相対性理論を学びたい人のために

まだ一度も相対性理論を勉強したことのない人は、何か一冊相対性理論の本を読みかじってみて、なぜこんなことが?という、疑問を持ってからこのブログに来てください。ブログの先頭に戻るには表題のロゴをクリックしてください

数学を専攻するとはどういうことか(その4)

 現在2020年8月12日4時01分である。

麻友「何時に起きたの?」

私「1時23分に、目が覚めて、昨日マックで、ビッグマックセットを食べたとき、食べきれなかった、チキンマックナゲットを、冷蔵庫に入れてあったのを、電子レンジで温めて、食べた。お腹が満たされたので、眠くなり、1時44分に眠った。その後、3時30分に、目が覚めて、パソコンを起動した。前回の投稿を読んで、この投稿を書き始めた。というわけなんだ」

麻友「眠くなったら、寝なさいよ」

若菜「昨日、お母さんが、『ガロア理論は、これで、完璧?』と言った、

石井俊全『ガロア理論の頂を踏む』(ベレ出版)

ガロア理論の頂を踏む (BERET SCIENCE)

ガロア理論の頂を踏む (BERET SCIENCE)

は、藤﨑源二郎さんの『体とガロア理論』より、駄目なんですか?」

私「駄目ということではない。ただ、前者は、ガロア理論を、もの凄く丁寧に説明してあるのに対して、後者は、ガロア理論を含む、体論(たいろん)を、徹底的に書いてある点で、守備範囲が全然違う」

結弦「東京大学出版会からも、『体とガロア理論』という本が、出てるけど」

桂利行『体とガロア理論』(東京大学出版会

代数学〈3〉体とガロア理論 (大学数学の入門)

代数学〈3〉体とガロア理論 (大学数学の入門)

  • 作者:桂 利行
  • 発売日: 2005/09/01
  • メディア: 単行本

私「こちらは、問題の解答も付いていて、親切だ。だから、2年生の間は、石井さんの本か、桂さんの本を、読んでいても良いと思う」


麻友「3年生に、なったら?」

私「その前に、麻友さんが、この投稿の(その2)で、


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「上野先生が、言ってくれたのは、2年生の終わりよね。当然太郎さんは、1年早く3年生で複素多様体論を、専攻するわけよね。そこの苦労か何かを、書いてくれなきゃね」


*******************************


と、言ってたのに、応えようと思う」

麻友「川口周さんや、伊山修さんや、望月拓郎さんや、赤堀さんも、3年生で、講究取ってるのよね。1年分、どうやって消化したの?」

私「川口周君達は、2年生のうちから、3年生向けの演義に、出ていたんだ」

若菜「演義って、なんですか?」

私「演習の時間のことだよ。代数演義、解析演義Ⅰ(実解析)、解析演義Ⅱ(複素解析)、幾何演義とあって、それぞれ、2コマずつ(1時間半×2)の問題を解かされる授業だった。前にも話したかも知れないけど、演義の問題が解ければ、大学院の入試問題が、易しく思えるほどで、もの凄く、鍛えられる」

結弦「例えば、どんな問題が、出るの?」

私「これは、特に難しい例だけど、

『有限生成の群の部分群は、常に有限生成か?』

というのも、あったくらい」

結弦「これ、日本語?」

麻友「それで、太郎さんは、演義に出てたの?」

私「後になって、もっと前に、演義に出て、鍛えてもらえば、良かったなあ、と思ったけど、手遅れだった。そこで、

『裏技7:演習の時間には、積極的に出て、とことん引っかき回すこと』

としておこう」

若菜「引っかき回すって?」

私「他の人が、問題の解答を発表しているときでも、分からない部分があったら、どんどん質問して、ブルバキランダウのブログの『数学原論』という投稿の『悪ガキ、ヴェイユ』のヴェイユみたいに、問題点をはっきりさせるということだよ」

結弦「そんなことして、先生は、怒らないの?」

私「先生自身が、議論の甘いところを、どんどん突いてくる。私は、その場にいなかったのだが、ある日、13時半から始まる演義で、1問難しい定理の証明で、赤堀君が、先生の質問に、どんどん答えていたので、20時まで、やっていた、という噂が流れた。本人に確認したら、本当だったみたい。担当教官が、『彼はまだ若い』と言っていたという噂も聞いた。それくらい、数学を好きだったのに、どうして、数学の道を、諦めたのだろう。私は、悲しい」

麻友「太郎さんだって、お父様に、『学者になるなんてのは、もう別な問題だ』と、言われたんじゃなかった?」

私「言われたって、私、数学やってたもん」

若菜「壊れた頭で、高校数学から。今でも、再建中なんですよね」

私「面白い例がある。私が、大学4回生で、超高速回転中の頭で、『解析入門Ⅰ』の附録を、ノートに書き写している。その文章中に、

{A \subset B で A \neq B} のとき ({\neq} は、‘ {=} でない ’ を表す) {A}{B} の真部分集合といい、・・・

とある。私が、1994年7月23日に、書き写し、そこまでのところで、記号 {\neq} (ノットイコール)の定義がないので、括弧を書いて、説明しているのだ。これは、8月1日で止まるノートで、発病寸前である」

麻友「それで?」

私「『解析入門Ⅰ』は、発病後も、何度も読もうとアタックする。2001年10月30日には、『{\neq}』 の定義がないことに気付いたことに対して、『さすが!あの時の頭は素晴らしかった』と、メモしている。その後2007年4月9日には、『今はもっと素晴らしい』と、メモ。2012年3月19日12時19分には、『ノートP.324を見よ』と、メモがある。ノート324ページを見ると、


 読者注)

 
{A \neq B}」は 「{A= B}」が偽であるという意味である。
{A= B}」が真ではないと言うと誤解をまねく。
{A= B}」が真であることを証明できず、真ではない(つまり、「まだ真ではない」ということ。 2015.8.25 17:51)と言っても、偽であることを証明したことにはならないからだ。これはブルバキをやってあるから大丈夫。


 注終)


と、ブルバキの『数学原論』を読んだ成果が、顔を出す。私の頭は、1度は壊れたが、私が、築き直してきているのが、分かると思う」

結弦「凄いノートだ。全部書いてある」

私「これを、やっていかないと、研究は、できない」

『裏技8.自分の研究ノートを作りながら、本を読む』


若菜「もう1冊、微分方程式の本がありましたが」

私「薄い本で、通読しやすいかも知れないけど、私は、本当は、常微分方程式の解の存在定理と、解の一意性定理は、コディントン/レヴィンソンの第1章で、勉強したんだ。すっごく分かり易い証明で、この2つの定理は、

こっちを、図書館か何かで、借りて、書き写した方が、良いように思う」

『裏技9:常微分方程式は、コディントン/レヴィンソンの第1章』


麻友「それで、太郎さんの、3年生での、講究の様子は?」

私「複素多様体論のゼミだったので、『多様体の基礎』や『多様体入門』や『多様体論』や『複素多様体論』を、読みかじっていった」

多様体の基礎 (基礎数学)

多様体の基礎 (基礎数学)

多様体入門(新装版) (数学選書)

多様体入門(新装版) (数学選書)

多様体論 (岩波基礎数学選書)

多様体論 (岩波基礎数学選書)

新装版 複素多様体論

新装版 複素多様体論


麻友「あれっ、今、寝てたわね」

私「5時半頃から、10時47分まで、寝てた」

結弦「一応、睡眠時間は、足りているか。京野先生の、『危険な状態なので』は、回避できたのかなあ」

私「とにかく、今月末に、もう一度通院するまで、何とも言えない。何が原因で、いきなり悪くなるか、予測の付かない病気だから」


麻友「分かった。8月31日に、太郎さんが通院して、大丈夫だと分かった後、ドライブに誘うかどうかなど、相談するわ」

結弦「ドライブって?」

若菜「野辺山とか、言ってたじゃない」

結弦「そういうことか。でも、お父さん、コンタクトレンズ買ったの?」

私「眼科にかかって、処方箋書いてもらわなければ、ならないかなあ、と思っている」

若菜「眼鏡屋さんでも、測ってくれますよ」

私「だったら、弟に、相談してみるかな。眼鏡屋なんだし」

麻友「それは、良い案ね。弟さんを、儲けさせてあげなさいよ」

私「分かった」


私「さて、ドラえもんのブログで、『有理数体(その3)』で、書いたように、私は、アドバンストな線型代数を、勉強していなかった。線型代数というものは、行列で書けるのだと、思っていた。それでも、ゼミの初回、多様体の導入を、私流にやろうとした。そうすると、上野さんが、『教科書通りやらないのですか』と、聞いてきたので、『じゃあ、教科書に沿ってやりますと・・・』と言って、

Twistor Geometry and Field Theory (Cambridge Monographs on Mathematical Physics)

Twistor Geometry and Field Theory (Cambridge Monographs on Mathematical Physics)

  • 作者:Ward, R. S.
  • 発売日: 2008/08/21
  • メディア: ペーパーバック

に、書いてあることを、話し始めた」


私「位相空間Xの開集合が・・・」

上野「微分可能多様体だけで、いいです」

私「n次元の微分可能多様体とは、・・・」

上野「次元の一意性は、いいでしょう。多様体が同じかどうかは、どうやって決めるのですか?」

私「極大座標近傍系が、・・・」

上野「極大のものというのは、あるのですか?」

私「{\mathbb{R}^n} の・・・開集合全部と、多様体の間のすべての全単射の集合を考えて、・・・」

もうひとりのチューターの先生「それは、開集合なのですか?」


 実は、私は、準備の段階で、これは、「{\mathbb{R}^n} の・・・部分集合全部と、」だな、と分かっていた。だが、レポーターとしてしゃべっていたとき、そのチューターの先生から、『本当に、部分集合で、いいのか?』と、無言の圧力を感じて、「{\mathbb{R}^n} の・・・開集合全部と、」と、言ってしまったのだ。


 すかさず、

上野「その集合は、本当に集合になるのかな?」

私「かなり、大がかりな証明をやれば、証明できます」

上野「できるか」

私「すべての対応を、つけちゃって、そこから分出公理で選んでくる、とすれば、有限の言葉で書けていますから、集合です」

上野「それでも、良いかも知れないけど、とにかく、2つの多様体が、同じかどうかは、どうやって判定するのかね」

私「両方の座標系の和集合が、微分可能多様体となっていれば、微分可能多様体として、同値です」

上野「それが、聞きたかったんです」

私「そう言えば、良かったのですね」


上野「多様体の例を上げて下さい」

私「n次元球面に、座標系を、・・・」

上野「絵を描くだけで、いいです」



私「このように、私が、1時間かけて、準備したことが、1分もかからず、消費されていく。その日だけで、2時間くらいで、私の全数学を、ほとんど消費してしまった」

若菜「講究って、恐ろしいところですね」

私「京都大学理学部数学科、出ました、と言わせるんだから、徹底的に鍛える。それに、上野さんは、特に、教育熱心だった」

麻友「第1回は、先生、満足したのかしら?」

私「線型代数が、そんなに出てこなかったから、問題は生じなかった」

結弦「2回目は?」

私「1回目は、私が、レポーターをやったので、他の人が、始めた。その日問題になったのは、グラスマン多様体が、多様体かどうかということだった。グラスマン多様体と言っているのだから、多様体に決まっているだろう、と思うのだが、本当の多様体の定義に当てはまるかどうか、チェックせよというのだ」

若菜「そこで、線型代数が、からんでくるんですね」

私「そうなんだ。行列のランクとか、行列式が0かどうか、とか、一次独立かどうか、などのことを、行列自体を、適当に基底を取って、書いて、それで、判定する。基底を適当に取るなんて、コーディネートフリー(座標によらない)な線型代数なんて、初めて見た」

麻友「それは、本来、いつ勉強しておくべきだったの?」

私「2年生か、3年生の演義で、勉強しておくべきだったのだろう」

麻友「それが、分からなかったのは、太郎さんに数学の才能がなかったからではなく、ただ、勉強不足だったからだと、言い切れるの?」

私「それは、言い切れるね。この本の28ページに、カルタン補題というものが、出て来るのだが、日本語の本で、『良く知られているように、カルタン補題というものがあって、・・・』とあって、証明してない。これが、28ページの問題1.3.1.で、証明せよとなっているが、私には、当たり前のような気もするが、証明をしようとすると、ちょっと分からない。このことが、正しければ、それを使って証明できそう。というものに、行き着いたが、そこでタイムアップ」

麻友「ゼミの日になっちゃたの?」

私「そう。ゼミで、


私「このことが、正しければ、それを使って証明できそうなのですが、このことが、正しいことが、証明できません」

と言ったら、

チューターの先生「それが、分からないということは、今までのところが、分かってないということですよ」

と言って、実際に、基底を取って、証明してくれた。


私は、具体的な場合を考えて、証明するということに、慣れていなかったのだ」


若菜「結局、なんで、お父さんは、3年生で、上手く行かなかったの?」

私「先生は、私の分かっていないことに、色々挑戦させて、私を、鍛えてくれようとしていたのに、私の方は、数学を進歩させるにはどこを研究したら良いのかと、全く違うことに注力していたからなんだよね。だから、分かり易い本を、書くとか、言ってたんだ」

麻友「太郎さんに取って、『数学は恋人』。そして、太郎さんは、『自然科学の良心』なのよね。お金を稼ぐために、数学を勉強してるんじゃないんですものね。どうやったら、そういう境地に、達せられるの?」

私「自分は、天才だと、信じ切ってなければ、無理だよ」

若菜「『無敵のサーベル』ですね。お父さんが、ゼミで、実力があると、思ってもらえた、エピソードは、ないのですか?」

私「ゼミでは、ギャップのない説明をしなければ、ならない。だが、あるとき、1箇所、勢いで、『こうだから、こうなります』と言ったが、チューターの先生が、何も言わなかった。次の週、他のレポーターが、あるところで、行き詰まっている。見たら、私が、先週ぶっ飛ばしたところだ。それで、私が、『それは、この前、僕が、いい加減にやったところだ』と、言ったので、チューターの先生には、『この学生は、自分でギャップがあったと、分かってるんだな』と、分かったとか」

麻友「本を、ギャップなく読むことに、どういう利点があるの?」

私「数学が恋人の私に取っては、麻友さんに絶対ウソをつかない、というのと同じように、数学に絶対ウソをつかない、という誠実さを守る、という利点があるけど、普通の数学科の学生に取っては、前も書いたかも知れないけど、その後社会に出て、色んな事を学んだり、仕事上の選択を迫られたとき、きちんと論理を踏まえて、新しいこと、例えば語学とかを、学んだり、新型コロナウイルスへの対応を決断したりするときに、間違いなく行えるようになるという利点が、あるんじゃないかな」

麻友「太郎さんったら、涼しい顔で言ってるけど、太郎さんに取っては、『数学に対して誠実』だけが、絶対なのね」

私「あったりまえじゃん」


若菜「これは、いくら言っても駄目です。コワレフスカヤという女流数学者が、いくつもの成果(コワレフスカヤのコマ,コーシー=コワレフスキーの定理など)を挙げているのに、悩み通しに悩んでいたという話も、聞いたことがありますが、数学を好きになりすぎると、かなり危険な状態になります」

麻友「ボイコットしようか」

結弦「お母さん、愛してないの? お父さんのこと」

麻友「そういうことは、あまり、ストレートに、聞くもんじゃないのよ」


私「ゼミは、数学で、この場面では、こういうことを、言わなければならない、というような、約束事も、教わる。例えば、


上野「この定理を、応用してみましょう。あっ、空集合は、{-1} 次元です」


とか、さりげなく重要な知識を、教えてくれたりする」


麻友「なるほど、太郎さんが、京都大学で、想像していた以上のことを、吸収できたというのは、本当なのね」

私「ここまで、説明すれば、納得できるでしょう」

麻友「太郎さん。その、大学院入試より難しいという演義の問題も、取ってあるの?」

私「数学の演義も、物理学の課題演習も、もらったもの全部、今でも持っているよ」

麻友「この『数学を専攻するとはどういうことか』という連載、これで、完結していいんじゃないかしら?」

『裏技10:分からないことを、友達に聞く』

『最後の裏技:分からないことを、先生に聞くのも、重要』

私「じゃあ、これで、完結」

 現在2020年8月12日15時03分である。おしまい。