現在2020年8月12日4時01分である。
麻友「何時に起きたの?」
私「1時23分に、目が覚めて、昨日マックで、ビッグマックセットを食べたとき、食べきれなかった、チキンマックナゲットを、冷蔵庫に入れてあったのを、電子レンジで温めて、食べた。お腹が満たされたので、眠くなり、1時44分に眠った。その後、3時30分に、目が覚めて、パソコンを起動した。前回の投稿を読んで、この投稿を書き始めた。というわけなんだ」
麻友「眠くなったら、寝なさいよ」
若菜「昨日、お母さんが、『ガロア理論は、これで、完璧?』と言った、
石井俊全『ガロア理論の頂を踏む』(ベレ出版)
- 作者:石井 俊全
- 発売日: 2013/08/22
- メディア: 単行本
は、藤﨑源二郎さんの『体とガロア理論』より、駄目なんですか?」
私「駄目ということではない。ただ、前者は、ガロア理論を、もの凄く丁寧に説明してあるのに対して、後者は、ガロア理論を含む、体論(たいろん)を、徹底的に書いてある点で、守備範囲が全然違う」
結弦「東京大学出版会からも、『体とガロア理論』という本が、出てるけど」
- 作者:桂 利行
- 発売日: 2005/09/01
- メディア: 単行本
私「こちらは、問題の解答も付いていて、親切だ。だから、2年生の間は、石井さんの本か、桂さんの本を、読んでいても良いと思う」
麻友「3年生に、なったら?」
私「その前に、麻友さんが、この投稿の(その2)で、
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「上野先生が、言ってくれたのは、2年生の終わりよね。当然太郎さんは、1年早く3年生で複素多様体論を、専攻するわけよね。そこの苦労か何かを、書いてくれなきゃね」
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と、言ってたのに、応えようと思う」
麻友「川口周さんや、伊山修さんや、望月拓郎さんや、赤堀さんも、3年生で、講究取ってるのよね。1年分、どうやって消化したの?」
私「川口周君達は、2年生のうちから、3年生向けの演義に、出ていたんだ」
若菜「演義って、なんですか?」
私「演習の時間のことだよ。代数演義、解析演義Ⅰ(実解析)、解析演義Ⅱ(複素解析)、幾何演義とあって、それぞれ、2コマずつ(1時間半×2)の問題を解かされる授業だった。前にも話したかも知れないけど、演義の問題が解ければ、大学院の入試問題が、易しく思えるほどで、もの凄く、鍛えられる」
結弦「例えば、どんな問題が、出るの?」
私「これは、特に難しい例だけど、
『有限生成の群の部分群は、常に有限生成か?』
というのも、あったくらい」
結弦「これ、日本語?」
麻友「それで、太郎さんは、演義に出てたの?」
私「後になって、もっと前に、演義に出て、鍛えてもらえば、良かったなあ、と思ったけど、手遅れだった。そこで、
『裏技7:演習の時間には、積極的に出て、とことん引っかき回すこと』
としておこう」
若菜「引っかき回すって?」
私「他の人が、問題の解答を発表しているときでも、分からない部分があったら、どんどん質問して、ブルバキとランダウのブログの『数学原論』という投稿の『悪ガキ、ヴェイユ』のヴェイユみたいに、問題点をはっきりさせるということだよ」
結弦「そんなことして、先生は、怒らないの?」
私「先生自身が、議論の甘いところを、どんどん突いてくる。私は、その場にいなかったのだが、ある日、13時半から始まる演義で、1問難しい定理の証明で、赤堀君が、先生の質問に、どんどん答えていたので、20時まで、やっていた、という噂が流れた。本人に確認したら、本当だったみたい。担当教官が、『彼はまだ若い』と言っていたという噂も聞いた。それくらい、数学を好きだったのに、どうして、数学の道を、諦めたのだろう。私は、悲しい」
麻友「太郎さんだって、お父様に、『学者になるなんてのは、もう別な問題だ』と、言われたんじゃなかった?」
私「言われたって、私、数学やってたもん」
若菜「壊れた頭で、高校数学から。今でも、再建中なんですよね」
私「面白い例がある。私が、大学4回生で、超高速回転中の頭で、『解析入門Ⅰ』の附録を、ノートに書き写している。その文章中に、
のとき ( は、‘ でない ’ を表す) は の真部分集合といい、・・・
とある。私が、1994年7月23日に、書き写し、そこまでのところで、記号 (ノットイコール)の定義がないので、括弧を書いて、説明しているのだ。これは、8月1日で止まるノートで、発病寸前である」
麻友「それで?」
私「『解析入門Ⅰ』は、発病後も、何度も読もうとアタックする。2001年10月30日には、『』 の定義がないことに気付いたことに対して、『さすが!あの時の頭は素晴らしかった』と、メモしている。その後2007年4月9日には、『今はもっと素晴らしい』と、メモ。2012年3月19日12時19分には、『ノートP.324を見よ』と、メモがある。ノート324ページを見ると、
読者注)
「」は 「」が偽であるという意味である。
「」が真ではないと言うと誤解をまねく。
「」が真であることを証明できず、真ではない(つまり、「まだ真ではない」ということ。 2015.8.25 17:51)と言っても、偽であることを証明したことにはならないからだ。これはブルバキをやってあるから大丈夫。
注終)
と、ブルバキの『数学原論』を読んだ成果が、顔を出す。私の頭は、1度は壊れたが、私が、築き直してきているのが、分かると思う」
結弦「凄いノートだ。全部書いてある」
私「これを、やっていかないと、研究は、できない」
『裏技8.自分の研究ノートを作りながら、本を読む』
若菜「もう1冊、微分方程式の本がありましたが」
私「薄い本で、通読しやすいかも知れないけど、私は、本当は、常微分方程式の解の存在定理と、解の一意性定理は、コディントン/レヴィンソンの第1章で、勉強したんだ。すっごく分かり易い証明で、この2つの定理は、
- 作者:アール・A.コディントン,ノーマン・レヴィンソン
- メディア: 単行本
こっちを、図書館か何かで、借りて、書き写した方が、良いように思う」
『裏技9:常微分方程式は、コディントン/レヴィンソンの第1章』
麻友「それで、太郎さんの、3年生での、講究の様子は?」
私「複素多様体論のゼミだったので、『多様体の基礎』や『多様体入門』や『多様体論』や『複素多様体論』を、読みかじっていった」
- 作者:松本 幸夫
- 発売日: 1988/09/25
- メディア: 単行本
- 作者:与三, 松島
- 発売日: 2017/04/05
- メディア: 単行本
- 作者:志賀 浩二
- 発売日: 2002/06/10
- メディア: 単行本
- 作者:小平 邦彦
- 発売日: 2015/01/16
- メディア: 単行本
麻友「あれっ、今、寝てたわね」
私「5時半頃から、10時47分まで、寝てた」
結弦「一応、睡眠時間は、足りているか。京野先生の、『危険な状態なので』は、回避できたのかなあ」
私「とにかく、今月末に、もう一度通院するまで、何とも言えない。何が原因で、いきなり悪くなるか、予測の付かない病気だから」
麻友「分かった。8月31日に、太郎さんが通院して、大丈夫だと分かった後、ドライブに誘うかどうかなど、相談するわ」
結弦「ドライブって?」
若菜「野辺山とか、言ってたじゃない」
結弦「そういうことか。でも、お父さん、コンタクトレンズ買ったの?」
私「眼科にかかって、処方箋書いてもらわなければ、ならないかなあ、と思っている」
若菜「眼鏡屋さんでも、測ってくれますよ」
私「だったら、弟に、相談してみるかな。眼鏡屋なんだし」
麻友「それは、良い案ね。弟さんを、儲けさせてあげなさいよ」
私「分かった」
私「さて、ドラえもんのブログで、『有理数体(その3)』で、書いたように、私は、アドバンストな線型代数を、勉強していなかった。線型代数というものは、行列で書けるのだと、思っていた。それでも、ゼミの初回、多様体の導入を、私流にやろうとした。そうすると、上野さんが、『教科書通りやらないのですか』と、聞いてきたので、『じゃあ、教科書に沿ってやりますと・・・』と言って、
Twistor Geometry and Field Theory (Cambridge Monographs on Mathematical Physics)
- 作者:Ward, R. S.
- 発売日: 2008/08/21
- メディア: ペーパーバック
に、書いてあることを、話し始めた」
私「位相空間Xの開集合が・・・」
上野「次元の一意性は、いいでしょう。多様体が同じかどうかは、どうやって決めるのですか?」
私「極大座標近傍系が、・・・」
上野「極大のものというのは、あるのですか?」
私「 の・・・開集合全部と、多様体の間のすべての全単射の集合を考えて、・・・」
もうひとりのチューターの先生「それは、開集合なのですか?」
実は、私は、準備の段階で、これは、「 の・・・部分集合全部と、」だな、と分かっていた。だが、レポーターとしてしゃべっていたとき、そのチューターの先生から、『本当に、部分集合で、いいのか?』と、無言の圧力を感じて、「 の・・・開集合全部と、」と、言ってしまったのだ。
すかさず、
上野「その集合は、本当に集合になるのかな?」
私「かなり、大がかりな証明をやれば、証明できます」
上野「できるか」
私「すべての対応を、つけちゃって、そこから分出公理で選んでくる、とすれば、有限の言葉で書けていますから、集合です」
上野「それでも、良いかも知れないけど、とにかく、2つの多様体が、同じかどうかは、どうやって判定するのかね」
私「両方の座標系の和集合が、微分可能多様体となっていれば、微分可能多様体として、同値です」
上野「それが、聞きたかったんです」
私「そう言えば、良かったのですね」
上野「多様体の例を上げて下さい」
私「n次元球面に、座標系を、・・・」
上野「絵を描くだけで、いいです」
私「このように、私が、1時間かけて、準備したことが、1分もかからず、消費されていく。その日だけで、2時間くらいで、私の全数学を、ほとんど消費してしまった」
若菜「講究って、恐ろしいところですね」
私「京都大学理学部数学科、出ました、と言わせるんだから、徹底的に鍛える。それに、上野さんは、特に、教育熱心だった」
麻友「第1回は、先生、満足したのかしら?」
私「線型代数が、そんなに出てこなかったから、問題は生じなかった」
結弦「2回目は?」
私「1回目は、私が、レポーターをやったので、他の人が、始めた。その日問題になったのは、グラスマン多様体が、多様体かどうかということだった。グラスマン多様体と言っているのだから、多様体に決まっているだろう、と思うのだが、本当の多様体の定義に当てはまるかどうか、チェックせよというのだ」
若菜「そこで、線型代数が、からんでくるんですね」
私「そうなんだ。行列のランクとか、行列式が0かどうか、とか、一次独立かどうか、などのことを、行列自体を、適当に基底を取って、書いて、それで、判定する。基底を適当に取るなんて、コーディネートフリー(座標によらない)な線型代数なんて、初めて見た」
麻友「それは、本来、いつ勉強しておくべきだったの?」
私「2年生か、3年生の演義で、勉強しておくべきだったのだろう」
麻友「それが、分からなかったのは、太郎さんに数学の才能がなかったからではなく、ただ、勉強不足だったからだと、言い切れるの?」
私「それは、言い切れるね。この本の28ページに、カルタンの補題というものが、出て来るのだが、日本語の本で、『良く知られているように、カルタンの補題というものがあって、・・・』とあって、証明してない。これが、28ページの問題1.3.1.で、証明せよとなっているが、私には、当たり前のような気もするが、証明をしようとすると、ちょっと分からない。このことが、正しければ、それを使って証明できそう。というものに、行き着いたが、そこでタイムアップ」
麻友「ゼミの日になっちゃたの?」
私「そう。ゼミで、
私「このことが、正しければ、それを使って証明できそうなのですが、このことが、正しいことが、証明できません」
と言ったら、
チューターの先生「それが、分からないということは、今までのところが、分かってないということですよ」
と言って、実際に、基底を取って、証明してくれた。
私は、具体的な場合を考えて、証明するということに、慣れていなかったのだ」
若菜「結局、なんで、お父さんは、3年生で、上手く行かなかったの?」
私「先生は、私の分かっていないことに、色々挑戦させて、私を、鍛えてくれようとしていたのに、私の方は、数学を進歩させるにはどこを研究したら良いのかと、全く違うことに注力していたからなんだよね。だから、分かり易い本を、書くとか、言ってたんだ」
麻友「太郎さんに取って、『数学は恋人』。そして、太郎さんは、『自然科学の良心』なのよね。お金を稼ぐために、数学を勉強してるんじゃないんですものね。どうやったら、そういう境地に、達せられるの?」
私「自分は、天才だと、信じ切ってなければ、無理だよ」
若菜「『無敵のサーベル』ですね。お父さんが、ゼミで、実力があると、思ってもらえた、エピソードは、ないのですか?」
私「ゼミでは、ギャップのない説明をしなければ、ならない。だが、あるとき、1箇所、勢いで、『こうだから、こうなります』と言ったが、チューターの先生が、何も言わなかった。次の週、他のレポーターが、あるところで、行き詰まっている。見たら、私が、先週ぶっ飛ばしたところだ。それで、私が、『それは、この前、僕が、いい加減にやったところだ』と、言ったので、チューターの先生には、『この学生は、自分でギャップがあったと、分かってるんだな』と、分かったとか」
麻友「本を、ギャップなく読むことに、どういう利点があるの?」
私「数学が恋人の私に取っては、麻友さんに絶対ウソをつかない、というのと同じように、数学に絶対ウソをつかない、という誠実さを守る、という利点があるけど、普通の数学科の学生に取っては、前も書いたかも知れないけど、その後社会に出て、色んな事を学んだり、仕事上の選択を迫られたとき、きちんと論理を踏まえて、新しいこと、例えば語学とかを、学んだり、新型コロナウイルスへの対応を決断したりするときに、間違いなく行えるようになるという利点が、あるんじゃないかな」
麻友「太郎さんったら、涼しい顔で言ってるけど、太郎さんに取っては、『数学に対して誠実』だけが、絶対なのね」
私「あったりまえじゃん」
若菜「これは、いくら言っても駄目です。コワレフスカヤという女流数学者が、いくつもの成果(コワレフスカヤのコマ,コーシー=コワレフスキーの定理など)を挙げているのに、悩み通しに悩んでいたという話も、聞いたことがありますが、数学を好きになりすぎると、かなり危険な状態になります」
麻友「ボイコットしようか」
結弦「お母さん、愛してないの? お父さんのこと」
麻友「そういうことは、あまり、ストレートに、聞くもんじゃないのよ」
私「ゼミは、数学で、この場面では、こういうことを、言わなければならない、というような、約束事も、教わる。例えば、
上野「この定理を、応用してみましょう。あっ、空集合は、 次元です」
とか、さりげなく重要な知識を、教えてくれたりする」
麻友「なるほど、太郎さんが、京都大学で、想像していた以上のことを、吸収できたというのは、本当なのね」
私「ここまで、説明すれば、納得できるでしょう」
麻友「太郎さん。その、大学院入試より難しいという演義の問題も、取ってあるの?」
私「数学の演義も、物理学の課題演習も、もらったもの全部、今でも持っているよ」
麻友「この『数学を専攻するとはどういうことか』という連載、これで、完結していいんじゃないかしら?」
『裏技10:分からないことを、友達に聞く』
『最後の裏技:分からないことを、先生に聞くのも、重要』
私「じゃあ、これで、完結」
現在2020年8月12日15時03分である。おしまい。