現在2020年3月3日11時14分である。
麻友「前置きは抜きにして、始めて」
私「そうか。分かった。スキャンした原稿の1枚目。いよいよ、計算だ」
若菜「どの計算をするのですか?」
私「まず、状況を説明する。前回話した、麻友さんが12時2分0秒にペンライトを振って、合図をして、その光が、運転席の窓に当たって、跳ね返ってきて、12時2分0秒と2マイクロセカンドに、麻友さんに見えたということだった」
結弦「それは、覚えている」
私「そのとき、運転席の窓ガラスに当たった時刻が、12時2分0秒と1マイクロセカンドのときなのだと、麻友さんは思うだろうと言った」
若菜「そうでしたね」
私「そうだとすると、ペンライトの光が運転席の窓ガラスに当たった時刻と、麻友さん自身のパスの12時2分0秒と1マイクロセカンドの点が、同時刻だということに、ならないか?」
麻友「あっ、そういう論理を、使うつもりだったのね。だとすると、スキャンした原稿の2段目の左の図の言いたいことが、分かる」
私「ちょっと、特待生の先走りだけど、そういうことだ」
若菜「天才ふたりで、私達を、置いていかないでください」
結弦「2段目の左の図って?」
私「もう一度、図を持ってこよう」
麻友「太郎さんは、座標の原点を、ずらしたのね」
私「そうなんだ。12時2分0秒に、ペンライトを振ったという実験をしたといったけど、実験自体を、12時に秋葉原を出発する前から、始めていて、12時0分0秒より前から、麻友さんは秋葉原より鶴見側、つまり東大宮と反対側からもう東大宮へ向けて、動いていて、12時ぴったしに秋葉原を通るとしてある」
結弦「何のために?」
私「計算を楽にするためだよ。12時ぴったしに、麻友さんと秋葉原が、一致した方が、秋葉原にいたとき、麻友さんと同時刻なのが、どこかを、計算しやすい」
麻友「それで、太郎さんは、12時0分0秒の1マイクロセカンド前に、私が、ペンライトを振るとした」
私「厳密には、麻友さんの時間はゆっくり流れているので、さっきの12時2分0秒と2マイクロセカンドで、戻ってくるというのも、静止している人に取って、2マイクロセカンドなのか、麻友さんに取って、2マイクロセカンドなのか、曖昧だ。しかし、今は、麻友さんは、ペンライトで、合図をして、その合図をした時刻から、戻ってくるまでの時間を計っていて、もどってきたとき、その戻ってくるまでに掛かった時間の半分のときに、運転席のガラスに当たって、跳ね返ってきたんだなと、思うのだから、具体的に何秒かは、問題ないのだよね」
若菜「分かりません。どうして、そんなタイミング良く、戻ってくるように、ペンライトを振れるんですか?」
私「タイミング良く、振ってるんじゃないんだ。ペンライトを振って、その映像が、色んな距離のガラスで、どんどん跳ね返って、戻ってくる。3両目の窓ガラスにも、2両目の窓ガラスにも、自分のペンライトを振っている姿が、見えてくる。そして、この場合、ペンライトを振ってから、秋葉原を通ったときまでの時間を計り、その2倍の時間が経ったとき、運転席の窓ガラスに映って見えた、ということに、したんだよ。実際には、2両目の窓ガラスだったかも知れない」
結弦「完全に、お父さんの思考実験なんだな」
麻友「そして、とうとう計算ね。でも、太郎さん。記号が、統一されてないわよ」
私「これねー。『麻友』ノートのメモ程度の計算だから、私の思いつきで、書いてる。でも、これは、これで、私の思いつきが、伝わって、いいんだ。2段目の右の図の計算の説明をしよう」
若菜「全く分かりません」
私「数学者が、計算するときの式の立て方の良い例になってるから、見せよう」
私「まず、麻友さんは、速さ で、動いているとしている。1マイクロセカンドでは、計算しにくいので、1秒くらいとしよう。1秒で、麻友さんは、どれだけ動くだろうか?」
結弦「進んだ距離は、速さかける時間だから、 だよね」
私「そうだ。だから、スキャンした原稿の2段目の右の図の右上に、 と書いてある。ここから、私は、計算を始めた。もう一度図を持ってくるよ」
結弦「この小さい直角三角形の、この点は、本当に座標 なの?」
私「静止系で、1秒経ったとき、速さ の麻友さんが、静止系の
座標が、
の点に来るのは、結弦が計算したんじゃないか」
若菜「私、分かった。お父さんは、この点を利用して、斜め45度の線を、求めたんだ。斜め45度で、下向きなら、傾きは、 そして、この点
を通るんだから、
となる」
結弦「どうして、これが、その直線の式だと分かるの?」
若菜「まず、 は、定数ね。そして、
についての1次式だから、直線ね。そして、
を代入すると、左辺も右辺も
になって等号が成立するから、この点を、この直線は通る。恒等的に
ではないから、直線であることは、保証される」
麻友「恒等的って?」
私「ああこれ、恒等的(こうとうてき)と、読むんだけど、数学の専門用語なんだ。広辞苑にも、精選版日本国語大辞典にも、載ってない。identity の訳語なんだけど、普通日本語では、identity は、アイデンティティーと訳すけど無理に自己同一視などと訳すともっと分からなくなる。数学では、identity は、関数なんかで、何もしない関数。つまり、1をかける関数なんかのことなんだ。だから、若菜が、『恒等的に ではないから』と言ったのは、あの式が、『
の意味で、成り立っているのではないから』という意味だったんだ」
麻友「 だとしたら、どうなってたの?」
私「あの-
平面上のすべての点が、式を満たすことになっちゃうから、直線でなく座標平面全部となる」
結弦「お父さん、どうして、ここまで、説明したの?」
私「『こうとうてき』で、ATOKが、『高踏的』以外、漢字を知らなくて、『こうとう』で、変換しても、『恒等』が、最後まで見つからなかったんだ。電子辞書調べても、数学用語でしか見つからない。これは、問題だと思って、書くことにしたんだ」
結弦「そうすると、僕の番だな。また、お父さんが、とんでもない技を、使ってる。右上へ上がるお母さんのパスで、ペンライトを振った瞬間の座標が必要なんだけど、それを、設定で、秋葉原を通った瞬間の点を基準として、お姉ちゃんが使った、 という点と対称な点としてる。なんで、こんなことが、できるかというと、お父さんが、座標の原点を、ずらしてあったからだ」
結弦「原点を基準として、 と対称な点は、もちろん
だから、お姉ちゃんが使った論法で、行きの光のパスは、
となるんだ。このお父さんの論理に、読んでいる人、付いてこられているのかなあ」
私「結弦。頑張った。羽生結弦君が、4回転決めたときのように、麻友さん喜んでいるだろうよ」
麻友「このふたりが、頑張ったのなら、私も、頑張らなきゃね。ふたりが導いた、2本の式からなる、連立方程式を解くのね」
私「そもそも、その連立方程式を解くと、何が求まるか、分かっている?」
麻友「もー、意地悪。何が求まるのよ」
私「確かに、本当に分からないのなら、『分からない』というのも、大切」
私「この場合、ふたつの光のパスの交点。つまり、ペンライトを振った、麻友さんの光が、運転席の窓ガラスに当たった瞬間の座標だよ」
麻友「分かってれば、計算もし易いわね。じゃあ、
と連立させて、整理して、
両辺足して、
2で割って、
これを、第2式に代入すると、
だから、
となり、
と、求まった。だけど、これで、何? 何が分かったの」
私「特待生でもそうか。私が、あのスキャンした原稿で、3段目に何を、書いてる?」
麻友「 って」
私「そう。だから、麻友さんに取っての秋葉原での同時刻ラインの傾きが と求まった。だから、スキャン原稿の次のページへ進めるんだよ」
麻友「2ページ目。とうとう、そこまで来たの」
若菜「お父さんが、今まで、なかなか相対論への招待を、進められなかったのは、当然かも知れませんね。でも、ペンライトを使うっていうアイディアは、最初からあったのですか?」
私「いや、あの投稿を書いているとき、麻友さんにどうやって説明しようと、思って、ふと『ペンライトの光にしたら?』って、思い付いたんだ。完全に、麻友さんあっての、説明」
結弦「今日は、まだお昼食べてないんでしょ。投稿して、URLツイートして、マックでも、行ってきたら?」
私「そうだな。今日は、ここまでにするか」
若菜・結弦「バイバーイ」
麻友「楽しかったわ。バイバイ」
私「バイバイ」
現在2020年3月3日15時19分である。おしまい。