現在2006年3月30日20時10分です。
齋藤正彦先生にお送りしたメールをここで公開しておくことにします。つまり公開質問状です。本当にこの命題は正しいのかしらん?
齋藤正彦先生-基数制限のない飽和モデルの可能性について-
私は放送大学の学生のものです。
先生の放送大学の授業「微積分入門 I ・ II 」を取らせてもらいました。評価は優でした。ありがとうございます。
また東京大学出版会から出版されている、「線型代数入門」「数学の基礎」および、東京図書から出版されている、「超積と超準解析」を読ませて頂きました。どの本も大変素晴らしい本で、非常に得るところが多かったです。素晴らしい本をありがとうございました。
そして、一つ考えたことを書かせてもらいます。
「超積と超準解析」の62ページに「基数制限のない飽和モデルは存在しない。」とあります。これを読んで、私なりに悩んだ末、次のような結果を得ました。
「数学の基礎」で、順序数全部の作る真のクラスである On と表しているものがあります。このOnの上に、以下に述べるような、「On上の善良超フィルター」と呼ぶもの (これはフィルターではない) を作り、それを用いた超積により
「飽和モデルとしてもう出来上がっていて、それなのに、そこにどんなに大きな無限基数αを持ってきてもα級の飽和モデルになっているもの」
が作れることを見いだしました。基数制限がない飽和モデルが作れたということを意味します。
その構成法を書きます。
「超積と超準解析」の付録 I により、任意の無限基数上に善良超フィルターが存在します。そこで、Onの各元βに対し、順序数βと等濃度の基数αについて、付録 I の方法を使って善良超フィルターF(β)が作れます。そして、
F= ∪ F(β)
β∈On
と、定めると、Fは真のクラスになり、フィルターではありませんが、次のような意味で「On上の超フィルター」としての働きをする「On上の善良超フィルター」となると考えられます。
ところで、On の元で、0でない有限順序数βに対してはF(β)=φとし、F(0)は「超積と超準解析」の127ページで、
「α上の自由で一様なフィルター」
と呼んでいるF({In;n∈ω})で、α=ωとした場合のものとします。
こうすることで、私達の構成したFは自由となります。慣用に従えば、ω-incomplete ということです。
さて、ベルナイス・ゲーデルの集合論を仮定し、Aが集合であるということをm(A)と表すことにします。そして、次の定義をおきます。
定義
Onを順序数全体の作る真のクラス、P(On)={X|m(X)∧X⊂On}とする。( P(On)が、真のクラスとして存在することの証明は、例えば、大芝猛著「数学基礎概説」(共立出版)の105ページ参照。 ) P(On)の部分クラスで真のクラスFが次の三条件をみたすとき、Fを「On上のフィルター」と言う:
a)¬(φ∈F)
b)A,B⊂Onについて
A∈F かつ A⊂B かつ m(B) ⇒ B∈F
c)A,B∈F ⇒ A∩B∈F
(定義終)
こう定義することにより、私達の初めに構成したFは「On上のフィルター」となります。On上のフィルターはフィルターではありません。Onが集合ではないからです。そして次の定義をおきます。
定義
On上のフィルターFが次の条件を持つとき、Fを「On上の超フィルター」と呼ぶ。
Onの任意の部分集合Aに対し、ある順序数αが存在して、
A∈F または α-A∈F
(定義終)
この定義により、「超積と超準解析」の11ページの命題 1.1.8 は、
1.1.8’ 命題
On上のフィルターFに関する次の3条件は同値である。
a)FはOn上の超フィルターである。
c)A,B⊂On , A∪B∈F なら A∈F または B∈F
d)A1,・・・,An⊂On , A1∪・・・∪An∈F なら、少なくとも一つのAi がFに属する。
(命題終)
証明は、「数学の基礎」の順序数の性質より簡単にできます。鍵はOnの任意の部分集合A (A⊂On∧m(A)ということです) について必ず、ある順序数α∈On が存在して A⊂α となることです。
∪A ∈ On だからです。
On上の超フィルターの存在は、ツォルンの補題が使えないので、私達がやったように、実際に構成することによってしか言えません。
更に、
定義
On上の超フィルターFについて、任意の濃度の集合 T に対し T 上のフレシェ・フィルター f0(T) について、対 (f0(T),F) が善良であるときFを「On上の善良超フィルター」と呼ぶ。
(定義終)
と定義します。対が善良であるということは、「超積と超準解析」の72ページの乗法写像の存在で、定義します。真のクラスに対しても、写像は定義できるから大丈夫です。
さて、存在が言えたOn上の超フィルターを用いて、空でない集合の族{X(i);i∈On}の直積
ΠX(i)
i∈On
の二元α=(α(i)),β=(β(i))に対し、
def
α~β ⇔ {i∈On;α(i)=β(i)}∈F
または {i∈On;α(i)=β(i)}=On
と定義すると、~は同値関係となります。これにより、超積を作るのです。
私達の構成した、On上の善良超フィルターを用いて、宇宙Uの超冪モデルを作ると、これは基数制限のない飽和モデルとなります。
|*U|=On
であるのは明らかです。だから、「超積と超準解析」の63ページの一番上の
カー≧|*U|
となる無限基数 カー は存在せず、矛盾は起こりません。
濃度の制限のない飽和モデルが構成できたということは、それ自体は余り数学に貢献したことにならないかもしれません。でも超準解析をやるとき、広大モデルでやるときには基数制限がなかったのに、飽和モデルでは基数制限があるために、飽和モデルを考える人が少なくなってしまっていたのは事実でしょう。
これを機会に、集合論はZFからBGへ、超準解析は広大モデルから飽和モデルへ、みんなの使う基準が移るのではないかと思います。このことにおいて、私のやったことは意味があるのではないかと思います。
「超積と超準解析」の152ページで、広瀬さんが、「ものができ上がってくると、最後に一般的な形で整理する人が現れるのだ。」と述べているものになっているのかどうか、まだ分かりませんが、私のこの方法はいかがでしょうか。
私はまだ学部生なので、論文というものの書き方を知りません。ここに書いたことも本当に正しいかどうかまだ分かりません。齋藤先生のご意見をいただけないでしょうか。
私はこの事実を私のブログ
一般相対性理論を制覇しよう!
http://blog.livedoor.jp/taro314159265/
で、3月17日と3月19日に投稿していますが、まだ誰も何もコメントしてきていません。
平日の昼間は工場で働いているので、お電話を下さるのなら、土曜日か日曜日にお願いします。
長い手紙におつきあい下さり、ありがとうございました。
お返事お待ちしております。
以上です。3月17日に投稿したものの、最終的な形がこれです。
しかし、実はまだ困難があるのです。F(β)の和集合を考えていますが、これについて α<β なら、F(α)⊂F(β)となっていなければなりません。このことが確認されて初めて、私の定理は、証明されたことになります。私は現在、その最終的解決に向けて、研究を続けています。3ヶ月くらいは楽にかかるでしょう。卒業論文には何とか間に合うでしょう。
現在2006年3月30日20時36分です。おしまい。