、なんとかしよう』

と思うからというのもあるし、

『周りが、10周年とはやし立てるから』

というのもあるだろう。

「あらゆる数の中で、10が、特別になる理由があるの?」

 やっぱり両方の指で、普通に数えられる数だから、というのが、特別な理由だろうけど、つい最近、10ってすごい数なんだと、気付いた。

「えっ、どうすごいの?」

 麻友さん、{\sqrt{10}}って、どれくらいか知ってる?

「いきなり、そんなこと言われても」

 実は、中学3年のときの数学の先生が、絵を描いて、覚えさせてくれたんだ。

{\sqrt{10}}を覚えるのに、絵を描くの?」

 『人(ひと)まるは、三色(みいろ)に並ぶ』

って言って、同心円状に内側から赤、緑、青、のチョークで、円を描いて、赤と緑と青の服を着た人が、このように並んでいるところを思い浮かべてごらん。これが、『人まるは、三色に並ぶ』だ。

と、教えてくれたんだ。

「えっ、教えてないじゃん」

 これで、いいんだよ。

{\sqrt{10}=3.1622\cdots}

なんだ。

 最初のルートのなかの10を、『ひとまる』と読むところが、ミソなんだよ。

「2が、2つ並ぶ、というところも、ひっかけてるのね」

 そう。

 これ、語呂合わせでは、高級なものだと思うんだけどね、私、つい最近、計算してて、これが、パイにすごく近いことに気付いたんだ。

「パイは、{\pi = 3.14\cdots}だから、まあまあ、近いわね」

 まあまあどころじゃないんだよ。

{\sqrt{10}\approx \pi}

だから、両辺2乗して、

{10\approx \pi^2}

となる。

「当たり前のようなことを、やってるように、見えるけど」

 当たり前じゃないよ。

 もう少し研究した後、麻友さんも、次のようなものが、求められるようになる。

{\displaystyle \sum_{n=1}^{\infty}\frac{1}{n^2}=\frac{\pi^2}{6}}

 これを、求めたとき、計算しなくても、ただちに、右辺が大体、

{\displaystyle \frac{10}{6}}

だと分かる。

「きっと、すごいことなんでしょうね。

{\sqrt{10}\approx \pi}

に気付いた時刻の刻印は?」

『2017.2.10 3:29:29』

「朝3時半まで、数学やってる。早く寝なきゃ」

 そうだね。


 今日の話を、まとめよう。

 20世紀は、麻友さんの生まれた世紀。

 そのひとつ前が、5次方程式が解けないことを、アーベルが証明した19世紀。

 一方、ニュートン万有引力の法則を発見したのが、1665年だから、それは、17世紀だ。

 ニュートンは、翌1666年に、微積分学を発見したと言われる。

 あの『数Ⅲ方式ガロアの理論』に次の会話がある。『第9章 方程式論の流れを変える』の冒頭だ。


広田 今まで見たように,3次方程式・4次方程式の解法は16世紀の中葉までに,本質的に,完成している.だが,その後の二世紀というものは,方程式論にとって,「不毛時帯」となっている.
佐々木 特別な理由でも,あるの.
広田 この時期には,方程式論にかぎらず,代数学一般が沈滞している.17世紀に,「新しい数学」が興ったのが,一因でもある.
小川 「新しい数学」というのは「微積分」ですね.微積分の研究に集中したのですね.
佐々木 女性と数学者は,流行に弱い!
 でも,微積分なんか,もう古い.


「太郎さんは、微積分なんかもう古い、なんて書いてある本で、数学を勉強してたの?」

 微積分を古いと言えるほど、人類の数学は、まだ進んでないけど、麻友さんの注意をこの本に向けさせるために、面白いから引用した。

「これによると、微分積分学が、発見された、17世紀と、次ぐ18世紀は、数学者は、微積分の研究をしていたようね」

 そうなんだ。

 これを、逆に辿るとね、現代数学の20世紀、アーベルの5次方程式の19世紀、微積分を研究してた18世紀、微積分を発見した17世紀、となって、3次方程式や4次方程式が解かれたのは、16世紀だろうと、察しが付く。

「その歴史的考察で、対数が発見されたのが、カルダノの解法の頃だから、16世紀だ、と言いたかったのね」

 お疲れ様でした。やっと、対数発見の時期に関しての物語の輪が閉じました。


「ちょっと、ひどいわよ。本当は、対数を使って、1億人ひとりひとりに、100万円、あげたらいくらになるか、計算してくれる約束だったのよ」

 ごめん。お話書いてたら、面白くなっちゃって、書き過ぎちゃった。

「まあ、私達は、急いでる身じゃないけどね」

 麻友さんに、少しでも、数学が面白いと思ってもらえるのが、一番大事だからね。

「太郎さんが、文系の学部でも、数学教えられるようになるよう、私も、色々、特待生らしく、質問してあげるわ」

 ありがとう。この話は、相対論にも必要な話だからね。

「分かったから、今日は、もう寝なさい」

 そうだね。

 おやすみ。

「おやすみ」

 現在2017年3月16日4時19分である。おしまい。