現在2019年6月14日19時08分である。
「あーっ、やったー」
麻友さんが、一番知りたいことだよね。
「そうなのよ。ビリヤードで、キューで、突くと、まっすぐ当たった場合、打った球は止まって、ぶつかられた方が、転がっていくのよ。どうして、2個とも転がっていかないの?」
私が、考えた通りを、話すね。
まず、私は、今まで、この現象を、不思議だと思ってなかった。小学校の頃、映画『ハスラー』を観て、ビリヤードとは、ああいうものだと、思い込んでたからね。
「それで?」
麻友さんと、しゃべってて、麻友さんレヴェルなら、こんなことも、疑問を持つかも知れない。と感じて、ブログ(ドラえもんのブログの『有理数体』という記事)に、麻友さんが疑問に思ってる描写をした。
すぐに、私は、運動量保存則の結果だと、感じたが、2つが、一緒に行ってしまうというのを否定するには、エネルギー保存則も、必要だ。と、気付いた。
そして、次の瞬間、最近熱心に研究している量子力学のノートに、2019年4月24日に書き込んだことを、思い出した。
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最近はこれは、丸善から出版されている。
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こんな、量子力学の基礎的なことで、ほとんど違いはない。『誤差』と言っていたものを、『不確かさ』に、直した位だろうから、以前のテキストで、学んでいるのだが、その第3章を読んでいて、次のように、メモを取った。
『量子力学概論』のノート、56ページ
3.3 物質波の統計的解釈
粒子の運動は、エネルギーと運動量の保存則と個々の実験に依存する境界条件とから決定される。
研究者注
エネルギーと運動量は、それぞれに別々に保存するのではなく、エネルギー-運動量テンソルが、テンソルとして保存するのだ。具体的には、 をエネルギー-運動量テンソルとして、 なのだ。そう考えた瞬間、非相対論的量子力学と、相対論的量子力学の違いはこれなんじゃないか?と思った。
要するに、エネルギーをエネルギーだけで保存量とし、運動量も運動量だけで保存量として、理論を作っていくのが非相対論的量子力学であり、エネルギーと運動量を、エネルギー-運動量テンソルとして、時空4次元での量として扱って、理論を作って行くのが、相対論的量子力学なのだろうと、初めて気付いた。
注終 」2019.4.24 15:08:31
「ちょっと、ごめん。私、何話してるか、全然、分からない」
分からなくて、当然。私の物理学の最前線だから。
「太郎さんは、そんな風に、気付いたこと、バンバン、ノート取れるの?」
興奮は、しているけど、熱情的、というより、情熱的な、という感じだから、手が追いつかないほどではない。
「ノートを、見てみたいわ」
いいよ。
「太郎さんが、今日になって、『=0』を、書き加えてるところが、臨場感があって、いいわね。太郎さんって、こうやって、研究してるのね。計算ばっかりやってるのかと思ったら、概念を捉えるのも大変なのね」
概念を捉える方が、遙かに大変だよ。数式に持ち込めれば、どうやってでも、計算できちゃう。
「それで、エネルギーというものと、運動量というものが、あるのね」
そう。
やってみせると、まず、ビリヤードの球の質量。まあ、重さと思って良いけど、それを、 とする。 を使うのは、mass(質量)の頭文字だから。
中学で体育の時間にやる、マスゲームというのも、同じ単語。集団という意味があるんだ。
「 (イーイコールエムシースクエア)の も、質量?」
そうだよ。
この場合、実は、思考実験が役に立つことが、分かった。ファインマン物理学のⅠ巻に記述があったはずだ。
まず、麻友さんが、キューで突いて、初めの球(Aとしよう)に、 の速さを与えたとしよう。
「おっ、物理の問題っぽくなった、計算するの?」
頭で、考える。
まず、ビリヤードの球は、全部同じ質量だよね。
「あっ、そうじゃないと、競技にならないわね」
じゃあ、麻友さんが、 の速さの半分の速さで、その転がっていく球を追いかけながら、スマホで、動画を撮ったら、どう写る?
「えっ、スマホで、動画? 何を写すの?」
転がっていく、Aという球と、ぶつかられるB(としよう)という球だよ。
「それは、・・・、半分の速さ、・・・ ということ?」
「多分だけど、Aの球が、 で、動いて行って、ここが、良く分からないんだけど、Bの球が、向こうから逆向きに、 の速さで、向かってきて、ぶつかる」
そうすると、どうなると思う?
「どうなるって?」
ぶつかった後だよ。
「えっ、後? うーん」
「はじき合うんじゃないかしら。つまり、Aの球は、今来た方に、Bの球は、向かってきた方と逆の方向に。つまり・・・」
「あれっ、でも、Bの球って、初め止まってなかった?」
いいんだよ。
スマホに写るのが、実験事実なんだから。どんなに、おかしな様に見えることでも、物理学では、実験と違う理論は、作れないんだから。
「そうすると、速さは、 で、ぶつかった場所から、AとBは、遠ざかっていく」
さて、ここで、物理学での重要な言葉を教えてあげよう。
『重心系(じゅうしんけい)』
という言葉だ。
これは、もう一つ、
『実験室系(じっけんしつけい)』
という言葉と、共に使われる。
「えっ、なんか、難しい」
大丈夫。
スマホで撮っていた動画では、球が、両側から同じ速さで、近付いてきて、ぶつかってから、離れて行った。ものすごく、対称的だよね。実は、AとBの2つの重心という、質量の中心は、ずっと動いてないんだ。だって、対称だから。だから、重心系という。
こういう理想的なことができると、物理学の問題は、凄く簡単に、解ける。
「それは、良いとして、実験室系というのは?」
ビリヤードのラシャ張りの台にいる、止まっている麻友さん達だよ。
「あっ、そうか。スマホで撮った結果を、実験室系に翻訳すれば、私達が見る現実が、分かるのか。私達は、実験室系で、実験してたんだ」
そうだよ。
「そうすると、速さ で、Bは戻って行ったけど、スマホ自体が、 で、追いかけてるんだから、実際には、 で、遠ざかっているんだ。ぶつかった点から」
「そして、 で、戻りだしたAは、あっ、そうか。スマホが、 で、動いてるんだから、実験室系で、止まるんだ」
「やったー! なぜ、2個が、くっついて向こうへ行ってしまわないのか、分かった」
銀の、カッチ、カッチ、も、同じ理屈なんだ。
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「これは、難しい応用問題ね」
今すぐ分からなくても良いよ。
「それで、運動量って、使った?」
実は、正式に数式を用いて、この問題を解くとき、
という連立方程式を解く。上の式が、運度量保存則の式、下の式が、運動エネルギーの保存則の式なんだ。
この連立方程式を解くと、
という式が得られる。Bが動いていくためには、Aは、止まらなければならない。という結果が得られる。
ところで、ビリヤードの球が粘土みたいなものだったら、くっついていくんじゃない? という疑問もある。
この場合、球の運動エネルギーと呼ばれるものの一部が、球の(本当は粘土だが)の熱のエネルギーになって、少し温まった粘土の球がゆっくりしたスピードで、一緒に動いていくということになるんだ。
「凄い! 物理学の凄さって、初めて現実のことで、実感した。今まで、宇宙の年齢とか、ブラックホールとか、確かめられないものだったけど、目の前で、計算してくれた。これが、物理学なのね」
喜んでもらえて良かった。
「ありがとう」
じゃあ、もう22時16分だから、寝るね。
「おやすみ」
おやすみ。
現在2019年6月14日22時17分である。おしまい。