現在2018年1月18日17時03分である。
昨日の投稿で、数学のゼミで受けた訓練について、いずれ書こうと思っている、と書いた。
だが、いずれなんて言ってると、いつまでたっても書かないだろう。
思い立ったのだから、書いてしまおう。
「どんな、話になるの?」
今日は、専門的な話も書くから、麻友さんには難しいかも知れない。
でも、私が、どんなところで躓いて苦労したか、という話だから、ちょこっちょこっと、面白い話が転がっていると思う。
高校生が、大学で数学を勉強するって、どんなことなのだろう、と思っているのにも、少し答えられるかも知れない。
「私も、高卒だから、同じね」
まず、大学に入学すると、数学では、線形代数というものと、微積分というものを、学ばされる。
この2つを知らないと、理系のほとんどの学術書が読めない。
高校生が、これらを勉強するのにどうしたらよいかというと、ちょっと裏技を使った方が良い。
いきなり大きな本を読むのでなく、微積分の最初のとっかかりを与えてくれる、次の110ページだけの小さな本を、丁寧に読むと良い。
- 作者:田島 一郎
- 発売日: 1978/05/01
- メディア: 単行本
問題は、解かなくとも良い。
なぜ、そんなことが言えるかというと、私自身、この本の問題は、1問も解かなかったからだ。
さて、これを読んだら次は、線形代数に入門するのだが、ここでも、裏技が必要である。
次の本は、非常に良い本なのだが、この本を第1章から読んでは駄目なのである。
- 作者:齋藤 正彦
- 発売日: 1966/03/31
- メディア: 単行本
私が、どうやって勉強したかというと、最初のうち授業に出ていて、行列式の展開の仕方を学んだ後、佐武一郎の『線型代数学』を読み始めたのだが、具体例が少なくて、理解できなかった。後から、上の齋藤正彦の『線型代数入門』を読んで、補ったのだった。
- 作者:佐武 一郎
- 発売日: 2015/06/05
- メディア: 単行本
その時も、第1章は、苦労した。
病気になって帰ってきた後、43歳にもなって、一緒に物理学のゼミをやっている相手の人に、
『線形代数は、どうやって勉強した?』
と、聞いたら、
『齋藤正彦さんの本です』
という答えが返ってきたので、
『あの本、第1章が大変じゃなかった?』
と、尋ねたら、
『私、第1章読んでないんです。先生が読むなと言ったから』
と返されて、
『あー、それは、先生が良かったんだ』
と、深い感慨とともに、答えたのを覚えている。
齋藤正彦の『線型代数入門』は、第2章から読むこと。
これが、裏技2である。
さて、裏技3。
線形代数の入門は、その本で完璧だが、微積分は、もう少し本を読む必要がある。
私は、いつも、杉浦さんの本を、勧めていたのだが、自分がどうやったかを思い出してみると、ここでも、裏技を使っていたことに気付いたのだ。
どういうことかというと、まず高木貞治の本を読んだのである。
そして、もっと厳密な議論が欲しいなぁ、と思ってから、
- 作者:杉浦 光夫
- 発売日: 1980/03/31
- メディア: 単行本
に、取りかかった。
最初から、これに取り組むと、なぜこんなどうでもいいことに証明つけるんだ、みたいに思えて、面白くないのである。
第2巻は、2年生の内容も、少し含まれている。
ここでも、裏技は、必要である。
- 作者:杉浦 光夫
- 発売日: 1985/04/25
- メディア: 単行本
の一番最後が、複素解析なのだ。
だが、大学の授業では、2年生になるとすぐ、複素解析が必要になってくる。
第2巻が、進まないよう! と思ってないで、第1巻を読んであれば、すぐに最終章へ飛べる。
後は、必要に応じて、ちょこっとずつ、切り崩せば良い。
これが、裏技4。
「えー、大学1年生で、こんなに、太郎さんでも躓きそうなところがあるの?」
大学って、高校とは、全然違うんだよ。
「でも、私は、高校も、あまり味わってないのよねぇ」
麻友さんを、無理矢理にでも、大学へ行かせたいなぁ。
高校生達が、自分の将来と学力を天秤にかけながら、いろんな大学のいろんな学部の様々な学科を、一所懸命選んで、そして入学して、何かを身につける。
あっ、これ書いてて、思い出した。
この間の日曜日(1月14日)に、TSUTAYAで、『Best Regards!』レンタルしてきたんだ。
「えっ、買ってくれたんじゃ、なかったの?」
あんな、15,120円もするもの、買えない。
「じゃあ、どうやって、リクエストしたの?」
ソニーからのメールのリンクをクリックしたら、投票できたよ。
「そうだったのか。太郎さんが、買えるはずないと思ったけど」
でも、借りてきて、収穫あった。
「どんなこと?」
通常盤だったけど、『守ってあげたくなる』が、入ってた。
「それで?」
あんまり喜ばせすぎてもいけないんだけど、麻友さんの声が、ちょっとずつ良くなってる。
「褒めてるの? けなしてるの?」
褒めてるのと、けなしてるの、半分ずつなんだ。
麻友さんが、どの程度、ヴォイストレーニングしているか、分からないから、もっとトレーニングすれば伸びるのか、もう充分トレーニングしてるのに、この程度なのか、分からないんだけど、そこは、麻友さんの方で、判断して。
「結局良くないのね」
私にこう言われたことを恨むかも知れないけど、麻友さんは歌手としては、(まだ)一流ではない。
「どうして、そんなこと言うの?」
いや、私だって、京都大学へ行くくらいだから、数学の才能があったのは、確かなんだ。
でも、一流の数学者になれるほどじゃなかったのは、見ての通りだ。
「障害者になっちゃったからでしょ」
たとえ、障害者になっても、永遠不滅の業績を遺した人もいる。
「例えば?」
ゲオルク・カントールという集合論を作った人。
「太郎さんは、何を言いたいの?」
私は、数学の才能は二流くらいだったかも知れない。
でも、本当に数学が好きで、ずっと数学の鍛錬を続けてきた。
そうしたら、いつの間にか、麻友さんを振り向かせるほどになった。
麻友さんだって、本当に、歌うのが好きなら、もっと練習して、そして、これが一番大事だけど、何十年でも、続けてみな!
「あっ、そういうこと。つまり、今は、二流だということを認めて、それでも、好きなら、ずっと続けろというのね」
数学を専攻した場合の話は、また次回に回して、そのゼミで教わった一番大切なことは、将来にわたって数学を学んでいくとき、どうやったらハードルを越えられるかのパスポートをもらったことだった、ということを書いて、今日の投稿を終わろう。
「私、歌手になれるかしら?」
それを、決めるのは、麻友さん自身だからね。
じゃあ、バイバイ。
「うん。バイバイ」
現在2018年1月18日19時43分である。おしまい。