現在2020年9月18日19時00分である。
麻友「太郎さんのご家族が、暖かい家族だというのは、これまでも聞いてきたけど、それが、どう繋がるの?」
私「麻友さんは、今、失業中で、恐らく転職しても、今までほどのお給料をもらえないのは、どうしようもないだろう。私は、それを当然と受け止めるだろうが、私の父母がどう取るかは、麻友さんには、不透明だろう」
麻友「太郎さんも、そう思っているの?」
私「そりゃ、優秀な予備校講師などなら、引き抜かれて、良いお給料になることも、あるだろう。だが、よっぽどスキルのある人を除けば、転職した後、お給料が転職前より良くなる人は、いない。それくらいは、私でも分かる」
麻友「私でも、駄目だろうと?」
私「健康上の理由で引退した、とのこと。ある意味何か、非常にストレスに感じることがあったと、誰でも思うだろう。その原因を隠したままで、これまでよりもお給料の良い職に就くのは、誰が見ても無理だ」
麻友「太郎さん、傷口に塩を塗るの?」
私「これは、勝手な推測だが、誰か麻友さんにストーカーが、つきまとっているのだろう。恐らくそのストーカーは、麻友さんが、自分以外の男の人と結婚したら、その相手の男の人を殺すと、脅しているのでは、ないかな?」
麻友「その推測に、『そうなの』とは、言えないのよ」
私「まあ、取り敢えず、そのことは、スルーしよう。妹夫婦は、19年前に、結婚したという話は、したよね」
麻友「妹さんが、何か?」
私「妹のご主人様は、優秀な人だったのだけど、神戸で働いていた。その会社にいる限り、東京に戻ってこられる見込みは、なかった。妹が、私のためもあって、IT系の転職の雑誌を、見せてくれていた。そして、そばにいた父に、『これを、お父さんに見られるのは、困るんだけどね』と言った」
私「なぜ困るのか分からない私は、『なぜ、困るの?』と、聞いた」
麻友「あっ、そうか。『優秀な会社で、働いていますから、大丈夫です。お嬢さんを下さい』という約束だったのに、結婚したら、会社を辞めちゃうなんてね。詐欺みたいになっちゃう」
私「麻友さんも、そういうことが、良く分かるね」
麻友「そんなこと言ったら、太郎さんこそ、どの面下げて、私の父に会うのよ」
私「まあ、確かに、そういう問題は、大いにあるんだけど、障害者は、結婚できなくて当然、というこの社会は、私が、先頭に立って、変えていかなければならないのだと、思っている」
麻友「つまり、そういうややこしい問題があっても、太郎さんのお父様が、理由も分からず、怒り出したりしない、暖かい一家だ、ということなのね」
私「そう。もし、結婚したとして、父が、妹を、殴っちゃったり(これは、1年ほど前に、実際あった)ということが、起こっても、それは大抵、妹が、父を激昂させるようなことを、言った場合なんだ」
麻友「どんなことを、言うと、お父様が激昂されるの?」
私「妹は、父が、『ここを突かれたら痛いなあ』と思っているところを、わざと突くんだよ。例えば、
父「お前、この前も、そこを間違えただろう」
妹「そんなこと分かってる」
父「分かってて、反省しないから、いけないんだ」
妹「そんなこと言うけど、お父さん、東大1年目受けて落ちたとき、反省しなかったんじゃない? だから、2年目も落ちたんだよ」
父「なにっ!」
これは、誰だって、父が悪いのは分かっているけど、父の、2年とも東大落ちたということに触れるのは、逆鱗に触れることだというのは、家族全員知っているのだから、妹も、あまりにも、浅はかなんだ」
麻友「太郎さんの学歴偏重は、お父様の影響もあるのかしら?」
私「いや、実際、京都大学へ行ったからだよ」
麻友「でも、卒業してない」
私「私を、怒らせようと思っても、無理だよ」
麻友「つまんないの。あっ、じゃあ、私と結婚させてあげない」
私「それは、困る」
麻友「駄目よ。私、太郎さんと結婚しない。ストーカーの人とも結婚しないけど、太郎さんとも結婚しない。もっと、スポーツマンの、強い人と、結婚する。このアイディア、今、生まれた。2020年9月18日20時39分のアイディアよ」
私「もう。やめてよ。結婚しないなんて、こんなに、好き合ったのに」
麻友「好き合っていないわ。太郎さんの勝手な空想だったの。さようなら」
私「もう」
これが、麻友さんとの別れだった。5年5カ月続いた恋は、あっけなく終わってしまった。
現在2020年9月18日21時06分である。おしまい。