相対性理論を学びたい人のために

まだ一度も相対性理論を勉強したことのない人は、何か一冊相対性理論の本を読みかじってみて、なぜこんなことが?という、疑問を持ってからこのブログに来てください。ブログの先頭に戻るには表題のロゴをクリックしてください

がっかりとやった!

 現在2015年3月22日11時24分である。

 先々週の火曜日(2015年3月10日)、私は、鶴見図書館へ行った。いずみ野に置いてきてしまっている、藤﨑源二郎著『体とガロア理論』(岩波基礎数学選書)という本を見るためだった。今の人達が知っている、桂利行著『体とガロア理論』(東京大学出版会)ではない。

藤﨑源二郎著『体とガロア理論

体とガロア理論 (岩波基礎数学選書)

体とガロア理論 (岩波基礎数学選書)


 この、岩波の『体とガロア理論』という本は、すごい本なのだ。私は、大学の2回生の頃、この本の第1章を、きちんとノートを取りながら、読んだ。本当は、第2章以下も読むつもりだったのだが、興味が他の方に向いてしまったので、放り出してしまった。

 その後、3回生になった時、私の友達で、学年で2番目に数学が出来た人が、私に、

ヴェイユのベーシックナンバースィーアリを読んでるんだけど、以前読んで証明してあることが、思い出せなくて、すっごく不安になるんだ。どうしたらいいのかな。?」

と、聞いてきたとき、この『体とガロア理論』を見せて、

「君はこの本を読んだことがあったね。この定理1.38のf(X)g(X)をp(X)が割るなら、p(X)は、f(X)またはg(X)を割るというのは、どうやって証明するんだい。?」

と聞いた。

「それは、ガウスの原始多項式の積は原始多項式というのを使うね。」

と、答えてきた。それで、

「そうなんだよね。それは、定理1.39だ。だから、この本は、そこまでに証明していないことを使っているんだ。君は、ちゃんと補いながら、読んでいるんだね。それなら、大丈夫だよ。もうちょっと、易しい本を丁寧に読み直して、論理的なギャップを埋めるのに、自信を付けた方が良いよ。」

と答えたが、

「こんな、簡単なことで判断するの。? 僕も数学基礎論をやらなきゃいけないってこと。?」

と言われてしまった。私は、

「そういうことじゃないよ。確か君は、『体とガロア理論』の超越拡大をまだ読んでなかったね。これを読むとか、横田一郎の『群と位相』を丁寧に読むとか、『超積と超準解析』の後ろに載っている超準解析を整数論に応用している論文を読むとかして自分のヴェイユの本を超準解析の言葉に読み換えながら読むとかして、自分の数学に自信を取り戻したらいいと思うんだよ。」

と、アドヴァイスしたのだった。

 物理学科にいながら、学年で2番目に数学の出来る人に、アドヴァイス出来るほどに、私は、数学の勉強もしていたのである。だが、成績は悪かった。私は、それを、全然気にしていなかった。

 なぜかというと、2回生の時、4回生向けの一般相対性理論の授業に出て、ちゃんと優を取っていたからだった。その授業は、大学院生が受けても、良だったりする、という授業だった。
 次の本を書いている佐々木節(ささき みさお)先生は、授業に出てくる人間は、微分幾何をマスターしているものとして話した。

一般相対論 (物理学教科書シリーズ)

一般相対論 (物理学教科書シリーズ)

 その試験で、私は、周到に予習をして行き、フリードマン方程式は、忘れてしまっていたのでその問題だけは解けなかったが、それ以外には、数学者が見てもほぼ完璧な解答を書いた。

 『ほぼ』というのは、唯一、一点のみ自分でも分かっているギャップがあったからだ。

「アフィンパラメーターを付けたとき、光子のpathは、赤方偏移を測れる。」

と書き、

「まずこのpathが、nullであることを証明する。」

と言って、証明した。その直後に、

「null-geodesic(ヌルジオデシック)であることが証明されたから、アフィンパラメーターであるかどうかは、第0成分のみチェックすれば良い。」

として、第0成分のみ計算して、アフィンパラメーターであることを証明したのだ。

 ところで、nullだということから、null-geodesicだとジャンプした部分。ここは、物理的に考えたのだ。nullならば、光だ。光子は、まっすぐ進む。だから、測地線に沿って進む。だから、null-geodesicだと言ったのだ。だが、数学的には、4つの成分全部について、クリストッフェル記号を計算しなければ、ならなかった。

 佐々木先生は、私の飛び過ぎた部分を分かっていて、この問題では、内容的に正しいとして、『優』をくれたのだった。

 試験中、私が一所懸命、ものすごく長い証明を書いているのを見ていて、私が、フリードマン方程式の関係する問題の中の、その時分かっていた知識で解ける問題を解き、もうこれ以上無理だな、と思って顔を上げたとき、

「じゃあ、時間終了にしていいかな。」

と言い、

フリードマン方程式、忘れちゃってたか。」

と呼びかけた。

「はい。」

と、答えたとき、先生が、私が答案を書き終わるまで、待っていてくれたのが分かった。

 そりゃそうだ。逆行列微分を、余因子まで完璧に書いて証明するなんて、物理学者じゃ普通やらないことだものね。1時間半以上答案を書いていたのは、私だけだったのだろう。

 そこで、自分の専門とする分野でちゃんと優を取ったので、私にとって他の科目はどうでも良かったのだ。



 ところで、その数学が2番目に出来た人は、私の忠告にもかかわらず、その後才能を伸ばせなかった。3回生から4回生になるとき、飛び級で大学院に入ったのだが、大学院での担当教官とうまく行かず、

修士号はやるけど、博士号はやらないよ。」

とか言われて、

「それなら、就職します。」

なんて、啖呵切っちゃって、数学者にならなかったそうである。

 本当に数学が好きだったら、教官にそんなことを言われたら、他の大学、例えば東京大学の大学院へ移るとか、京都大学というところは、ものすごく自由だから、他の教官に変わるなんて、いくらでも出来たから、道はあっただろうに。

 私なんて、3回生の時、上野健爾先生の研究室、4回生の時、佐藤文隆先生の研究室、なんてことを平気でやっていたくらいだもの。

 やっぱり、数学にどこまで自分を賭けられるかだと思う。

 そして、学年で数学が1番だった人は、ちゃんと、数学者になった。


望月君のページ 


 望月拓郎君は立派である。



 さて、思い出が長くなったが、『体とガロア理論』というのは、その思い出のある本だったのだ。それを借りに行ったのだが、鶴見図書館にはなかった。仕方がないので、中央図書館を検索したら、誰も借りていない。こんな素晴らしい本、京都大学の図書館では、取り合いになるので、何冊も用意してあるくらいなのに。とりあえず、端末機で予約しておいて、代わりになる本を探した。

桂利行著『代数学Ⅰ 群と環』(東京大学出版会

代数学〈1〉群と環 (大学数学の入門)

代数学〈1〉群と環 (大学数学の入門)


桂利行著『代数学Ⅱ 環上の加群』(東京大学出版会

代数学〈2〉環上の加群 (大学数学の入門)

代数学〈2〉環上の加群 (大学数学の入門)


桂利行著『代数学Ⅲ 体とガロア理論』(東京大学出版会

代数学〈3〉体とガロア理論 (大学数学の入門)

代数学〈3〉体とガロア理論 (大学数学の入門)


の3冊を選んだ。

 この3冊を持って家に帰ってきて、パラパラめくっていた。まず、記述が平易だ。次に、ほとんどの問題に解答がついている。これは、数学の本に対する、賛辞である。

 はしがきを読んでいたら、最後のところに、丹内利香さんの名前があった。

「あっ、丹内さんだ。」

と、嬉しくて、メールを送った。

 2006年4月に齋藤正彦さんに直接手紙を書いたとき、先生に手紙を渡して下さったのが、丹内利香さんだったから知っていたのである。
 このときである。


やっぱりだめだった


 そのメールへの返事は翌日来たが、『やった!』というのは、このことではない。

 火曜日に借りてきて、次の週の月曜日。また、トントン工房へ向かった。

 その日、京浜急行の急行の中で、『代数学Ⅰ 群と環』を拾い読みしていた。可解群という節を読み始めた。交換子の説明があった。そして、

「すぐには、分からないだろうな。」

と思いつつ、読み進めていくうちに、可解群の定義が分かってしまった。

「えー、こんなに簡単だったの。?」

 ガロア理論を知っている人なら誰でも分かるように、この瞬間、私には、代数方程式の代数的可解性というものが、分かってしまったのである。

 私は、以前の、


群論なんて本当にいるの?


という投稿で触れたように、


矢ヶ部巌(やかべ いわお)著『数Ⅲ方式ガロアの理論』

数III方式ガロアの理論―アイデアの変遷を追って

数III方式ガロアの理論―アイデアの変遷を追って


という本を読み、アーベル方程式が可解であることを知り、それから、ガロアの代数的可解性の判定条件を知りたいと思っていた。そのために、この読みにくい本を第18章までは、完璧に読んであったのだ。だが、

『代数的可解性を特徴付ける』

は、第27章であり、そこまでには、まだ長い道のりがあった。

 ところが、その日、数分読んでいただけで、解けないはずのものが、解けてしまったのだ。

「がっかり。」

 16歳の時から、27年間、あの本と取り組んできたのが、あっけなく幕切れになるなんて。

 あの本は愛読書ナンバー3だったのに。

 まあ、もう一度読み返してはみるけれど。ガロア自身がどうやって、あれを達成したか知りたいから。

 非常にがっかりしながら、トントン工房に着いた。

 昼食を食べ、食器を洗い始めた。所長さんと、仕事の話を始めた。

「1階と2階のトイレで、どっちが汚れてます。?」

「2階ですね。」

「じゃあ、2階のトイレの掃除をします。」

「やってくれる。?」

「私、トイレ掃除のプロから教わった先生から習ったんです。だから一応、プロみたいなもんです。プロにはかないませんが。」

「いつ。?」

「ねくすとにいたときです。その時、先生が、語源は分からないけど、トイレの掃除のものを置いてある部屋をSK(えすけー)って言うんです。って教えてくれたんですね。その謎が、今回入院しているとき解けたんです。病院のベテランの掃除のおばさんが、不清潔のSeiKetsuじゃないかって。」

「ふーん。でも、掃除器具(SoujiKigu)かもしれないわよ。」

 このひとことが、私を刺激したのは言うまでもない。

「家へ帰って、インターネットで調べよう。」

と思った。

 さて、その日、トイレ掃除をした後、齋藤正彦さんの『超積と超準解析』の証明を続けた。

超積と超準解析―ノンスタンダード・アナリシス

超積と超準解析―ノンスタンダード・アナリシス


 そして、当面の目標だった、可算級善良超フィルターの存在定理を証明した。これで、少なくとも可算級の飽和モデルを使って超準解析が行える。私のランダウ理論物理学教程を全部読破しようというノートの数学的根拠のひとつが証明された。


「やった。!」


 今後、ルベーグ測度論、ヒルベルト空間論、テンソル代数、ファイバーバンドル、層、佐藤超関数、・・・と学んで、ランダウの、時代を超越した発想を、数学的に厳密なノートにまとめていきたい。その第一歩が、踏み出されたのであった。

 帰りの車中は、『代数学Ⅲ 体とガロア理論』で、朝、分かったことを、確認していた。

 現代では、ガロアの業績は、大きな理論の一部になってしまっているんだな、と思ったと同時に、

「任意の代数体Kに対し、任意の有限群Gをガロア群にするようなガロア拡大E/Kが存在するかどうかまだ分かっていない。」

という、新しい面白い問題を手に入れた。

 これも、

「やった。!」

に数えて良いと思う。


 最後に、家に帰ってインターネットで調べたことを書いておこう。SKは、どうやら、sinkの略のようだった。


このページの下の方のSKをみよ


 トイレに限らず、シンクが付いていれば、SKだったのである。トイレの清掃を教えてくれた先生も、かなり調べたのだろうが、インターネット上でも皆、結局、結論に達していないのだ。

 私は、日本語の略ではなく、英語などの図面で使われている、略記号だという説を信じることにした。

 入院中に知ったことを話したお陰で、新しい展開があった。

「やった!」

 2015年3月16日は、そんなものすごい日だった。

 今日はここまで。

 現在2015年3月22日15時15分である。おしまい。




 注意

 この投稿を行ったとき、私は、図書館で借りてきた、『体とガロア理論』を見ていたので、記憶を頼りに書いたために、間違ったことを書いてしまった。以下に、訂正する。


_________________________

、聞いてきたとき、この『体とガロア理論』を見せて、

「君はこの本を読んだことがあったね。この定理1.38のf(X)g(X)をp(X)が割るなら、p(X)は、f(X)またはg(X)を割るというのは、どうやって証明するんだい。?」

と聞いた。

「それは、ガウスの原始多項式の積は原始多項式というのを使うね。」

と、答えてきた。それで、

「そうなんだよね。それは、定理1.39だ。だから、この本は、そこまでに証明していないことを使っているんだ。君は、ちゃんと補いながら、読んでいるんだね。それなら、大丈夫だよ。もうちょっと、易しい本を丁寧に読み直して、論理的なギャップを埋めるのに、自信を付けた方が良いよ。」

と答えたが、

________________________


という部分。

 ここを、以下のように訂正する。

________________________

、聞いてきたとき、この『体とガロア理論』を見せて、

「君はこの本を読んだことがあったね。この定理1.37の、多項式環F[X,・・・]のイデアル(p(X,・・・)),・・・は、順序を除いてf(X,・・・)により一意的に定まる、というのは、どうやって証明するんだい。?」

と聞いた。

「それは、Rを素元分解整域とすれば、R[X]も素元分解整域だというのを使うね。」

と、答えてきた。それで、

「そうなんだよね。それは、定理1.42だ。だから、この本は、そこまでに証明していないことを使っているんだ。君は、ちゃんと補いながら、読んでいるんだね。それなら、大丈夫だよ。もうちょっと、易しい本を丁寧に読み直して、論理的なギャップを埋めるのに、自信を付けた方が良いよ。」

と答えたが、

________________________


 これが、事実である。

 私のノートと、以前読んだ『体とガロア理論』そのものを持ってきて、確かめたので、今回は大丈夫である。

 やっぱり、きちんと正しいことを書くのは、大変だね。


 ここ以外でも、私のブログで、おかしいところがあったら、指摘してほしい。

 誠実な指摘には、きちんと対処します。


 それでは、2015年8月5日3時08分修正を終わる。