現在2016年10月3日5時38分である。
麻友さん。人生で一番大切なもののひとつを見つけたよ。
「なんか、また、すごいもの見つけたの?」
人生で、一番大切なものって何だと思う?
「太郎さんが、お金、なんて言うはずないし、恋愛なんて言うはずもない。希望かしら?」
うん。さすが、特待生は、良いこと言うね。
「おだてても、何も出てこないわよ。」
希望って、未来に向けて生きる力になるものだよね。
「そうよね。やっぱり、若いうちは、希望が多くて良いわね。ハッ!、なくなっていくものだとしたら、太郎さんが大切なもの見つけた、なんて言うはずないわね。とすると、希望を生み出せるものね。空想や夢じゃ、だめね。我が子って、太郎さんが、改めて言うはずもない。うーん。希望を生み出せるもの。経験かしら?」
おーっ!やってくれるじゃない。
「えっ、私も、良く分かってなくて、経験って言ったのよ。どういうこと?」
麻友さんは、知ってると思うけど、私が、愛読書ナンバー3と言ってる本が、あるじゃない。
「あーっ、思い出した。背表紙が取れちゃってる本じゃない?」
すごい記憶力だね。そう、この本。
「『数Ⅲ方式ガロアの理論』?」
そう。今年、復刊されて、今、手に入る。

- 作者: 矢ヶ部巌
- 出版社/メーカー: 現代数学社
- 発売日: 2016/02/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「それで、この本と人生と、どう関係があるの?」
実はね、今晩、この中で、解けなくて苦労してた問題が、かなり解けたんだ。
「えっ、だって確か、高校2年生の時、読んでたって言ってなかった?」
そうだよ。
「じゃあ、29年も、その問題、考えていたの?」
おかしいかな?
「普通、問題は、10分とか、入学試験なら、30分とかで、解けるものなんじゃない?」
私には、解けそうで解けてない問題、たくさんあるよ。
「分かった。その解けてない問題が、生き甲斐になるって言いたいんでしょ。」
半分、分かったね。
「半分?」
うん。
麻友さんの言うように、私に取って、この本は、解けてない箇所だらけなんだ。
だから、この本と対面してるだけで、何年も過ごせる。
ただ、何年というだけならば、他にだって、娯楽はある。
でも、私に取っては、この本だけじゃないんだ。
私は、数学の世界全部が、この本みたいになった人間なんだ。
「えっ、それ、本当?」
ウソじゃない。数学の中で、一番難しいと言われている、代数幾何学というものでさえ、まだ、可換代数(かかんだいすう)も、層(そう)も、コホモロジーも、勉強してないけど、ゆっくりやっていけば、絶対分かる方法を、身につけてあるんだ。
「確かに、妄想は持つけれど、太郎さんの論法に、論理的な誤りは、ないわね。」
そうなってから、気付くとね。人生で、一番大切なことって、この無限の宝石箱を手に入れることなんじゃないかなって思ったんだ。
「無限じゃなくても、良いんじゃない?80年間くらい、宝石を供給してくれれば。」
私、これ、奇跡だね。ドラえもんのブログで、相対性理論の話書いたんだものね。
「えっ、80年じゃ駄目ってこと?」
そうなんだよ。人間が、老いていくのは、確かなのだろう。
だけど、肉体が死んだとき、心まで死ぬとは、限らないでしょ。
「そこのところ、ちょっと論理にギャップが、あるわね。」
うん。分かってる。
私が、話しているのは、全員が、同じスピードで、時間を感じてるのではない、ということ。
「それが、相対性理論?」
ある意味、そうなんだけど、麻友さんは、こう言いたいだろう。
『その時間が違うというのは、夢中になってテレビ見てたら、時間が早く経った、とか、退屈な授業だと、長く感じる、というのと、同じなの?』
これね、分けて話さないと、いけないんだよ。
ただ、分けるっていうのは、普通の物理学の本のように、『退屈な授業だと長く感じる。』というのと、『相対性理論でいう長さの伸び』とは、違いますよ、っていうように、2つにわけるんじゃないんだ。
「えっ、そこで、分けなくて、いいの?」
うん。
そこじゃない。
例えば、麻友さんを、例に取ろう。
私は、医学には疎いから、あまり心のある場所を、狭めないことにするけど、麻友さんの心というものは、麻友さんの体のそばにあるよね。
「まあ、とりあえず、それは、認めましょう。先に進まない。」
ところで、麻友さんと私が、話しているとしよう。
今、私が、1時間経った、と感じたとする。
そのとき、麻友さんも、1時間経ったと、感じるだろうか?
「そんなの、時計見てなきゃ、同じになるわけない。」
そうだね。
だけどね。麻友さんと私の体を、見てみよう。
こういう時、中学校の理科の時間の授業が、意味を持つんだよ。
「えっ」
麻友さん。細胞分裂って、知ってる?
「ほっ、それくらいなら、知ってる。」
じゃあ、人間の体も、細胞でできていて、少しずつ、細胞分裂している、という話についてこれる?
「そこまでは、ついてってる。」
良かった。
私が、言いたいのはね。この体の細胞の分裂した数で、1時間経ったかどうかが、言えるんじゃないか、ということ。
「あっ、それなら、言えるんじゃない?規則的なものなんでしょ?」
じゃーん。
ここが、重要なんです。
規則的だと思うのは、体の細胞の数が多くて、速いのや遅いのが色々あるのに、平均してならしてしまうからじゃない?
「ちょっ、ちょっと、待って。えっ、そういうこと?」
いや、ここは、悩みどころなんだよ。よく、悩んだ方が良い。人生かかってるんだから。
「脅かさないでよ。」
いや、ウソでなく、麻友さんの後半生が、かかってるんだから、本気で悩んで。
「えっ・・・」
「仮にそうとして、先を聞いてみるわ。」
このさっきの時にね、速いのや遅いのがある、って言ったじゃない。
「分裂する速さがね。」
そう。
「それで?」
ひとつひとつが時間に違いがあるのは、どうしてだろう。
「そんなの、好き勝手にやってるんじゃない?」
好き勝手ね。ふーん。
「何よ。手を隠さないで。」
隠す気はないんだけどね、私も考えながら書いてるんだよ。
「どうだったら、速くなったり遅くなったりするの?」
結論を言うとね。動くと、周りより遅れるんだ。
「ちょっと、待って、そうだとすると、私達の心が激しく動いているときには、周りに取り残されて、一人余り時間が経ってない気がするのに、周りの時間は経っていたという状態になるというの?」
取り敢えず、そこまで来てくれないと、後がつながらない。
「これを、前提として話すの?」
「人生の大切なことは?」
大切なことだから、言っちゃおう。
前にも言ったように、私が、どこかで生まれたのは、確からしい。でも、死ぬかどうかは、分からない。
今書いたように、時間の経ち方も変わるとしたら、心は永遠に残るかもしれない。
肉体を失った後、その心のその後を保証するものがあるとしたら、さっきの無限の宝石箱が必要なんじゃないかなって。
「そう、言いたかったのね。ギャップはあるけど、それを、言いたかった気持ちは、分かったわ。」
「そうなれるように、私にも、経験を積ませてくれてるのね。」
麻友さんに、『経験』への橋渡しまで、してもらったね。ありがとう。
途中で気付いた、インフルエンザ駄目だったんだね。今年の型なんて、もう決まってるのかな?
ちょっと前に、麻疹(はしか)のニュースを聞いたけど、感染症とかって、冬のイメージがあるよね。まだ10月初め・・・
まさか、麻友さん寝込むことになるのかな。
「おやすみ。」
おやすみ。