相対性理論を学びたい人のために

まだ一度も相対性理論を勉強したことのない人は、何か一冊相対性理論の本を読みかじってみて、なぜこんなことが?という、疑問を持ってからこのブログに来てください。ブログの先頭に戻るには表題のロゴをクリックしてください

キラキラ星変奏曲(変奏13)

 現在2020年8月23日6時08分である。

麻友「昨日は、結局、書いてこなかったわね」

私「ごめん。ちょっと、ブルバキの公理系と、私達の公理系が、同値であることを、証明しようと思って、のめりこんでいたんだ」

若菜「それで、できたんですか?」

私「私達の公理系というのは、『現代論理学』の27ページに書いてある、Lukasiewicz (ルカシェビッチ)による公理系と、同値なんだけど、これと、ブルバキの『数学原論』の23ページにある公理系は、似ているようなんだけど、ルカシェビッチの公理系から、ブルバキの公理系は、楽に導けるけど、逆にブルバキの公理系から、ルカシェビッチの公理系が、導けない。8時間くらい頑張ったけど、最終的に、ブルバキが第1章の付録の問題で書いているように、ルカシェビッチの公理系も、ブルバキの公理系も、トートロジーの体系というものと同値であるということが、示せて、それによって、ブルバキの公理系から。ルカシェビッチの公理系も、導けるのだと納得した。これをやってて、21時になってしまった」

結弦「お父さん。ブルバキ集合論は、飛ばすことにしたんじゃ、なかったの?」

私「ブルバキの代数の連載が続いたのなら、あれはあれで、良かった。だが、実際には、続かなかった。ブルバキ集合論は、悪名が高いけど、ひとつひとつのことを、なぜそれをやっているか分かると、決して理解不能なものではない。集合論の本文を読んでいくのも、意味のあることだ」

麻友「圏と関手の研究は、しないの?」

私「今年の4月に、こういう本が現れた」

斎藤毅(さいとう たけし)『数学原論』(東京大学出版会

若菜「まさに、『数学原論』じゃ、ないですか」


結弦「どういう本なの?」

私「自分の書いた、

斎藤毅『線型代数の世界』(東京大学出版会

斎藤毅『集合と位相』(東京大学出版会

斎藤毅『微積分』(東京大学出版会

という3冊の本を、元にして、ブルバキの『数学原論』を、圏と関手を使って、書き改めるときのポイントを書いてある本だ」

若菜「その4冊の本を、読むの?」

私「今更、下の3冊を読む必要はないよ。もう、分かってる。一気に一番上の本が読める。ただ、図書館で借りようと思ったのに、6人も予約していたんだ。他の人が、読みたがっているのに、邪魔をしては悪い。それに、この本は、ブルバキと並行して、かなり丁寧に読みそうなので、昨日、アマゾンで、注文した」

麻友「紙の本は、買わないって、言ってたのに」

私「Kindleでは、なかったんだよ。今年出た本だし、ブルバキを、圏と関手で、書き換えるというのを、どうやるのか、知りたかった」

若菜「まだ、内容を、見てないんですか」

私「横浜の本屋さんへ行ったとき、3回見ている。圏と関手の話というのは、結構退屈なもので、この本もご多分に漏れないのだが、ブルバキを書きなおすという動機付けがあれば、楽しめるかな? と思った」

若菜「もう何度も、内容を、チェックしてあるのですね。でも、紙の本は買わないはずだったのに」

私「私も、迷った上での決断だ。許して欲しい」

麻友「じゃあ、ブルバキ、書きなおして、見せなさいよ。まだ、序文しか、連載で、やってないじゃない」

私「分かった」


私「それでは、今日のリーマン・ゼータ関数の話に移ろう」

結弦「前回、

{\displaystyle z \cot z =1- 2\sum_{k=1}^{\infty} \zeta(2k) \frac{z^{2k}}{\pi^{2k}} }

を、導いた」

若菜「前々回、

{\displaystyle z \cot z=1-\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2^{2n}B_n}{2n!} z^{2n}}

を、導きました」

麻友「ものすっごく、安易だけど、{z} の同じ次数の係数を、比べてみたくなるわね。比べて良いというのを、保証するのは?」

私「テイラー展開の一意性だね。一通りにしか、展開されないという」

麻友「あっ、そうか。じゃあ、上の式の {k} を、{n} で、置き換えて、

{\displaystyle 1- 2\sum_{n=1}^{\infty} \zeta(2n) \frac{z^{2n}}{\pi^{2n}} =1-\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2^{2n}B_n}{2n!} z^{2n}}

より、

{\displaystyle 2\zeta(2n) \frac{1}{\pi^{2n}}=\frac{2^{2n}B_n}{2n!} }

となるから、両辺を、{2} で割って、

{\displaystyle \zeta(2n) \frac{1}{\pi^{2n}}=\frac{2^{2n-1}B_n}{2n!} }

{\pi^{2n}} をかけて、

{\displaystyle \zeta(2n) =\frac{2^{2n-1}B_n}{2n!} \pi^{2n} }

つまり、リーマン・ゼータ関数の偶数の点での値が、

{\displaystyle \zeta(2n) =\frac{1}{1^{2n}}+\frac{1}{2^{2n}}+\frac{1}{3^{2n}}+\frac{1}{4^{2n}}+\cdots =\frac{2^{2n-1}B_n}{2n!} \pi^{2n}}

と、求まる。具体的に、{n=1}{n=2} とすると、

{\displaystyle \zeta(2) =\frac{1}{1^{2}}+\frac{1}{2^{2}}+\frac{1}{3^{2}}+\frac{1}{4^{2}}+\cdots =\frac{2B_1}{2!} \pi^{2}=\frac{\displaystyle 2 \cdot \frac{1}{6}}{2} \pi^{2}=\frac{\pi^{2}}{6}}

{\displaystyle \zeta(4) =\frac{1}{1^{4}}+\frac{1}{2^{4}}+\frac{1}{3^{4}}+\frac{1}{4^{4}}+\cdots =\frac{2^3 B_2}{4!} \pi^{4}=\frac{\displaystyle 2^3 \cdot \frac{1}{30}}{4!} \pi^{4}=\frac{\pi^{4}}{90}}

と、確かに値が得られる。キラキラ星変奏曲、変奏13で、終了ね」


若菜「えーっ、お母さんばっかり」

結弦「一番美味しいところ、持って行っちゃって」

私「実は、今日はこれで終わりじゃないんだ。お前たちにも、活躍させてあげる」

若菜「どうやって?」

私「高校で、三角関数の倍角の公式とか、うんざりするほど、出てきただろう。私は、ほとんど覚えなかったけど、どういうとき使うのか、見せてあげよう。{\cot 2z} って、どうなる?」

若菜「

{\displaystyle \cot 2z =\frac{1}{\tan 2z}=\frac{1}{\displaystyle \frac{\tan z+\tan z}{1-\tan z \cdot \tan z}}=\frac{1-\tan^2 z}{2 \tan z}}

だから、

{\displaystyle \cot 2z=\frac{1}{2}\biggl(\frac{1}{\tan z}-\tan z \biggr)}

となります」

私「タンジェントについて、表して」

若菜「はい。えーと、

{\displaystyle 2 \cot 2z=\frac{1}{\tan z}-\tan z }

だから、{\displaystyle \frac{1}{\tan z}=\cot z} を用いて、

{\tan z =\cot z-2\cot 2z}

ですね」

私「結弦。{\cot z}テイラー展開は、知ってたな」

結弦「{z \cot z} だけど、

{\displaystyle z \cot z=1-\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2^{2n}B_n}{2n!} z^{2n}}

だった」

私「それ、今使えないか?」

結弦「えっ、

{\tan z =\cot z-2\cot 2z}

に? あっそうか、

{\displaystyle \tan z =\frac{1}{z}\biggl(z\cot z-2z\cot 2z\biggr)}

とすれば、

{\displaystyle z \cot z=1-\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2^{2n}B_n}{2n!} z^{2n}}

と、

{\displaystyle 2z \cot 2z=1-\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2^{2n}B_n}{2n!} (2z)^{2n}}

だから、

{\displaystyle \tan z =\frac{1}{z}(z\cot z-2z\cot 2z)=\frac{1}{z}\biggl\{1-\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2^{2n}B_n}{2n!} z^{2n}-\biggl(1-\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2^{2n}B_n}{2n!} (2z)^{2n}\biggr)\biggr\}}

なんだけど、

{\displaystyle \tan z =\frac{1}{z}(z\cot z-2z\cot 2z)=\frac{1}{z}\biggl\{-\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2^{2n}B_n}{2n!} z^{2n}-\biggl(-\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2^{2n}B_n}{2n!} 2^{2n}z^{2n}\biggr)\biggr\}}

となって、順番を入れ替えて、

{\displaystyle \tan z =\frac{1}{z}(z\cot z-2z\cot 2z)=\frac{1}{z}\biggl\{\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2^{2n}B_n}{2n!} 2^{2n}z^{2n}-\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2^{2n}B_n}{2n!} z^{2n}\biggr\}}

最後に、{2^{2n}} で、纏めると、

{\displaystyle \tan z =\frac{1}{z}(z\cot z-2z\cot 2z)=\frac{1}{z}\biggl\{\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2^{2n}(2^{2n}-1)B_n}{2n!} z^{2n}\biggr\}}

となるけど、{z} で、割っちゃっていいのかな?

{\displaystyle \tan z =\sum_{n=1}^{\infty} \frac{2^{2n}(2^{2n}-1)B_n}{2n!} z^{2n-1}}

うぉ!、タンジェントテイラー展開が求まった!」

私「やったな、結弦。若菜、7乗の項まで、具体的に求めて」

若菜「あ、はい。

{\displaystyle \tan z =\frac{4 \cdot 3}{2!}B_1z+\frac{2^4 \cdot (2^4-1)}{4!}B_2z^3 +\frac{2^6 \cdot (2^6-1)}{6!}B_3z^5+\frac{2^8 \cdot (2^8-1)}{8!}B_4 z^{7}}

{\displaystyle \tan z =\frac{4 \cdot 3}{2!}B_1z+\frac{16 \cdot (16-1)}{24}B_2z^3 +\frac{64 \cdot (64-1)}{720}B_3z^5+\frac{256 \cdot (256-1)}{40320}{B_4} z^{7}}

ベルヌーイ数が、

{\displaystyle B_1=\frac{1}{6},~~B_2=\frac{1}{30},~~B_3=\frac{1}{42},~~B_4=\frac{1}{30}}

でしたから、

{\displaystyle \tan z =\frac{4 \cdot 3}{2!}\frac{1}{6}z+\frac{16 \cdot (16-1)}{24}\frac{1}{30}z^3 +\frac{64 \cdot (64-1)}{720}\frac{1}{42}z^5+\frac{256 \cdot 255}{40320}\frac{1}{30}z^{7} \cdots}

計算して、

{\displaystyle \tan z =z+\frac{1}{30}z^3 +\frac{2}{15}z^5+\frac{17}{315}z^{7} \cdots}

です」


私「私は、これで、5年前の公約を、もうひとつ果たしたんだ」

麻友「5年前の公約?」

私「2015年の8月18日の、『宇宙の年齢を求める(その2)』という投稿で、


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 さて、{\sin{\theta}}と、{\cos{\theta}}が、上のように、多項式みたいなもの、厳密には整級数(せいきゅうすう)というもので、定義されていると、{\tan{\theta}}も、やっぱり整級数で表される。

 これを、やってみると、

{\displaystyle \tan{\theta}=\theta+\frac{\theta^3}{3}+\frac{2\theta^5}{15}+\frac{17\theta^7}{315}\cdots}

となる。

「どうして、途中までしか見せてくれないの?」

と、まゆゆは、不満に思うだろうけど、後ろの方は、関係ないんだよ。


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(『宇宙の年齢を求める(その2)』という投稿より)



というやりとりが、あった。私の『解析入門Ⅱ』の、今回も見ている、336ページの、タンジェントテイラー展開のところに、

『これを麻友に説明する? 2015.8.16 23:16』

と、メモがある。5年前、とても、麻友(この8月のほんのいっとき、私は、麻友さんを、『麻友』と、呼んでいた)に、証明できるはずないよなあ、と思って、結果だけ使った。でも、今、麻友さんは、証明を見たんだよ。いつか、証明するという、公約のひとつが、果たされたんだよ」

麻友「数学は、積み上げだから、嫌だと思ってきたけど、太郎さんと、5年間、ほとんど一方的にだけど、数学を見せてもらって、確かに、見事なものが、できてくるのね」

若菜「人生懸ける価値あるかも」

私「でも、本当に死んじゃだめだよ」

結弦「そんな、真面目な受け答えするのは、お父さんだけだよ」

私「あっ、そうか」

麻友「もう。太郎さんたら、本気で取るんだから」

若菜「早い時間ですけど、キラキラ星変奏曲、最終変奏、投稿したらどうですか?」

私「分かった。リーマン・ゼータ関数の正の偶数の点での値を、求められるように、なったね。正の奇数の点での値を厳密に求める方法は、まだ見つかってない。見つからないという結論も、あり得るというのが、私の見解だった。花奈澪さんの応援に応えた、『キラキラ星変奏曲』、これで、終了だ。解散」

 現在2020年8月23日12時19分である。おしまい。