現在2021年8月24日9時52分である。(この投稿は、ほぼ4068文字)
麻友「上野さんのゼミでも、付いていけなくて、演義もサボるようになって、どうなったの?」
私「上野先生は、『授業はサボっても良いけど、演習の時間には出なさい。これは、命令だ』と、あるとき、言った。それで、6月末に1回演義に出た。もう2カ月経っているから、分からないことだらけ。要するに、圏と関手が、出てきてるんだよ」
若菜「ああ、あれか」
私「1週間、何とか解こうとしたけど、1問も解けない」
私「それでも、翌週、演義の時間に出た。そのときのことは、印象に残っている」
結弦「覚えているんだー」
私「その日、一緒のゼミに出ていて、私よりも、先生の命令を、早くから聞いていた、館野君という友達もいた」
若菜「もしかして、あの YAWARA! のお風呂入っている絵を、賜った人?」
私「良く覚えてるね。とにかく、その人は、1番だけ、ちょっと解いてあったんだ」
結弦「その話って? どこかで聞いたような?」
私「うん。他の人にも話したことある」
若菜「それで?」
私「先生が、『1番解ける人?』って言ったら、館野君と、他3人くらい、手が挙がったんだ」
麻友「腐っても京都大学」
私「私は、全部解けてないから、手を挙げられないんだけど、望月君も、手を挙げてるんだ」
若菜「当然なんじゃないですか、毎週、全部解いてくるんだから」
私「その後を、見ていれば、それが、どういうことなのか、分かる」
私「先生が、『じゃあ、じゃんけんして』と言った。そして、じゃんけんで、望月君が、勝ってしまった。もう分かるよね」
麻友「えっ、だったら、その問題、望月さんが、解いちゃったの?」
私「そういうことなんだよ。当然、次に先生が、『2番解ける人?』と言っても、望月君しか手を挙げない」
若菜「後のお父さんを含めて、5、6人は、見ているだけ?」
私「1番から9番まで(かな?)、全部、望月君が、解いてしまった」
私「『1番しか解けないんですって、言えよ』なんて、強がってる人もいたが、京都大学の理学部に、それも、北海道大学に入ったけど、レヴェルが低いから、京都大学を受け直して入っている彼にとって、それは、言えなかっただろうな」
麻友「太郎さんが、単位を落としていく過程を、スローモーションで、見ているようだわ」
私「ただね、私は、望月君の解くのを見ていて、『ああ、定義を踏まえて、素直に解いていけば良いんだな。悩むことなかった』と思って、友達に、『来週は、全部解いてくるよ』なんて、豪語した」
私「さらに、前日問題を解こうとしていたとき、定義が分かりにくかった、写像の引き戻しというものを、赤堀君と望月君が、お昼を食べているところへ、私の食事のトレイを、持って行って、
私「写像の引き戻しって、どっちから、どっちへ行くか、分かりにくいよね」
望月「うん」
と、言葉を交わした」
私「望月拓郎君と、言葉を交わしたのは、この1回だけだった。いざ翌週の問題に取り組もうとすると、『定義を踏まえて、素直に解いていけば良いんだな』どころではなく、やっぱり難しくて、1問も解けなかったのである」
私「上野健爾さんにも、ゼミを休ませてください。と言って、1年生の教科書から、復習を始める。この間の『『細胞の分子生物学(第6版)』を読もう』のブログの『DNAの冒険(その4)』の記事で書いた、ハイゼンベルグの『部分と全体』に関し、
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私「第ⅩⅩ(20)章まであるうちの、最初の4章(第Ⅰ章~第Ⅳ章)くらいだな、面白いのは。第Ⅱ章では、私が、『やっぱりハイゼンベルクの様に物理学者になろう。数学はとっても好きだし、恐らく数学科の人の中でもトップクラスの厳密さを持っているけど、物理をやっている時のような感動は数学の方ではどうしてか分からないが僕には得られないのだもの』と、メモを書き込んでいるほどだ」
若菜「それは、いつのメモなんですか?」
私「この本の購入の刻印は、『1993年6月29日 京都大学 中央書籍』だから、3回生で、上野さんのゼミが、辛くなっている頃。私が、数学で喜びが得られないなどと、愚痴るのは、よっぽどのことだ」
若菜「あっ、そう読むべきなんですね。物理が好きなんだと、取るだけでなく」
私「これは、本人にしか、分からないことだな」
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(『『細胞の分子生物学(第6版)』を読もう』のブログの『DNAの冒険(その4)』より)
と、書いた、まさにその瞬間だよ」
麻友「太郎さんが、『じぇーんじぇん、分かりません。先生なんとかして~』という武器を、知ってたら、望月さんに追いついて、競争することだって、できたかも知れないのに」
私「『たら』は、ないんだよ。私は、その年も、数学専攻を、途中で止め、その翌年も、似たような経緯で、物理学専攻において、行き詰まる。結局、数学と物理学の両方の勉強が、山積し、新聞配達なんて始めて、無理がかかり、発病となる。後で考えてみると、もっと、どういう風に悩んでいるのか、先生に説明すれば、先生の側はプロだから、いくらでも似たような学生を見ていて、解決策を教えてくれたのかも、知れない」
若菜「先生に相談しなかったの?」
私「実は、相談してるんだ。7月初めに、上野健爾さんのところへ行って、ゼミを休ませてください、と、言ったとき、先生は、『君たちには、あの本は、難し過ぎるんだ、今、どんな本読んでる?』と、聞いてきた。私は、何冊も読んでいた。だが、格好つけて、『ホーキング&エリス』を、見せた」
ホーキング&エリス『時空の大規模構造』(ケンブリッジ)
ホーキング&エリス『時空の大域的構造』(プレアデス出版)
結弦「それは、格好つけたことになるの?」
私「私が、1年生からの本を、復習しているのだから、
や、
杉浦光夫『解析入門Ⅰ』(東京大学出版会)
を、見せれば、先生も、『こりゃ、深刻だな』と、分かったんだろうけど、『ホーキング&エリス』なんかを、見せたものだから、
上野「これだったら、スラスラ読めるの?」
なんてことになって、そのときビックリしたんだけど、先生が、数学の先生なのに、ペンローズの『スピノールと時空1&2』を書架から取り出して、
ペンローズ/リンドラー『スピノールと時空 v.1』(ケンブリッジ)
ペンローズ/リンドラー『スピノールと時空 v.2』(ケンブリッジ)
上野「ツイスター理論やりたいなら、この本に切り換えても、良いんだけど。ただ、退屈なんだよなあ」
と言ったんだ」
若菜「どうして、数学の先生なのにって?」
私「だって、去年(2020年)、イギリスのペンローズ、ドイツのゲンツェル、アメリカのゲッズの3人、ノーベル物理学賞もらっただろう。物理学者なんだよ」
結弦「あっ、そういうことか」
私「それだけじゃない。これは、どうだい? と
を、持って来たんだ」
麻友「それが、どう凄いの?」
私「この本、出版されたばかりだったんだよ。出版されたのが、1992年10月1日で、私が上野健爾さんのところへ、行ったのは、1993年7月なんだから、1年経ってない」
若菜「お父さん、どうして見ただけで、新しいとか、分かるの?」
私「ペンローズの本も、佐藤・小玉の本も、私、持ってたから」
麻友「はー、やってられない。じゃあ、今も持ってるのね?」
私「うん」
結弦「それだけ、やる気があって、もしかしたら才能もあったかも知れないのに、もったいないことしたよなあ」
私「先生たちも、何重にも、手を差し延べてくれて、いたんだ。例えば、演義の問題も、全部違うものにせず、似た様なのとセットにして、一人が、全部解いちゃったりしないように、とか、工夫するとか」
若菜「ここで、28年も前の、お母さんが生まれるより前の、失敗を、断罪しても、何にもなりません。前に、進むべきです」
結弦「お父さん、何、最近、図書館の本、熱心に、読んでるの?」
私「これか、
遠藤理平(えんどう りへい)『14日で作る 量子コンピュータ(Python版)』(カットシステム)
量子力学は、研究中だけど、その原理を使って、今まさに、新しいものが、できていると言う。その1番の原理を、シミュレーションで、見せてくれるなら、見てやろうじゃないかと、図書館に予約を入れた。8月13日に、借りてきて、11日経っているが、まだ、4日目を読んでいる」
若菜「お父さんが、本読むのは、本当に鈍いんですねえ」
私「何か再発見があったら、報告するよ」
麻友「太郎さん、全然、挫折感に、打ちのめされてない。失敗しても失敗しても、努力できるって、ひとつの才能よ。新型コロナウイルスも、忘れないでね」
私「じゃあ、これで、今日は、お開き」
若菜・結弦「おやすみなさーい」
麻友「おやすみ」
私「おやすみ」
現在2021年8月24日23時03分である。おしまい。