相対性理論を学びたい人のために

まだ一度も相対性理論を勉強したことのない人は、何か一冊相対性理論の本を読みかじってみて、なぜこんなことが?という、疑問を持ってからこのブログに来てください。ブログの先頭に戻るには表題のロゴをクリックしてください

ケルテスの新世界を聴きながら(改訂後)

 現在2005年7月12日20時45分である。(この投稿は、ほぼ3958文字)

 イシュトヴァン・ケルテス指揮のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団演奏によるドヴォルザーク作曲、交響曲第9番「新世界より」を聴きながらこれを書いている。この曲のCDの中で、最高と言われているCDである。

 しかしこの演奏には謎がある。私が昔買ったCDには1960年録音と書いてあるのに、最近のCDには1961年録音と書いてあるのだ。演奏時間などもぴったり一緒なので、同じものだと思うのに、この1年の違いは、どちらが正しいのだろう。

 さて本題に入ろう。

 13ページでは複素数というものが出てくる。高校で習うものだ。前にあげた、「数は生きている」という本の最後に出てくるもので、複素数を知っていれば、どんな方程式でも、一応解ける。ただしここで言う方程式というのは、微分方程式とかではなく、代数方程式と呼ばれる、エックスの何乗足す3かけるエックスの何乗足す・・・=0というような方程式だ。(1.29)式を確かめるくらいのことはしても良いのではないか?添え字に誤植があるかも知れないし。私は確かめたけど、誤植はなかった。 13ページの一番下に、このシリーズの第5巻のことが書いてあるが、この第1巻を読み終わったら、次はこの5巻を読もうと思っている。それが一番楽そうだから。
 14ページへ行って、共役複素数というのが出てくる。以前から言及している、解析入門Iの42ページにはこの「役」という字が、フォントにないような字で書いてあるが、あれは訂正すべきだと思う。時代錯誤だ。

 15ページに進むと、数列の話が始まる。この辺からいよいよ手を動かさなければならなくなってくる。16ページに行くと、{\sum} というのが出てくる。高校2年で習うものだ。{\sum} を使った計算は、私は専ら、

 笹部 貞市郎 編 代数学辞典 上・下 第二版 聖文社(1972)

の中の面白そうな問題を見つけては解くことで慣れていったのを覚えている。この辞典は普通の本屋さんには滅多にないが、大抵の学校の図書室にはおいてあるので、時々眺めてみると良い。特に巻末の代数学小史は、大変に面白い。

 {\sum} というのを使った公式は、やっぱり覚えておいた方が良いだろう。{k}{1}から{n}まで増えるときの{\displaystyle \sum_{k=1}^{n}k} の公式と、{k}の二乗の式{\displaystyle \sum_{k=1}^{n}k^2}くらいは暗記するくらい、計算練習する必要がある。それと、{r}を定数として、{k}が増えるときの{r}{k}乗の和を表す公式{\displaystyle \sum_{k=1}^{\infty} r^k=r+r^2+r^3+ \cdots} も等比級数の公式として覚えておかないといけない。この3つを覚えておけば、{\sum} の計算の公式は終わりである。もっと難しいのもあるが、滅多に必要にならないので、そういう時は、公式集を見ればよい。

 ここで読者に一つ問題を提起しておこうか。

 {\sum}{k}{k}の2乗の和の公式は覚えておくように言ったが、じゃあ{r}を一般の自然数として、{k}{r}乗の和の公式はどうなるのだろうか。しばらく考えてみて欲しい。余り無理しなくても良いが。解答は、そのうち機会が訪れたら、書くことにしよう。

 17ページに進んで、線形性という言葉が出てくる。高校生には、少しなじみがないかも知れないが、線形とか線型というのは大学で学ぶ数学の中で、かなり重要な概念である。何を隠そう、一般相対性理論が難しいと思われている原因の、テンソルというのは、この線型という概念によって定義されるのである。このシリーズの第2巻の線形代数というのが、その入門になっている。第5巻を読んだら、この第2巻に進むつもりである。楽しみにしていて欲しい。例6の計算をちゃんとやって、18ページの一番上の式が出てくることを、確かめておくくらいのことはしよう。{c_1}{c_2}{a_0}{a_1}で表すのは、連立方程式を解くのだが、加減法でやるよりも、クラーメルの公式というのを使った方がよい。分母が1になるからである。知らない人は、それを学んだ時、振り返って欲しい。{a_0}などというのの0は本当は添え字で小さい数字である。({\TeX} で打ったので、この注意は、いらない)

 18ページに進んで、{\lim}というのが出てきて、いよいよ微分積分という感じになってくる。微分などは、私は高校1年生の時に、コロナ社の「微分積分入門」という本で学んだのだが、この本も、絶版になっている。私達が読んでいるこの本も、微分積分の本なのだから、他の本を紹介しなくても良いが、この本が難しいと感じ始めた人は、

 田島一郎 著 「イプシロン・デルタ」 共立出版(ワンポイント双書)(1978)

などで、基礎固めをして欲しい。

 19ページでは(-1)+1+(-1)・・・が発散すると書いてある。昔オイラーという大数学者は、これをあいだを取って{\displaystyle \frac{1}{2}}に収束するという今では誤りとされる仮定を立てて、現在でも正しいとされる結果をいくつも導いたと言われている。間違った仮定から正しい結論を導けるというのが、本当の天才というものだろうと、私は以前から尊敬している。

 20ページに進んで、強い意味で単調増加という言葉が出てくるが、これを狭義(きょうぎ)単調増加と書いている本もあるので、一応指摘しておく。20ページから21ページにかけてある計算は、是非自分でも手を動かして計算して欲しい。

 21ページの最後に出てくる、{e}という数は、{e=2.71828~18284~59045 \cdots}(ふな一鉢二鉢一鉢二鉢しごく惜しい)と覚え、無理数であると同時に、さらに超越数というものである。その証明は、実に見事なものであるので、もう少し勉強してから、紹介することにしよう。

 22ページに進んで、{\varepsilon-\delta}法というものの紹介がある。これを知らなくても微分積分はできるという人もいるが、非常に強力な証明法であるので、是非とも身につけて欲しい。上に上げたワンポイント双書の本には、実に丁寧にこの証明法のことが書いてある。

 23ページに進んで、証明抜きでいくつかの結果が書いてある。こういうところが、工学部の先生らしい。確かにこんなものを一個一個証明していくのは、大学1年生にとって、つまらないこととしか映らない。それで良いんだと思う。証明はいつかすればよい。

 24ページに進んで一番下の注意の中は、覚えておいた方がよい。階乗というのが、非常に速く発散するものであるということは、よく使うからである。

 この章の最後のページ、25ページまで来た。皆さんお疲れ様。この1章が読めれば、この本を読むための予備知識はほぼ揃っていると自信を持って良い。逆に、1章を読めなかった人は、まだこの本は少し早過ぎたと言って良いだろう。私があちこちで紹介した本などで、基礎を固めて欲しい。

 ただ言っておくが、完璧主義にはならないように。若い人は、ある程度の勢いを持って、少しくらいのギャップがあったとしても、そんなの無視して進んでいって欲しい。ある程度進むと、視界が開けてきて、以前ギャップだったところも、埋まっているものである。

 26ページの問題は、私は6番を計算間違いをしてしまった。5番の答えは第2章の結果を先取りしていて、少し不親切である。4番はよく分からなくても構わない。7番の解答は「最大のものをMとすると・・・」という記述があるが、最大のものがあることを示していない。少し考えさせられる解答である。収束するんだから、有界であり、0より大きくて、減少していくのだから、最大のものがあるというのは、当たり前といえば当たり前なのだが。9番は対数を知っている人にとっては、赤子の手をひねるようなものだろう。

 今日はここまで。

  新世界交響曲は実に楽しい曲である。名曲であると同時に、これほど分かりやすい曲というのも珍しい。どこをとってもいつでも口ずさめるような素敵な旋律であり、メロディーメーカードヴォルザークの面目躍如と言うところである。ブラームスは、ドヴォルザークがこんな旋律面白くないや、といってゴミ箱に捨てた旋律からでも、一曲作れるくらい、すごいメロディーメーカーだったと評しているが、それもうなずける。

 この曲は人類の宝の一つだ。ファインマン物理学の中で、ファインマンは、今日出てきた、オイラーという人の名前の付いた、オイラーの公式というのを、「これは我々の至宝である」と書いているが、新世界交響曲もまた、人類の至宝である。

  2005年7月12日22時43分終了。

 2023年8月12日20時47分改訂した。