相対性理論を学びたい人のために

まだ一度も相対性理論を勉強したことのない人は、何か一冊相対性理論の本を読みかじってみて、なぜこんなことが?という、疑問を持ってからこのブログに来てください。ブログの先頭に戻るには表題のロゴをクリックしてください

「やっほー」の効果(その5)

 現在2019年10月16日14時23分である。

麻友「太郎さん。楽しそうね」

私「静かに、いくつも発見している」

若菜「新発見なんですか?」

私「いや、新発見ではなく、1915年にレーヴェンハイムが、1920年にスコーレムが、それぞれ発見したことからなる、レーヴェンハイム・スコーレムの定理というものの系みたいなもの」

結弦「今日は、時間があるから、ちょっと話してよ」

私「じゃあ、具体例を作りながら、話してみよう。

{\mathbb{R}} が、可能性全部集めた、実数の集合としたよね。そして、

{\mathrm{{}_c}\mathbb{R}} が、小数点以下第 {n} 桁目が決定できる計算可能実数の集合としたよね」

若菜「その辺は、覚えています」

私「ところで、若菜と結弦が来る前、麻友さんと私が、本当にまだ出会ったばかりの頃、『実数体というものは、本質的に1つしかない』ということを、話し始めたことがあるんだ」

若菜「お二人は出会ったばかりから、数学の話を、していたんですか?」

結弦「どの投稿?」

私「『『解析入門Ⅰ』§3問題5)』で、(その6)まである。『「やっほー」の効果』より前の投稿だ。今日の話は、特に『『解析入門Ⅰ』§3問題5)(その5)』の記事に関係している」

結弦「カチャカチャ。『解析入門Ⅰ』で、実数の公理が17個あるとか、言ってる」

若菜「『まゆゆ星』とか、まだ、出会って間もないふたりだって、読んでて分かりますね」

私「出会って間もない二人の不器用なやり取りを、形容するには、どんな言葉を使ったら良いのかなあ? 麻友さんと私の場合『ほやほや』でもないんだよなぁ」

若菜「これは、実在のお母さんに対してのご指名の質問ですね」

麻友「 (解 答 欄)   は、どうかしら?」


結弦「蟷螂の斧(とうろうのおの)って、何?」

麻友「太郎さんに言われて、電子辞書で、語彙を増やしているんだけど、これは、中国の漢文に、起源があるの。斉(せい)の荘公(そうこう)が、出猟した際、道ばたに居たカマキリが通すまいとして前足をあげてこれを防ぎ止めようとしたのを、荘公が勇者なりとして、これを避けて通った故事に基づいて、かなうわけない抵抗のことらしいわ。太郎さん、何でこの言葉、知ったの?」

私「京都で発狂して、横浜に戻ってきた後、ほとんど何もできなかった。数学の本を全文写ししていたら、父か母が、数学の本よりは、新聞の社説でも写せ、と言ったので、何日か、全文写した。そのとき、社説にあった言葉なんだ」

麻友「太郎さんには、時間があったのね」


若菜「そろそろ、計算可能実数を」

私「まず、有理数は、循環小数で表せるんだから、全部、計算可能実数だよね。だから、 {\mathbb{Q} \subset \mathrm{{}_c}\mathbb{R}} だ」

結弦「あっ、そうか。何桁目でも、割り算するだけで、求まるんだものな、分数は」


私「それから、計算可能実数同士を、足したり引いたり掛けたり割ったりしたものも、計算可能実数だよな」

若菜「ある程度、想像できます」

麻友「そういうのを、体(たい)っていうのよね。『数Ⅲ方式ガロアの理論』を読むまでは、使っちゃいけないらしいけど」

私「それからさらに、大小関係が定義できないなんてことはないから、順序体というものになる。結局、連続の公理を満たせば、{\mathrm{{}_c}\mathbb{R}} は実数の公理を全部満たすことになる」

若菜「連続の公理って、カチャカチャ、こういうものですね」

(R 17)実数体 {R} の,上に有界な任意の部分集合 {A \neq \emptyset} に対して,{A} の上限(最小上界) {s= \sup A}{\mathbb{R}} の中に存在する.

麻友「これは、要するに、上に有限な集合の、上の縁が、実数として存在するという条件なのよ」

結弦「だとすると、この文章で、{\mathbb{R}} を、{\mathrm{{}_c}\mathbb{R}} で置き換えたものが、成立すれば良い」

私「ここが要だから、丁寧に説明しよう。まず分かっていると思うが、{\mathbb{R}} は、可能性全部集めたものだったのだから、{\mathrm{{}_c}\mathbb{R} \subset \mathbb{R}} だな」

若菜「計算可能実数は、実数の部分集合」

私「今、計算可能実数の任意の部分集合 {A \neq \emptyset} を取ると、これは、実数の部分集合でもあるな」

麻友「ということは、{A} の実数としての上限 {\sup A} は、少なくとも、実数としては、存在しているわね」

私「そうだ。問題は、これが、計算可能実数かどうか」

結弦「追い詰めたけど、最後の一手は?」

麻友「私達では、どうすることも、できないわね」

私「こういうことは、ある程度慣れが必要なんだ。これから私は、あるアルゴリズムを用いて、この {\sup A} を計算して見せる。このアルゴリズムを、区間縮小法(くかんしゅくしょうほう)という」

若菜「区間を縮小するとは、どんどん狭い範囲に追い込んでいって、小数点以下第 {n} 桁目を、決定するということですか?」

私「そういうことだ。まず、実数直線を、整数で、区切る」

 -1        0         1         2
──────────────────────────────────────>

  <──────{A}───────>

若菜「あっ、分かってきた。{A}の入っている区間の中で、一番右のものが、{0}{1} の間の区間だから、{\sup A} の整数部分は、{0} 。次は、これを、{10} 等分するんですね」

私「そう」


 -1        0         1         2
─────────────────────────────────────>
          0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9
  <───────{A}───────>

結弦「0.6 と 0.7 の間みたいだな」

若菜「じゃあ、小数点以下第1桁目は、6ということになりますね」


麻友「ちょっと、待って。{A} は、本当は集合なのよ。こんな風にのっぺりと広がってるかどうかは、分からないはずよ」

私「さすが、特待生。冴えに冴えている。実は、この部分、さっき15時頃から30分くらい、かなり考えて生み出した部分なんだ」

麻友「太郎さんも、疑問に思ったの?」

私「実数論で、区間縮小法を使うっていうのは、常識なんだ。でも、実数かどうか分かっていない {\mathrm{{}_c}\mathbb{R}} に対して使っていいのかな? って、考えた」

麻友「結論は?」

私「その結論が、途中にあった、


*******************************

私「今、計算可能実数の任意の部分集合 {A \neq \emptyset} を取ると、これは、実数の部分集合でもあるな」

麻友「ということは、{A} の実数としての上限 {\sup A} は、少なくとも、実数としては、存在しているわね」

*******************************


の部分に、表れている。確かに存在して、さらに、小数点以下第 {n} 桁目を、求められる。というのが、このアルゴリズムの目指していたことなんだ」


結弦「うー、2042年に12歳で、『数学は冒険』という世界から来た僕でも、この冒険は、きつ過ぎる」

若菜「中学生の語彙を、はるかに越えてますね」

私「アハハ、私も高校生になるまで、『語彙』なんて言葉も概念も、知らなかったよ。今日話したことは、私が大学にいたときの頭でも、分からないことだと思う」

麻友「太郎さん、京都から帰ってきて、頭リセットされた後に、大学までのことを復習して、さらに先まで、勉強したってこと?」

私「そうだよ。今でも、進み続けている。計算可能実数なんて、ここまで進歩すると、思わなかった」

結弦「結局、この計算可能実数というので、何がやりたかったの?」

私「丁寧にいうと、『第1階の理論Sがモデルをもてば,それは可算モデルをもつ』というのが、最初に話した『レーヴェンハイム・スコーレムの定理』なんだけど、さらにこれから、『実数の公理を満たす可算モデルが、存在する』ということが、導ける。普通実数というのは、可算より多い集合のはずなのに、可算個の元の集合で、実数の公理を全部満たす集合があるのが、どうしてだろうと、気になっていた。あるのなら、その集合を作ってみたいと思っていた。それを、実際作ったのが、計算可能実数で、本当に実数の公理を満たすことを証明したのが、今日だったわけだ」

麻友「えっ、じゃあ、できたて?」

私「証明できてから8時間も経ってないよ(現在は2019年10月16日18時17分である)」

若菜「お父さんといると、本当に数学が、冒険になります」

結弦「すっげーライヴ感。半端ない」

麻友「これが全部、系なんて、レーヴェンハイム・スコーレムの定理って、凄い定理ねえ。ちょっと、聞いて良い? 太郎さんは、1を定義して、それから加法を使って、自然数を作った。そして、座標を使って、整数を作った、有理数も似たように作ると言ってた。多分割り算が必要なはずよね。そうすると、有理数から計算可能実数を、作るということが、できるのかしら?」

私「それを、今、考えていた。私は、いつも、実際に作らないと、満足しない。当然、計算可能実数全体の集まり {\mathrm{{}_c}\mathbb{R}} を、作りたい。そこで、考えたのが、麻友さんが『有理数を作るのに、割り算が必要なはずよね』と言ったように、有理数から計算可能実数を作るには、自然数に加法減法乗法除法の他に、極限を取る操作を、加えるというのは、どうかと思うんだ」

麻友「極限って、{\displaystyle \sum_{n=0}^{\infty}} みたいなの? そんなことしたら、普通の実数まで、行っちゃわない?」

私「人間が、思いつける実数は、ほとんど計算可能実数なんだ。だから、多分大丈夫。ちなみに、極限には {\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty}} みたいなのもある」

若菜「お父さんの、大学で躓いてからの悩みの中心に、数学を基礎から築き直すというのがありますが、実数を作るところで、越えられなかったものがあるようですね。今回の計算可能実数で、克服できましたか?」

私「計算可能だ、ということを、表す記号がないんだ。少なくとも1階の述語論理には。それを、表すのに、2階の述語論理というものを、必要とするのかもしれない。私は、やっと発狂したときその主な理由になっていたものを、1つ解決できたのかも知れないな」

麻友「太郎さんの病気は、薬を飲めば治るというものではないのね。自分で、狂った原因を克服しなければ、ならないのね。でも、今、爽やかな顔してる。病気が少し良くなったのね。張り切りすぎて、入院するようなことに、ならないでね」

私「じゃあ、今日は、ここまでにしよう。解散」


麻友「太郎さんと、恋人になる計画が、着実に進んでるのよ。入院したりして、ぶち壊さないでね」

私「いきなり抱きしめて、キスしたりなんかしないからさあ、そばに行かせてよ」

麻友「私だって、ずっとそう思ってるのよ」

 ・・・

 現在2019年10月16日20時40分である。おしまい。